ミヤコワスレの特徴
キク科ミヤマヨメナ属の多年草
秋に咲くことの多い菊の中で、春から初夏にかけて咲く珍しい菊の仲間のミヤコワスレは、キク科ミヤマヨメナ属の多年草です。学名はGymnaster savatiereriiと表記します。
原産地は日本。草丈は30cmくらいで、3cm~4cmくらいの花径の楚々とした清楚な日本的な花を咲かせます。花の開花時期は春から初夏、4月~6月に紫や水色、ピンクなどの花が見ごろを迎えます。
漢字では「都忘れ」と書く
ミヤコワスレは漢字で「都忘れ」と書きます。ミヤコワスレの和名での表記でもあります。「都忘れ」という花名の由来は、鎌倉時代、承久の乱で佐渡に流され、亡くなるまでの21年間を失意の思いで過ごした順徳天皇の逸話に由来します。
佐渡での21年間、順徳天皇は庭の隅に咲いていたこの花に癒され、しばし都を忘れることができたというエピソードから、「都忘れ=ミヤコワスレ」という名が付きました。この名前の由来はミヤコワスレの花言葉の由来にもなっています。
ミヤコワスレの別名
ミヤコワスレの別名は「野春菊(のしゅんぎく)」「東菊(あずまぎく)」「深山嫁菜(ふかやまよめな)」などと呼ばれています。「深山嫁菜」と呼び名は、ミヤコワスレの原種名です。
ちなみに英名は「gymnaster(ジムナスター)」と呼ばれています。ミヤコワスレの学名の属名に付けられた呼び名でもあります。
情緒ある品種名が多い花!
ミヤコワスレの原種は四国や九州に自生する野菊のミヤマヨメナ(深山嫁菜)で、ミヤコワスレはその園芸品種です。日本固有の園芸植物で江戸時代にはすでに栽培されていました。昭和時代になると、本格的に品種改良が進み、このミヤコワスレからも園芸品種が誕生しました。
代表的な園芸品種には花色が濃い紫色の「江戸紫(えどむらさき)」、白い花を咲かす「瀬戸の白雪(せとのしらゆき)」、ピンク色の花を咲かす「桃山(ももやま)」など。そのほかの品種も情緒ある品種名が多いのも特徴的です。
ミヤコワスレの花言葉
「しばしの慰め」「しばしの憩い」
ミヤコワスレの代表的な花言葉は「しばしの慰め」「しばしの憩い」という言葉です。この花言葉の由来は、ミヤコワスレの花名の由来でもある鎌倉時代の天皇、順徳天皇の逸話にちなむものです。
順徳天皇に逸話とは
ミヤコワスレの花名や花言葉に由来する順徳天皇の逸話とはこんな話です。承久の乱で幕府軍に敗れ佐渡島に流されて、亡くなるまでの間失意のうちに過ごした順徳天皇。都での優雅な暮らしとはほぼ遠い島の生活が続いたある日、庭の片隅で楚々と咲くこの花に目がとまり、その花姿に心を慰められて、つかの間でも都を忘れることができたという話です。
この話はミヤコワスレ=都忘れという花名が付いた由来であり、またミヤコワスレの花言葉「しばしの慰め」「しばしの憩い」の由来でもあります。
「穏やかさ」「優しい心」
ミヤコワスレは「穏やかさ」「優しい心」という花言葉も付いています。この花言葉の由来はミヤコワスレの見た目の印象から付けられて言葉だそうです。
ミヤコワスレの花は決して派手な花姿ではありません。自己主張せず、しかし楚々とした上品な様子の花姿から「穏やかさ」「優しい心」という言葉がイメージされたのでしょう。
花色からイメージされたという説
「優しい心」というミヤコワスレの花言葉は、1説には紫、青、紅色、白、ピンクなど色彩が豊富な花だけれども、どの色もあでやかな感じではなく、淡い色が多いことで、「優しい心」という花言葉でイメージされているという説があります。
優しい印象の花は、見る人の心を穏やかにするので、「穏やかさ」という花言葉にも由来していると花色の説に続いて語られています。ひっそりとした美しさのあるミヤコワスレは「隠れた美しさ」という花言葉で語られる時もあります。
「強い意志」
あまり知られていませんが、ミヤコワスレは「強い意志」というは花言葉でもイメージされています。庭に咲いていた可憐な花を目にとどめて、「今日からはこの花を見つめて都のことは忘れよう」と誓った順徳天皇の意思からイメージされた言葉だと言われます。
ミヤコワスレの怖いと思われている花言葉
花言葉には「怖い」と思う言葉もある
ギリシャ神話や各地に伝わる伝説や風習や宗教や歴史、またその花の見た目に印象や植物学上の特徴にちなんで、花そのもののイメージをなぞり決められてきた花言葉は、前向きの言葉ばかりでイメージされているわけではありません。
伝説の中で語られる話が悲惨で悲しいものであるなら、ちょっとネガティブな花言葉や悲しい花言葉でイメージされている花もあれば、たとえば有毒の花にはちょっと怖い花言葉が付いていることもあります。
「別れ」「無念」
ミヤコワスレにも怖いというか、ちょっと切ない花言葉があります。その花言葉は「別れ」「無念」という言葉です。これらの花言葉も順徳天皇が承久の乱で佐渡に流された話にちなんだ言葉です。
都に戻ることなく、佐渡で亡くなったことから「別れ」「無念」という言葉でイメージされていると言われます。ミヤコワスレの花束を贈るときは、こんな花言葉が付いていることにちょっと気を付け、これまで解説してきたミヤコワスレに付けられている前向きな花言葉をメッセージに書き添えて贈るとよいでしょう。
ミヤコワスレの楽しみ方
花壇や鉢植えで楽しむ
多年草のミヤコワスレは花壇や鉢植えにすると、翌年もまた楽しめます。ガーデニング初心者でも育てやす丈夫な草花。種から育てる場合は9月下旬~10月上旬が種まきに時期です。苗を購入した場合は植え付け時期は3月が適期で、その頃になると園芸店にたくさん苗が出回ります。
植え付ける場所は夏場は半日陰になるような場所を選んで植えましょう。花壇に植えたものは3~4年を目安に、また鉢植えのものは毎年花後か秋に株分けして植え替えします。
切り花として楽しむ
草丈30cmほどあるミヤコワスレは、切り花としても楽しめます。ミヤコワスレの上品で清楚な雰囲気は、和室によく似あい、茶花としても好まれます。控えな花ですが、ミヤコワスレだけを活けても見栄えのする花。切り花にした時の花もちは5日~7日くらいです。
長く花を楽しむためには、器の水は少なめにして、水に浸かる部分の葉は取り除いてしまいましょう。水は毎日変えて水の中での細菌の繁殖を防ぎます。また市販の栄養剤を水に入れてあげるのも、花を長く楽しむコツです。
花言葉を知ってミヤコワスレを楽しもう!
日本的な清楚な花姿のミヤコワスレの花言葉は、鎌倉時代に倒幕を企てた承久の乱で幕府軍に敗れ、佐渡島に流された順徳天皇のエピソードにちなんだ言葉でイメージされています。天皇の心を慰めたミヤコワスレ。慌ただしく日々の時間を過ごす私たちもミヤコワスレの花姿に癒され、「しばしの憩い」の時間を楽しみたいものですね。
花言葉についてもっと知りたい方はこちらもチェック!
当サイト「暮らしーの」では花言葉について他にもまとめています。伝えきれない想いを花言葉に託してプレゼントに花を贈るときは、言葉に出して伝えるよりも、おしゃれな贈り物になるかもしれません。月曜日は特に連載で季節の花を追いながら、その花の花言葉や誕生説、またその花にまつわる伝説などを解説しています。花言葉を知ると、花選びももっと楽しくなります。花言葉についてもっと知りたい方はこちらもチェックしてみてください。

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