緑の桜・ギョイコウ(御衣黄)とは
ギョイコウ(御衣黄)は桜の一種です。日本固有種であるオオシマザクラ(大島桜)をもとにした園芸品種サトザクラ(里桜)に分類されており、開花時期は4月中旬~下旬と、桜としてはやや遅咲きです。
桜の花色といえばピンクや白が一般的ですが、ギョイコウは非常に珍しい黄緑色の花をつけます。10枚~15枚の花弁を持ち、花形は八重咲きです。咲き進むと中心部から赤く染まっていく様子も美しいといえます。
ギョイコウの基本情報
学名 | Cerasus lannesiana’Gioiko’ |
科名 | バラ科 |
属名 | サクラ属 |
別名 | 緑桜(ミドリザクラ)、浅黄桜(アサギザクラ) 御祓(ミソギ)、黄桜(キザクラ) |
原産地 | 日本 |
樹高 | 5m~10m |
花形 | 八重咲き |
開花時期 | 4月中旬~下旬 |
ギョイコウの名前の由来
ギョイコウ(御衣黄)の名前の由来は、ギョイコウの花色です。ギョイコウの黄緑の花色が、平安時代の貴族の衣装に使われていた萌黄色(もえぎいろ)に似ていることから名づけられました。
萌黄色とは、春に萌え出る若葉のような黄緑色を表現する言葉です。御衣(ギョイ)は古い言葉で、天皇陛下や貴族などの高貴な身分にある人が身に着ける衣装を意味します。
ギョイコウの種類・品種
品種①スマウラフゲンゾウ(須磨浦普賢象)
スマウラフゲンゾウ(須磨浦普賢象)とは、1990年代に兵庫県神戸市の須磨浦公園で発見された桜の品種です。名前は発見された地名と、フゲンゾウ(普賢象)という桜の枝変わり品種であることに由来しています。
開花時期は4月下旬です。ギョイコウよりも黄色が強い黄緑色の花をつけます。花弁数は25~50、豪華な八重咲きで見る人に壮麗な印象を与える品種です。
品種②ソノサトキザクラ(園里黄桜)
ソノサトキザクラ(園里黄桜)とは、2001年に発見されたフゲンゾウ桜の枝変わり品種です。名前は発見場所である長野県須坂豊丘の旧地名が「園里」だったことと、黄緑色の花に由来しています。
開花時期は、ギョイコウよりも少し遅い4月下旬~5月上旬です。30枚~40枚の花弁がつまった八重咲きの花を咲かせます。
品種③ソノサトリョクリュウ(園里緑龍)
ソノサトリョクリュウ(園里緑龍)とは、2008年に長野県須坂市で発見されたソノサトキザクラの枝変わり品種です。名前の由来は、発見場所である長野県須坂市の旧地名である園里と、須坂市に伝わる龍の伝説にあるといわれています。
開花時期は4月下旬~5月上旬です。花形は花弁数40枚~50枚の八重咲き、ソノサトキザクラよりも緑色が濃い黄緑の花を咲かせます。
品種④ニシナザオウ(仁科蔵王)
ニシナザオウ(仁科蔵王)とは、2007年に理化学研究所が作出した品種です。ギョイコウに重イオンビームを照射し、突然変異を誘発させるという科学的手法で作出しました。名前は研究者の仁科芳雄博士の名前と、共同研究者である育種家の石井氏が山形県出身であることに由来しています。
ニシナザオウの開花時期は4月中旬~下旬です。淡い黄緑色の花弁数は7枚~12枚で、花形は半八重咲きの花が咲きます。
品種⑤ウコン(鬱金)
ウコン(鬱金)とはオオシマザクラ系統の園芸品種です。江戸時代中期以前に、人工的に作出された品種という説が有力視されています。品種名は、咲き始めの花色が「ウコン(鬱金)」という染料の色に似ていることから名づけられました。
ウコンの開花時期は4月中旬~下旬です。花色は咲き始めは淡黄色、または淡黄緑色ですが、咲き終わりはピンク色に染まります。花弁の数は10枚~20枚の八重咲きです。
ギョイコウの育て方
育て方のポイント①植え付け・植え替え
ギョイコウは大きく育つ品種なので、地植えがおすすめです。日当たりと風通しのよい場所を選んで植え付けましょう。植え付けの適期は11月~3月です。苗を植え付ける2週間前に土壌改良を行い、水はけのよい土にします。
植える場所に穴を掘り、腐葉土を3割ほど混ぜ込みましょう。2週間ほど寝かせてから、苗を植え付けます。植え付け後の苗の根は非常に繊細です。苗から半径1mの土を踏まないように、細心の注意を払います。
鉢植えの場合は?
ギョイコウを鉢植えで育てる場合も、日当たりと風通しのよい場所を選びます。ギョイコウは桜としては比較的丈夫ですが、夏の西日や冬の霜は苦手です。夏は涼しい半日陰、冬は寒風や霜の当たらない場所に移動させましょう。
ギョイコウは水はけのよい土を好みます。用土のおすすめの配合は赤玉土7:腐葉土3です。11月~3月に、10号以上の大鉢を用意して植え付けます。
育て方のポイント②水やり
ギョイコウは乾燥と過湿に弱い植物です。鉢植えの場合は、季節に応じて水やりの頻度を調整します。春~秋は、鉢の表土が白く乾いたときに水やりしましょう。生育が鈍る冬は、表土が乾いてから2日~3日たってから水を与えます。
地植えの場合は、基本的に水やり不要です。ただし、真夏に雨が降らない日が長く続いたときは、ギョイコウが水切れを起こさないように、たっぷりと水を与えましょう。
育て方のポイント③肥料
ギョイコウの肥料のやり方は、通常の桜と変わりません。1月~2月と花後の年2回、油粕などの有機質肥料、または緩効性化成肥料を施します。肥料を与えるペースは鉢植えも地植えも同じです。肥料は土に混ぜるか、土の上に置きますが、肥料が根に触れると、肥料焼けで根が傷んでしまいます。株元から少し離して与えましょう。
育て方のポイント④病気・害虫対策
ギョイコウがかかりやすい病気は、せん孔褐斑病という糸状菌が原因で発生する病気です。この病気にかかると葉に穴があき、茶色くなって枯れてしまいます。ほうっておくと被害が広がってしまうので、早急に病気にかかった葉を除去し、焼却処分します。その後は殺菌剤で消毒しましょう。
ギョイコウにつく害虫は、アブラムシ、ケムシ類、カイガラムシなど多種多様です。こまめな観察や殺虫剤の定期散布で防除しましょう。
育て方のポイント⑤剪定
ギョイコウは桜の一種です。切断面から細菌が入りやすいため、剪定は苦手という桜の弱点を持っています。大きく成長しても問題ないように栽培する場所は広く取るなど、剪定しないですむ環境を整えるのが基本です。
剪定せざるを得ないほどギョイコウの樹形が乱れた場合は、11月~3月に行いましょう。剪定後の切断面には、必ず癒合剤を塗布して細菌の侵入を防止します。
ギョイコウの花言葉
ギョイコウの花言葉は「永遠の愛」「精神美」「心の平安」「優美」「優れた美人」です。よい意味の花言葉が多いのは、緑色が森林や深山などの豊かな自然を表し、安心と安定、調和を意味する色であることが関係しているのでしょう。
「精神美」は桜の全般的な花言葉でもあります。桜は種類別の花言葉があり、「優美」はシダレザクラ(枝垂れ桜)、「優れた美人」はソメイヨシノ(染井吉野)にもつけられている花言葉です。
珍しい緑の桜を楽しもう
ギョイコウは花色が珍しい桜ですが、沖縄県を除く全国各地で見られます。苗木も販売されており、家で栽培できる品種です。よい意味の花言葉が多いので、贈り物にしても喜ばれるでしょう。
何よりも緑色の花色は、通常の桜とはまた違う美しさと雰囲気で見る人を魅了します。機会があれば、神秘的な緑の桜ギョイコウを身近で楽しみましょう。
桜が気になる方はこちらをチェック!
当サイトでは【桜の変わり種】緑の花をつけるギョイコウ(御衣黄)!品種別の開花時期をご紹介!以外にも、桜に関する記事をたくさん掲載しています。桜の種類・品種や育て方に花言葉など、「桜についてもっと詳しく知りたい!」と思ったときの参考にしてみてくださいね。

【桜の種類・品種図鑑】有名〜珍しい品種まで特徴と開花時期を大公開!
4月になると咲き始める桜は、たくさんの種類・品種がありました。今回は見どころ満載な桜の種類について詳しく写真付きで解説していきます。地域や咲...
オオシマザクラ(大島桜)の育て方!花言葉や特徴、開花時期もご紹介!
オオシマザクラは、桜餅の「桜の葉の塩漬け」に使用されている種類の桜です。交配親としても名高く、日本の桜の代表ともいえる有名な桜の種類なんです...

【桜(サクラ)の花言葉特集】品種別に意味や由来をご紹介!西洋の花言葉も!
日本の国花・桜には、素敵な花言葉がたくさんつけられています。また桜は非常にたくさんの種類があり、品種別にもそれぞれ花言葉がついている植物。品...
出典:www.photo-ac.com/main/detail/4797740