立山ってどんな山?
富山県の立山は、飛騨山脈(通称:北アルプス)の北部にあり、黒部川の西に位置する立山連峰の主峰です。立山は、主峰の雄山(3,003メートル)・大汝山(おおなんじやま:3,015メートル)・富士ノ折立(ふじのおりたて:2,999メートル)の3峰の総称を指します。
隆起と噴火活動によってできた、中部山岳国立公園を代表する立山には、剱岳や鹿島槍ヶ岳・唐松岳とともに氷河の跡があり、希少性が指摘されています。
山岳信仰の場所
古くから立山は、富士山・白山に並ぶ日本三霊山のひとつで、修験僧らに山岳信仰の場としてあがめられてきました。立山信仰では、雄山から右側にやや離れている浄土平は「過去」を、雄山は「現在」を、雄山の先にある「別山」は「未来」を指しています。
雄山山頂には雄山神社の社務所があり、伊邪那岐神(いざなぎのかみ)と天手力雄神(あめのたぢからおのかみ)がまつられています。
立山登山の魅力
魅力①山頂からの眺望
立山の山頂は、さえぎるものがまったくない大パノラマです。晴天時には溶岩台地の室堂平を始め、大日岳・鹿島槍ヶ岳・赤沢岳・槍ヶ岳・水晶岳・薬師岳のほかに、富士山が見えるときもあります。初心者は、あまりの絶景に言葉を失うことでしょう。位置を、登山マップと景色を照らし合わせてチェックしましょう。
7月ころは山ひだに縞模様のような雪渓も残り、真冬の厳しさを想像させますが、飛騨山脈の醍醐味を感じられる眺めです。
魅力②氷河地形の圏谷(けんこく)
立山の雄山北西の山腹には、スプーンで山の斜面をえぐったような「圏谷」(ドイツ語:カール)が観察できます。氷河が浸食されて谷をつくったもので、日本では氷河の存在は稀少とされています。圏谷は、日本の成り立ちを知るうえで貴重な現象なのです。
立山の圏谷は幅400メートル・長さ600メートルと大きくありませんが、みくりが池北のエンマ台展望台から眺められるので、登山マップでチェックしておきましょう。
魅力③天然記念物のライチョウ
立山で観察できる動物は、オコジョやニホンザル、カモシカなどですが、最大のトピックは天然記念物のライチョウに出合えるかもしれないことです。
人や天敵のいないハイマツの茂みなどに巣を作って産卵しますが、みくりが池付近でも目撃されています。日本での生息地域が限られており、数も激減しているため、もし見かけた場合はそっと静かに観察しましょう。
魅力④タテヤマリンドウ
タテヤマリンドウは、初めに立山で発見されたことから名づけられた高山植物です。淡い色が魅力的で、花の期間は6月から7月にかけてです。小ぶりの花ですが、夏の太陽を浴びていっせいに咲く様子は見ものです。
このほか、イワカガミやミヤマリンドウ、チングルマ、イワギキョウなども咲き、登山の疲れを吹き飛ばしてくれそうな美しさです。
立山への行き方
立山登山は室堂から
飛騨山脈の奥深い場所にある立山は、残念ながら自動車では行けません。唯一の手段は、1971年に開通した立山黒部アルペンルートです。
立山登山の拠点となるのは室堂平で、アルペンルート最標高の2,450メートルの溶岩台地です。アルペンルートの室堂駅のほかに、天狗平も入れると8軒の宿泊施設や土産物店、自然保護センターがあります。シーズン中はいつも、観光客や登山客などの多くの人でにぎわっています。
立山黒部アルペンルートとは
立山黒部アルペンルートは総延長37.2キロメートルで、8つの駅(7区間)を、ケーブルカー・高原バス・トロリーバス・ロープウェイ・ケーブルカー・電気バスの6つの乗り物と、一部を徒歩で移動します。
圧巻の放水シーンが観られる黒部ダムや、迫りくる紅葉が絶景の大観峰などの見どころを、大勢の人がハイキング気分で楽しめる、人気の山岳観光ルートなのです。開通期間は春から初冬までで、雪深くなる時期は休業となります。
登山期間は限られている
立山の登山期間は、唯一の利用手段である立山黒部アルペンルートの営業期間に準じるため、春から初冬までとなります。さらに春先と初冬は雪があることや寒さが厳しいため、登山のベストシーズンは7月下旬から8月で、時間は天気が安定している午前中がベストです。
立山はトレッキング感覚で登れる山ですが、初心者が楽しめるシーズンはほんの一時です。この時期以外は寒い日が続くため、初心者にはおすすめされていません。
最寄り駅は立山ケーブルカー駅
立山登山の拠点となる室堂へは、富山県立山駅からと長野県扇沢駅からの2ルートがあります。立山駅から室堂駅までの距離は24.3キロメートルあり、始めはケーブルカーで7分、次に高原バスに乗り換えて50分で移動します。
反対の扇沢駅から室堂までの距離と合計の移動時間は、12キロメートルと53分ですが、5区間を4つの乗り物と徒歩で移動するので面倒です。早い時間帯に登山するならば、立山駅からのほうが便利です。
扇沢駅スタートで室堂前泊も!
立山黒部アルペンルートも満喫したい場合は、長野県扇沢駅の電気バスからスタートするのもおすすめです。前日に、黒部ダムや大観峰などの5駅の景色や土産品の買い物も楽しみながら移動し、室堂の宿泊施設で前泊するのです。
そうすれば翌日は、気持ちにも時間にも余裕を持って早めに入山できます。もちろん前日に立山駅からスタートして室堂の宿泊施設で前泊、登山後は扇沢駅に移動するのもよいでしょう。
立山駅の無料駐車場
黒部立山アルペンルートの立山駅には、無料の駐車場があります。立山駅の周囲に6ヵ所の駐車場があり、それぞれ台数が異なりますが、合計で900台が停められます。紅葉時期などの混雑時には、さらに600台分の臨時駐車場も設けられるので、安心してご利用ください。
扇沢駅の無料駐車場
扇沢駅にも無料駐車場があるので、扇沢駅からピストンで利用するときに便利です。場所は、扇沢駅の目の前にあり、有料駐車場が350台、無料駐車場は230台停車できますが、道路を挟むので扇沢駅から少し離れています。
ちなみに扇沢駅から立山駅までは車で、富山経由の国道148号と北陸自動車道使用で3時間ほど掛かります。
【初心者】立山登山コース:「雄山ピストンコース」
コースの概要
雄山ピストンコースは、往復の歩行距離は5.5キロメートル、往復の所要時間が約3時間30分です。ハイキング気分とはいえませんが、3コースのなかで、初心者も一番トレッキング感覚で日帰りで十分に登れるコースです。
「室堂」(1時間)→「一ノ腰」(1時間)→「雄山山頂」の3ステップです。帰りは同じルートで、下山時間は登りよりも少し早く移動できるでしょう。
室堂から一ノ腰までのルート
室堂から一ノ越までは300メートルの標高差ですが、前半はゆるやかな石畳が続くのでハイキング気分で歩けます。8月まで雪渓が残っているため、雪が多い年や季節は軽アイゼンを利用するか、しっかりツボ足で登ってください。
少しずつ、室堂平や富山湾、能登半島などが見えてきます。後半は勾配がきつくなるため、体力を残しておきましょう。一ノ越山荘には有料トイレもあり、山頂にはないので済ませておくと安心です。
一ノ越から雄山山頂までのルート
一ノ越から左に折れて山頂までは、山岳信仰時代から「立山登拝道」といわれているメインルートです。右に進むと、立山信仰で「過去」を示す浄土山となります。
雄山山頂までは大小の岩が転がっているガレ場の急登で、浮き石や落石の危険性もあるので、気を付けて登ってください。酸素も薄くなるので、休憩を取りながら登りましょう。
雄山山頂の様子
雄山山頂には、立山をご神体とする1300年前創建の「雄山神社峰神社」があります。お祓いを受けられるので、鳥居の脇で参拝料を納めてください。お神酒のご用意もあるので、アルコールに強い人は有難くいただきましょう。
お守りやお札、記念バッチの授与もあり、立山登山のよい思い出になります。比較的広々としており、ベンチもあるのでゆっくりくつろげます。
装備・服装
装備は、夏期であれば一般的な夏山用の装備で問題ありませんが、晴天時でも必ず雨具や防寒着は必須です。靴は、岩場の急登があるので必ず登山靴を履きましょう。コンパスやヘッドライト、登山マップも必須です。
服装は、夏期はTシャツの上に長袖のシャツや薄めのフリースを着て、気温に合わせて脱ぎ着してください。念のために登山用ヘルメットもあると安心です。ハイキング気分では登れないので、しっかり用意しましょう。
【初・中級者】立山登山コース:「三山制覇コース」
コースの概要
三山制覇コースは2パターンあり、1つめは、雄山から先の大汝山と富士ノ折立まで行ってピストンします。おすすめは2つめで、真砂岳の分岐から「大走り」を下りて雷鳥平を経由し、室堂に戻るパターンです。往復の歩行距離は8.76キロメートル、所要時間は5時間30分です。
足場の悪い岩山のため、初心者はベテランのサポートが必要です。初心者でも十分な体力があり、慎重に行動すれば必ずしも無理ではありません。
雄山から大汝山までのルート
雄山から大汝山までは、岩山を歩いて20分ほどで到着します。時間は短いですが、足場の悪い岩場のため、焦らず慎重に進んでください。浮き石に気を付けて、しっかりかかとを下ろしましょう。酸素も薄いので、休みながらゆっくり登ってください。
山頂は、10名ほどしか滞在できないほどの狭いスペースです。ほかの登山客がいる場合は、マナーを守って順番に登りましょう。
大汝山から富士ノ折立までのルート
大汝山から富士ノ折立までは、岩山を歩いて15分ほどで到着します。山頂部への登山道は岩峰のため、かなり慎重に歩かねばなりません。
浮き石や落石に注意し、転落しないように手袋を履いて両手も使い、身体全体で登ることを意識しましょう。ほかの登山客がいる場合は、マナーを守って順番に進んでください。
富士ノ折立から「大走り」までのルート
富士ノ折立のガレ場を下りれば砂れき地の稜線となり、ようやくひと安心です。「大走り」は、先の真砂岳と雷鳥沢の分岐点にあります。浮き石が多く、転倒事故の心配もあるので、焦らず慎重に下りてください。
雷鳥沢キャンプ場やロッジがある雷鳥平まで下りると、石畳の遊歩道に出られます。前方に雷鳥沢キャンプ場が観えてきますが左手に折れ、みくりが池の脇を通ってゴールの室堂駅です。
装備・服装
装備は、一般的な夏期の登山装備が必須です。出発時は晴天でも山頂では天候が急変することあるため、雨具や重ね着できる防寒具は必ず用意してください。ハイキング気分での服装はNGです。携行食は、雄山だけの日帰り登山よりも歩行時間が長くなるため、少し多めに用意するとよいでしょう。
登山マップやコンパス、登山ヘルメットもあると安心です。登山マップは、事前に読み方をしっかり学習しておいてください。
【上級者】立山登山コース:「別山コース」
立山連峰を満喫したい人は、「大走り」で下りずに真砂岳(2,861メートル)を通過して別山(べつざん)まで行くコースもあります。帰りは、別山乗越から雷鳥沢に下り、キャンプ場脇から石畳の遊歩道を通って室堂に戻ります。時間は距離が長くなるので、「大走り」で下りるコースよりも、さらに1時間30分多くなります。
初心者にはおすすめできませんが、慣れてきたときのための情報としてぜひチェックしておいてください。
立山登山で注意すること
防寒対策をしっかりする
立山の雄山は初心者でもトレッキング気分で日帰りできる山ですが、3,000メートル級の山のため夏でも山頂の気温は15℃ほどしかなく、決してあなどってはいけません。登山マップやコンパス、ヘッドライトの装備も用意したほうがよいでしょう。
室堂で晴れていても、一瞬で山頂はガスが掛かって真っ白になることもあります。午後からはなお、天候が急変しやすいのです。寒暖差が激しいため、防寒具は必ず用意してください。
悪天候のときはコースを変える
夏期でも3,000メートル級の山は、疲労凍死の危険性があります。初心者は、ガスなどで視界が悪そうな場合は登山をあきらめて、遊歩道でのトレッキングで立山を堪能しましょう。
みくりが池一周(約1時間)コースか、天狗平に下って立山カルデラ展望台コースがあります。その場合は事前に、室堂駅の隣にある「自然保護センター」で情報をチェックしてください。
立山登山の楽しみ方
立山自然保護センターで学ぼう
立山の登山前に、入館料無料の立山自然保護センターでさまざま情報を得ておくと、より登山を楽しめます。立山自然保護センターは室堂駅を出て右側奥にあり、室堂平をライチョウ国に見立てて入国パスポートを入口で発行しているので、記念にいただきましょう。
自然解説員による自然観察ツアーも開催されており、こちらは室堂平をトレッキングやハイキング気分で楽しめるのでおすすめです。
立山登山はツアーもおすすめ
立山登山は、登山自体は雄山だけであれば初心者でも日帰りできるので難しくはありません。アクセスが立山黒部アルペンルートを使うため、手配などの面倒があるといえます。
手配や自分で計画するのが面倒なときは、旅行会社主催の登山ツアーへの参加がおすすめです。大手の各旅行会社は、室堂宿泊の立山登山ツアーを募集する予定でいます。自分に合うものがないか、いろいろ調べてみましょう。
初心者は「雄山」から挑戦!
立山登山は3つのルートがありますが、初心者はトレッキング感覚で楽しめる「雄山」コースがおすすめです。歩行距離は5.5キロメートル、往復歩行時間が約3時間30分なので、十分に日帰りできます。おすすめの時期は、立山黒部アルペンルートの運行期間中の7月中旬から8月頃です。
日帰り登山もよいですが、せっかくの立山なので室堂にある宿泊施設で、温泉に入ったり満天の星を眺めたりしてゆっくり過ごすのもおすすめです。
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出典:ライター撮影