北アルプスの名峰「西穂高岳」
北アルプス穂高連峰で北穂高、前穂高、奥穂高岳と連なる山域の西の端にあるピークであることから西穂高岳と名付けられました。上高地からは鋸歯状の印象的な稜線が眺められます。西穂高岳は穂高連峰のなかでは3,000mに届かない山稜です。
これまで西穂高岳への登山は、取り付きから稜線に登るまでに難しく、大変苦労した山でした。しかし近来は岐阜県側から新穂高ロープウェイが建設されたことにより状況は一変。標高2,156mの西穂高口まで登ることができ、稜線取り付きの西穂山荘まで楽に辿ることができる様になりました。
西穂高岳の自然
西穂高岳は田中澄江氏著作の「花の百名山」に選ばれている多種の高山植物が生育しています。標高約2,300m付近が森林限界で、その上方は岩場にハイマツ帯が広がり、ライチョウやホシガラスなども生息しています。
代表的な植物に5弁の花弁の先が鋸歯状になっている白い可愛い花を咲かせる「千手岩菲(センジュガンビ)」があり、コバイケイソウ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイなどの他、多種類の高山植物が夏の季節の山稜を彩ります。
西穂高岳登山ルート【難易度別】3選
西穂高岳登山のモデルルートは、飛騨側の新穂高ロープウェイを利用して、西穂高岳山荘を経て西穂高岳へ登頂し戻るコース。上高地から中尾根を直登し、西穂高岳山荘を経て西穂高岳を目指す二つのコースが一般的です。
上高地から岳沢、前穂高岳、奥穂高岳を辿る縦走ルートと、新穂高温泉から右俣林道を進み、奥穂登山口から奥穂高岳、西穂高岳へと進むルートがありますが、どちらも難易度レベルが高く、危険が多い難コースです。ここでは前述二つの登山ルートをご紹介します。
モデルルート/新穂高温泉口~西穂高岳【難易度:中】
岐阜県奥飛騨温泉郷にある新穂高温泉の新穂高ロープウェイで、標高2,156mの西穂高口駅から西穂山荘に進み、西穂独標、ピラミッドピークを経て西穂高岳山頂に登頂する登山コースとなります。西穂高岳独標までの往復でしたら日帰り可能です。
新穂高温泉駅からの第一ロープウェイから、しらかば平駅で第二ロープウェイに乗り換えて西穂高口駅まで登ります。登山届出所で登山届を提出してスタート。樹林帯の登山道を進んで西穂高山荘に到着し宿泊します。
西穂山荘から丸山
新穂高ロープウェイ西穂高口の下り終発16時45分に間に合う様に戻るために西穂山荘を早朝に出発。岩が多く少し歩きづらいのですが、きれいなグリーンが広がるハイマツ帯の登山道を歩きます。
大きな岩を乗越して更に進むと丸山のピークに到着して一休み。稜線の先に西穂の独標が見えます。丸山から西穂高岳に続く登山道が一筋見えているハイマツ帯の緩やかな登山道を登って行きます。
西穂高岳独標からピラミッドピーク
西穂高岳独標には岩場の急斜面を登ります、落石予防にヘルメットを着用しましょう。クサリの設置してある岩場を慎重に登って独標に到達。ここから8峰のピラミッドピークを始め連続する大小11のピークを進みます。
西穂高岳独標から、初心者にはきつい岩場の急斜面を幾つもアップダウンを繰り返す難路ですので、滑落しない様慎重に基本の3点確保を守りながら進みます。岩に着いた指示マークを見落とさない様にしましょう。
西穂高岳登頂
鋸の歯の様なピークを登り返しながら8峰のピラミッドピーク、4峰のチャンピオンピークと、浮き石などに注意しながら進みます。西穂高岳直下は急斜面となっていますから慎重に登り、ようやく西穂高岳山頂に登頂。
標高2,909mの山頂からは360度の大絶景を満喫。上高地や梓川もはるか眼下に望めます。独標から山頂までは危険個所が多く、難易度が上級者レベルです。途中、恐怖感を覚えたら迷わず引き返しましょう。帰路も往路を慎重に戻って下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR高山駅よりバス利用約1時間30分 車:中部縦貫道高山ICより約70分(駐車場:新穂高温泉及びしらかば平) |
登山ピーク時期 | 7月~8月 高山植物見頃時期:7月下旬~8月上旬 |
山行 | 1泊2日 難易度:☆☆★★★ 体力度:☆☆★★★ |
アクセス情報 | 距離:7.5km 累積標高差:上り・下り1,018m 地図上標準コースタイム:約9時間30分 |
コースタイム(1日目) | 【約2時間】 新穂高温泉駅よりロープウェイ(約25分)⇒西穂高口駅スタート⇒(90分)西穂山荘(泊) |
コースタイム(2日目) | 【約7時間30分】 西穂山荘⇒(80分)西穂独標⇒(120分)西穂高岳山頂⇒(90分)西穂独標⇒(50分)西穂山荘⇒(80分) 西穂高口駅⇒(25分)新穂高温泉駅ゴール |
新穂高ロープウェイ
- 住所岐阜県高山市奥飛騨温泉郷新穂高温泉
- 電話番号0578-89-2252
モデルルート/上高地~西穂高岳【難易度:中】
夏季期間は多くの観光客が訪れる、上高地の西穂登山口から中尾根沿いに登山道を進み、西穂山荘に1泊して西穂独標から西穂高岳山頂に登頂する往復ルートです。健脚者ならば日帰りは可能ですが、少々体力を要するコースとなります。
登山届を提出し、地図・コンパス他の装備をチェックして、上高地バスターミナルを出発します。梓川沿いに少し歩き、左に上高地帝国ホテルを見ながら田代橋を渡ると、焼岳方面との分岐となる西穂登山口になります。
西穂登山口から西穂山荘
西穂高岳登山口の看板が掛けられた木造の立派な門をくぐり登山開始。健脚者であれば日帰りは可能でしょうが、標準コースタイムは12時間とされていますので、西穂山荘に宿泊予定とします。
熊の出没があるということですから“熊鈴”をザックに付けて、静寂な雰囲気の熊笹と樹林の中を進みます。西穂山荘までは900mほどの標高差のある直登となりますが、時折緩やかな登山路にも出会いますので一息つけながら登れます。
宝水から西穂山荘
中尾根登山道をひたすら登り、”宝水”と標識のある水場に到着。休憩しながら水の補給をしておきます。良く整備された静かな登山路ですので、急登もありますが快適に進んで、ようやく焼岳方面との分岐点に到着。
登山口からここまで、しっかりした標識が設置されていますので、迷うことなく安心して歩けます。15分ほどで大きな佇まいの西穂山荘に到着。ゆっくり宿泊して翌日の難路となる独標から各ピーク越えと西穂高岳登頂に備えます。
西穂山荘から西穂高岳
翌早朝に西穂山荘を出発し、西穂独標、ピラミッドピークなど11峰のピークを経て西穂高岳に登頂。頂上からの大展望を楽しんだら往路を戻って下山します。下山は上りよりも岩場での滑落など危険度が増しますから、十分に注意することが大切です。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR松本駅→上高地線(約30分)新島々→バス利用 (約65分)上高地 車:長野自動車道松本IC→(約45分)沢渡駐車場 →(約30分)上高地 |
登山ピーク時期 | 7月~8月 高山植物見頃時期:7月下旬~8月上旬 |
山行 | 1泊2日 難易度:☆☆★★★ 体力度:☆★★★★ |
アクセス情報 | 距離:約12.5km 累積標高差:上り・下り1,633m 地図上標準コースタイム:約12時間25分 |
コースタイム(1日目) | 【約4時間10分】 上高地バスターミナルスタート⇒(20分)西穂登山口⇒(210分)上高地・焼岳分岐⇒(15分)西穂山荘(泊) |
コースタイム(2日目) | 【約8時間15分】 西穂山荘⇒(80分)西穂独標⇒(120分)西穂高岳山頂 ⇒(90分)西穂独標⇒(50分)西穂山荘⇒(15分)上高地・焼岳分岐⇒(120分)西穂登山口⇒(20分)上高地バスターミナルゴール |
西穂山荘事務所
- 住所〒390-0811
長野県松本市中央1-11-25 - 電話番号0263-36-7052
- 公式サイトURLhttp://www.nishiho.com/tozan.htm
モデルルート/西穂高岳~焼岳【難易度:中】
新穂高ロープウェイを利用して、西穂独標、ピラミッドピークなど大小11のピークを進んで西穂高岳に登頂。西穂山荘に戻って宿泊し、乗鞍火山帯のなかで唯一の活火山であり噴煙を上げる焼岳に向かい、上高地に下山する縦走コースです。
新穂高ロープウェイ西穂高口駅をスタート、登山届を提出し、装備・服装を再チェックして出発します。樹林帯の登山道を進み、途中西穂平への道に迷い込まない様にしましょう。西穂山荘に近くなると急な斜面を登ります。
西穂山荘から焼岳縦走路
西穂山荘からハイマツ帯の登山路を進んで丸山、西穂独標からピラミッドピークなどを経て西穂高岳に登頂。危険度の高い奥穂高岳方向には進まず、落石や滑落に注意して西穂山荘に戻って宿泊します。降り注ぐ様な満天の星空に感動するでしょう。
翌早朝に上高地・焼岳分岐を標識通りに焼岳方向に向かい、分岐からしばらく進むと鞍部の”きぬがさの池”に到着。シラビソなどの樹林帯の登山道をアップダウンを繰り返しながら進みます。
焼岳北峰に登頂
展望のきかない登山路をひたすら歩きます。割谷山を過ぎると、ロープが設置されているトラバース道となり、ぬかるみや藪漕ぎをする道など、歩きにくい登山路となりますが、ようやく新中尾峠分岐にある焼岳小屋に到着。
焼岳小屋から笹原の稜線を進んで、荒々しい岩肌を見せる焼岳を間近に見える展望台に着きます。展望台から一旦下って中尾峠から登り返して焼岳を目指し、滑りやすいガレ場を登って焼岳北峰に登頂。
上高地に下山
焼岳北峰登頂後からは焼岳小屋に戻り、新中尾峠分岐を上高地方面に向かい、アルミ製のハシゴが三段になって架けられている急斜面を慎重に下って、峠沢、焼岳登山口、西穂登山口を経て上高地バスターミナルに下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | 起点:平湯温泉(駐車場有り) JR松本駅よりバス利用約1時間30分 車:中央長野道松本ICより約60分 (新穂高温泉)へバス利用約30分 (上高地)からバス利用約30分 |
登山ピーク時期 | 7月~8月 高山植物見頃時期:7月下旬~8月上旬 |
山行 | 1泊2日 難易度:☆★★★★ 体力度:☆★★★★ |
アクセス情報 | 距離:約17.9km 累積標高差:上り1,729m・下り2,372m 地図上標準コースタイム:約14時間25分 |
コースタイム(1日目) | 【約7時間10分】 新穂高口駅⇒(90分)西穂山荘⇒(80分)西穂独標 ⇒(120分)西穂高岳山頂⇒(90分)西穂独標⇒ (50分)西穂山荘(泊) |
コースタイヌ(2日目 | 【約7時間15分】 西穂山荘⇒(10分)上高地・焼岳分岐⇒(70分)池 ⇒(80分)焼岳小屋⇒(15分)中尾峠分岐⇒(70分)焼岳北峰⇒(50分)中尾峠分岐⇒(15分)焼岳小屋 (新中尾峠分岐)⇒(70分)峠沢⇒(25分)焼岳登山口⇒(10分)西穂登山口⇒(20分)上高地バスターミナルゴール |
西穂高岳登山について
穂高連峰は飛騨山脈の南西に位置していることと、その特異な山稜の連なりから、”西アルプス”と呼んでも違和感はない様ですが、日本アルプスにはその様な名称はありません。上高地から岳沢を経て、前穂高岳、奥穂高岳、西穂高岳へと縦走するルートは、高度な登山技術を要するため上級者向けとなっています。
西穂山荘から西穂高岳へのルートも、西穂独標までは初心者でも容易に登山できますが、独標から西穂高岳へはきつい岩場の登り返しのルートですので、滑落の危険もあり、体力も技術力も相応に必要としますので、初心者は決して無理をしないことが重要です。過去にも独標付近で落雷による死亡事故も発生しましたので、天候の最新情報も事前に良く確認することも大切です。
まとめ
西穂高岳登山ルートについて、比較的に難易度レベルはそれほど高くないルートをご紹介してみましたが、やはり2,000mを越える標高の山の登山は装備も服装もそれなりにしっかりと整えて、計画を立てることが大切です。初心者はツアー参加か上級者との同行をすることをおすすめします。
アルプスなど高所登山情報はこちら!
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