沈丁花栽培のコツは病害虫対策と植え替えにある!
沈丁花という花は、日本でも古くから庭植えの木として愛されてきた花木です。開花するとまわりに甘い良い香りを漂わせるため、三大香木としても数えられる植物。
しかし庭植えで剪定などもしつつちゃんと管理しているつもりでも、いつのまにか枯れてしまうという人も多い栽培が難しいとされる木でもあります。
この植物を育てる時に気をつけたい病害虫や植え替えのポイントと、失敗しやすい点をご紹介しつつ、はじめて沈丁花を植えるという方でもできるだけ長く楽しめるような解説をしていきましょう。
また庭植えはできないというマンションなど集合住宅にお住まいの方でもできる、ベランダでの鉢植え栽培がおすすめな理由もぜひご一読いただきお役に立ててください。
沈丁花について
育て方の前に沈丁花の基本情報と特徴・開花時期をまず御覧ください。また沈丁花の木が枯れてしまう原因についてもはじめに知っていただくことで、育て方解説もわかりやすくなりますのでここでご説明しておきます。
基本情報
科・属:ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属
原産地:中国
英語名/学名:Daphne/Daphne odora
*雄株と雌株があり日本に入ってきて栽培されているものはほぼ雄株のため結実することはありません。もし沈丁花の実が手に入っても毒性が高い果実なので絶対に口にしないでください。
特徴や開花時期
木の高さは1-1.5mと低中木。中国原産で古くからよい香りがする木として庭に植えられ愛されています。その花の開花時期は3-4月。春の屋外で良い香りがしたらこの木が近くに植えられているのかも知れませんね。
耐寒性
耐寒性はあまり高いとは言えない木であるため、日本では本州くらいまでが庭植えできる場所といわれています。もしそれ以北でこの木を栽培しようと思われるのであれば、鉢植えにして冬だけでも温かい霜が降りないところに移動させれば耐寒性があまりない沈丁花も安心です。
沈丁花の木が数年すると枯れるのは
日当たりのよい場所で開花時期である春になると良い香りがする木は、ぜひ庭に植えたいと思われる方も多いでしょう。しかし耐寒性の低さも相まってこの木があまり地植えに適さない理由があります。
それは非常に根がデリケートであり、土の中の病原菌や植え替え時の傷などにより簡単に枯れてしまうこと。特に5年目以降はこの病害虫被害が顕著に現れるといわれています。
根が強くないので植え替えは注意深くしなければいけませんが、地植えで育てるよりも植え替えをしながら鉢植えで育てた方が長く何年も生きているものが多いのはそのためです。
沈丁花の育て方1.日当たり
木なのに地植えに適さず鉢植えで育てるのが向いている沈丁花。少し難しそうと感じる方もいるかも知れませんが、それにつけても多くの方が魅力的な花木として愛し庭木として選んでいるのも事実です。
初心者の方でもきちんと育て方に注意をすれば、自宅でこの香木を楽しむことができるでしょう。ここからはその育て方のヒントとなる注意点をご紹介していきます。まずはこの木に適した日当たりから。
沈丁花が好む日当たりは
開花のためには日当たりのよい場所が必要となってきます。しかし全日日光があたっている必要はなく半日陰くらいの場所が適した日当たり。日中ずっと日かげになるようなところでは木のためによくないため、数時間でも日が当たる場所に植え付けてください。
日当たりが悪いとどうなるのか
木のためによくない日当たりのよくない場所に植えてしまうとどうなるのか?それは花付きが極端に悪くなり最悪の場合はまったく開花しない年もあることも。
木が枯れるほどではありませんが、やはりそういったところでは健康的な株にはなりにくく病害虫被害で負けてしまうことも。総じて短命な木であることが多いのが事実です。
ベランダ栽培など鉢植え沈丁花の置き場所
一方庭植えにこだわらないのであれば、鉢植えを購入してくれば小さな株のうちは日当たりのよい場所への移動も簡単に行えるだけでなく耐寒性の面でも対策ができます。
市販の沈丁花の苗は1-2年ものが多いため、とても小さな5号鉢程度の鉢植えで売られています。力があまりない女性の方でも、このくらいの大きさであれば移動するのも苦ではないでしょう。
沈丁花の育て方2.鉢植えや地植えの植え付け
庭植えの場合は数時間でも日が当たる場所がこの木が好きな日当たり。もし植え付けていた場所が日陰になってしまった場合は植え替えも辞さないでしょう。沈丁花の植え付けには注意が必要です。
沈丁花の植え付け植え替え時期
この木を植え替えするなら適した時期は1年に2回あって、3-4月(開花期が終わったあと)か9-10月の2つ。どちらの時期でも一番気をつけるのは根の扱い方です。
苗を購入してきた場合にはほんとうに軽く根鉢を崩して鉢植えや庭植えにします。庭植えの大きな木を移植する場合は、造園師の方におまかせするか自分で行う場合は枯れてしまっても仕方がないという気持ちでおこなってください。
そのくらい大株の植え替えは難しいです。それが困るのであれば、挿し木での増やし方で新しい苗を作って別の場所に植え付けてみてはいかがでしょう。後述で挿し木のやり方もご説明しますのでそちらを参考にしてください。
植え付け植え替えのやり方と周期
鉢植えの沈丁花はすぐに根がまわって水切れなどをおこしやすく水やりが大変になることも。目安として2-3年に1度くらいの周期で植え替えをするのが理想的ですが、この作業もできるだけあまり頻繁にしたくないこと。
一般的な植え替えはひとまわり大きな鉢へとサイズアップしていきますが、この木の場合は一度に2-3周り大きな鉢に植えてしまい植え替え頻度を下げることで、植え替えによる枯れるという危機を逃れることができるでしょう。
沈丁花の育て方3.季節のお世話・夏
耐寒性が高くないというお話をしましたが、それでは夏場はどのようなお世話が必要なのか、どんな注意をしたらよいのか。ここと次の章では季節ごとのお世話についてお話します。
夏の沈丁花栽培
夏のお世話といえば剪定があります。基本的に自然にこんもりと丸く枝を張り、剪定はしないことが一般的。ただ枝が混み合って風通しが悪くなり病害虫が心配です。逆にスカスカすぎるので少しだけ切り戻して、脇芽を出したいという時には軽めの剪定がおすすめ。
剪定の時期は初夏5月ころ。花後すぐにおこなってください。時期がずれると木の中で準備されている花芽も切ってしまうことになるのでその前に切ることがポイントです。
夏に気をつけるポイントは病害虫と剪定
夏は剪定の他にも病害虫が多く発生する季節でもあります。剪定して株が弱っていると特にこのような被害が大きくなって枯れてしまうことも。暖かくなってきたら病害虫の被害を先読みして農薬を散布しておくのもひとつの方法ですよ。
沈丁花の育て方4.季節のお世話・冬
沈丁花は庭の半日陰に植えられることも多いですが、日当たりは好きなので夏場は剪定と病害虫が心配ごとでした。では冬はどのような悩みがおこりやすいのか、特に耐寒性について見ていきましょう。
冬の沈丁花栽培
冬場は特に乾燥しているようでなければ水やりもほとんど必要なく、夏のようにいろいろなお世話が必要な季節ではありません。しかし耐寒性が低い沈丁花にとっては、過酷な時期であることは間違いないでしょう。
冬に気をつけるポイントは耐寒性
冬になると木の幹のまわりに藁を編んだムシロを巻いている木を見かけることがあるでしょう。あの目的は害虫対策なのですが沈丁花は木の幹の中の水分の凍結防止にムシロを巻くことがあります。
常緑樹なのですが冬になるとどうしても葉が落ち気味であったり、葉色が悪くなることも。その対策としてムシロを用います。
沈丁花の育て方5.水やりと肥料
沈丁花の水やりは他の植物よりも気を使ってください。というのもこの木は根が特徴的で太いものだけでひげ根のようなものがないため水吸いがあまり得意ではないからです。気になる肥料の与え方とともに季節の違いや地植え・鉢植えでの日常管理を解説します。
沈丁花の水やりは地植えと鉢植えで違う
地植えの木にはほとんど水を与えず、時々降る雨だけで水分は十分というものが多いですが、沈丁花は先程の理由もあり地植えでも土の様子を見て水やりする必要があります。
しかしいつもしけっているほどあげるのもよくなく、目安として朝水やりをして夕方には土が乾いている程度が理想的。鉢植えであればあまり季節にとらわれずに、いつでも土の乾燥に気をつけてください。
地植えは春と夏以外はあまり水やりを気にすることはないのですが、土質により激しく乾燥するような場所であれば時々水をあげるのもひとつの方法です。
肥料をあげる時期とやり方
この植物に肥料をあげるなら寒肥となります。時期は1-2月頃におこなうのが一般的。寒肥については化成肥料ではなくて有機質肥料を選び株元にばらまいてください。このほか開花期が終わった春から初夏と成長期である10月ころに各1回ずつ、こちらは緩効性肥料(化成肥料)をあたえます。
沈丁花の育て方6.病害虫
あまり耐寒性もなく地植えでも水やりの必要があったりと少しお世話に個性がある木ですが、病害虫についても注意が必要です。沈丁花が長持ちしないのはこれらの理由が大きいからです。特に地植えの場合は気をつけて欲しいポイント。
沈丁花で気をつける病害虫
この木の病害虫を気をつけるのは開花後あたりからの温かい季節。害虫の活動が活発だから。しかし本当に怖いのは目に見えない隠された地下の部分で進行していることが多いのです。
かかりやすい病気
この木で特に気をつけるのが白紋羽病(はくもんぱびょう)という地中のカビ菌。これが根から入り込みからしてしまうことが多いからです。株が弱っていると特にこれらの菌に対する抵抗力が落ちて、あっというのに枯れたという場合も。
これは必ず土の中に発生する菌なので、土を新しくできる鉢植えは起こりにくいというメリットがあります。植え替えをあまり好まない難しい木ではありますが、地植えよりも鉢植えの方が病気にかかりにくく長く生きてくれるでしょう。
付きやすい害虫
見つけにくい地中の病害虫に対してわかりやすいのが温かい時期の虫。この木にもアブラムシがつきやすいです。見つけ次第捕殺するのがおすすめ。
特に剪定をした後にはアブラムシ程度でもダメージを受けてしまうこともあるため、ガーデニングに慣れていない方や沈丁花の様子を毎日見ている時間が足りないという方は、剪定はしないでおいた方が良いでしょう。
沈丁花の病害虫対策
病害虫のうち怖いのは病気の方。沈丁花が突然枯れるといわれるのは泊紋羽病(はくもんぱびょう)が原因のことが多いです。土を掘り起こして確認してみないとわからないこと。
温水治療法も一部の果樹などには無農薬の対処法として実施されていますが根の弱い沈丁花の場合これも難しいです。症状が現れたときにはすでに手の施しようがなく治せないため挿し木で次の世代の株を作っておくことがおすすめ!
沈丁花の育て方7.挿し木での増やし方
対策できない病気に弱い沈丁花。地植えの場合頻繁な植え替え・土替えも難しいため植え替えや株の更新には増やし方として挿し木で苗を作って予備に持っておくとよいでしょう。
沈丁花の挿し木での増やし方・時期
挿し木をおこなう時期は春と夏の2回。一般的には花の終わった4月末くらいにできるだけ若くみずみずしい枝を選んで採取・挿し木をします。もうひとつの挿し木のタイミングですが、その3ヶ月後くらいの7月末。このときは新しい枝が出ていますので、それを挿し木用の穂として使用してください。
とっても簡単!挿し木での増やし方
株のお世話には気をつけなくてはいけないことがたくさんありますが、挿し木で増やすのは他の木と同じくらいの難易度で、初心者の方でも何本か差しておけばそのうちいくつかは根が出て苗として大きくなってくれるでしょう。
やり方は新品の鹿沼土など清潔な土をよく湿らせたところに挿し木します。切り口は鋭利なカッター・小刀などでななめにカット。日陰で発根まで管理しましょう。約1ヶ月くらいで発根するので少しずつ日当たりの良い場所に出してくれば挿し木は成功です!
病害虫対策をして沈丁花の木を長くもたせよう
開花期にはとてもよい香りがして庭木として昔から愛される沈丁花。水はけの良い土で少々乾燥させ気味に育てるのがポイントですが、乾燥を嫌うという性質もあるため、地植えでも水やりをする必要が出てきます。
また移植を嫌うため、地植えの植え替えはほぼNG。病気対策には鉢植えで育てることがおすすめです。お世話が大変な庭木ではありますが、それでも植える方が減らない人気の花木。気になる方はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
植物栽培・育て方が気になる方はこちらもチェック
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