牡丹ってどんな花?
中国で歴代皇帝に愛された牡丹
牡丹の花は日本由来のイメージがあるかも知れませんが、実は原産地は中国です。ピンクや紫など、幾重にも重なる花びらを持つ花の様子は、古の中国歴代皇帝たちに愛されてきました。
「花の王」「百花の王」「富貴草」との別名のある牡丹は、7世紀唐の時代には観賞として愛でられ、17世紀清の時代には国花だったとも言われています。絶世の美女楊貴妃の美しさの例えにも使われ、李白や白居易といった有名詩人が詠ったほどです。
牡丹は薬にもなる
牡丹は初めは薬として用いられていました。牡丹の木の根の樹皮を乾燥させる生薬で「牡丹皮(ぼたんぴ)と言われ、2~3世紀頃にはすでに薬用とされていて、3世紀初期に中国で書かれた医学書に処方が掲載されています。
解熱や止血、腰痛の軽減などのほか、月経痛、子宮内膜炎といった婦人系の症状に効果があり、現在でも漢方で使われています。初めは薬用植物でしたが、その花の美しさから徐々に鑑賞用へと広がっていきました。
牡丹と芍薬の違いとは
芍薬は牡丹とよく似ていますが、その違いは、牡丹は木に咲くのに対して芍薬は地面から茎を伸ばして咲く多年草であるというのが一つです。
他にも、牡丹は蕾の先端が尖っていることや、葉先がギザギザの形をしていますが、芍薬の蕾はまん丸で、葉は厚くギザギザはありません。このように違いはありますが、それでも、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と美人の例えに並んで使われるほど、どちらも美しい花です。
牡丹の花言葉とは
牡丹の花言葉とその意味
牡丹の花言葉は、「王者の風格」「富貴」「風格あるたたずまい」「高貴」「人見知り」「恥じらい」などです。どれも牡丹の花にあったステキな花言葉ですよね。かつては大変高価な花で、貴人たちしか楽しめなかったことから、牡丹には「富貴草」と言う高貴な別名もあるのです。
そんな高貴な人たちに愛されたイメージから、「風格あるたたずまい」や「高貴」といった花言葉がついたと思われます。
牡丹の花言葉はイメージにぴったり
また、牡丹は挿し木をして育てますが、初めの数年はなかなか花をつけません。そんな様子から「人見知り」や「恥じらい」という花言葉がついたと言われています。
花言葉は、見た目の様子や性質、咲き方などからつけられます。牡丹の花言葉は、どれも花のイメージにぴったり合いますね。
芍薬の花言葉との違い
花の様子が似ている芍薬の花言葉は、「恥じらい」や「慎ましさ」です。牡丹の花言葉とも似ていますね。でも芍薬には「王者の風格」や「高貴」といった風格を表す花言葉はありません。
咲いた時の花の様子は似ていますが、やはりその歴史が異なるので、花言葉で言えば牡丹の方がより「高貴」なイメージがあるということですね。
牡丹の色別の花言葉とは
赤やピンクの他、紫、白、黄、オレンジなど、牡丹の花にはさまざまな色の種類があります。観賞用として人の手により作られた品種も多く、花びらの数も一重、八重、千重、万重、獅子咲きなど種類が多彩です。
牡丹の色味や咲き方で印象が大きく変わるものの、色別の花言葉はありません。可憐なピンクも妖艶な紫も同じ花言葉なので牡丹の花束を送る時にどの色を組み合わせても、意味の反する花言葉にはならないので安心です。
英語での牡丹の花言葉とは
英語圏でも牡丹には「恥じらい」「思いやり」といった花言葉があります。この花言葉は英語圏から見た中国など東洋人のイメージとも、花びらが重なる様子からつけられたとも言われています。
英語の花言葉も東洋圏での牡丹の花言葉と似ているので、牡丹に抱く印象が似通っているのはおもしろいですね。
ちょっぴり怖い、語源となったギリシア神話①
牡丹は英語で「tree peony(ツリーピオニー)」と言います。この英語名は、ギリシア神話に出てくるぺオンという神様が由来という説があります。医薬神であるぺオンは傷を癒す不思議な植物を探しに山に行き、そこで無事その植物を手に入れます。
そして戦いで傷ついた神々の治療をしていました。冥王ハデスの傷も治したこともあり、一躍有名になったぺオンを妬んだ師の神が、なんとぺオンを殺してしまいます。
花言葉の由来にもなった
それを知って悲しんだ冥王ハデスが、ぺオンを薬草の姿に変え、その薬草やがてピオニーと呼ばれるようになったのです。
冥王ハデスが、自分の治療をしてくれたぺオンの死を悲しみその姿を変えさせたことが、「思いやり」という花言葉の由来とも言われています。牡丹はもともと薬として用いられていたことから、こういった由来が生まれたのかもしれませんね。
ちょっぴり怖い、語源となったギリシア神話②
もう一つは、妖精パエオニアのお話です。絶世の美女でまわりの男性の神様たちを夢中にさせていたパエオニアですが、それに嫉妬したのが愛と美の女神アフロディーテです。
最高美神で誇り高いアフロディーテは、実は戦の女神であるほど気が強く、妖精パエオニアを花の姿に変えてしまったのです。花になっても美しく、その花を妖精の名にちなみピオニーと名付けられました。どちらも神の嫉妬にちなんだちょっぴり怖い由来ですね。
「牡丹」の意味とは
日本では牡丹といえば、美人の例えに使われるなど女性的なイメージがありますが、「牡」という字が使われています。「丹」という字は赤色の意味で、これは花の色が由来と考えられますが、実は「牡」については詳しくは分かっていません。
もとは薬用植物なので、医師には男性が多かったためではないか、とも考えられますが「王者の風格」という花言葉はこの「牡」のイメージからついているのかもしれません。
牡丹と文化
家紋や文様の牡丹
牡丹の花が日本に伝わったのは、7世紀頃のことです。薬草として伝わったようですが、8世紀には栽培されて主に宮廷や寺院に鑑賞植物として広まっていきます。やがて牡丹は家紋にも用いられます。
朝廷で天皇に仕えた公家の近衛家が、使用する牛車に描く車紋として用いたのが最初で、「大割牡丹」「抱き牡丹」「鍋島牡丹」など、牡丹を使ったさまざまな家紋が使われました。他にも、着物の柄や漆器、彫刻などでも好まれていました。
文学と絵画に使われた牡丹
文学上に牡丹の花が用いられたのは「枕草子」からです。和歌では別名の「ふかみくさ」が用いられ、俳句では夏の季語として読まれています。牡丹の季語は、牡丹の芽は春、冬牡丹や寒牡丹は冬の季語とたくさんあります。
かの松尾芭蕉や小林一茶、夏目漱石も牡丹を使った句を詠みました。絵画でも多用され、狩野山楽の襖絵や葛飾北斎の浮世絵など、淡いピンクの美しく可憐で豪華な牡丹の様子がリアルに描かれています。
食べ物の名付けになった牡丹
牡丹は身近な食べ物の名前にもついています。例えば「牡丹餅」は、牡丹の花の咲く時期のお彼岸にお供えされるもので、同じものを秋のお彼岸の時には「お萩」と読んでいます。時期にあったお花になぞらえて名付けるとは、日本らしい風情のある名付けですよね。
他にも、イノシシ肉のお鍋を「牡丹鍋」とも言います。イノシシのお肉の鮮やかな赤と、そのお肉を牡丹の花のように並べて鍋にする様子から名付けられています。
牡丹は春と冬楽しめる
牡丹の咲く時期は4~5月頃ですが、それは春牡丹という種類のこと。実は牡丹は寒い冬にも咲く花なのです。牡丹には他に、春と秋に咲く寒牡丹という品種があります。また、春牡丹を1~2月の寒い時期に咲くように人工的に調整した種類を冬牡丹と呼んでいます。
冬牡丹は本来冬に咲く品種ではないので、手を加えなければ春に咲く春牡丹になります。牡丹の花をたくさんの時期に楽しみたいという強い想いが感じられます。
縁起のいい花、牡丹
実は牡丹の「丹」には赤色という意味だけでなく、「不老不死の仙薬」という意味もあります。「高貴」などの花言葉もあり、牡丹は縁起のよい瑞花として昔から日本人に好まれ、家紋や文様などいろいろなシーンで使われてきました。
同じく縁起のよいとされる霊獣の唐獅子と組み合わせた「牡丹唐獅子」は、獅子は夜牡丹のもとで眠る、という伝承がもとになって好まれた意匠です。
多種多様な美しさが楽しめる牡丹
牡丹は10以上の別名をもち、さらに現在も品種改良などで色や花型の異なるさまざまな品種が生まれるなど、多種多様な花です。それだけ多くの人に愛され、好まれる花である牡丹。
気候が暖かくなりお出かけしやすくなる春から初夏にかけて見られる春牡丹、冬の寒さの中でも凛と咲く冬牡丹や寒牡丹など、見頃の季節も幅広く楽しめます。花束の贈り物も喜ばれそうですね。ぜひ牡丹の花を見に出かけてみましょう。
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