焦げない!美味しい!飯盒炊飯:はじめに
飯盒炊飯は難しくありません。炊き方のポイントを押さえると美味しいご飯が炊けるようになりますし、コツをつかむ糸口を見つけられます。しかし、飯盒炊飯は人によってやり方に違いがあるのも事実です。
ここでは標準的な飯盒炊飯を軸に解説します。あなたに合った飯盒炊飯を見つけられるよう、人による炊き方の違いも紹介しますね。なお、この記事は2021年1月29日現在の情報をもとに作成しますことをご了承ください。
飯盒を知ろう
飯盒の種類と特徴
兵式飯盒がそら豆型なのは背嚢(はいのう=兵士のリュックサック)の外側にくくりつけても安定する形状だからです。また、内側どうしで重ねると複数の飯盒で炊飯してもまんべんなく加熱できます。
レジャーキャンプでは丸型飯盒がおすすめです。シングルバーナーの五徳に載せても安定します。五合炊きも選択できますし、丸型飯盒ならカレーなどの煮もの料理もしやすいですね。
飯盒の構造
飯盒は「飯盒本体」「中蓋」「外蓋」で構成されています。飯盒本体の容量は約2Lで、中蓋は米2合、外蓋は米3合をすりきりで量れます。中蓋と外蓋で米の分量を量れるのは日本式飯盒ならではの特徴です。
飯盒の中には外蓋にハンドルが付いているものもあります。外蓋をフライパンとして使うためです。また、飯盒本体にベルトガイドが付いているものもあります。背嚢のベルトに通して固定していた名残です。
飯盒炊飯のポイント1:準備
飯盒炊飯のポイントその1はご飯を炊く準備です。準備を丁寧にするだけで美味しい炊き方に近づけられます。目視で米の状態を確認できますので難しくありません。初心者はここに注力するのがベストです。
順序は①お米の分量を量る②お米を洗う③水を入れる④米に水を吸わせる、の4行程。精白米(普通の米)でも問題ありませんが、キャンプ場では節水を心がけたいので無洗米を使うのもありです。
飯盒炊飯1-①お米の分量を量る
飯盒炊飯のお米の量は中蓋で量ります。先述した通り、中蓋ですりきり1杯が2合、2杯が4合です。3合を量る時は外蓋を使います。すりきりで量りますので米をこぼさないやり方を研究しましょう。
お米の量を量るには軽量カップを用いてもOKです。シェラカップやマグカップで米の分量を量る方法もありますが、どれくらいのお米を飯盒に入れたのかを確実に覚えておきましょう。
米の分量を量るコツ
飯盒炊飯での米の量を量るコツは、大きめの袋に米を入れて持っていくことです。大きめの袋に米を入れておけば、すりきり1杯を量るのに米をこぼしません。また、2合の米を小さな袋に小分けするのもおすすめです。
飯盒炊飯での米の量を量る方法は人による違いが少ないですね。大抵の人は飯盒の中蓋で量っています。飯盒の蓋は分量が安定しないという意見もありますが、そこまで厳密に量らなくても美味しい飯盒炊飯はできますよ。
飯盒炊飯1-②お米を洗う
飯盒にお米を入れたら洗います。何回か水を入れ替え、炊飯器で米を炊くときと同じ要領で洗えばOKです。
飯盒炊飯での米の洗い方は人によって違います。飯盒に手を入れて洗う方法は家庭での洗い方に近いですね。中蓋と外蓋をしてゆする(あるいはシェイクする)方法は手が大きくて飯盒に入らない人におすすめです。米を洗った水を排出するときに、中蓋をして米がこぼれにくくしている人もいます。
米を洗うコツ
米を洗うコツは優しく洗うことです。激しく洗うと米粒がつぶれて美味しい炊き方ができません。また、飯盒炊飯では必要以上に水を入れ替えて洗うのはNGです。キャンプ場の水は貴重ですので節水を心がけましょう。
初心者には家庭と同じ洗い方をするのがおすすめです。いつもと違う洗い方をすると、美味しい炊き方ができたかどうかを評価しにくくなります。
飯盒炊飯1-③水を入れる
米を洗ったら米の量に合わせて水を入れます。飯盒の目盛りに合わせて水を入れると確実です。米2合なら下の目盛りまで、米4合なら下の目盛りまで水を入れます。
まれに目盛りがない飯盒もあります。また、飯盒には3合の目盛りがありません。そんな場合は水の量を量って入れます。米:水=1:1.2、2合で外蓋1杯分の水、人差し指で米の高さを量って同じ高さまで水を入れるなど、水の量を量る方法は人によって違います。
分量分の水を入れるコツ
目盛りがついている飯盒ならコツはありません。水平な場所に飯盒を置き、目盛りまで水を入れたらOKです。無洗米なら水を気持ち多めに入れます。
問題は目盛りの付いていない飯盒や3合を炊くときです。教育キャンプ場での飯盒炊飯のレシピでは米:水=1:1.2が多いですね。まずは米1:水1.2でチャレンジし、次回の飯盒炊飯ではその結果を踏まえて水の量を増減させましょう。
飯盒炊飯1-③米に水を吸わせる
分量に合わせて飯盒に水を入れたら米に水を吸わせます。飯盒炊飯の準備でもっとも重要なポイントはココ!しっかりと水を吸わせると美味しいご飯が炊けます。しかし、水を吸わせる時間は人によって違います。
水を吸わせる時間は0.5時間が多数派ですが、1時間という人もいます。初心者には0.5時間を基準に延長するのがおすすめです。
米に水を吸わせるコツ
米に水を吸わせるコツは、乳白色の米が白くなっているのを目視確認することです。米は気温や水温で水を数時間が変わります。春や秋は長めに水を吸わせ、夏は基準となる0.5時間で目視確認しましょう。
また、焚き火台で飯盒炊飯するなら、米に水を吸わせている間に火おこしをしましょう。ゆっくりと火おこししている間に米が水を吸ってくれます。
飯盒炊飯のポイント2:火にかけてご飯を炊く
飯盒炊飯のポイントその2は「火にかけてご飯を炊く」です。初心者がもっとも緊張する行程でしょうが、飯盒から聞こえてくる音や伝わってくる感触を手掛かりにすると難しくありません。
飯盒を火にかけてからのポイントは①沸騰するまで②沸騰して炊きあがりまで③炊きあがりの判断の3つです。いずれも火加減を調節するポイントだと捉えましょう。飯盒炊飯での火加減は人によって違います。
飯盒炊飯2-①沸騰するまで
飯盒を火にかけて加熱します。沸騰すると飯盒の外蓋が持ち上がったりグツグツという音が聞こえてきたりします。まれに外蓋が持ち上がらない飯盒もありますので、飯盒の様子をよく観察しましょう。
沸騰するまでの火加減は中火が多数派です。弱火から中火という人も多いですね。少数派ですが、火にかけ始めから強火という人もいます。初心者なら沸騰するまでは中火で加熱するのがおすすめです。火が弱いと沸騰したサインが飯盒から伝わりにくくなります。
沸騰するまでのコツ
沸騰しているかどうかを判断するコツは軍手をした手の平を外蓋に当てて伝わってくる感触を確かめることです。軽く手の平を当てておくと、外蓋が持ち上がったりグツグツという感触が伝わってきたりするのを感じやすくなります。
焚き火台で飯盒炊飯する場合は飯盒の底に火が付く程度が中火です。沸騰するまで外蓋を外し、焦げないようにスプーンなどで米をかき混ぜる人もいます。
飯盒炊飯2-②沸騰して炊きあがりまで
沸騰したら火加減を調整します。沸騰するまでの火加減によって、沸騰した後の火加減が変わります。また、沸騰したら石や薪などの重いものを載せて吹きこぼれないようにしましょう。
沸騰するまでが中火や弱火なら沸騰すると強火にし、吹きこぼれが収まってきたら徐々に火を弱め、吹きこぼれなくなったら弱火にします。沸騰するまでが強火なら、沸騰した後の火加減は弱火です。
沸騰した直後のコツ
沸騰して吹きこぼれると焦ります。でも大丈夫!飯盒を火から離すと吹きこぼれ収まりまるのです。ハンドルを持って火から降ろし、火加減を調節してから再度飯盒を火にかけても問題ありません。
また、ずっと外蓋に手の平を当てて、火にかけてから炊きあがりまでの変化を感触でインプットしておくのも正攻法。経験値となり、どんな環境でも美味しいご飯が炊けるようになります。
飯盒炊飯2-③炊きあがりの判断
炊きあがりは飯盒から聞こえる音で判断します。吹きこぼれが収まってしばらく弱火で加熱していくと、パチパチやチリチリといった音が聞こえてきます。これが焦げない飯盒炊飯のタイミングです。
飯盒の側面をスプーンで軽くたたき、コツコツという詰まった音も判断材料になります。また、炊きあがると米の焦げたような香ばしいにおいがします。これも焦げない飯盒炊飯のタイミングです。
炊きあがりを判断するコツ
炊きあがりを判断するコツは人によって違いがありません。大多数の人は飯盒から聞こえてくる音やにおいで判断しています。また、外蓋を外して味見する人も多数派です。ご飯に芯が残っていたら、少しの水を足して焦げないような弱火で再加熱するとリカバリーできます。
ご飯をかき混ぜて飯盒の底を確認するのはNGです。ご飯をかき混ぜてしまうと次のポイント「蒸らし」ができなくなりますし、水を足してのリカバリーもできなくなります。
飯盒炊飯のポイント3:蒸らしてシャリ切りする
飯盒炊飯のポイントその3は「蒸らしてシャリ切りする」です。難しい行程ではありませんが、ここを怠ると美味しいご飯を台無しにしてしまいます。
ポイントは見出しの通り①火から降ろして蒸らす②シャリ切りをする、の2つです。タイミングよくしないとご飯を冷やしてしまいます。美味しいご飯の炊き方の一部として最後まで手を抜かないようにしましょう。
飯盒炊飯3-①火から降ろして蒸らす
いよいよ最終段階!美味しいご飯になるよう蒸らします。蒸らす時間は15分が多数派です。少ない人で10分、多い人で15分。中には30分蒸らす人もいますが、ご飯が冷めない範囲で時間を見極めましょう。
時間は気温によって調節するといいですね。人によって蒸らす時間は違うものの、火から降ろして蒸らすだけ。やり方に違いはありません。
火から降ろして蒸らすコツ
火から降ろして蒸らすコツはご飯が冷めないようにすることです。飯盒を地面において蒸らすとご飯が冷めてしまいます。飯盒を新聞紙で包むと冷めにくいですね。キャンプ場のかまどで炊飯するなら、火で温まっているかまどのレンガやコンクリートの上で蒸らします。
また、外蓋を外すのはNGです。飯盒の中の空気が抜け、冷えたり湿度が下がったりします。
飯盒炊飯3-②シャリ切りをする
シャリ切りとは、蒸らし終えたご飯をほぐすことです。余分な水分が飛び、ふんわりしたご飯に仕上がります。シャリ切りをしないとご飯が固まって、水分でべたついた状態になります。
シャリ切りは人による違いは少ないですね。軽く混ぜる派が多数派です。底のご飯もかきだすように混ぜたらOKです。ご飯を飯盒からこぼれないように注意しましょう。
シャリ切りのコツ
シャリ切りのコツは特にありませんので、注意事項の補足を2点。4合炊きの飯盒で4合炊く場合は注意が必要です。飯盒の口までご飯でいっぱいになりますのでご飯がこぼれやすくなるのです。
また、飯盒はアルミ製でアルマイト加工されていますので、金属製のスプーンなどでシャリ切りをすると飯盒の内側を傷つけてしまいます。木製の小さなしゃもじがあればベストです。
飯盒炊飯:あなたはどっち派?
ご飯の炊き方は人によって違う
飯盒炊飯についての情報を集める中で、使い方で気になったことを「あなたはどっち派?」と題して紹介します。
飯盒炊飯は経験を通してコツをつかむものです。炊飯のやり方は人によって違って当然だと捉えましょう。多数派の炊飯方法は正攻法ですが、少数派の炊飯方法があなたに合っている可能性もあります。
飯盒の使い方:時間計測派?感触頼り派?
飯盒炊飯では火加減を時間で判断する派と感触で判断する派に分かれます。キッチンタイマーなどで時間を計れば、炊飯中にほかのことができますね。しかし、炊飯時間は気温や水温で変わります。
気温や水温が違っても美味しいご飯を安定して炊けるのは感触で判断する派です。ここでは初心者でも失敗しないように感触派の炊き方をメインに解説しました。しかし、感触を頼りに炊飯すると飯盒につきっきりになってしまいます。
飯盒の使い方:炊くときは中蓋を入れる派?入れない派?
飯盒炊飯では中蓋を入れる派と入れない派がいます。また、3合までなら圧力をかけるために中蓋を入れ、4合ならご飯で押されるから中蓋を入れないという人もいます。
兵式飯盒は中蓋に食材を入れて蒸し料理ができる構造で、その名残で中蓋を入れる使い方が普及したのかと思いきや、美味しい蒸し料理ができないので、旧日本軍では推奨されていなかった使い方でした。ちなみにドイツ式飯盒では中蓋で炊飯できます。
飯盒の使い方:蒸らしはそのまま派?ひっくり返す派
ご飯が炊きあがって蒸らすとき、飯盒をそのまま派とひっくり返す派がいます。ここはそのまま蒸らす派が優勢です。
飯盒をひっくり返すのは焚き火のススを新聞紙などで拭っていた時代の名残だといえます。ひっくり返すと焦げないという説もありますが、これは根拠が弱いですね。飯盒をひっくり返しても食感に影響はなく、ご飯をこぼすリスクのほうが懸念されます。
焦げない!美味しい!飯盒炊飯:まとめ
「飯盒炊飯」という呼び方は一般的ではありません。一般的には旧日本軍で用いられていた「炊爨(炊爨)」を用います。炊飯はご飯を炊くこと、炊爨は煮炊きをすること。旧日本軍では二人一組で1つの飯盒でご飯を、もう一つの飯盒で汁物を料理することを「組炊爨」と呼びました。その名残から今でも飯盒でご飯を炊くことを「飯盒炊爨」と呼んでいます。しかし、現在のキャンプでは飯盒で汁物を料理することは少なく、飯盒炊飯と呼んでも違和感は少なくなりましたね。
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出典:ライター撮影