藤とはどんな植物?
藤と日本
藤は、マメ科のツル植物。日本の各地で藤棚が見られ、春の風物詩でもあるお花です。日本では本州・四国・九州・沖縄に分布し、4月〜5月頃に開花します。藤棚や鑑賞用に利用されるノダフジと、山で見かけるヤマフジの2種類が日本の固有種で、古来から生活の中で親しまれてきました。
日本人と藤の歴史
藤は古事記の中にも描写があるお花です。奈良時代には歌にもよく詠まれ、万葉集にも藤の歌が載っています。枕草子や源氏物語などの文学の中でも愛された藤。また歴史上で有名な藤原氏をはじめ、地名や名前、家紋にもたくさん使用されていたところを見ると、身近な植物であり、古くから鑑賞の対象であったことが窺えます。
藤と藤色
「藤色」は、藤の花からきた色名。紫色は奈良時代から位の高い人々が身につける色でした。紫色を染めるには非常に手間がかかるため、生産量が少なかったからなどと言われています。そんな紫色の花をつける藤は貴族に愛され、繁栄のシンボルともされてきました。「藤色」という色名は、平安時代に生まれたと言われています。
藤にはどんな種類がある?
マメ科フジ属
藤はマメ科フジ属の植物で、フジ属の中でも8品種ほどに分かれます。一般的に藤というとノダフジのことを指し、この種をもとにさまざまな園芸品種が作出されています。日本固有種のほかには、北アメリカや東アジアに自生する品種もあり、欧米や中国で栽培されています。
日本の固有種
ノダフジ
一般的に藤として鑑賞されているのがノダフジです。藤にはツルが右回りの品種と左回りの品種に分かれており、ノダフジは右回りです。ノダフジという名前は、この藤の名所であった大阪府旧野田村が由来しています。花の色は薄い紫色で、藤色はこのノダフジからとった色名だと言われています。
ヤマフジ
ヤマフジもしくはノフジ(野藤)とも呼ばれます。ノダフジに対し、ツルは左回りなのが特徴です。本州西部・四国・九州などの山に自生しており、春の開花時期になると淡い紫色が山にちらほら見えます。花の長さはノダフジに比べて短く、花ひとつひとつは大きめです。
日本の主な園芸品種
ナガフジ
ノダフジの園芸品種のひとつで、花房の長さが50cmから200cmにもなる品種があるナガフジ。花房が長い種類全般を指すことや、ノダフジを指すこともあり、ちょっとややこしい名称です。
濃いめの藤紫色で少し大輪のナガフジのほかに、100〜200cmの花房を持つ「九尺藤」、150cmほどで淡青紫色の「六尺藤」、70〜80cmほどの「野田長藤」などがナガフジと呼ばれます。
シロバナフジ
こちらもノダフジの系統のひとつで、白い花が咲くシロバナフジ。花房は20〜30cmと長く、山陰地方などで自生しているものもあるようです。代表的な園芸品種の「昭和白藤」は白い藤のなかでは特に長い品種で、花穂が60cmほどにもなります。遅咲きなのが特徴です。
アケボノフジ
口紅藤とも呼ばれるアケボノフジは、淡い赤色の藤です。白花種ですが蕾が淡い赤色で、開花すると花びらの先に口紅のように赤色が残ることから名前がつけられました。絵代表的な園芸種では「白紅藤」や、濃いピンク色の「昭和紅藤」などの品種があります。
アカバナフジ
またの名を桃色藤とも呼ばれるアカバナフジは、淡い赤みの混じった紫色のお花が特徴の藤です。つぼみのときは濃いピンク色で、花が咲き進むにつれ淡い赤色に変わります。代表的な園芸種では「木紅藤」や、赤紫色の花が咲く「海老茶藤」などのがあります。
イッサイフジ
ノダフジの系統で、盆栽などに人気なのがイッサイフジです。若木のうちからお花をつけることが由来して「一歳藤」と呼ばれています。丈夫で育てやすいのも特徴です。濃いめの藤色の花が咲く「野田一歳藤」などの園芸品種があります。
そのほか
そのほかノダフジの園芸種のヤエフジ・ハガワリフジ・カワリフジのほか、ヤマフジの系統のヤエヤマフジやカピタンフジなど多彩な品種があります。群馬県藤岡市にあるふじの咲く丘・ふじふれあい館などでは、45種もの藤が栽培されています。
海外のフジ科の植物
シナフジ
中国原産のフジで、中国各地で栽培されている種類です。ノダフジとヤマフジの中間のような特徴を持ち、大輪系の品種が多い種類です。アメリカで品種改良された園芸品種も多く、欧米ではよく栽培されています。クリームがかった白色の花が咲く「ニオイフジ」や斑入りの葉っぱの「フイリシナフジ」などがあります。
アメリカフジ
アメリカのフロリダ州やテキサス州が原産で、低木でお花が小さいコンパクトな藤の種類です。小さく管理しやすいので、日本でも近年ガーデニングで人気があります。初夏と晩夏の2回咲く「アメジストフォール」や春と秋に咲く白色の「ニベア」などがよく出回っています。
フジの近縁種
日本の固有種で、夏に花が咲くナツフジという種類もあります。クリームがかった白色のお花で、アメリカフジのようにコンパクトなのが特徴。日本では関東南部より西の山地などで自生している品種です。
また、キバナフジとも呼ばれる黄色い藤に似た花を咲かせるのはキングサリという植物で、同じマメ科ですがフジ属ではありません。
藤と花言葉
そもそも花言葉って?
花言葉とは、19世紀頃のフランスで流行した風習です。もともとお花を贈る習慣のあったフランスで、お花に添える粋な一言として流行りました。花言葉の由来は、お花の特性を性格や人格に置き換えて表したものや、ヨーロッパの神話や伝承から来ていることがほとんどです。
その後世界各国に花言葉の風習が広まるにつれ、いろんな国特有の花言葉が誕生しました。日本でも明治以降に伝わり、日本独自の花言葉も生まれています。
藤と海外
藤は、日本では奈良時代から鑑賞用として人々に愛されていました。ヨーロッパに藤が伝わったのは日本では江戸時代、シーボルトが日本の藤をオランダに持ち帰ったと言われています。
その後欧米では中国原産のシナフジを中心に品種改良してガーデニングに利用しました。近年は日本のノダフジ系統も人気があるそう。ヨーロッパの街並みでは、レンガの壁面に大きな藤を見かけることもあります。
藤のさまざまな花言葉
これからご紹介する藤の花言葉が日本独自で作られたものか、日本や中国の藤を愛した欧米人がつけた花言葉が日本に入ってきたのかは定かではありません。ですが、日本と海外の藤の花言葉はよく似ています。藤を見て感じることは世界共通なのか、興味深いところでもあります。それでは、花言葉をひとつひとつ見てみましょう。
【全般】藤の花言葉
女性を想像する花言葉が多い
藤は女性に見立てられることの多いお花です。奈良時代の万葉集でもすでに女性に喩えられた歌が詠まれていました。さらに平安時代の源氏物語では、有名な藤壺をはじめ、女性の美しさを藤で表現する描写がいくつか出てきます。
そんな文化が由来してか、藤の花言葉も女性をイメージする花言葉が中心です。藤の花言葉が怖い?と言われる理由もみてみましょう。
「優しさ」「歓迎」「佳客」
これらの花言葉は、藤の垂れ下がる花穂を、お客様を迎え入れる着物姿の女性に見立てたことが由来だと言われています。お辞儀をして「佳客」を「歓迎」する「優しさ」をイメージしているんだとか。ちなみに「佳客」とは、素敵なお客さんを表す言葉です。
「恋に酔う」「陶酔する恋」
これらは、藤の甘く芳醇な香りに由来した花言葉。春に花が咲いた藤棚の下に座ると、藤の甘い香りに包まれます。それを恋心に喩えた花言葉のようです。藤の仲間では、日本固有のノダフジ・ヤマフジが特に香りが豊かだと言われています。
「決して離れない」
この花言葉が、藤の花言葉が怖い?なんて言われる理由のひとつです。藤はツル植物なので、ほかの植物にも絡みつく特性があります。巻きついて絡みつく藤の姿がこのような、少し怖い花言葉を誕生させたとも言われています。
ただし藤だけに限らず、ツル性植物にはこのようなちょっと怖い花言葉がつくケースがよく見られます。ツルという特性に照準を当てた花言葉です。
【色別】藤の花言葉
【白色】
色の種類が多いわけではない藤ですが、特に白色の品種には個別に花言葉がつけられています。「可憐」というのは、白色の持つイメージが由来してついた花言葉。藤だけでなく、ホワイト系のお花には「可憐」という花言葉がつくケースが多く見られます。そのほか「懐かしい思い出」という花言葉もつけられています。
紫・赤・ピンク
紫色の花言葉は、藤全般の花言葉のひとつでもある「君の愛に酔う」という花言葉が当てられています。これは藤の花の香りに由来した花言葉です。いっぽう、赤やピンク色の藤の花言葉には、特に個別の花言葉はつけられていません。
【海外】藤の花言葉
英語名は「Wisteria」
藤の英語名は「Wisteria(ウィステリア)」で、アメリカの解剖学者にちなんでつけられました。フランス語では「Glycine(グリシン)」といい、「甘い」という意味のある単語です。どちらもそれぞれの国で色の名前になっており、ウィステリアは藤色よりも少し青みがかった色です。
「welcome(歓迎)」
日本の花言葉と由来が同じかどうかは定かではありませんが、英語圏だけでなくフランス語圏やスペイン語圏でも「歓迎」という花言葉がつけられています。
ヨーロッパなど海外において、玄関までのアプローチに藤のアーチを作ったり、藤を外壁や塀に藤を添わせて植えるのもポピュラー。ヨーロッパにおいても、藤は客を迎えるのにふさわしい植物であることが窺えます。
藤の誕生花
4月と5月の誕生花
藤は日本の4月全体の誕生花にされています。特に4月は1日、5日、29日、30日の誕生花に、5月は8日、21日、25日、31日の誕生花です。誕生花はその植物が一番美しい時期につけられることが多いので、藤も開花時期の4月と5月の誕生花に多くあてられています。
4月と5月の誕生花はほかにも
4月の誕生花は、ほかにもミヤコワスレやカスミソウなどがあります。海外ではアカシアやチューリップなども4月の誕生花です。5月は、日本ではアヤメやスズランなど。そのほかにも、日ごとの誕生花をまとめた記事もあるので気になる方はこちらもご覧になってみてください。
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藤の花言葉をプレゼントするには?
縁起のよい植物
藤は樹齢が非常に長く、日本各地に藤の古木が見られます。特に埼玉県にある藤花園には、樹齢1200年以上と言われる牛島の藤があります。そんな特性や名前の響きから、「不死の植物」として縁起がよいとされてきた藤。プレゼントにもぴったりの植物です。
ただし「不治」とも取れることから、病気の方やお見舞いの品にはあまりふさわしくないとする説もあるようです。
コンパクトな盆栽がおすすめ
藤をプレゼントするなら、盆栽がおすすめです。藤は切り花では販売していませんが、苗や盆栽は比較的よく出回ります。盆栽はコンパクトで育てやすく、とても華やか。ただし花を毎年咲かせるのは少し難しいので、盆栽やガーデニングがお好きな方におすすめのプレゼントです。
香水も素敵
また、女性へのプレゼントには、藤の香水もおすすめ。栃木県の大きな藤で有名なあしかがフラワーパークには、藤の香りを再現した香水や練り香水が販売されており、オンラインショップでも購入可能です。ほかにも、藤の香りの紅茶やお線香など藤に関するラインナップが充実しています。
ハンカチや小物も
また、藤は繁殖力が強くツルがよく伸びることから長寿や家運隆盛、お花がたくさん咲くことから子孫繁栄の象徴ともされてきました。そのため、着物や工芸品の図案によく使われてきたお花です。藤の絵や刺繍の入った小物なども、プレゼントにはおすすめです。
さいごに
いろんなシーンのプレゼントに
魅力的な花にふさわしい、素敵な花言葉を持つ藤。「離れない」なんてちょっと怖い花言葉もついていますが、成功をつかみ取るというポジティブな意味合いに取ってみるのもいいかも。実際、繁栄の象徴でもあった藤は、起業や開店のお祝いなどにも向いています。ぜひいろんなシチュエーションで藤をプレゼントしてみてくださいね。
植物の花言葉について気になる方はこちらから
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