炊飯のメカニズム
炊飯でお米が変化していく過程を知ろう
普段は火加減など気にせず炊飯器のスイッチひとつでご飯が炊けてしまいます。しかし、炊飯器や鍋のなかで固かったお米がやわらかいご飯に変化していく過程がわかれば、キャンプでご飯を上手に炊くコツがつかめるはずです。キャンプへ出発する前にまず炊飯のメカニズムについてみていきましょう。
炊飯器や鍋の中はどうなっているの?
まず、炊飯器や鍋が加熱されると水中で温度差がうまれ下から上へと対流が始まります。固かったお米はこの対流にのって攪拌されムラなく熱が伝わります。沸騰して温度差がなくなると対流も止まり、15分ほどあれば水分は蒸発していきながらお米にも吸収されていき、やわらかくなります。炊飯器や鍋の中の余分な水分がなくなれば炊飯終了の合図です。
固いお米から、やわらかいご飯へ
お米の大半の成分はデンプンです。加熱された固いお米は水分を吸収しながらふくらんでいき、やがてデンプンがねっとりと糊化(こか)してやわらかくなるのです。このとき、沸騰までの時間が短いとお米の形もくずれにくくデンプンが必要以上に溶けるのを防ぐため張りが出ます。また、沸騰してから鍋を高温のまま約20分ほど保つとお米が芯まで糊化します。キャンプ場ではこの炊き方に気をつけて炊飯してみてください。
クッカーと鍋の違いについて
アウトドアで使用する調理器具
クッカーとは、主にアウトドアで使用する鍋の総称です。キャンプや登山をするときはなるべくコンパクトな道具が重宝されます。そのため軽いもの、簡単にスタッキングできるもの、折りたたみ式または取り外しのできる取っ手がある鍋がキャンプでは主流のクッカーとなります。
キャンプでの炊飯に適した素材とは
キャンプで使用するクッカーの素材は主に3種類あります。炊飯に適している素材は沸騰までの時間が短い熱伝導率のよいものがあげられますが、購入する際はアウトドアで使用する主な用途や人数、場所、そして荷物を載せる車の大きさなども考えながら適したものを選ぶようにしましょう。
素材 | 軽さ | 熱伝導率 | メリット |
アルミ | ★★ | ★★★ | 焦げにくく調理しやすい |
ステンレス | ★ | ★ | 丈夫で安価 |
チタン | ★★★ | ★ | アルミほど金属臭がない |
キャンプでの炊飯に適した形状
キャンプへ行ってクッカーや鍋で炊飯をするときには「熱したクッカー内で対流を起こすことができる」「高温のまま20分ほど保つことができる」が重要となります。そのため、底が丸みを帯びていて熱を長時間保てる厚みのある形状が炊飯に適したものと言えるでしょう。キャンプでは炊飯に特化した「ライスクッカー」を利用するのもおすすめです。
ライスクッカーについて
キャンプでライスクッカーが重宝するわけ
キャンプで炊飯するにはいくつかコツが必要ですが、炊飯用に作られたライスクッカーを使用すればより簡単です。理由としては水を計るメモリがある、厚みがあり保温性がよい、ふたが重い、蒸気が確認しやすい、ご飯がくっつきにくい素材、などが挙げられます。そのうえ炊飯以外に汁物の調理などにも利用できるため使用範囲が広く重宝します。最近ではキャンプ用に個性的なライスクッカーがたくさん登場していますので、いくつかご紹介します。
個性的なライスクッカー①湯気が分かりやすい
こちらはsnow peakのパンクッカー3点セットのうちの1つです。このライスクッカーはふたの一か所から集中して蒸気が出ます。キャンプで炊飯するときには蒸気がポイントになるため使い勝手のよい商品といえるでしょう。素材は熱伝導率のよいアルミ製、内側はフッ素樹脂加工でIHも使えるためキャンプだけでなく自宅でも炊飯可能です。高級なイメージのあるsnow peakですが、その品質は数多くのキャンパ―から愛されていることでしっかりと証明されています。
個性的なライスクッカー②本格羽釜
MADE IN 燕三条の金属製品といったら今や世界レベルです。この商品は燕三条で作られたユニフレーム製なので高品質と言えるでしょう。キャンプで本格的な羽釜を使って炊飯すれば、少々失敗したところで満足感は相当なものに違いありません。形状は対流が起こりやすいすり鉢型、また熱伝導率のよいアルミ製で、焚き火でも炊飯可能です。キャンプ場で羽釜が登場すれば盛り上がること間違いなしです。
個性的なライスクッカー③軽量チタン
このライスクッカーは、1~2合ほどの炊飯用となります。軽量かつコンパクトのためソロキャンプをする人にはありがたい製品です。他のライスクッカーと大きく違う点といえば容器が二重構造となっており、内側の容器は底の部分が数センチ浮いている形となります。そのため蒸し煮のような調理となりますが、炊飯方法においては他のライスクッカーとほぼ変わりません。鍋の代わりになることはもちろん、冷めたご飯を蒸気で温めなおすことも簡単です。
キャンプで炊飯①:準備
炊飯に必要なもの
ではいよいよキャンプでのご飯の炊き方をご紹介します。はじめに炊飯に必要なものをチェックしていきましょう。まずお米は、必要な分を自宅でビニール袋などに小分けにし、可能ならクッカー内に収めてキャンプ場へ運ぶと大変便利です。炊飯用のお水はなるべく新鮮な冷たいものを準備しましょう。あとは鍋、しゃもじ、軍手、バーナー類。計量カップもあると正確にお水が計れます。20分以上は火力がもつ燃料の準備も炊飯には必須です。
キャンプ場で炊飯する場所を探す
キャンプ場に着いたら風向きを確認し、炊飯場所を探しましょう。アウトドアでは広大な芝生の上や山の上などで炊飯をすることが多くなるため、風によって火加減が変わってしまっては本領を発揮できません!テント内での炊飯は厳禁ですので、タープなどを利用してできるだけ風の影響の少ない炊飯場所を探しましょう。
キャンプで炊飯②:研ぐ
1回目は素早く水を捨てよう
次に鍋に水を入れ、2.3回優しくかきまぜたらすぐに捨てましょう。お米の表面についたゴミや油などが1回目の研ぎ汁に流れ出て、乾燥しているお米はぐんぐん吸収してしまいます。このためできるだけ素早く捨てるのがコツとなります。
研ぎ方のコツ
精米技術の向上により、お米は割れないようにそっとかきまぜれば十分です。最初の水を捨てたあとは指のはらで優しくお米をつかむようにしながら10~15回くらいまぜ、水を入れたら再度流します。これを3.4回繰り返せば完了です。水が多少白くても味には問題ありません。
キャンプで炊飯③:水の量
普通のお米の水の量
普通のお米なら1合(180㏄)に対し、水の量は200ccが適量です。ライスクッカーのようにメモリのついた鍋を使用するとキャンプでは簡単です。また、新米を炊くときにはお米1合に対し大さじ1杯ほど少なめの水の量にしましょう。とはいえお米が主食である日本人はご飯の水加減の好みが千差万別です。ぜひ、さまざまな炊き方に挑戦し自分好みの水の量を探してみてください。
無洗米の水の量
無洗米は普通のお米よりも表面を少し厚めに削っているため粒が小さくなっています。そのため普通のお米に比べると同じ1合であっても少し重くなりますので、水の量は無洗米1合に対し200ccプラス大さじ1杯(15cc)程度多めにしましょう。
キャンプで計量カップがない時は
アウトドアではお米や水の量を正確に計量できないときもあります。そんなときはマグカップなどの適当な容器を準備し、そこにお米を入れたら同量よりやや多い水で炊くと問題はありません。目安として普通のお米なら約1.1倍の水の量を、無洗米なら約1.2倍と頭にいれておくだけでキャンプ場でも困ることはないでしょう。
キャンプで炊飯④:吸水
なぜ吸水するのか
キャンプ場でお米を研いだらしばらく時間をおきましょう。するとお米のまわりの水分がじわじわと芯までしみていき、お豆と同様で火が通りやすくなります。沸点の低い山の上などでキャンプや登山をすることも多いアウトドアでの炊飯では、事前に行うこの吸水が上手にご飯を炊くコツです。キャンプ場に着いてテントをたてる前や、夕飯の下ごしらえを始める1時間くらい前にお米を研いでおくとちょうどよいタイミングで炊くことができます。
吸水方法
お米に吸水させる時は鍋に入れたまま水に浸す方法か、ざるの上でおこなう方法が多いのですが、どちらの方法をとっても味に大差はないと言われています。キャンプ場で長時間ざるに上げていると風による乾燥からお米が割れてしまう場合もありますし、万が一雑菌の入った水に長時間浸してしまうと菌が増えてしまう恐れもありますので季節に応じて方法を変える工夫も必要です。
吸水時間
時間としては暑い夏で30~40分、寒い冬は1時間以上は取りたいところです。水に浸す方法ではなるべく冷水でじっくりと2時間以上吸水させると美味しさに違いがでます。冷蔵庫内で吸水させたり氷水を利用したりする方法もありますが、アウトドアでは簡単ではありません。そのためできるだけ新鮮な冷水を使用し、日陰に置くか鍋ごとクーラーボックスで保管しましょう。ざる上げの方法でもできるだけ日陰で風通しのよい場所を選んでください。
キャンプで炊飯⑤:火加減
沸騰までの炊き方
次はいよいよ着火です。沸騰まであまり時間をかけない炊き方が張りのあるご飯に仕上げるコツです。バーナーを使用する場合は沸騰するまで強めの中火、炭火を使用する場合は肉を網に乗せると瞬間でジュッとこげ目がつく程度の火力が理想となります。クッカーや鍋の形状、または何合炊くのかによっても沸騰までの時間は変わりますので、キャンプの醍醐味として鍋の前でのんびりと待ちましょう!
対流を起こそう
お米にムラなく熱が伝わるようにするにはクッカーや鍋のなかの対流が大切です。クッカーや鍋の形が角ばっている、浅い形状、または少量のお米を炊くという場合は着火したあとふたを開けたまま沸騰するまで時々お米を優しく混ぜてあげてください。この炊き方により強制的に対流を起こすことができます。沸騰してきたら蒸気に気をつけてふたをしめましょう。
沸騰したあと
沸騰したら弱火にします。なるべく高温のまま約20分保つことが成功のカギとなりますので、まずはタイマーを15分にセットし、可能ならふたに石などの重しをしてください。これにより蒸気の圧力でご飯に弾力が増します。アラームが鳴ったら火を消し、少しだけふたを開けてみましょう。ご飯の粒同士がある程度離れていれば、10秒ほど中火にかけて一気に余計な水分を飛ばし、チリチリと乾いた音がして香ばしい匂いがただよってきたら火を消します。
なるべく高温のまま蒸らす
火からおろしたら約10分ほど蒸らしましょう。蒸らす間もなるべく高温を保つとクッカーや鍋のなかが蒸気で満たされご飯がふんわりしてきます。バスタオルなどでクッカーや鍋をくるむ方法が簡単で有効ですが、焚き火台やバーベキューコンロのそばに置くのもよいでしょう。
キャンプで炊飯⑥:完成
ふたを開けてみよう
とうとう炊飯終了です。蒸し終わったらふたを開けてしゃもじでご飯を十字に切り、お米をつぶさないように優しく上下をひっくり返して軽く混ぜることが最終ポイントとなります。混ぜておくことで余計な水分が飛んでご飯がふっくらし、デンプンがとけてべたっとするのを回避できます。鍋のふたに水滴がついてご飯に落ちてしまってもべたつく原因となりますので、混ぜたあとは布巾を鍋に乗せてからふたをしておきましょう。
ご飯に芯があった場合
それでもご飯が固いときは、お米1合に対し大さじ2杯ほどの水を加えます。火をつけて沸騰したら弱火で水分を飛ばし、火を消して蒸らすという炊飯の流れを再度おこなってください。こげやすいため早めに火を消して蒸らす時間を長めにとる炊き方がよいでしょう。また、ケチャップと砂糖、少量の水とチーズを加えてリゾット風に、粉末のダシと塩コショウに少量の水を入れて最後に玉子を落とせばおじや風になど簡単にアレンジもできます。
キャンプで炊飯⑦:ご飯が残ったら
キャンプ場での保存方法①
キャンプで食事が終わり、ご飯が残ってしまった場合は冷めたご飯をラップかアルミホイルに平らに包んでクーラーボックスで保存しましょう。このとき、シリコン加工でくっつきにくいアルミホイルを使用すると大変便利です。キャンプ場で再度食べるときはそのままフライパンに置いて弱火にかけるか、焚き火や炭火があれば遠くに置いて余熱で温めるととても簡単です。ラップ保存の場合はチャーハンなどにアレンジしましょう。
キャンプ場での保存方法②
余ったご飯がまだ温かいうちにしょう油、みりん、かつお節、白ごまを加えておにぎりにし保存します。食べる時に包みから出し、ごま油を入れたクッカーか炭火でじっくり焼いたら美味しい自家製焼きおにぎりの完成です。朝ごはんとしても最適ですが、キャンプ場でバーベキューをしているときに焼きおにぎりが登場したら、大人も子どももテンションが上がること間違いなしです。
まとめ
キャンプで炊飯するポイントは
今回はお米が変化する過程に着目しながら鍋を使った炊飯方法をご紹介しました。アウトドアで必ず押さえたい炊き方のポイントは3つあります。「お米にしっかり吸水させる」「対流させながら短時間で沸騰させる」「沸騰したら20分以上高温を保つ」です。この3つのポイントさえ覚えればキャンプ場へ行ってもクッカーや鍋で簡単に炊飯できますのでぜひチャレンジしてみてください。
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