ZX-25Rのスペック:はじめに
2020年7月、かねてよりうわさされていたカワサキの新型ニンジャZX-25Rの詳細が明らかになりました。販売の開始は9月10日。4気筒エンジンを搭載した250ccバイクが国内市場でラインアップされるのはホンダのホーネットやカワサキのバリオスⅡ以来ですので、ニンジャZX-25Rのスペックに期待している250ccバイクファンは多いことでしょう。
250cc4気筒マシンはどう?
初めて4気筒エンジンが搭載された250ccのバイクは、1983年3月に販売が開始されたスズキのGS250FWです。以降、FZ250フェーザー、CBR250FOUR、GF250といったストリートやツーリングを想定したバイクが登場しましたが、1987年頃からはFZR250、GSX-R250、CBR250R/MC19といったレーシーなバイクが登場し、開発競争は熾烈を極めました。カワサキは他社に遅れて1989年の2月にZXR250を、1991年の2月にZXR250Rをリリースしています。
ニンジャZX-R25の最高速度は?
カワサキのZXR250Rの最高速度は、250cc4気筒史上最速の187.2km/h(6速16,000rpm理論値)です。新型ニンジャZX-25Rの最高速度はZXR250Rを超えられるでしょうか?ここではニンジャZX-25Rのスペックを確認したのち、最高速度にこだわって検証します。また、同じくカワサキのニンジャ250、ホンダのCBR250RR、ヤマハのYZF-R25、スズキのジクサーSF250とも比較しますね。なお、この記事は2020年7月30日現在の情報をもとに作成しますことをご了承ください。
ZX-25Rのスペック:サイズ
車体サイズをニンジャ250と比較
新型ニンジャZX-25Rの車体サイズはニンジャ250に近く、差別化するのは難しいといえます。全長は1980mm、全幅は750mm、全高は1110mm。ニンジャ250よりも全長で10mm短く、全幅で40mm広く、全高で15mm低い程度です。しかし、4気筒エンジンと2気筒エンジンの違いを感じるには好都合!カワサキにはどちらのエンジンにも自信があるのです。これはカワサキファンへの挑発?受けて立ちましょう。
車体サイズを他社の250ccスーパースポーツと比較
CBR250RR、YZF-R25ABS、ジクサーSF250の平均値と比較すると、ニンジャZX-25Rの車体サイズは他社3車種の平均値より全幅で18.3mm広く、全高で20mm高いのですが、全長は75mm短いですね。しかし、フロントタイヤの先端からリヤタイヤの後端までの長さは、他社3車より3mm短いだけに過ぎません。ニンジャZX-25Rの車体サイズはコンパクトだといえますが、体感できるほどの差ではないといえます。
ZX-25Rのスペック:足回り
足回りをニンジャ250と比較
新型ニンジャZX-25Rのフロントサスペンションにはインナーチューブ径Φ37mmの倒立フォークが、リヤサスペンションはホリゾンタルバックのリンク式が採用されています。一方、ニンジャ250はΦ41mm正立フォークと一般的なリンク式リヤサスペンション。ニンジャZX-25Rのフロントサスペンションはバネ下荷重を軽量化するためにインナーチューブ径は細めです。ホリゾンタルバックリンク式は地上からのクリアランスが確保されていますので、雨天時にグリスが流れ落ちにくいといえます。
足回りを他社の250ccスーパースポーツと比較
ニンジャZX-25Rの足回りを他社3車の250ccスーパースポーツと比較すると、ニンジャZX-25Rの足回りは気合の入った仕様です。フロントサスペンションはCBR250RRやYZF-R25と同等で、ジクサーSF250はニンジャ250と同等のΦ41mmの正立フォークが採用されています。リヤサスペンションは形式が全く違い、CBR250RRは一般的なリンク式、YZF-R25やジクサーSF250はリンクレスです。フレームは4車ともスチール製ですので、ツーリングでの扱いやすさは同等だといえます。
ZX-25Rのスペック:シート高
シート高をニンジャ250と比較
新型ニンジャZX-25Rのシート高はニンジャ250より10mm低い785mmです。ニンジャZX-25Rの4気筒エンジンはコンパクトにまとめられているものの、2気筒のニンジャ250よりは着座位置に幅が生じます。ゆえに、シート高を低くすることで、足つき性が最適化されたのだと考えていいですね。近年のロードスポーツモデルは新型が出るたびにシート高が高くなる傾向にありますので、ニンジャZX-25Rのシート高は歓迎すべきです。ツーリングユースも重視したシート高です。
シート高を他社の250ccスーパースポーツと比較
CBR250RR、YZF-R25ABS、ジクサーSF250の平均値と比較すると、ニンジャZX-25Rのシート高は標準的だといえます。ニンジャZX-25Rのシート高は他社3車種の平均値より5mm低いですね。4気筒エンジンを搭載したバイクは足を下ろす位置がやや外側に出てしまうため。シート高は数値より高い印象になるかもです。街乗りやツーリングでシート高より気になるのは車両重量。ニンジャZX-25Rの車両重量は他社3車種の平均値より17.7kg重いですね。
ZX-25Rのスペック:エンジン
ニンジャZX-25Rの馬力は?
新型ニンジャZX-25Rには水冷DOHC4バルブの4気筒エンジンが搭載されています。15,500回転で45馬力を発生させる超高回転型エンジンです。馬力だけを見ると1990年前後に人気だったレーサーレプリカに近いといえます。カワサキの発表では10,000~17,000回転でエキサイティングなフィーリングが得られるとのこと。しかも、ラムエア加圧時は46馬力までパワーが上乗せされます。馬力では他社3車種を寄せ付けないスペックです。
ニンジャZX-25Rのトルクは?
ニンジャZX-25Rの4気筒エンジンのボア×ストロークは50.0mm×31.8mmとショートストローク。エンジン回転数でトルクを稼ぐ超高回転型エンジンです。しかし、最大トルクのスペックは馬力とは裏腹に13,000回転で2.1kgf・mと若干控えめ。レーサーレプリカ全盛期の250cc4気筒エンジンは同じ45馬力で2.5kgf・mほどありましたので、やや物足りない印象を受けます。しかも、トルクウエイトレシオは87.143kg/kgf・mで、ヴェルシスX250ツアラーに近いスペックです。
ZX-25Rのスペック:ニンジャ250と比較
ニンジャ250の最高速度
新型ニンジャZX-25Rの理論上の最高速度を計算すると、思いもよらぬ結果となりましたので、敢えてニンジャ250の最高速度から確認します。ニンジャ250の理論上の最高速度は6速12,500回転で175.6km/hでした。これは最高馬力を発生させるエンジン回転数での数値。レッドゾーン入口となる13,500回転までエンジンを回すと189.7km/hと驚異的な最高速度です。2020年モデルの250ccでは最速です。
ニンジャ250の高速道路走行はどう?
ニンジャ250の高速道路走行を想定した理論上のエンジン回転数を計算すると、6速100km/hで7,117回転、最大トルクを発生させる10,000回転の71.2%でした。ニンジャ250は高速道路を利用したツーリングでもエンジンに余裕がありますね。馬力はニンジャZX-25Rに及ばない37馬力ですが、最大トルクは2.3kgf・mでニンジャZX-25Rより0.2kgf・m高いスペックです。トルクウエイトレシオも72.147kg/kgf・mでニンジャZX-25Rを14.969kg/kgf・m上回っています。
ZX-25Rのスペック:CBR250RRと比較
CBR250RRの最高速度
ホンダのCBR250RRの理論上の最高速度を計算すると、6速13,000回転で176.8km/hでした。レッドゾーン入口となる14,000回転まで回すと、最高速度は190.4km/hに達します。CBR250RRは2020年7月に2021年モデルが発表され、カラーチェンジと共に最高出力が13,000回転で41馬力、最大トルクが11,000回転で2.5kgf・mに変更されました。2020年モデル最速のニンジャ250を追い抜いて最速!新型ニンジャZX-25RはCBR250RRを超えられるでしょうか?
CBR250RRの高速道路走行はどう?
CBR250RRの高速道路走行を想定した理論上のエンジン回転数を計算すると、6速100km/hで7,353回転、最大トルクを発生させる11,000回転の66.8%でした。CBR250RRでの高速道路走行は余裕があるといえます。最大トルクだけを見るとかつてのレーサーレプリカ全盛期に最速とされたZXR250と同じスペックで、トルクウエイトレシオは67.200kg/kgf・m。ニンジャZX-25Rより19.943kg/kgf・m上回っています。
ZX-25Rのスペック:YZF-25Rと比較
YZF-R25の最高速度
ヤマハのYZF-R25の理論上の最高速度を計算すると、6速12,000回転で165.1km/hでした。レッドゾーン入口となる14,000回転まで回すと192.6km/hに達します。35馬力を発生させる12,000回転ではニンジャ250やCBR250RRより控えめな印象を受けるものの、そこから上の伸びしろでは最速!YZF-R25がサーキット走行で人気なのもうなずけます。低めのエンジン回転数で最高出力を発生させるエンジン特性はツーリングでも扱いやすいですね。
YZF-R25の高速道路走行はどう?
ヤマハのYZF-R25の高速道路走行を想定した理論上のエンジン回転数を計算すると、6速100km/hで7,269回転、最大トルクを発生させる10,000回転の72.7%でした。YZF-R25も高速道路走行で余裕がありますね。最大トルクは2.3kgf・m、トルクウエイトレシオは73.913kg/kgf・mで、ニンジャ250と同じレベルです。トルクウエイトレシオをニンジャZX-25Rと比較すると、13.230kg/kgf・m上回っています。
ZX-25Rのスペック:ジクサーSF250と比較
ジクサーSF250の最高速度
スズキのジクサーSF250の理論上の最高速度を計算すると、6速10,000回転で132.3km/hでした。レッドゾーン入口の10,000回転までエンジンを回すと147.0km/hに達します。控えめな最高速度ですが、油冷DOHC4バルブ単気筒エンジンとしては平均的なスペックです。ジクサーSF250はツーリングでの扱いやすさに期待できる250ccスーパースポーツだといえます。単気筒エンジンの蹴り出し感はワインディングロードが楽しいですね。
ジクサーSF250の高速道路走行はどう?
ジクサーSF250の高速道路走行を想定した理論上のエンジン回転数を計算すると、6速100km/hで6,803回転、最大トルクを発生させる10,000回転の93.2%でした。100km/hでのエンジン回転数を見ても、ジクサーSF250は常用域でパワー感を得られる250ccスーパースポーツだといえます。9,000回転で26馬力、7,300回転で2.2kgf・mとこれも控えめですが、車両重量が軽量ですのでトルクウエイトレシオは71.818kg/kgf・mでCBR250RRに次いで2位。ニンジャZX-25Rより15.325kg/kgf・m上回っています。
ZX-25Rのスペック:最高速度
思いのほかツーリングにも適したキャラクター
ニンジャZX-25Rの理論上の最高速度を計算すると6速15,500回転で166.3km/hでした。レッドゾーン入口となる17,000回転までエンジンを回すと、182.4km/hに達します。250cc4気筒の超高回転エンジンの最高速度に期待していたカワサキファンにとっては控えめな印象を受けるでしょうが、カワサキらしい速度設定です。この結果については考察で詳しく検証します。
ZX-25Rの高速道路走行はどう?
ニンジャZX-25Rの高速道路走行を想定した理論上のエンジン回転数を計算すると、6速100km/hで9,318回転、最大トルクを発生させる13,000回転の71.7%でした。ニンジャZX-25Rも高速道路で余裕があるといえ、スペック的にはニンジャ250と酷似しています。しかし、ニンジャ250や他社3車より2,000回転以上高く、高速道路ではレーシーな4気筒サウンドを楽しめますね。合流加速のスタートとなる40km/hのエンジン回転数は1速でも10,526回転!最大トルクを発生させるエンジン回転数の81%です。
ZX-25Rでのツーリングを検証:考察①
250cc4気筒の役割
新型ニンジャZX-25Rの最高速度は、250cc4気筒エンジンにしては控えめだと先述しました。本当に世界最速のZを生み出したカワサキが社運をかけて開発した250cc4気筒?と疑いたくなるスペックです。しかし、カワサキはツーリングを想定したバイクを作るのが実に上手なメーカー。ニンジャ250ZX-25Rもツーリングを重視したスペックなのです。実際、公道では250cc4気筒の超高回転型エンジンの性能を発揮できません。
もともと250cc4気筒バイクはフレンドリーだった
かつてのレーサーレプリカ全盛期、250cc4気筒バイクはフレンドリーなキャラクターでした。アクセルをワイドオープンすると胃の内用物がこみ上げてくるほど加速し、狭いパワーバンドを外せば失速するピーキーな250cc2ストローク2気筒エンジンが人気だった時代です。スプリントレーサーレプリカである250cc2ストローク2気筒エンジンに対し、250cc4ストローク4気筒エンジンはエンデュランスレーサーレプリカ。足つき性も良好でしたので、初心者や小柄なライダーに人気がありました。
ZX-25Rでのツーリングを検証:考察②
ZXR250からの反省
カワサキの名車ZXR250はレーサーレプリカブームの末期にリリースされたこともあり、250cc4気筒バイク最速でした。ビッグキャブ、クロスミッション、フルアジャスタブルサスペンションを備えたZXR250RはSP250Fへの参戦を想定した仕様。その反面、頻繁にシフトチェンジしなければならないエンジン特性は公道で扱いにくい一面もありました。しかも、同じカワサキのゼファーの登場でレーサーレプリカブームは終焉を迎えようとしていたのです。
ツーリングハイなZX-25R
ZXR250の反省もあってか、カワサキは新型ニンジャZX-25Rにライディングハイなスペックよりもツーリングハイな満足感を得られるスペックを与えたのだと考えられます。250cc4気筒エンジンの官能的なサウンドを大人な速度域で楽しめるのがニンジャZX-25Rの真骨頂!狂気的な速度域を目指したかつてのレーサーレプリカとは別物です。アクセルレスポンスがマイルドなローパワーモードを選択できるのがその証。ハイスペックな性能よりも常用域の楽しさを優先させたカワサキの答えは正解ではないでしょうか。
ZX-25Rでのツーリングを検証:考察③
ニンジャ250との差別化
となると難しいのはニンジャ250との差別化です。フロントサスペンションを見なければ一見で見分けられないほど、ニンジャZX-25Rとニンジャ250はデザインや車体サイズが酷似しています。しかも、スペックはニンジャ250のほうが新型のニンジャZX-25Rを上回っていますし、公道では2気筒エンジンの蹴り出し感のほうが楽しいですね。税抜き価格155,000円の差も見逃せません。この価格ならニンジャZX-25Rのサスペンションに減衰力調整が欲しいところでした。
ニンジャ250はツアラーへ?
ツーリングを楽しむバイクファンとしては、ニンジャ250がZZR250のような名ツアラーへと変貌してほしいところです。250ccならではの親しみやすい車格、高速道路での疲労を軽減する大型フルカウル、カワサキ車の伝統ともいえる積載性の高さなど、250ccのバイクがスポーティな方向へと向かう現在、そろそろロングツーリングに特化したモデルが登場してもおかしくないのではないでしょうか。しかし、しばらくは2気筒と4気筒の違いを堪能できる期間が欲しいですね。
ZX-25Rのスペック:サーキット走行
250cc初のラムエアシステムに期待!
ニンジャZX-25Rの理論上の最高速度を見ると、サーキット走行でニンジャ250に劣る印象を受けますが、それは間違いです。サーキットのストレートを250ccのパワーで最高速度を出そうとすると、レッドゾーンまで引っ張っても時間と距離が必要になります。しかし、ニンジャZX-25Rには250ccバイク初のラムエアシステムが導入されています。最高出力を発生させるエンジン回転数を超えてからの伸びしろで、ニンジャ250に迫るパワー感を得られるでしょう。
サーキトでZX-25Rの4気筒サウンドを堪能する!
今秋導入予定の「Ninja ZX-25R」をレースイメージにカスタムした車両を公開いたします。
— カワサキモータースジャパン (@Kawasaki_JPN) March 31, 2020
また、モーターサイクルライフを楽しんで頂く施策の一環として、2021年より「Ninja ZX-25R」の国内ワンメイクレース開催を計画しております。
楽しみにしてください!#Kawasaki #Ninja #zx25r pic.twitter.com/2thxfWsvVh
また、ニンジャZX-25Rはサーキット走行を想定した仕様なのも見逃せません。2021年にはカワサキがニンジャZX-25Rのワンメイクレースを開催するとのこと。2020年7月30日現在、MFJが主催するJP250のレギュレーションには適合しないものの、ニンジャZX-25Rの販売台数次第では何らかのハンディを加えて公認されるかもです。ちなみに、リヤフェンダーはサーキット走行を想定してボルトオンで簡単に着脱できます。
ニンジャZX-25Rのスペック:まとめ
ニンジャZX-25Rのスペックを確認し、最高速度にこだわって検証しました。ニンジャZX-25Rは久々の250cc4気筒エンジンを搭載したリアルスーパースポーツであるだけでなく、ツーリングも想定した仕様だとわかりました。官能的な4気筒エンジンのサウンドを選ぶべきか?それとも蹴り出し感を楽しめるニンジャ250を選ぶべきか?それが問題ですね。
250ccが気になる人はこちらをチェック!
250ccのバイクは初心者でも手ごわさを感じさせない車格と、公道を走行するうえで十分な性能を備えているのが魅力です。また、高速道路を利用してより遠くを目指すツーリングもできます。しかし、400ccクラスや大型バイクと比較すると非力さを感じざるをえません。選び方が難しい反面、選ぶまでが楽しいのも事実。250ccバイクについてまとめた記事もチェックしてくださいね。かつて人気だった250cc4気筒バイクの最高速度もチェックしましょう。
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