イングリッシュガーデンとは?
イングリッシガーデンと言えば、多くの人は洋館のエクステリアいっぱいにあふれる草花や植栽が、緑豊かなる田園風景を思い描くことでしょう。そして家の主らしき人が、庭の小径を散策しながら満足気にそれらを眺める光景も浮かびます。それでは、イングリッシュガーデンとは、いったいどのようなものなのでしょうか?
イングリッシュガーデン、つまりイギリス式庭園は、西洋風庭園の様式の一つであり、他にはイタリア式庭園やフランス式庭園などがあります。
イタリア式庭園がヨーロッパ各地に広まりました。イタリア式庭園の影響を受け、17世紀に生まれたフランス式庭園は、平面幾何学式庭園と呼ばれるものです。フランスの地形から主に平面にまっすぐ伸びるようなスタイルで、自然の風景に人工的に手を加え、左右対称の調和を綿密に配置された庭園です。
そして、19世紀のイギリスでは、人工的に作り上げる幾何学的な庭園に否定的な動きが始まりました。イギリス式は、敷地内に植えられた芝生や、樹木、そして池、それを取り囲む森林などから配置され、自然の風景美を取り入れることが特徴でした。
時代が変わり、一般の家庭でもアレンジできるようなコテージガーデンが広まりました。そして、自然の景観美にこだわる、私たちが思い描く田園風景を思わせるようなスタイルのイングリッシュガーデンが認識されるようになりました。
イングリッシュガーデン
イングリッシュガーデンの特徴
あくまでも自然の美しさにあります。自由な発想で植物や草花を配置して植えます。一年中外からも中からも四季の変化を自然の景色とともに触れることができます。レンガを敷き詰めたり、小径を作ったり、ウッド系のフェンスやベンチを配置したりします。自然美のアレンジができるのが特徴です。
イングリッシュガーデンの作り方
自由な発想とは言え、季節ごとの草花や彩、バランスなどを考え計画的に行わなければいけません。苗やタネの品種の選び方や、植物の背丈もイメージしながら配置するのがよいでしょう。それから、植物の選び方は、日本の土壌や気候を考慮し、その土地に適したものを選ぶことも大切です。
低木や樹木、背の高い植物や、草丈の低い草花を組み合わせ、自由な発想で配置しながら作ります。それから、植物が一年草なのか多年草なのかも考えながら選んだほうよいでしょう。
また背の高い植物から順番に植えると見栄えもよく奥行きもできます。ピンク、ブルー、パープル系を中心に色合いの選び方やバランスも考え配置しましょう。一般的な作り方は、ボーダーガーデンというスタイルです。
イングリッシュガーデン作り方|ボーダーガーデンとは?
ボーダーガーデンは、花壇のスタイルが、建物や塀、庭の小径などに沿ってその長さを利用した細長いものです。花壇の手前から背の低いものを、奥にかけてだんだん背の高い植物をさりげなく配置するのがポイントです。イギリスの田園風景を思わせる代表的なスタイルで、庭園の雰囲気がイギリス式により近づきます。
小径の両側に背の低い植物が配置され、その奥の植物がだんだん背が高くなっています。
イングリッシュガーデン作り方|種、苗の選び方
一年草とは?
花壇に蒔いたタネが発芽し、成長、開花をして、一年で枯れてしまう植物のことです。春にタネを蒔いてから夏に開花し、冬までに枯れる「春まき一年草」としては、朝顔やひまわりがあります。また秋にタネを蒔き、翌春に咲いて夏までに枯れる「秋まき一年草」には、パンジーや、スイートピーがあります。
二年草とは?
二年草は、タネを蒔いてから一年以内で開花せず、2年かかって、開花や結実する植物のことです。ジキタリスやカンパニュラなどがこれにあたります。
多年草とは?
多年草は、2年以上にわたり生育する植物で、一年草、二年草に対して使う言葉です。冬に地上部の一部は枯れても地下茎などが枯れずに残り、毎年、発芽・成長・開花を繰り返すものが多年草で、とても簡単に利用できます。クラマチスやアネモネ、アガパンカスなどは初心者でも育てやすい多年草です。
イングリッシュガーデン作り方|低木の選び方
ブルーベリーは、1m~3mになりますが、初心者にも比較的簡単に育てやすく、手軽に楽しめる小果樹です。ハイブッシュ系とラビットアイ系に分けられます。粒が大きくたくさん実がつく、ハイブッシュ系のオニールやブルークロップなどが人気が高いです。
日本産の低木でもイングリッシュガーデンに映えます。
紫陽花は、日本産の低木です。梅雨の時期を美しく彩る代表的な花木で、広く世界中で親しまれています。花色は土壌の酸性度に影響され発色し、樹高は2mほどになります。ガクアジサイが原種で、そこから品種改良され色々な紫陽花に変化しました。
クチナシも梅雨の時期に大型の白い6弁の花を咲かせます。濃厚な花の香りを漂わせ、秋には橙赤色の果実を実らせ、黄色の染料としても利用されます。樹高1m~2mほどの低木になります。大型で八重咲きのオオヤエクチナシは、花が豪華ですが、実はつきません。
イングリッシュガーデン作り方|植物の配置例
花壇に同じような品種や色あいのものを植えたら、隣の花壇は別の品種や色を選び自然な境界を作ります。組み合わせや選び方で、一年中次々と草花が咲く様子が楽しめます。一番手前には背丈の低い一年草や二年草を植えます。その奥にはあまり手のかからない背の高い多年草や低木を配置すると後々が楽になります。
イングリッシュガーデン作り方|植物の選び方
背丈の高い植物
背丈の高い植物は選び方一つで花壇を華やかにします。ジキタリス、ルドベキア、タチアオイなど、どれもよく見かけますが、初心者でも簡単に育てられます。
ジキタリスの多くは二年草として扱われ、ベルのようなユニークな花びらが特徴的です。秋にタネ蒔きをして、翌々年の春に咲かせるか、春に蒔いて翌春に咲かせるかにします。草丈はおよそ150cmぐらいになります。花を穂状につけ、すらりと優雅な様は洋風ガーデンによく映えおすすめです。
多く栽培されているルドベキア・ヒルタは一年草、二年草です。秋蒔きにし、防寒して冬越しさせると初夏から黄色や赤の花を咲かせます。また春蒔きにしても夏に開花します。病害虫にも強いのですが、多年草のオオハンゴンソウは特定外来生物指定されている植物ですので、注意が必要です。
ホリホックは、草丈が1m~2mの直立した植物で、その草姿からタチアオイと呼ばれます。本来は宿根性の多年草ですが、春にタネを蒔くとその年の夏に開花する一年草タイプもあります。色は赤やピンクが主流です。
つる性のアサガオ
古くから親しまれている朝顔はつる性の一年草です。色も豊富で、白やピンク、ブルー、紫の他に、品質改良も進み花弁に白い模様の入ったものもあります。花の大きさも巨大輪から小輪まで変化に富んでいます。また、つるを長く伸ばしてカーテンのように仕立てると立体感がでて、簡単にイングリッシュガーデンの仲間になれます。
背の低い植物
アネモネは、耐寒性が強く初心者でも育てやすく、草丈は15cm~50cmほどになります。赤、青、ピンクなど色鮮やかな花を咲かせます。春に咲いて、夏前に地上部を枯らし、塊根を作って休眠します。多年草(宿根草)なので何年も植えたままで花を咲かせるのでおすすめです。
ラベンダーは、鮮やかな紫色と心地よい香りが特徴のハーブで、イングリッシュガーデンには欠かせません。背丈は20cm~130cmになります。品種も豊富ですが、イングリッシュラベンダーが一般的です。害虫の被害はほとんどありませんが、春先にかけてアブラムシやハダニがつくことがあります。
イングリッシュガーデン作り方|グランドカバープランツの選び方
グランドカバープランツはむき出しになっている庭の地面を覆ってくれる植物のことです。花壇のレンガや飛び石を敷いてあいているところをグランドプランツで覆うこともできます。
葉色が明るい多年草です。6月くらいに白い花を咲かせます。草丈は30cm~80cmで耐寒性が強く、地面が見えないくらい葉が茂り、簡単に生育するので手がかからないです。
多年草でつるの長さが50cmほどになります。春から秋まで1cmほどのピンクの小さな花を咲かせます。茎がほふくして広がり、グランドカバーとしてもおすすめですが、簡単に広がりすぎることがあるので、切り戻すことも必要になります。
草丈が10cm~30cmの多年草で、日陰でも育ち、耐寒性も強いので育てやすいです。ほふく茎で横に広がり、春に青紫やピンクの花を咲かせます。
イングリッシュガーデン作り方|ハーブ類
ガーデン作りに欠かせないハーブ類は、害虫の被害を受けることも少ないので、花壇の片隅には欠かせません。フェンネル、モナルダ、カラミンサ、グレコマなどは多年草なのでおすすめです。ローズマリーは一年草ですが、身近なところでは、シソもハーブの仲間で、簡単に育ちます。
モナルダの別名はハーブティーとしてもよく利用される「ベルガモット」です。草丈が40cm~100cmほどになる多年草なので育てやすいハーブです。
フェンネルも初心者でも簡単に育てられる多年草です。古くは古代ギリシャローマ時代から薬用や食用に使用されてきました。ハーブティーやサラダにも利用できます。
耐寒性の強い常緑の多年草です。地面を覆うようにつる状の茎が長く伸びて広がります。草丈は5cm~10cmですが、つるは1m以上にもなるのでグランドカバーとしてもおすすめです。
イングリッシュガーデン作り方|自然素材のアイテム
エクステリアを飾るアイテムの選び方をどうするか?木材や天然石などの自然素材を使うのが好ましいでしょう。花壇にレンガをあしらったり、庭の小径に石畳を敷いたり、ウッドデッキを配置したりすることでイングリッシュガーデンの趣が増すことでしょう。またおしゃれなガーデニンググッズを揃えることで庭作りがさらに楽しくなります。
イングリッシュガーデン作り方|薔薇をモチーフに
薔薇をモチーフにしたガーデンは誰もがあこがれます。しかし、手入れが大変だと思う人も多いことでしょう。苗の種類や育てる場所の選び方によって簡単になります。
薔薇は低木ですが、その樹形から、木立ち性、半つる性、つる性の三つのタイプに分類されます。ミニバラなどは木立ち性に分類されます。グリーン・アイス、花便り、八女津姫は、害虫にも強く初心者に向いています。つる薔薇のキモッコウバラ、ニュー・ドーン、アンジェラも害虫には比較的強く、こちらも初心者に向いています。
剪定バサミとローズガーデン用手袋は必須アイテムです。
赤い果実
イングリッシュガーデンの作り方|ワンポイント
花壇の片隅に家庭菜園があってもいいのです。自然体に違和感がないように植えれはいいのです。比較的簡単に作れるイチゴやミニトマトなど、赤い実は訪れる人々の目を引くものです。実って、収穫する楽しみもできます。しかし、ヒヨドリなどは赤い実が大好きなので、対策が必要です。
フルーツガーデンは、カラフルな色使いが、甘い香りとともに訪れる人を楽しくさせるものです。ゆっくりと散策できるスペースがあるとうれしいですね。
ラズベリーはほとんど無農薬で作れて、あまり場所をとらないので試してみる価値があります。1m~1.5mの低木で、落葉性で耐寒性に強く、初心者でも簡単に育ちます。
イングリッシュガーデンの作り方|よく使う用語集
イングリッシュガーデン(草花や植栽であふれる緑豊な洋風な庭) ボーダーガーデン(細長く作る庭のスタイル) 一年草(1年以内に、花が咲き枯れる植物) 二年草(1年以内に開花せず、2年かかる植物) 多年草(数年にわたって生育し続ける植物) 宿根草(地上部が枯れても地下部が残って再び活動する多年草)
常緑樹(一年中葉がついている樹木) 落葉樹(秋にいっせいに葉を落とす木樹木) 草丈(植物の地上部の高さ) 低木(高さが約1.5m以下の樹木) グランドカバー(植物で地面を覆うこと) グランドカバープランツ(地面を覆うように育つ植物)
まとめ
イギリス式庭園、いわゆるイングリッシュガーデンは、植物の自然の美しさがキーポイントです。あくまでも植物のありのままの姿を活かし、自然体でいられるように手を加えることが大切になります。
比較的簡単に育てられる植物を紹介しました。まずは植物の選び方や配置を整えることで、季節の変化とともに庭の変化も感じることができるようになると思います。
イタリアルネッサンスの庭園は、主軸線や噴水が中央にその周囲を幾何学的に区分された領域がいくつも広がり、屋敷の延長であると考えられていました。テラス式とも呼ばれ上段中央に建物を配し、庭園のパノラマ光景を楽しむことが特徴でした。