ロードバイクに最適の筋トレとは
トレーナーがスポーツ選手のために筋トレメニューを作成するときには、まずそのスポーツではどの運動能力が必要とされるか、どの筋肉を鍛えるべきかを考えます。これをニーズ分析と呼びます。
ロードバイクは基本的には有酸素運動ですが、連続して強くペダルを回し続ける無酸素パワーも必要です。自転車に乗った姿勢を長距離に渡って維持するためには、体幹の筋力と持久力も重要になります。太もも、ハムストリングス、ふくらはぎ、腹筋、背筋がもっとも大切な筋肉群です。
ロードバイク乗りが筋トレまで行う目的とは
ロードバイクのための筋トレというからには、自転車に乗るときに上半身及び下半身が動くのと可能な限り似たモーションで、かつ体幹の筋力と筋持久力を向上させるような鍛え方がおすすめになります。筋トレの主な目的とするのは、自転車に乗るときに使う筋肉を支える力を強くすることです。
心肺持久力も重要であることは言うまでもありません。長距離レースの後半などで、より疲れが少ない状態であればあるほど、筋肉がパワーを発揮できるからです。
ロードバイク乗りのための筋トレの場所選び
筋トレには大きく分けて、自分の体重のみを負荷とする自重筋トレと、バーベルやダンベルなどの重量を負荷とする筋トレがあります。
自重筋トレは場所を選ばず、自宅や公園などでもできるメリットがあります。重量を用いた筋トレは設備が整っていて、できれば良い指導員がいるジムに行く必要があります。
その選択には各人の経済状況や時間的制約も大きな要素になります。ここでは、そのどちらでもできるおすすめの鍛え方を紹介します。
筋トレに必要な器具と重量設定
下で紹介するエクササイズは自重筋トレを除いて、ダンベルかケトルベルを使用することを想定しています。標準となる1セット内の挙上回数とセット数を指定してありますが、これはあくまで参考内に留めて下さい。1人1人の筋トレ歴や習熟度によって、筋トレの適当な負荷は異なるからです。
もし指定のセット数を2回続けて問題なくこなせたときは、重量を追加してみて下さい。上半身なら1~3キロ、下半身なら2~5キロ程度が、一度に増やすことができる目安となります。
筋トレをもっとも必要とする人とは
誰でも齢とともに筋力は衰え、骨は弱くなります。筋トレはその加齢によるプロセスを遅らせることができます。ロードバイクに乗る際に必要な、太もも、ハムストリングス、ふくらはぎ、腹筋、背筋、など全身の筋力を維持するだけではなく、それらを伸ばしていくことが、ロードバイクに長く乗り続けるために大切な作業なのです。
その意味では、筋トレは中高年世代により恩恵が大きくなりますが、もちろん若いロードバイク乗りがパフォーマンスを向上させる効果も大いにあります。
ロードバイクのための下半身の鍛え方
下半身を構成する主要な筋肉群は大腿四頭筋(太ももの前面)、ハムストリングス(太ももの後面)、腰、尻、ふくらはぎなどです。足全体の筋肉と言ってもよいでしょう。自転車のペダルを回す動作をより強く、そしてより長い時間続けるために、これらの筋肉を鍛えることはロードバイク乗りにとって欠くことができません。
筋力には、最大パワーを発揮する瞬発力と、長時間の運動を続けるための筋持久力がありますが、ロードバイク乗りにはその両方が必要になります。
ランジ
直立した状態から、片足を前に踏み出し、両膝を90度の角度に曲げて、後ろの膝を床に着けます。
ランジはとてもロードバイクに向いた筋トレ種目です。片足ごとに負荷をかけるうえ、太もも、尻、腰、そしてハムストリングスといった下半身の主要な筋肉を鍛えることができます。まずは自重のみで行うことをおすすめします。
15~30回程度を1セットとして、3~5セットを試してみてください。その後、ダンベルやケトルベルを使って、徐々に重量を増やしていきましょう。
片足デッドリフト
両手にダンベルかケトルベルを持ち、片足立ちになり、体を腰から曲げ、上半身が床と平行になるまで前傾させます。
この動作はハムストリングスとお尻の筋肉を鍛えることができる筋トレ種目です。片足ごとに行うことによって、ロードバイク乗りにとって弱点となる筋力のバランス不均衡を見つけることもできます。最初はごくごく軽い重量(10キロ以下)から始めて下さい。目安としては8~10回程度こなせるようになったら、重量を徐々に増やして、負荷を高めていきます。
フロント・スクワット
ダンベルを両肩の前に担ぎ、あるいはケトルベルを両手で胸の前に抱えて、スクワットを行います。太もも、ハムストリングス、ふくらはぎ、尻、腰と広範囲の筋肉を鍛えると同時に、負荷に耐えて姿勢を維持することによって体幹も鍛える効果があります。
最初はごく軽い重量(10~20キロ)で始めて、15~30回ぐらいを問題なくこなせるようになったら、徐々に重量を増やして、負荷を高めていきます。同じ動作をバーベルを使って、さらに重い重量で行うこともできます。
片足ブリッジ
床に仰向けになり、両膝を立てた姿勢から、腰を床から浮かし、片足を天井へ向けて伸ばします。両足を交互に行います。
この動作はお尻の筋肉と背筋を重点的に鍛えることができる筋トレ種目です。足を上げるだけではなく、腰を床から浮かせることを忘れないでください。足の筋肉が強いロードバイク乗りは、ときにお尻や腰の力が弱いことがあります。そうした筋力不均衡の弱点を克服するには最適の筋トレ種目です。
10~20回程度を1セットし、3~5セット行ってください。
ロードバイクのための体幹部分の筋肉の鍛え方
体幹(コア)とは肩から腰までの身体の中央部にある筋肉群のことを指します。広背筋、背筋、腹筋、腰、尻など広い範囲に及ぶアウターとインナーマッスルの両方だと考えてください。
ロードバイク乗りにとって、体幹部分の筋力を鍛えることは、姿勢を維持するために大変重要な作業になります。もちろん、自転車に乗ること自体が即ち体幹を鍛えることに繋がるわけなのですが、その部分にさらに集中して、また効率よく行うことを目的としたのが、下に紹介する筋トレ種目です。
レッグリフト
床に仰向けになり、両膝をゆるく曲げて、足先を天井へ向けて持ち上げる筋トレです。広いスペースが不要で、自重だけでできることもメリットの1つです。
腹筋と股関節を鍛えることに効果が大きい筋トレ種目です。通常は両手を体の横に置きますが、頭の上に両腕を伸ばして行うと、より腹筋への負荷が大きくなります。勢いをつけて跳ね上がるのではなく、腹筋を使って足を持ち上げることを意識しましょう。
15~25回を1セットとし、3-5セットを目標としてください。
プランク
前腕部を床につけ、肩から足までの体軸を一直線にした姿勢を一定時間保持します。安全度が高く、自宅などでも手軽に行えます。
プランクは体幹部分の広範囲に渡る多くの筋肉(腹筋、背筋、肩、背中、太もも、尻、その他インナーマッスルも含む)を同時に鍛えることができます。
30秒を1セットとして、3~5セットに挑戦してみてください。それでは物足りなくなったら、時間を増やすより、片足を床から離すなど、難易度の高いバリエーションに挑むのがおすすめです。
レネゲート・ロウ
両手にダンベルを持ち、腕立て伏せの姿勢になります。次に片方の肘を90度くらいに曲げて、背中の後ろまで引き上げます。背中は平らな姿勢に保ちます。両手を交互に行います。
体幹の広い範囲に作用しますが、それ以外にも腕も鍛えることができる筋トレ種目です。さらに負荷を高めたい人は、上の動作の間に腕立て伏せを交えるのもおすすめです。
15~30回を1セットとして、3~5セット行ってください。セット間の休憩はしっかり取り、毎セット全力を出すようにします。
ロシアン・ツイスト
床に座り、膝を曲げます。ダンベルを両手で持ち、体の片側に置きます。上半身をやや後ろに反らした後、体を捻って、ダンベルを反対側に置きます。この動作を左右交互に行います。
腹斜筋を重点的に鍛える効果がある筋トレ種目です。この筋肉はロードバイクのペダルを踏むときに体が左右に揺れることを抑えるために使われます。
10~20回を1セットとし、3~5セット行ってください。無理なくこなせるようになったら、ダンベルの重量を増やし、負荷を高めていきます。
ロードバイクのための全身の鍛え方
ロードバイクは足だけの運動だと思われがちですが、実は体全体の筋肉が発揮するパワーと持久力の両方を必要とする全身運動です。筋力だけではなく、有酸素運動と無酸素運動の両方に対応できる心肺能力も重要な要素になります。
下に紹介する筋トレ種目はすべてファンクショナル・ムーブメントと呼ばれる多関節運動です。個々の筋肉にとらわれず、それらを連動させて機能的に動かす感覚と、それをより速く、より長く続けることができる体力を身につけることを目標とします。
バーピー
バーピーは優れた全身運動です。直立した姿勢から一気に胸と太ももを床につけ、即座に立ち上がって、両足でジャンプします。
この動作は身体の主要な関節をすべて使い、全身の瞬発力を高めるうえで非常に大きな効果があります。高くジャンプすると、ふくらはぎも鍛えることができます。10~20回程度を連続して行い、それを1セットとして、3~5セット行ってみてください。自重筋トレですので、さらに負荷を高めたい場合は、回数またはセット数を増やしていきます。
ケトルベル・スイング
ケトルベルを両手で持ち、両足の間にぶら下げた姿勢から、体全体を使って、目の前、あるいは頭の上まで振り上げます。
もっとも重要なポイントは、動作の始動はお尻を後方に突き出し、それを前方に戻す勢いを利用することです。腕力に頼ってしまっては、効果は半減してしまいます。
15~25回を1セットとして、3~5セット行ってください。その回数とセット数を問題なくこなせるようになったら、徐々に重量を増やして、負荷を高めていきます。
ダンベル・スラスター
ダンベルを両肩の前に担ぎ、スクワットを行った後に、そのまま両腕を天井へ向けて伸ばします。フロント・スクワットとプッシュ・プレスという2つの筋トレ種目を組み合わせたものです。
全身の筋肉を使用するうえ、瞬間的なパワーと持久力の両方を向上させる効果があります。瞬間的に伸びあがることで、ふくらはぎを鍛える効果も大きい筋トレ種目です。
10~15回を1セットとし、3~5セット行ってください。セット中はできるだけ速い動きを心がけることが大切です。
ダンベル・スナッチ
ダンベルを片手に持ち、両膝を曲げて、ダンベルを床に着けます。次に瞬間的な1動作で立ち上がり、ダンベルを頭上に持ち上げます。左右交互に行ってください。
瞬間的な全身の最大限パワーを向上させることが目的の筋トレ種目です。1動作をできるだけ速く行うことが大切です。動作間には十分な休憩を取り、1回1回に自分が持つ最大のパワーを込めることができるようにします。従って、回数やセット数は特に指定がありません。
ロードバイクに必要な筋トレまとめ
本記事をここまで読んでくれた方は、かなり熱心なサイクリスト、あるいは他スポーツのアスリートだと推測します。どのスポーツでも、それに合った筋肉を作り上げる最短の道は、そのスポーツそのものをすることです。それでは物足りなさを感じて、筋トレを取り入れようとするのは、そのスポーツに真剣な証拠だからです。
そうした人に要注意なのはオーバートレーニングです。ただでさえスポーツで酷使しているうえに筋トレまで行うと、身体にかかる負荷が大きくなるからです。
他のスポーツに向いた筋トレに興味がある方はこちらをチェック
今回の記事ではロードバイクに向いた筋トレを紹介しました。筋トレをスポーツに活かそうとするとき、その種目と組み合わせは無限大に広がります。その中で、自分のニーズにもっとも合った種目と鍛え方を選ぶことが非常に大切です。あるトレーニングが1つのスポーツに向いていたとしても、別のスポーツには有効であるとは限りません。他のスポーツに向いた筋トレについて興味がある方は下の記事も是非チェックしてみて下さい。きっと新しい発見があるはずです。
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出典:ライター撮影