日本と桜と花言葉
桜と日本
日本の春といえば桜です。花見シーズンに満開を迎えるソメイヨシノが有名ですが、じつはたくさんの種類がある桜。日本には自生する11種類の野生種と、それらを掛け合わせて栽培用に品種改良された200以上の品種があります。
さらに中国やアメリカ、カナダやヨーロッパなどに自生する桜もあり、非常に種類豊富。そんな中日本では古くから親しみ愛され、桜にまつわる多様な文化が生まれました。
花言葉とは
花言葉とは、19世紀頃にフランスで流行しはじめた文化。植物の特性を擬人化して表したものや、西洋の神話や文化的背景などを組み込んだものなどが主流です。その後世界に広まり、日本に入ってきたのは明治頃。はじめは英語やフランス語をそのまま翻訳していましたが、徐々に日本独自の花言葉も作られるようになりました。
桜のさまざまな花言葉
特に桜は日本では平安時代から鑑賞用として愛でられてきた、日本人にとって思い入れの深い植物。品種ごとに細かく花言葉がつけられ、親しまれてきました。ここでは、桜全体の花言葉をはじめ、色別・品種別の花言葉を意味や由来を、西洋の花言葉と共にご紹介していきます。
【全般】桜の花言葉
1:「優美な女性」
女性に例えられることの多い桜。日本においてその起源は神話にも遡ります。日本神話には、神武天皇の曽祖母にあたる木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤピメ)という女神が登場します。木花とは桜の花のことで、「桜の花のように咲き栄える女」という意味の名前だそう。
同時に、桜はその年の収穫を占う御神木ともされてきました。その美しい花姿は今も昔も、優美な女性の象徴であるようです。
2:「精神の美」
由来①アメリカ初代大統領の逸話
「精神の美」という花言葉の由来には諸説あり、有名なのはアメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンの逸話。ジョージ・ワシントンが幼少期の頃、父親が大切にしていた桜を切ってしまったけれど正直に謝り、その正直さを褒められたというものです。この話は「嘘をついてはいけない」という教訓のための作り話とも言われています。
由来②桜の美しさを精神性に例えた説
もうひとつは、桜の美しさとハラハラ散る様の儚さを「美しい精神」として表現したという説。桜はその一斉に散ってしまう様子が「潔い」とされ、精神性の象徴としてたびたび描かれてきました。
花言葉はさまざまな国の文化が混ざり合っているため正確な由来や意味は定かではありませんが、日本人にとって桜の儚さを「日本人の精神」と結びつける感覚は広く根付いているように感じます。
【品種別】桜の花言葉と由来
桜の主な品種
桜は、日本で自生・栽培する品種だけでもたくさんの種類があります。古来から自生するのはヤマザクラやオオシマザクラ、カンヒザクラなどを含め11種類。そのほかに、ソメイヨシノのような交配で作られた栽培品種や、西洋原産のサクランボのなるミザクラなどがあります。
なかでも、桜全般の花言葉とは別に、個別に花言葉がついている主な桜の種類をご紹介します。花言葉がつけられているのは、現在の日本の春になじみ深い品種たちです。
1:ソメイヨシノ(染井吉野)
ソメイヨシノは江戸時代に生まれた日本産の交配品種。日本に自生するエドヒガンとオオシマザクラから作られました。葉をつける前に花が咲く・花数が多い・大木になりやすいという特徴から、昭和に爆発的な人気を博し、日本全国に植えられました。蕾と咲き始めは少し濃いピンクで、満開になると白色になります。
「高貴」「優れた美人」「純潔」「精神愛」
現代では日本の桜といえばソメイヨシノ。そのためか、桜全般の花言葉に近いものがつけられています。「高貴」という花言葉は、桜の精神性をより高めたものとしてつけられているようです。
「純潔」は、神話の木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤピメ)に由来した花言葉。夫に貞操を疑われた木花之佐久夜毘売が、火の中で子供を産んで純潔を証明したという神話からきていると言われています。
2:ヤエザクラ(八重桜)
ヤエザクラは八重咲きの桜全般のこと。品種としてはヤエベニシダレやカンザンなどが有名ですがほかにも多数あり、単にヤエザクラと表記されていることもあります。通常花びらが5枚ですが、6枚以上の品種がヤエザクラとされ、多いものは100枚以上の花びらがある品種も。ソメイヨシノに比べて開花時期が少し遅いのが特徴です。
「理知」「しとやか」「ゆたかな教養」
牡丹桜とも呼ばれるヤエザクラの特徴は、何重にも重なる花びら。この花びらを知性や知識にたとえて「理知」や「ゆたかな教養」などの素敵な花言葉がついたといわれています。
桜の中では豪華な花姿ながら、物静かで上品な様子を表す「しとやか」がつけられているのもおもしろいポイント。平安時代、宮仕えをした女性の衣装に桜色が入ることを「八重桜」と表現していたとも言われます。
3:シダレザクラ(枝垂れ桜)
華やかで趣のあるシダレザクラ。シダレザクラという名称は、枝が枝垂れる桜の品種全般のことを指したり、狭義では日本で自生するエドヒガンから生まれた品種のみのことを指したりもします。狭義のシダレザクラは開花時期が少し早く、東京では3月の中旬頃に見頃を迎える桜です。
「優美」「ごまかし」「精神美」
「優美」「精神美」などの美しい桜の花言葉のほか、「ごまかし」という少しネガティブに感じる花言葉もつけられています。これは、シダレザクラがうつむいている様子から連想された花言葉なんだとか。シダレザクラは枝振りが大きく広がり、全国で文化財や天然記念物に指定されているものがたくさんあります。
4:ヤマザクラ(山桜)
春の山に咲く桜のことを全般的にヤマザクラと呼びますが、ここでいうヤマザクラとは特定の品種のこと。日本に自生する野生種のひとつで、江戸時代以前の花見はこのヤマザクラがメインでした。先に花が咲いてから葉っぱが出るソメイヨシノなどと違い、葉っぱと花が一緒に開くのが特徴です。また、花後に黒い実がなります。
「純潔」「高尚」「淡白」「上品」「あなたに微笑む」
日本には馴染みの深い品種だからか、数々の花言葉が当てられています。ヤマザクラは変異種も多いため差はありますが、開花から1週間ほどで散ってしまう品種。その特性が由来して「淡白」という花言葉がつけられたと言われます。
和歌などで登場する桜とはほとんどがヤマザクラのことでした。ソメイヨシノの埋め尽くすピンク色とは趣が異なり、花の数も少なめで、優しく上品な印象のある種類です。
5:ヒガンザクラ(彼岸桜)
ヒガンザクラは、エドヒガンとマメザクラを交配してできた品種です。コヒガンザクラという名前でも呼ばれます。また、ヒガンザクラの親で日本に自生する野生種のひとつ、エドヒガンの別名としても使われます。どちらも早咲きで、春の彼岸頃、東京で3月の下旬頃が開花時期です。
「心の平安」
ヒガンザクラには、見る人の気持ちを穏やかにさせてくれる「心の平安」という素敵な花言葉がつけられています。エドヒガンはソメイヨシノをはじめヒガンザクラやシダレザクラなどさまざまな品種の親となっている品種。人々にとって親しみ深い種類であったことが窺えます。
6:フユザクラ(冬桜)
別名コバザクラ(小葉桜)とも呼ばれるフユザクラは、1年に11月〜12月と4月の2回開花させるのが特徴の桜です。ヤマザクラとマメザクラの交配品種で、徐々に下の方から花が咲かせながら1ヶ月ほど開花し、春には葉をつけてまた開花します。
名前や開花時期が似ているので寒桜、十月桜や四季桜と混同されますが、それぞれ種属的には別の品種です。春以前に花が咲く桜のことをまとめてフユザクラということもあります。
「冷静」
花の少ない寒い時期にひっそりとお花を咲かせる様子から「冷静」という花言葉がつけられたそう。花の色も白色に近く、その印象も「冷静」さを感じさせます。一気に花が開かないので、ソメイヨシノなどとは違った趣のある桜です。
【色別】桜の花言葉と由来
1:白
フユザクラやミヤマザクラなど白色の桜全般には、「微笑む」や「純潔」といった花言葉がついています。ピンク色の桜でも、白色に近いものほど「純潔」といった花言葉がつけられている傾向があります。白色から清廉さや無邪気さを連想させるのでしょうか。
2:ピンク・紫・緑・黄
白以外の桜の花言葉は、「精神美」「美人」「純潔」など。桜にはピンクのほかに紫に近い濃いピンクや、緑色や黄色の花を咲かせる品種もあります。黄緑色の花が美しいウコンザクラは別名ビジンザクラとも呼ばれ、素敵な美人の象徴とされています。
【国・言語別】桜の花言葉
西洋の桜
北半球の温暖な地域で自生する桜は、ヨーロッパやアメリカ、カナダでも自生しています。しかしヨーロッパではさくらんぼのなるミザクラ(実桜)、北米では桜の花とは全然印象の花が咲く品種などが主流で、日本の桜とはイメージが異なります。
桜の英語名は「cherry blossom」つまり「さくらんぼがなる木」で、ソメイヨシノのような花を鑑賞することに特化した品種のことを連想しません。戦後の西洋で桜ブームが起き、ソメイヨシノだけでなく多様な桜が伝わりました。
1:英語圏
英語の花言葉は「spiritual beauty(精神美)」「a good education(よい教育)」「independence(独立)」です。これらは、先に紹介したジョージ・ワシントンの逸話が由来だと言われています。「独立」は、ジョージ・ワシントンが独立戦争の指導者であったことが由来しています。
2:フランス
フランス語の花言葉は「Nem'oubliez pas(私を忘れないで)」「Symbolise la beauté éphémère au Japon(日本の儚い美)」です。しばしば桜の花言葉は怖い?などといった話を聞きますが、それはこの「私を忘れないで」の印象によるもの。フランスでは桜の花びらが散る姿を連想させる花言葉がつけられているようです。
最後に
桜の美しさを再発見
例年の桜前線は、3月下旬から徐々に見頃を迎え、東京で3月20日前後、北陸・東北では4月上旬、北海道では4月の下旬の開花予想です。ぜひ桜の花言葉や歴史、文化に思いを馳せて眺めてみてくださいね。
また1月頃からは花屋では桜の切り花も売られています。花言葉を添えて、友達や恋人、家族にプレゼントするのもおすすめです。
桜についてほかにも気になる方はこちらから
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