引き解け結びについて徹底解説
アウトドアブームの流行に伴い、ロープワークを勉強したいという方が増えています。もやい結びと巻き結びが代表的なロープワークですが、引き解け結びという便利な結び方があることをご存知でしょうか。
その名の通り引けばほどける結び方ですが、ロープワークの基本を押さえるなら引き解け結びがおすすめです。結び方が簡単な上、身近なところでも用途があるため覚えておけば非常に便利ですよ。
引き解け結びを習得するメリット
引き解け結びはさまざまな用途がある簡単な結び方なので、キャンプなどのアウトドアに留まらず、さまざまな用途で使われています。また、専用器具を用意しなくてもロープワークでさまざまな事態に対応できるのもおすすめポイントの1つです。
その上、二本、三本と複数のロープや紐を用意すれば、さらに選択肢が増えることも特徴の1つ。引き解け結びはさまざまなことに使えるため、ぜひ覚えておいてください。
引き解け結びとは?その用途について
ロープの結び方の中で一番知名度があるのは引き解け結びよりも、もやい結びでしょう。もやい結びは、ほどけにくくてほどきやすい代表的なロープワークです。しかし、日常でもやい結びを使用したことがある人は少ないのではないでしょうか。
一方、引き解け結びは便利であることはもちろん強度が高く、簡単な手順で結べるので、キャンプなどのアウトドアの経験がない人でも実は引き解け結びを知っているはずです。ここからはそんな引き解け結びの用途について解説します。
引き解け結びとは?
引き解け結びとはその名の通り片方を引けばほどけますが、もう一方を引いても解けない便利な結び方で、英語ではスリップノットともいいます。日本ではスリップノットは引き解け結びの種類の一つとして扱われることが多いです。
結び方も1つではなく、非常に多くの結び方が存在します。そのすべてを把握する必要はありませんが、日常生活で使える便利な結び方などを把握しておけば、便利に使えますよ。
どのようなときに使うのか
具体的にどのようなところで引き解け結びが活用できるのか紹介します。いざ用途を知ると無意識のうちに使用していることもありますよ。引き解け結びを覚えて、日常生活でも使ってみましょう。
ポリ袋をコンパクトにする
ポリ袋をそのまま保管しておくと、再利用する際に数枚同時に取れてしまったり、収納できなくなったりしたことはありませんか。そんなときはポリ袋一つ一つを引き解け結びで結んで、収納しておきましょう。
この収納法ならコンパクトになりますし、必要な時に必要な枚数のポリ袋を取り出すことができますよ。
新聞紙を束ねる際
新聞紙を束ねる際も引き解け結びが便利です。一度結んだらほどけない、固結びでも結べるには結べますが、結んだ後でまた新聞紙が出てきたという経験がある方もいるでしょう。
そんなときに引き解け結びなら結び目をほどかずとも輪っかを緩めることができるため、追加で束ねることができるのです。また、やむを得ず結び目をほどかなければならない際も引き解け結びならほどけやすいですよ。
靴ひもを結ぶ際
普段何気なく結んでいる靴ひも。二本の紐を結ぶちょうちょ結びと呼ばれる結び方は引き解け結びと同じ種類です。その証拠に靴ひもを解く際は、末端を引っ張って解きますよね。
しかし常に靴を履いているときは常に動いていることが多いため、ほどけやすいというデメリットがあります。
ネックレスの長さ調整
意外に思う方もいるかもしれませんが、実はネックレスの長さ調整の際にも引き解け結びが使えます。もちろん例外的な調節方法ではあるため、結び目が髪の毛などで隠せる方しか活用できません。
また、細いネックレスの場合は引いてもほどけなくなってしまうことがあるため、注意が必要です。
ロープワークの準備と2種類の結び方
引き解け結びにはさまざまな結び方があります。アウトドア向けの解説動画がネットにたくさん出ているため、もっと具体的に知りたいという方は動画をチェックしてみてはいかがでしょうか。
今回は用途が豊富な片方に輪を作るものと、物に巻き付けて作成する方法の2種類の結び方の手順を解説します。分かりにくい方は実際にロープや紐を持って読みながら結んでみると分かりやすいでしょう。
引き解け結びを行う環境を整える
環境を整えるとは、用途に応じた資機材や、周りの環境が適しているか確認することです。資機材の確認や周囲の状況を加味して、適切な強度のロープで適切な場所で結びます。
意外に手を抜いてしまう作業なので、初心者のうちに癖をつけておいてください。これらを確認しないということは、自身や周囲に危険が及ぶことにもつながるので、確実に実施しましょう。
ロープのチェック
まず、大事なことがロープを結ぶにあたってロープのチェックです。傷がついていないか、ロープに摩耗がないかを確認します。この作業を怠るとロープが切れてしまう原因になり、事故や手間が増えることにもつながります。
基本にして重要な作業なので必ず行ってください。ロープワークとは、きちんとしたロープを使用することを前提としているものなのです。
周囲がロープワークに適しているか
例えば、周りに折れた木の枝や石など鋭利なものはないか確認してください。もし、そのような場所で作業しなければならないのなら、ロープとそれらの間に必ず布をいれるなどロープが傷つかないための対策をとりましょう。
一人で確認するのではなく複数人で周囲を確認し、ダブルチェック、トリプルチェックを行うことが望ましいです。複数人で確認することによりミスが減り、安全性が増します。
物に巻き付ける引き解け結びの結び方
いよいよ引き解け結びを結んでいきます。手順について項目を分けて解説しますが、この解説で出てくるロープの端末の長さは目安です。ロープの直径によって適宜引き解け結びを結びやすい長さに変更してください。
今回は一般的な直径11mmから12mmのロープを想定して解説します。ちなみに、これは東京消防庁のレスキュー隊が携行する小綱の直径と同じです。
ロープをどこに結ぶか決める
引き解け結びは横向きだったり縦向きだったりするとややこしくなりますので、最初は横向きの対象物に結んだ方がわかりやすいと思います。例えばテントのポールであれば地面に寝かせた状態です。
また、結ぶ対象物を決める時のポイントとしては強度が大事で、特に重量物をかけたりするときは体重をかけて確認してください。場合によっては重大な事故につながるので必ず確認しましょう。
ロープを折り返してアイを作る
最初にロープを手にもって適宜の位置でロープを折り返します。この時の注意点ですが、折り返した方の端末が短すぎると結び辛いため、ロープの片端末は最低でも30cm程残してください。もう片方はいくら長くても問題ありません。
イメージとしましてはU字になるように折り返します。この時、片方が長いJ字型になりますが、この折り返した部分や、輪っかになった部分はロープワークでアイと呼ばれる部分です。長い端末はテンションをかける方、短い端末はほどける方となります。
アイを対象物にかける
次にアイを対象物に対して上からでも下からでもいいのでかけて、手前に出てくるように回します。上からかければその下からアイが出てくるようにするのです。下からならその逆となります。この時、気を付けるのが両方の端末は自分の側に残しておくことです。
つまり、両端末はのこしたままアイだけを対象物に回します。また、短い方の端末が足りないと感じたら再度調節して、対象物にかけている状態で30cmくらいになるようにしてください。
長い方をアイに入れ引き締める
アイも端末も手前にある状態からまず長い方のロープを折り返して新たなアイを作り、最初のアイに入れます。入れたら、短い方を締めていきましょう。そうすることにより回していたアイが締められ、折り返したところが新しいアイになります。
折り返す位置は短い方の端末を締めた時、こぶし一個分くらいのアイができる位置で折り返すのがいいでしょう。こぶし一個分というのはあくまで目安です。余裕があればさらに大きくしても構いませんが、小さいと結びにくいため注意しましょう。
短い方の端末をアイに入れ引き締める
短い方の端末を折り返してアイに入れて長い方の端末を引き絞れば引き解け結びの完成です。前記で短い方の端末を30cmほど残すようにと説明しましたが、最後のアイに通して引き絞るとき、短すぎると端末を折り返してアイに入れることができません。
そのため、目安として引き解け結びの場合は30cmとさせていただきました。端末の先端をアイから抜くと引き解け結びではなくなり、ほどけにくい固結びのような状態になってしまうので気を付けてください。
ロープの端末に引き解け結びでアイを作る方法
ここからはロープの端末に輪っかができる引き解け結びを紹介します。この結び方は輪っかの大きさを自在に変更させられるため、アウトドアでは薪などを束ねる際、日常生活では新聞紙を束ねる際などに便利ですよ。
末端を折り返してアイを作る
まず、ロープの端末側を右手、元の方を左手で持ちます。左利きの方は反対です。末端を基線と交差するように折り返します。折り返したら輪っかであるアイができるはずです。注意点として交差する際には基線の奥に交差しましょう。
最終的にこのアイのサイズは調節できるようになるため、大きさは気にする必要はありません。
末端を手前側に折り返して最初のアイに入れる
ロープの末端をここから手前に持ってきます。末端を基線に一度巻き付けるイメージです。手前側に折り返したら、最初に作ったアイの中に末端を入れましょう。末端をアイに入れる際、基線に巻き付けた方を緩めると新しいアイができます。
無限のマークの上に山のような結び目ができている状態なら成功です。
2つ目のアイの中に末端を入れて引き締める
末端を2つ目のアイの中に入れて、そのまま引き締めれば、引き解け結びの完成です。ロープに輪っかができている、投げ縄のような形になっています。この輪っかのサイズは自在に調節することができますよ。
また、最後に末端を2つ目のアイに通す際、末端だけでアイを作り、そのアイごと通せば、よりほどきやすい引き解け結びとなるので、ぜひ試してみてください。
引き解け結びを結んだ後の管理
ロープは結んだら終わりではありません。まず、結び終わったら結び目を確認しましょう。きちんと引き締められているか、結び方は正しいか、ロープがねじれていないか目で見て手で触ってしっかりと確認してください。
緩んでいれば締め直し、間違っていたりねじれていたりすれば結び直してください。これくらい大丈夫だろうというのは事故のもとで、とても危険な考えなので気を付けましょう。ここでは結び目の確認の仕方について解説します。
ロープに荷重する
引き解け結びを確認する際には荷重が特に重要です。テンションがかかる方である長い方のロープを全力で引っ張り、結びがほどけないか確認してください。また体重をかけてみるのも効率的な確認方法ですよ。
引き解け結びでよくあるのが、引けばほどける端末とテンションがかかる方の端末が逆になっていることです。慣れた結びでもたまに間違えてしまうことは誰にでもありえます。結んだ後はしっかりと結べているのかの確認も忘れずに行いましょう。
定期的に結びを確認する
引き解け結びは片方を引けば簡単にほどけるため、その分緩んでくる可能性が高いです。そのため、定期的に結び目が緩んでいない確認することをおすすめします。ただ、引き解け結びは、テンションがかかっていれば緩みづらいのですが油断してはいけません。
確認の頻度ですが風が強い日のキャンプなどほどける可能性高い時ほど頻繁に行うようにしましょう。また、ロープワークが命にかかわる登山などは確認の頻度が多いに越したことはありません。
引き解け結びのメリットとデメリット
結び方の手順について解説しましたが、ロープワークには様々な種類、用途、手順があります。ロープを二本使うものもあれば、強度や摩擦の強弱などまさに千差万別です。
さまざまな種類の結び方がある理由はそれぞれにメリットとデメリットがあるからです。そのため、引き解け結びをはじめ、結びの特徴を理解し、正しい手順を経て実施しなければなりません。ここでは引き解け結びのメリットデとメリットを紹介します。
引き解け結びのメリット
引き解け結びのメリットは強度がありつつ、強い力が加わって結び目が締めこまれても簡単にほどけることです。このメリットはとても大事で、例えば巻き結びとも呼ばれるクラブヒッチは強いテンションがかかると解けませんのでロープを切るしかありません。
テンションがかかってどれだけ結び目が締めこまれても、簡単にほどくことができる、ということが引き解け結びのメリットなのです。しかし、引き解け結びのメリットはデメリットの裏返しでもあります。
引き解け結びのデメリット
引き解け結びの最大のデメリットは結びを間違えやすいことです。簡単な結びなのですが、上記の結び方を誤り、うっかり反対にしてしまう人がたまにいます。また、引き解け結びは比較的ほどけやすい結びなので定期的に点検してください。
いつもはできているからと油断せずにしっかりと確認しましょう。複数人いる場合はどちらを引けば結びがほどけるのか情報共有が大事です。
引き解け結びは簡単に結べて非常に便利
代表的なロープワークはやはりもやい結び、という方は多いでしょう。しかし、実用性だけでいうと引き解け結びの方が圧倒的に用途は多いです。ポリ袋を結ぶ際など日常で使える場面も多く、強度も強いため、非常に便利に使えます。
また、他の結び方との相性もいいため、お互いのデメリットを補完させることで最強の結び方も作れるでしょう。そういった意味でこの引き解け結びは最も優れた結び方の一つといえます。ロープワーク初心者の方はぜひ引き解け結びを覚えておいてください。
引き解け結び以外のロープワークに興味がある方はこちらもチェック
今回は引き解け結びをメインに結び方や用途などを解説しましたが、ロープワークの中には他にも便利な結び方があります。そんなロープワークに興味がある方はこちらの記事も参考にしてみてください。
アウトドアはもちろん、日常生活でも便利に使える結び方の情報が具体的に掲載されていますよ。
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