朝日連峰の主峰「大朝日岳」
標高1,870mの大朝日岳は、山形県と新潟県の両県の境に位置し、西朝日岳、寒江山、以東岳などと連なる朝日連峰の主峰として、その山容を誇ります。日本百名山のひとつでもあり、出羽三山、飯豊連峰と共に磐梯朝日国立公園に含まれます。
位置的にも、日本海からの強い寒気を伴った季節風をまともに吹き付けることから、有数の豪雪地帯となっています。その山容は、花崗岩質の隆起と浸食によって峻険な渓谷を刻んでいますが、大朝日岳から連峰を繋ぐ稜線は美しく開放的な広がりは素晴らしいの一言です。
大朝日岳は自然の宝庫
大朝日岳は重厚な山容とともに、東北地方特有の季節環境の植生による高山植物も見られ、花の百名山にも選定があります。また、イヌワシ、ハヤブサ、ニホンカモシカの生態があることから、希少鳥獣生息地として国指定大鳥獣保護区に指定されています。
大朝日岳を主稜とする朝日連峰は、貴重な生態域ですので、登山にはゴミなどはすべて持ち帰り、植生のある場所には入らない、動物などへのエサやりは禁止などの注意点を守りましょう。
大朝日岳登山について
大朝日岳への登山は、中部地方のアルプスと呼ばれる山域などとは様相が違い、登山道入口も鄙(ひな)びた山村の雰囲気が漂い、山岳地帯にも開発の手が加わっていない、山本来の自然の姿が残されている稀有な存在です。
大朝日岳山頂から4方向に伸びる尾根沿いにきれいな稜線が伸び、アルプスにも劣らない山脈の美しい風景を望みながら登山を楽しめます。特に秋の紅葉時期は山々の錦の様な彩りが見事な美しさです。
大朝日岳への縦走を楽しむ!
朝日連峰はそれぞれの峰を繋ぐ縦走路が伸びていることから、コースごとに違った趣きがあり、縦走登山を楽しむ登山者が多く訪れます。縦走路は距離も所要時間も長いコースとなりますから、難易度レベルも高く、体力も必要とします。
また、大朝日岳への登山路にはトイレは有りません。携帯トイレを持参することが注意点です。(※水に溶けない紙類は放置しないで持ち帰りましょう。)
大朝日岳おすすめ登山コース3選
①古寺鉱泉ルート【日帰りコース】
古寺鉱泉登山口からの登山ルートです。ハナヌキ峰分岐から、古寺山を経て大朝日岳へ登頂するコースで、最もポピュラーで人気が高く、初心者であっても唯一日帰りが可能なコースとなります。
急登は少なく、大体が緩やかな登山路ですが、長い距離を歩かなければなりませんので、注意点として、日帰りをするには、前夜宿泊をして早朝に出発する必要があります。古寺鉱泉駐車場から出発します。
ハナヌキ峰分岐から古寺山
古寺鉱泉からブナやミズナラなどの樹林帯の緩やかな登山道を進みます。ハナヌキ峰分岐手前に“一服清水”という水場に到着。広々とした場所がありますので休憩します。ハナヌキ峰分岐から急斜面を登ります。
水場の三沢清水(さんざしみず)を過ぎ、岩場の急登を登りきると稜線に出て、古寺山まで展望が開けた登山路を登ります。古寺山の手前では“ヒメサユリ”が見られるでしょう。古寺山頂上から小朝日岳、大朝日岳が眺められます。
小朝日岳から銀玉水
古寺山から小灌木帯の登山路を進み、小朝日岳山頂方向と山麓の巻道分岐を山頂に向かいます。小朝日岳からからは、また樹林帯のなか最低鞍部の熊越までの下り路です。熊越からは見晴らしの良い灌木帯を歩きます。
気持ちの良い稜線歩きとなり、銀玉水という水場を経て、岩場の急斜面を登り、大朝日岳からの尾根の肩に到着。この辺は初夏まで残雪のある場合がありますので、軽アイゼンの用意があると安心です。
大朝日小屋から大朝日岳
主稜線沿いの朝日嶽神社奥の院に登山の無事を祈って手を合わせ、大朝日小屋に着いて小休憩。ここからは15分ほどで大朝日岳山頂です。大朝日岳頂上からの360度大パノラマを満喫したら、往路を戻って古寺鉱泉まで下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR左沢線左沢駅より車利用約50分 車:山形自動車道西川ICより約60分(駐車場有り) |
山行 | 日帰り 難易度:☆☆★★★ 体力度:☆★★★★ |
アクセス情報 | 距離:約16.8km 累積標高差:上り1,654m下り1,653m 地図上標準コースタイム:約9時間45分 |
コースタイム | 古寺鉱泉駐車場スタート⇒(5分)古寺鉱泉登山口 ⇒(135分)ハナヌキ峰分岐⇒(90分)小朝日岳 ⇒(110分)大朝日小屋⇒(15分)大朝日岳山頂 ⇒(10分)大朝日小屋⇒(80分)小朝日岳⇒ (60分)ハナヌキ峰分岐⇒(75分)古寺鉱泉登山 口⇒(5分)古寺鉱泉駐車場ゴール |
②朝日鉱泉ルート【1泊2日コース】
朝日鉱泉登山口から出発し、鳥原山、小朝日岳を経由して、避難小屋の大朝日小屋に1泊。大朝日岳に登頂後、中ツル尾根を降って、長命水、二股を経て朝日鉱泉へ下山する1泊2日のアクセスルートです。
稜線の美しさ、見所のお花畑、湿原や秋の紅葉など景観の良さを誇る、朝日連峰登山のクラシックルートです。大朝日岳へ長い登山路を歩きますので、初心者は特に基本装備や服装を万全にしてスタートします。
金山沢出合から小朝日岳
朝日鉱泉登山口から吊り橋を渡って、鳥原コース分岐を右へ進路を取ります。ミズナラなどの樹林帯のやや急登の登山路をジグザグに登っていきます。稜線に出て進むと、沢水がきれいで給水もできる“金山沢出合”到着です。
沢を渡渉して登り、木道の登山路を進んで、鳥原小屋から鳥原分岐を鳥原山に向かいます。鳥原山から少し下り、傾斜のきつい登山路を登り返すのですが、この辺は夏始めまで残雪がありますので注意して小朝日岳に登ります。
大朝日岳山頂から中ツル尾根
ロープが架けられた斜面を登り、小朝日岳に到着。古寺鉱泉ルートに合流して、“熊越え”鞍部に一度下り、銀玉水を経て稜線を歩き、大朝日小屋に着いて宿泊。ちなみに、小屋には水場がありませんので事前用意が必要です。
大朝日小屋から大朝日岳に登頂。頂上からの展望は抜群です。山頂から景色の良い中ツル尾根を下ります。「21世紀に残したい自然100選」に選ばれたブネの原生林が眼下に見えるでしょう。樹林帯に入り、さらに下ります。
長命水から朝日鉱泉登山口
大朝日岳から下る中ツル尾根は、「花の登山道」と呼ばれるほど、山野草に多く出会えます。“日本100急登”のひとつと言われる急斜面の登山路を注意しながら下降し、4合目の長命水を過ぎて、2つの沢の合流地点となる“二股”に着きます。
二股からは朝日川の沢沿いの登山路を進みます。登山路は狭く、吊橋や沢の渡渉、小さなアップダウンの繰り返しも有り、気を抜かない様に歩きましょう。鳥原コース分岐まで辿れば登山口の朝日鉱泉はすぐです。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR左沢線左沢駅よりバス利用約75分 車:山形道寒河江ICより約90分(駐車場有り) |
山行 | 1泊2日 難易度:☆☆★★★ 体力度:☆★★★★ |
アクセス情報 | 距離:約19.6km 累積標高差:上り・下り2,174m 地図上標準コースタイム:約13時間5分 |
コースタイム(1日目) | 【約8時間】 朝日鉱泉登山口スタート⇒(120分)金山沢出合 ⇒(90分)鳥原小屋⇒(40分)鳥原山⇒ (120分)小朝日岳⇒(110分)大朝日小屋(泊) |
コースタイム(2日目) | 【約5時間5分】 大朝日小屋⇒(15分)大朝日岳山頂⇒(140分)長命水⇒(50分)二股⇒(100分)朝日鉱泉登山口ゴール |
③日暮沢ルート【1泊2日コース】
根子川沿いにある日暮沢小屋から出発。清太岩山から竜門山を経て竜門小屋に宿泊します。翌日、西朝日岳から中岳と進み、大朝日岳に登頂後、小朝日岳から古寺山、ハナヌキ峰分岐から日暮沢小屋への下山ルートです。
登り始めから樹林のなかの急登の登山路が続きます。ブナの根が縦横に張る、少し歩きにくい登山路を登り、水場のある”ゴロビツの岩場”に到着。緩やかになった灌木帯の登山路を進み、清太岩山に進みます。
竜門山から大朝日岳へ
清太岩山からは朝日連峰のきれいな山並みが望めます。一度、広葉樹林のなかの鞍部まで降り、登り返して、今度はハイマツ帯の尾根からユウフン山を経て、主稜線の竜門山分岐から登山路を一旦下り、竜門小屋に着いて宿泊します。
早朝に出発して竜門山へ戻り、爽やかな稜線と高山植物を鑑賞しながら登山路を歩き、西朝日岳に到着。大朝日岳がきれいに見えています。中岳は山腹の巻道を進み、途中の“金玉水”と呼ぶ水場で水を補給し、大朝日小屋に到着。
大朝日岳からハナヌキ峰分岐
大朝日小屋で休憩後、荷物をデポして大朝日岳に登頂。頂上からの絶景を楽しんだら、大朝日小屋に戻り、小朝日岳から古寺鉱泉ルートを辿り、古寺山を経てハナヌキ峰分岐からはブナの樹林帯の登山路を進んで、竜門滝から根子川沿いに日暮沢小屋に下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR左沢線左沢駅より車利用約60分 車:山形自動車道月山ICより約30分(駐車場10台) |
山行 | 1泊2日 難易度:☆☆★★★ 体力度:☆★★★★ |
アクセス情報 | 距離:約21.6km 累積標高差:上り2,157km・下り2,154km 地図上標準コースタイム:約12時間15分 |
コースタイム(1日目) | 【約4時間35分】 日暮沢小屋登山口スタート⇒(180分)清太岩山⇒ (40分)ユーフン山⇒(50分)竜門山⇒(10分) 竜門小屋(泊) |
コースタイム(2日目) | 【約7時間45分】 竜門小屋⇒(20分)竜門山⇒(70分)西朝日岳⇒ (90分)大朝日小屋⇒(15分)大朝日岳⇒(10分) 大朝日小屋⇒(80分)小朝日岳⇒(60分)ハナヌキ 峰分岐⇒(70分)竜門滝⇒(50分)日暮沢小屋登山 口ゴール |
大朝日岳登山の山小屋について
大朝日岳登山には、どのルートもコースタイムが長いため、山小屋泊りかテント泊が必須となります。大朝日岳山頂近くの「大朝日小屋」を始め、朝日鉱泉ルートの「鳥原小屋」、日暮沢ルート登山口の「日暮沢小屋」、竜門山近くの「竜門小屋」が有ります。
山小屋宿泊の注意点
ご紹介した山小屋は、避難小屋として建てられていますので、それぞれ管理料を払い(※ポストに投函)、食事・風呂・寝具・水などの用意はありません。水を持参して自炊、夏でも夜間は冷えますので防寒着は必要です。
夏季期間は管理人が常駐していますので、指示に従ってください。注意点としては、収容人員があまり多くなく、場合によっては宿泊が難しい場合もありますので、事前に各山小屋管理者に確認をしておきましょう。
まとめ
月山、飯豊連峰などと肩を並べ、山形、新潟に跨り美しい稜線とおおらかな山容の連なりを見せる朝日連峰の主峰「大朝日岳」には多くの登山愛好者が訪れます。おすすめの各登山ルートをご紹介してみましたが、標高があまり高くないことを甘くみないで、天候の確認及び装備などもしっかい整えて、大朝日岳へ楽しく登りましょう。
東北地方の百名山/登山情報は!
東北地方の百名山登山情報は「暮らし~の」のWEBマガジンに詳しい記事がご紹介されていますので、ぜひご一読下さい。