エゾギグとは
キク科カリステフス属の園芸植物「エゾギク」は英語の別名をアスターといい、原産地は中国です。園芸上では通常、アスターの名で親しまれています。半耐寒性の一年草で、草丈は60cm~160cmほどの植物です。歴史的には仏花として扱われることの多い花でしたが、現代では切り花や鉢植えとして人気があります。
名前の由来
和名「エゾギク」とは
エゾギクは和名で「蝦夷菊」と書き、別名「江戸菊」「薩摩菊(サツマギク)」とも呼ばれます。菊花に似ていることが「菊」の由来です。江戸時代に日本に渡来した歴史が別名「江戸菊」の由来で、「薩摩菊」という別名は、九州地方で多く栽培されていた歴史に由来します。エゾギクの和名は、蝦夷(アイヌや北海道の古称)地方でよく育つことに由来するいう説も有力です。
英語名「アスター」とは
エゾギクは英語の別名を“China aster”、または“Aster”といいます。“Aster”(アスター)とは、ギリシア語・ラテン語で星という意味の言葉です。この名前は、花の形が星を想わせることに由来します。エゾギクの英語の花言葉は“variety”(多様性)、“fidelity”(忠実)、“I will think of you”(私はあなたを想うでしょう)です。
原産地
エゾギクの原産地は、中国北部です。日本へは江戸時代中ごろに渡来しました。原産地である中国北部から朝鮮半島北部にかけて自生していることが、「チャイナアスター」や「朝鮮菊」という別名の由来です。日本では、原産地中国北部のような冷涼な乾燥地帯の方が元気に育ちます。
エゾギク伝来の歴史
エゾギクの種が原産地である中国から初めてフランス・パリに送られたのは、1731年のことです。フランスでは栽培品種の改良や、育て方の研究が進められました。その後、ドイツを経てアメリカに渡り、多くの栽培品種が作出されます。日本にエゾギクがもたらされるのはさらにその後、江戸時代後期です。
原産地中国でのエゾギク
エゾギクの原産地中国では、古来から菊の花は崇高な花として愛されています。キク科の植物であるエゾギクは、花の形が菊に似ていることから、原産地中国でも人気のある花です。日本では、エゾギクは仏花として使われることもありますが、中国では友人に贈ったり、家の中に飾ったりして親しまれています。
エゾギクの特徴
花の特徴
エゾギクの花は、直径3cmくらいの種類から直径10cmを超える種類まであります。咲き方の特徴としては、一重咲き、八重咲き、ぽんぽん咲きと種類が豊富です。管弁の種類も見ごたえがあります。管弁とは、管状の花弁が放射状に広がった、傘のような花の形のことです。
ぽんぽん咲きとは
エゾギクの花の咲き方の一つ、「ぽんぽん咲き」とは、花びらが集まって丸い形になる咲き方です。この呼び方は、毛糸のぽんぽん(丸い玉)に似ていることに由来します。ぽんぽん咲きのエゾギクの種類については、「エゾギクの種類」の章でもご紹介していますのでご参考にしてください。
葉の特徴
エゾギクの葉は細長いだ円形で、互生(ごせい:互い違いに生えること)する単葉です。葉の縁に微細なギザギザ(鋸歯)が見られます。葉と茎に、産毛のような白い毛が生えているのが特徴です。80~160cmほどになる茎は直立、あるいはややカーブして伸び、上部でよく分枝します。葉の特徴は披針形です。
披針形とは
披針形(ひしんけい)とは、植物の葉の形を表す言葉で、茎に近いところは広く、葉先がとがり細長い形のことです。
株の特徴
エゾギクは、江戸時代に原産地中国から日本に伝来しました。以来、園芸植物として品種改良を重ね、花色豊富で育て方も簡単になり、欧米でも高く評価されています。切り花や鉢植えとして人気のある花です。暖地では病気が出やすいですが、原産地の中国北部に似た寒冷地ではよく育ちます。連作障害を起こしやすいのが特徴です。
連作障害とは
連作障害とは、同じ土地で同じ植物を連続して栽培することで起きる、生育障害のことです。5年以上エゾギクを栽培していない土に植えることが、エゾギクの育て方のポイントになります。
エゾギクの開花時期と育て方
開花時期
エゾギクの開花時期は6月~8月です。箱根アスター(小花が無数に開花する品種で、別名「孔雀アスター」)は、8月~11月と長く開花します。日本で仏花として使われることが多いのは、ちょうどお盆の時期に開花するためです。鉢植えで花を豪華に咲かせたい場合は、春に油かすを追肥しましょう。
育て方
育て方のポイントをご紹介します。年間を通して日当たりを確保するのがポイントです。鉢植えを、夏に日陰に移動する必要はありません。水やりは、鉢植えのエゾギクには表土が乾いたらたっぷりと与えます。庭植えエゾギクにはほぼ不要です。枯れた葉や病気に感染した茎や葉は、取り除き処分します。背が高くなる品種は、あんどん支柱で育てましょう。
種まきでの育て方
エゾギクの種まき時期は、秋まきは9~10月、春まきは3~4月です(種子の発芽適温は15℃前後)。秋まきは開花時期も早くなりますが、冬越しが難しいため初心者の方には春まきをおすすめします。種をまいたら軽く土をかぶせ、適温下で管理すれば発芽まで10日前後です。発芽までの期間は、水を切らさないよう管理します。
エゾギクの種類
花色の種類
エゾギクの花色には、白・ピンク・赤・青・紫などがあります。一重咲きの種類は中心の黄色とのコントラストが美しいのが特徴です。園芸店のエゾギクの苗は、「孔雀アスター」(小花が無数に咲く様子が孔雀の羽根に見えることに由来する名前)や、華やかな色合いが特徴の宿根アスターなどで、白・ピンク・青・紫色の花が咲きます。
一重咲きの種類
ネネ
一重咲きのエゾギク「ネネ」は花径2~3cmの小輪品種です。茎が固く花付きにボリュームがあるため、フラワーアレンジメントなどに人気があります。混合カラーミックスは色鮮やかでおすすめです。花もちがよいため、夏の切り花や仏花としても重宝されます。
孔雀アスター
野の花のような風情が人気の一重咲き品種です。花色も豊富で、紫、赤、ピンク、白、藤色などがあります。洋風・和風どちらの庭にも合うのが魅力です。秋の花壇では、秋咲きのバラとの組み合わせをおすすめします。
八重咲きの種類
ビクトリア
「ビクトリア」は完全八重咲きのエゾギクです。人気の大輪品種で、お盆を過ぎた時期から園芸店に出回り始めます。株がコンパクトにまとまるのが特徴で、花色は紫、ピンク、白などです。暑さ、寒さのどちらにも強く花もちがよいため、秋の寄せ植えにおすすめです。
ふじみシリーズ
ふじみシリーズは、花径約5cmの八重咲き品種で、花弁が長く花にボリュームがあるのが特徴です。花色は濃いピンク、赤、紫などがあります。お供え花として利用されることの多いシリーズです。草丈70cm以上になり、花にボリュームがあるため切り花に向いています。
半八重のエゾギク
「サカタのタネ」が作出している「マイクロアスター・ステラシリーズ」は半八重の品種で、花径は約3cmと小輪です。草丈は約70~80cmで分枝が多く、切り花や鉢植え、地植えに適しています。病気にも強く、育て方の簡単なエゾギクです。
ぽんぽん咲きの種類
ポンポンチェリー
ぽんぽん咲きの「ポンポンチェリー」は、咲き方が名前になっているので分かりやすい品種です。薄いピンクのぽんぽん咲きが可愛らしく、切り花アレンジに人気があります。4月中旬にタネをまいておくと、お盆の頃に花を咲かせます。
あずみシリーズ
「あずみシリーズ」は、これまでにない淡いピンクの花色を持つ、人気のシリーズです。耐病性があり育て方も簡単で、ボリュームが出るため切り花にも向いています。お盆・お彼岸頃に出回るため、仏花としても人気です。花径は約5cmで見ごたえがあります。
珍しい混色の種類
アスター・シャインストライプ
アスター・シャインストライプ
「アスター・シャインストライプ」はやや早咲きの品種で、花は赤紫やピンクに白がストライプ状に混じります。洋風の外観が、切り花アレンジやフラワーリース作りに人気です。草丈は50cm程度とやや低めなので、花壇の前方や中央に植えると良いでしょう。
アスター・ムーンシャイン
アスター・ムーンシャイン
「アスター・ムーンシャイン」は花弁の先端が白くなる珍しいエゾギクで、ポンポン咲きです。濃いピンクや青紫があります。花径は3~4cmと小輪です。花壇・鉢植え・切り花に向く品種で、草丈は60cmほどになります。お盆のころに咲かせたい場合は、種の春まきがおすすめです。
エゾギクの花言葉
エゾギク全般の花言葉
エゾギク全般の花言葉は、「変化」「追憶」「同感」「信じる恋」です。暑い夏の時期に色鮮やかに開花するエゾギクの花が、楽しい夏の思い出の背景になると素敵ですね。
花色別の花言葉
白
白いエゾギクの花言葉は、「私を信じてください」です。清廉潔白という言葉に白が用いられているように、後ろ暗いことのない清らかな心の持ち主を連想させます。エゾギクの、にごりのない白い花色に由来する花言葉です。白いエゾギクは人気の品種で、一重咲き・八重咲き・ぽんぽん咲きの種類があります。
ピンク
ピンクのエゾギクの花言葉は、「甘い夢」です。別名が「アスター」(星に由来する名前)であり、「甘い夢」という花言葉を持つピンクのエゾギクは、ロマンチックな女性に贈るのにふさわしい花といえます。鉢植えや夏の寄せ植えなどに、ピンクのエゾギクは人気の品種です。
赤
赤いエゾギクの花言葉は、「変化を好む」です。エゾギクの赤い品種は深みがあり、フラワーアレンジメントやフラワーリースの花材としても人気があります。インテリアに変化が欲しいときに、赤いエゾギクを取り入れてみてはいかがでしょうか。
紫
紫のエゾギクの花言葉は、「恋の勝利」「私の愛はあなたの愛よりも深い」「信じる恋」です。別名が「アスター」(星に由来する名前)であり、恋に由来する花言葉を持つ紫のエゾギクは、恋する女性に贈るのにふさわしい花といえます。紫のエゾギクは、ガーデニングでも人気の高い品種です。
青
青いエゾギクの花言葉は、「信頼」「信じているけど心配」です。別名が「アスター」(星に由来する名前)であり、恋の信頼と不安をにおわせる花言葉を持つ青のエゾギクは、愛する女性に贈るのにふさわしい花といえます。涼感をもたらす青いエゾギクは、暑い時期のガーデニングに人気の品種です。
いつの誕生花?
エゾギク(アスター)は4月3日、4月10日、4月22日、8月29日、11月28日の誕生花です。開花時期が7月~8月頃ですので、8月29日は花の時期と重なります。
まとめ
キク科の園芸植物である「エゾギク」は和名で、原産地は中国です。花色は紫、青、白、ピンクなどがあり、花色によって異なる花言葉を持ちます。別名は、英語でアスター、和名で江戸菊、薩摩菊です。エゾギクの別名の由来や、人気の栽培品種、花色や咲き方の種類、開花時期などの特徴や育て方のポイントまで、詳しく解説しています。
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