ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)とは
三尺バーベナという名前で流通
ヤナギハナガサは、南アメリカ原産のクマツヅラ科クマツヅラ属の植物です。ヤナギハナガサという和名ですが、別名の三尺バーベナ(サンジャクバーベナ)という名前が広く知られています。まっすぐ伸びた茎の先端が3つに分かれ、紫色の小さな花が密集して咲くのが特徴的なお花です。
帰化植物
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)は背が高く丈夫なためボーダーガーデンなどに使いやすく、ガーデニングで人気の植物です。日本には20世紀半ばに持ち込まれたと言われています。繁殖力が強く世界各国で野生化しており、日本でも帰化植物のひとつ。道端などでも見かける機会が増えました。
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の分類
クマツヅラ科とは
クマツヅラ科には約250種の品種があります。日本名ではクマツヅラというバーベナ(学名:Verbena officinalis)とは、日本や中国、ヨーロッパに分布する多年草。葉っぱに黄疸や下痢などに効く効能があるとして、ヨーロッパでも日本でも古くからハーブや生薬として用いられてきました。花穂が特徴的なお花です。
宿根バーベナ
クマツヅラ科の仲間には一年草の品種もあり、宿根草の品種が園芸種として流通しています。現在一般的に「宿根バーベナ」という名前で呼ばれているのは、交配種やバーベナ・テネラ(学名:Verbena tenera)などの草丈が低い品種が主流です。ヤナギハナガサより花が大きく、グランドカバーなどにも人気です。
宿根バーベナとヤナギハナガサ
ヤナギハナガサも宿根草なので、園芸店などでは宿根バーベナとまとめて表記されることもあります。ただほかの宿根バーベナと呼ばれる品種よりも草丈が高くお花の色も1種類であることから、ヤナギハナガサを特に三尺バーベナと分けて表記されているものが多くみられます。
ハーブのバーベナとの違い
ちなみにクマツヅラ科の仲間にはほかにも、近年ハーブの一種として名前をよく聞くレモンバーベナなどもあります。ハーブのバーベナといえば、このレモンバーベナを使ったものが多いようです。レモンバーベナはクマツヅラ科コウスイボク属で、バーベナやヤナギハナガサとは厳密には分類が違います。
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の基本情報
名前 | ヤナギハナガサ |
別名 | 三尺バーベナ(サンジャクバーベナ)・立ちバーベナなど |
学名 | バーベナ・ボナリエンシス(Verbena bonariensis) |
原産地 | 南アメリカ |
科名 | クマツヅラ科(Verbenaceae) |
属名 | クマツヅラ属(Verbeneae) |
分類 | 宿根草 |
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の名前と由来
ヤナギハナガサの学名と由来
ヤナギハナガサの学名は、バーベナ・ボナリエンシス(Verbena bonariensis)といいます。種小名にあたるボナリエンシス(bonariensis)とは、「ブエノスアイリスの」という意味。ブエノスアイリスはアルゼンチンの首都で、原産地に由来した名前です。バーベナ・ブエノスアイリスと表記されていることもあります。
ヤナギハナガサの名前と由来
和名ではヤナギハナガサ(柳花笠)という名前がつけられています。花笠とは山形のお祭りなどでも有名な装飾された笠のことですが、ヤナギハナガサの花が笠のようなかたちをしていることが由来しています。また、細い葉っぱが柳の葉に似ていることに由来して、ヤナギとつけられています。
三尺バーベナの名前と由来
別名の三尺バーベナとは、ほかの宿根バーベナに比べて背が高くなる高性種であることからつけられた名前です。三尺とはおよそ90cmほどですが、90cmを超えることも多々あります。背の低い宿根バーベナとの違いが分かりやすいので、三尺バーベナの通称のほうがよく使われます。タチバーベナと呼ばれることもあります。
バーベナの名前と由来
バーベナ(verbena)とは、「よい植物」を意味するラテン語が由来だと言われています。バーベナは古代エジプトや古代ギリシャ、古代ローマでも神聖な植物とされていました。キリスト教では、イエスが十字架から外された後に傷を癒した聖なるハーブという伝来があります。フランス語読みでヴェルヴェーヌ(verveine)ということもあります。
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の特徴1:性質
育てやすい植物
ヤナギハナガサは寒さにも強く暑さにも強いため、とても育てやすいのが特徴のひとつです。日本全土で栽培できます。ただし北海道などの寒冷地では越冬できないため、翌春に種を撒いて育てる一年草扱いです。冬には地上部が枯れ、春に芽を出し、6月頃から咲き始めます。
繁殖力旺盛
世界各地で帰化植物と化しているヤナギハナガサは、繁殖力が旺盛なのが特徴。地下茎やこぼれ種によってどんどん増えていきます。国土交通省によれば、河川において注意が必要な外来種のなかに、ヤナギハナガサを含むクマツヅラ科の植物が挙げられています。植える時は、繁殖しすぎないように気をつけましょう。
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の特徴2:花
サクラに似た小さなお花
茎が先端で3つに分かれ、さらに3つに分かれてお花をつけます。直径2〜3mmの小さな花が密集して咲き、3〜5cmほどのかたまりに見えるのが特徴です。お花は筒状花で、先端が5つに分かれてサクラに似たかたちをしています。筒状の部分は赤紫色、開いた先端の部分は淡い紫色をしており、そのコントラストも美しいお花です。
開花時期
開花時期は6月頃から10月頃まで。開花時期が長いのも園芸植物として人気の理由です。比較的放任でもお花を咲かせてくれますが、5月頃の芽出しの時期に切り戻しを行うと花が増えます。ヤナギハナガサは切り花としても楽しめ、ドライフラワーにもなります。
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の特徴3:葉と茎
葉っぱの特徴
ヤナギと名前がついた由来のように、葉っぱは細長いのが特徴。葉の縁はギザギザとした鋸歯がついています。葉には表にも裏にも粗い毛が生えていて、手触りはごわごわとした印象です。茎の下のほうの葉っぱが大きく、上にいくにつれ細く小さくなります。
茎の特徴
ヤナギハナガサは高さが60〜150cmにも伸び、まっすぐ直線状に伸びた茎から放射状に分岐します。茎の先端が3つに分かれ、お花をつけます。茎の断面は普通四角形で、まれに五角形や六角形になることも。茎の中は空洞です。茎にも葉と同様の粗めの毛が生えていて、ざらざらした触り心地です。
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の花言葉1
「幸運に」「生命力の強い」
ヤナギハナガサの花言葉は、「幸運に」。はっきりとした由来は分かりませんが、ギフトにもお庭に植えるにも嬉しい花言葉ですね。「幸運」の花言葉がつく植物はほかにも、クローバー「幸運」や、ポインセチア「幸運を祈る」などがあります。また、その性質から「生命力の強い」という花言葉もついています。
「忍耐」「勤勉」
バーベナ全体の花言葉は、「忍耐」「勤勉」です。真夏の暑い時期にもお花を咲かせることが由来だそう。ほかにも「忍耐」という花言葉がつくお花は、ウメ、シュウメイギク、ネリネ、ヤブランなどがあり、「勤勉」の花言葉がつくお花はムラサキツメクサなどがあります。
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の花言葉2
「魅了する」「魔力」「柔和」
こちらもバーベナ全体の花言葉。バーベナという名前の由来でも前述しましたが、バーベナは古代文明からハーブとして利用されたり、神聖な植物とされてきました。バーベナの持つ不思議な力を「魅了する」とする文化もあれば、「魔力」とも捉える文化もあり、表裏一体な花言葉がつけられています。
「家族愛」「家族の和合」
こちらもバーベナ全体の花言葉。小さなお花が密集して咲いている姿から連想された花言葉です。ピンク色のバーベナ個別の花言葉に「家族との融和」、赤色の個別の花言葉に「一致協力」などといった花言葉もあります。「家族愛」という花言葉がついた植物はほかにも、アジサイなどがあります。
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の誕生花
ヤナギハナガサの誕生花
誕生花はその植物が一番美しい時期につけられることが多いため、バーベナは開花時期が長いこともあってたくさんの誕生花がつけられています。中でも特にヤナギハナガサの誕生花は5月25日です。5月25日の誕生花はほかに、カスミソウやニチニチソウ、パンジーやラナンキュラスなどがあります。
バーベナ全体の誕生花
バーベナ全体の誕生花は、4月7日、14日、5月24日、6月24日、27日、7月18日、29日、9月10日、10月14日などがあります。誕生花という風習はいろんな国の文化が混ざっていることが多いので、誕生花が多いバーベナはいかにたくさんの国で身近な植物であるかが窺えます。
花言葉と誕生花のまとめ
花言葉 | 誕生花 | |
---|---|---|
ヤナギハナガサ | 「幸運に」「生命力の強い」 | 5月25日 |
バーベナ全体 | 「忍耐」「勤勉」 「魅了する」「魔力」「柔和」 「家族愛」「家族の和合」 |
4月7日、14日 5月24日 6月24日、27日 7月18日、29日 9月10日 10月14日 |
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の育て方と特徴
庭植え向きの植物
ヤナギハナガサはとにかく育て方が簡単な植物。生育旺盛な性質のため、特に庭植え向きの植物です。鉢植えでも楽しめます。背が高くなるため、花壇の後方部やボーダーガーデンなどに向いています。茎が細く上部の葉っぱも目立たないため、ほかの植物となじみやすいのが特徴です。
ローメンテナンスガーデンにおすすめ
土も選ばず、庭植えの場合ほとんど水やりも必要ないため、育て方や管理が楽なローメンテナンスガーデンに使える植物です。鑑賞時期も長いうえ、夏のお花が少ない時期にもお花を咲かせてくれます。バラとも相性がよく、ローズガーデンにもおすすめ。蝶が好むのでバタフライガーデンにも使えます。
ヤナギハナガサの育て方と特徴
育て方の難易度 | とてもやさしい |
開花時期 | 6月〜10月 |
草丈 | 60〜150cm |
耐暑性 | 強い |
耐寒性 | 強い |
合うスタイル | 花壇、ボーダーガーデン、ローズガーデン、 バタフライガーデンなど |
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の育て方1:環境
日当たり・置き場所
日当たりがよい場所を好みます。多少の日陰にも耐えますが、花付きが悪くなる傾向があります。加湿を嫌い、風通しのよく水はけのよい場所を好みます。繁殖力が高いため、近隣の庭や空き地、道端などへ繁殖しないように配慮できる場所に植えるのが好ましいとされます。
水やり
ヤナギハナガサは庭植えの場合、ほとんど水やりは必要ありません。加湿を嫌うので、水のあげすぎには注意しましょう。庭植えの場合あまり気にするのことはありません。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたらたっぷりとあげます。根腐れしないように気をつけましょう。
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の育て方2:お手入れ
植え付け
植え付けの時期は、春が適期です。ヤナギハナガサは苗もしくは種が販売されています。種まきの場合は3〜4月頃、苗の場合は5〜6月頃が適しています。苗の植え付けは上記の時期以外でも可能です。肥えた土だと徒長しがちなので、肥料は少なめで植えます。
植え替え
庭植えの場合ほとんど必要ありませんが、生育が早く株が混み合いやすいので、植え替えをするとすっきり整理できます。鉢植えの場合は、生育が早いので根詰まりしないよう植え替えが必要です。1〜2年に1回、根の回りを確認して植え替えましょう。時期は3〜4月が適期です。
肥料・剪定
庭植え・鉢植えともに植え付けのときに元肥を与えます。鉢植えの場合は月に1〜2度液肥を与えると花つきがよくなります。剪定は、5月頃の茎が伸び始める時期に切り戻すと枝がよく分かれて花つきがよくなります。また、草丈も抑えられます。晩秋に地上部が枯れてきたら、地際で切ります。
ヤナギハナガサ(三尺バーベナ)の育て方3:ふやし方
株分け・挿し芽
ヤナギハナガサはこぼれ種、地下茎で増えるほかに、株分けや挿し芽などの方法があります。大きくなった株をスコップで割るように分け、株分けします。時期は春頃がおすすめです。挿し芽の場合は、10〜15cmほどに切り取った茎を土に挿して発根させます。
種まき
花が終わったあとにできる種を採取しておくか、売っている種を使います。最近はフリマアプリなどで個人宅で採取した種が売られているので、利用してみるのもいいかも。種まきの時期は3〜4月で、播種箱などにまきます。覆土は薄く、発芽までは水を切らさないように管理します。
さいごに
育て方も簡単で使いやすい植物
ヤナギハナガサは育て方も簡単で、ローメンテナンスで楽しめる植物。草丈が高くてお庭のポイントにもしやすく、ほかのお花とも相性がよいのでガーデニング初心者にもおすすめです。繁殖の加減に気をつけながら、上手に楽しんでみてくださいね。
バーベナや庭作りについて気になる方はこちらもチェック!
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