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【連載】能楽の演目にもなったオミナエシの花言葉を解説!

誕生説は日本の能楽の演目の中でも演じられているオミナエシ。月曜連載、花と花言葉。今週は和名の由来が花言葉となるオミナエシの花言葉を解説していきます。日本の秋の七草の1つであるオミナエシは、万葉の時代から日本人に親しまれてきた花。さっそく解説していきましょう。
更新: 2021年1月4日
ティンカー・ベル
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オミナエシの特徴

日本の秋の七草の1つ

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日本の秋の七草の1つに数えられるオミナエシは、奈良時代末期より詠われていたと思われる日本最古の和歌集「万葉集」の時代から日本人に親しまれてきた花です。オミナエシ科オミナエシ属、学名はPatrinia scabiosifoliaと表記します。開花時期は8月~9月。1mほどの細い茎の先に黄色い小花をいっぱい咲かせます。その黄色い小花には特徴的な独特の香りがあります。

原産国は日本を含む東アジア

オミナエシの原産国は、日本を含む東アジアです。黄色い小さな花が集まって咲く姿が、雑穀の粟(あわ)にも見えることで、別名「粟花(あわばな)」とか「粟米花(あわこめばな)」と呼ばれています。緑色の細い葉は、縁が深く切り込んだ姿をしているのが特徴です。庭に植えると、葉の見た目と地下茎を伸ばす特徴から、花が咲く前は、雑草と間違えて抜かれてしまうこともあるそうです。

オミナエシの和名が由来する花言葉

「女郎花」という和名の由来は

オミナエシは、和名の花名を「女郎花(おみなえし)」と書きます。この和名の由来には、諸説があります。1説には黄色の小花が集まって咲く姿が、雑穀の粟飯(あわめし)の粟粒に似ていることから、粟飯の別名だった「女飯(おんなめし)」が変化した花名だという説です。

和名が由来する花言葉は「美人」

https://www.photo-ac.com/main/detail/1831568?title=%E3%81%8A%E3%81%BF%E3%81%AA%E3%81%88%E3%81%97

一方でいわれる「女郎花(おみなえし)」という花名の謂れが由来し、オミナエシの花言葉には「美人」という言葉が付いています。「美人」という花言葉の由来となるオミナエシの和名「女郎花」の由来は、華奢で可憐な花姿が女性らしさを感じさせ、女性(娘)を示す「おみな」という言葉が花名に付けられたのだと。そして「えし」とは古語の「へし(圧)=圧するという意」が「おみな」に加えられ、「おみな(女性)へし(圧)」が転じて「女郎花」となったという説です。

女性をも圧倒する美しさという意味


Photo by Kabacchi

「おみな(女性)へし(圧)」とは「女性をも圧倒する美しさ」という意味からついた言葉と言われており、花言葉の「美人」という言葉もそれにちなんでいるのだと言われています。ちなみに女性の美しさを象徴する花とされたオミナエシの和名「女郎花」の「女郎」という字は、平安時代、貴族の女性を示す敬称でした。

オミナエシの誕生説

能楽の演目になっている誕生説

Photo by sayo-ts

オミナエシの誕生説は、日本の代表的な仮面音楽劇である能楽の演目の物語の中で演じられている話の中で紹介されています。オミナエシの誕生説は、とても切ないこんな話です。時は平安時代。日本の第51代天皇であった平城天皇の時代に、近江(現在の滋賀県)の八幡という町に小野頼風(おののよりかぜ)という男が暮らしておりました。ある日頼風は、都に住む美しい女性を好きになり、そして結婚の約束を交わしたのですが、だんだん都へ向かう足も遠のき、とうとう故郷に帰ってしまったのだと。ところがその美しい女性は頼風を追って、近江の彼の屋敷を訪ねました。しかし彼女が頼風を訪ねて行ったときには、すでに彼は別の女性と結婚してしまっていたのです。

オミナエシは川へ身投げした女性の化身

Photo by nekonomania

別の女性と結婚してしまったことを知ったその女は、世をはかなみ、着ていた山吹色の着物を脱ぎすてて川に身を投げてしまったのです。やがてその着物が朽ちたところから、1輪の黄色い花が咲きました。その花がオミナエシだとされ、オミナエシはその美しい女性の化身だと誕生説に紹介されています。

能「女郎花」の題材となった物語

Photo by CanadaPenguin

美しい女性の化身であるオミナエシ。のちにその話を聞いた頼風は、自分が裏切ってしまったその女が身を投げた川を訪れて、その女性の化身となったオミナエシに触れようとするのです。しかしまるでその手を避けるように、花は茎を曲げ、そして頼風が手を引っ込めると元に戻るのだと。まるで頼風の薄情さをなじるような花の姿に耐え兼ね、とうとう頼風も近くの川に身を投げてしまったというのが、能楽の題材となった「女郎花」のあらすじでもあります。

オミナエシの誕生説が由来する花言葉

「儚い恋」「忍耐」「永久」

オミナエシの誕生説が由来する花言葉は、その話を知るとなるほどと思える「儚い恋」「忍耐」「永久」です。オミナエシの誕生説は、とても切ない話です。身を投げた二人を哀れみ、そのあと人々は京都の八幡にある男山の麓に塚を作って弔ったとされています。現在も、その男山の山上にある石清水八幡宮の側に、頼風が眠る男塚、そして松花堂庭園内にオミナエシに化身した女の女塚(女郎花塚とも呼ばれている)が残っています。


オミナエシの見た目の印象が由来する花言葉

「美人」「優しさ」

花名の由来の1説と同時に、オミナエシの見た目の花姿の美しさは、平安時代の頃から女性の美しさの象徴とされていました。見た目の印象からもオミナエシは「美人」という花言葉で象徴されています。黄金色の小花をたくさん咲かせる見た目の印象は「優しさ」という花言葉でも象徴されています。ちなみに平安時代前期の勅撰和歌集である「古今和歌集」の1歌に「秋の野に なまめき立てる女郎花 あなかしがまし 花もひととき」という歌があります。この歌は女性の美しさを題材にして詠われている有名な歌です。

美しい女性には気を付けなさいという意味

この歌の意味は、オミナエシの花を若い女性に見立て、清楚なイメージであるけれど、男心を誘うので気をつけなさいという意味の内容です。女性の美しさを象徴としているオミナエシは、こうした歌の中でも女性をも圧倒する美しさを象徴して詠われています。

秋の七草とその花言葉

秋の風情を観賞する7つの草花

Photo by bjimmy934

華奢で繊細な花姿が、美しい女性を象徴することで「美人」という花言葉を持つオミナエシは、秋の七草の1つです。春の七草というと、1月7日に節供として草粥にして食べる行事でよく知られていますが、秋の七草が何かご存じですか?オミナエシを始め、秋の七草は節供というものはありません。秋の七草は秋の風情を観賞するために選ばれた、秋に花咲く7種の草花です。

秋の七草とは

Photo by TANAKA Juuyoh (田中十洋)

秋の風情を観賞する秋の7種の草花とは、本項で花言葉を解説したきたオミナエシ(女郎花)、ハギ(萩)、オバナ(尾花=ススキのこと)、クズ(葛)、ナデシコ(撫子)、フジバカマ(藤袴)、キキョウ(桔梗)です。ちなみにハギの花言葉は内気・思案、オバナは活力・精力、クズは根気・努力、ナデシコは純愛・貞節、フジバカマは優し想い出・ためらい、キキョウは変わらぬ愛・誠実という花言葉が付いています。

秋の七草の由来


オミナエシを始め秋の七草は、秋に花咲く草の中から選ばれた7種の花。その由来を探ると、万葉歌人の1人である山上憶良(やまのうえのおくら)が詠んだ2首の歌から由来し、選ばれた日本の秋の風情を観賞する草花と親しまれるようになった7種だとされています。

山上憶良の歌のアサガオはキキョウのこと

Photo by ai3310X

ただ、1歌の中で、秋の七草にキキョウではなく、かわりにアサガオが入っているのです。そのわけには諸説はありますが、アサガオが日本に渡来したのが奈良時代であったことや、万葉集の句でキキョウを思わせる花がアサガオと詠まれていることから、万葉集のアサガオはキキョウであるというのが定説となっています。

花言葉を知ってオミナエシを観賞しよう

https://www.photo-ac.com/main/detail/1205436?title=%E3%82%AA%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%82%A8%E3%82%B7

秋の七草の1つで、平安時代の頃から美しい女性を象徴する花として、花言葉も「美人」と言葉が付けられているオミナエシ。「万葉集」や「古今和歌集」の中でもよく詠われているオミナエシは、昔から日本人に親しまれてきた花です。黄色い小花が集まって咲く花姿は、なんとも繊細で華奢な姿であり、女性のしとやかさや美しさを象徴している花言葉である「美人」も納得してしまいます。誕生説が由来となる花言葉は、切ない思いの言葉で象徴されていますが、石清水八幡宮の側の塚で眠る二人は「永久」に結ばれていることでしょう。花言葉を知って、秋の季節にはオミナエシの美しさをとくとご観賞ください。

花言葉についてもっと知りたい方はこちらもチェック!

当サイト「暮らしーの」では、月曜日に連載して数々の花の花言葉をまとめています。思いもよらぬその花の誕生説など、季節を追いながら、その季節を飾ってくれる花の花言葉を解説しています。花言葉についてもっと知りたい方はこちらもチェックしてみてください。