はじめに
アンスリウムは花に見える仏炎苞(ぶつえんほう)や、つやのある美しい葉脈が特徴の観葉植物です。他の樹木に根をはる着生(ちゃくせい)植物で、室内に飾ると熱帯の雰囲気を演出できます。鉢植えや切り花、フラワーアレンジメントの花材としても人気があります。異国情緒あふれるアンスリウムを、1度は育ててみたいと思われる方も多いのではないでしょうか。今回は初心者の方にもわかりやすく、アンスリウムの育て方や冬越しの方法をお伝えします。はじめにアンスリウムの基本情報や特徴、花言葉について紹介致します。
アンスリウムとは?
アンスリウムの基本情報
学名 | Anthurium |
科名・属名 | サトイモ科アンスリウム属 |
英語名 | Tail flower, Flamingo lily |
和名 | ベニウチワ、オオベニウチワ |
原産地 | メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイ |
草丈 | 40~80cm |
開花時期 | 5月~10月 不定期 |
形態 | 常緑多年草 |
耐寒性 | 低い |
耐暑性 | 普通 |
栽培適温 | 20℃~22℃ |
アンスリウムの特徴
花に見える「仏炎苞(ぶつえんほう)」
アンスリウムの赤や白の花に見える部分は「仏炎苞」ですが、色や美しさが人目をひきます。アンスリウムの本当の花は、多肉質で棒状の肉穂花序(にくすいかじょ)の部分で、成熟するまでは赤くならない特徴があります。美しい仏炎苞の中に花の軸をたてて育つ観葉植物です。
豊富な色
アンスリウム属は種類が多く600とも800ともいわれ、豊富なカラーバリエーションがあります。赤、白、ピンクの定番色のほかに、紫の「ユタ(Utah)」、緑の「ピスタチェ(Pistache)」、黒の「ショータイム(Showtime)」などがあります。赤と緑、白と緑などのグラデーションもあり、仏炎苞の色が楽しめる観葉植物です。
アンスリウムの色と花言葉
アンスリウムという名前は、ギリシャ語の花を意味する「Anthosaura」と尾を意味する「oura」からつきました。アンスリウムは仏炎苞の色ごとにすてきな花言葉があります。観葉植物のお店でアンスリウムの鉢植えを選ぶときや、フラワーギフトを贈るときの参考にしてくださいね。
アンスリウム全体「献身的な愛」「恋に悶える心」
アンスリウム全体の花言葉は「献身的な愛」や「恋に悶える心」という愛や恋に関するものです。英語の花言葉には「おもてなし」「幸福」といった花言葉もあります。大切な方へのプレゼントに、アンスリウムの切り花を添えるのもすてきです。
赤「情熱」
アンスリウムの赤には「情熱」や「印象深さ」という花言葉があります。英語では「愛と情熱」という花言葉がありますので、大切な方へ花束に取り入れると、上品に愛が伝わるでしょう。
白は「熱心」
白いアンスリウムには「熱心」という花言葉があります。何かに打ち込んでいる方へのフラワーギフトに向いています。英語では「無垢で純粋」といった白のイメージにぴったりな花言葉がついています。セレモニーのアレンジメントにおすすめです。
ピンク「飾らない美しさ」
優しいピンクのアンスリウムには「飾らない美しさ」という花言葉があり、大切な方への花束におすすめです。英語では「思いやり」「女性らしさ」「母性愛」といった言葉があります。母の日の珍しいフラワーギフトにおすすめです。
アンスリウムの育て方①日当たり
置き場所
鉢植えの場合、6月~9月は明るい間接光のあたる場所や明るい日陰に置いて育てましょう。10月~5月までは室内の明るくて暖かい場所(10℃以上)に鉢植えを置くのが育て方のポイントです。換気のよい場所がおすすめですが、エアコンの送風が直接当たる場所は避けます。
日当たり
直射日光にあてるのはいけませんが、日陰だけでも日光不足になります。西日は長時間アンスリウムの鉢植えを横から照らし、葉焼けが起きやすいものです。アンスリウムの葉が黄色っぽくなったら葉焼けを疑いましょう。鉢植えを置くのにおすすめの場は、家の東側の窓から少し離れた場所で、アンスリウムの様子を日々観察しながら世話をするのがポイントです。
アンスリウムの育て方②水やり
日常の水やり
4月~10月はアンスリウムの成長期ですから、鉢植えの土が乾いたら水を与えます。水やりの目的はアンスリウムの根に水分を与えたり、鉢土の酸素を入れ替えたりすることです。植木鉢の底から水が流れ出すぐらいたっぷりと水を与えましょう。受け皿にたまった水は捨てて、根腐れを防ぎます。7~8月は毎日、冬は乾かし気味に育てます。
葉水が育て方のコツ
アンスリウムは熱帯出身ですから、高温多湿な環境を好みます。しかし鉢植えの土だけに水を与え続け、いつでも土が湿った状態では根腐れのおそれがあります。また、アンスリウムを育てるのに理想的な湿度は40~60%といわれていますが、エアコンや暖房器具の使用で湿度が低くなりがちです。そこで葉水(ミスティング)の活用をおすすめします。葉水の量は、葉から水がぽたぽたおちるほどの量は不要です。
アンスリウムの育て方③用土
用土は排水性と保水性を重視
アンスリウムの鉢植えには適度な保水性と排水性がある用土がおすすめです。初心者の方は市販の「アンスリウムの土」で十分です。自分でミックスする場合はベースを鹿沼土として、粒状パーライトとピートモスを3種類同じ量で混合したふんわりとした鉢植えの土をつくるとよいでしょう。
着生植物に適した土
アンスリウムはランやシダのように着生根だけでなく、空気中からも湿気を吸収します。市販の「花と野菜の土」のように土に植えることが前提の用土は適していません。PH濃度は6.5のやや酸性気味の用土が向いています。
アンスリウムの育て方④肥料
肥料は控えめに
アンスリウムには5月~10月の間、2ヶ月ごとに固形の緩効性肥料を与えます。また1ヶ月に1度、液体肥料を水分がわりに与えるとよいでしょう。アンスリウムには肥沃な用土は必要ありませんので、肥料は与えすぎないように注意します。
肥料の使い分け
アンスリウムはおもに花やカラフルな仏炎苞に観賞価値がありますので、肥料は「草花用」の肥料をおすすめします。しかしアンスリウム・クラリネルビウム(Anthurium Clarinervium)のように、大ぶりな緑の葉や白い網状の葉脈の美しさを愛でる種類には「観葉植物用」の肥料がよいでしょう。
アンスリウムの育て方⑤植え替え
植え替えは定期的に
熱帯のジャングルで生きるアンスリウムと異なり、鉢植えのアンスリウムは鉢の中だけで成長します。2~3年植え替えをしていない場合や、水やりをしても水分が土に吸収されにくい場合は植え替えのタイミングです。植え替えは難しい作業ではありませんので、初心者の方でもできます。植え替え適期は5月~7月です。遅くとも9月までには植え替えを行いましょう。
植え替え手順
植え替えの前に、今の鉢より1回り大きい鉢と用土を用意します。鉢から根鉢ごとそっと抜き、根を傷つけないように根と土をほぐします。傷んだ根、伸びすぎの根は整理します。一回り大きい鉢の底穴が大きければネットを敷き、軽石を2~3cm敷き詰めておきましょう。鉢の中央にアンスリウムを立てて、少しだけ多めの用土で植え替え、水を与えたあと優しく鉢をゆすると土が落ち着きます。植え替え後1週間は日陰で育てるのがよいです。植え替えは次に説明する株分けや挿し木が同時にできる良いチャンスですから、初心者の方でも株分けしてみましょう。
アンスリウムの育て方⑥増やし方<株分け>
増やし方<株分け>のメリット
アンスリウムの株元に子株が育っていたら、植え替えと同時に株分けをすると簡単に増やせます。株分けのメリットは、子株の徒長を防ぎ、親株ものびのび育つことにあります。増やし方の1つ、株分けの手順をみていきましょう。
増やし方<株分け>手順
株分けのために鉢からアンスリウムを抜いたら、根の整理をするときに、そっと指で子株を親株から離して株分けします。どうしても離れない場合は清潔な鋏でカットします。株分けは、子株を小さい鉢にすぐ植え替える方法と、しばらくミズゴケで巻いて小さな鉢で育て、根が張ったら植え替える方法があります。どちらも初心者の方でもできる増やし方としておすすめです。
アンスリウムの育て方⑦増やし方<挿し木>
増やし方<挿し木>のメリット
挿し木は、親株と同じ遺伝子のアンスリウムを簡単に増やせる点がメリットです。初心者の方でもできる増やし方で、種から育てるより、挿し木の方が時間やコストがかかりません。さらに親株が古くなっていた場合には、挿し木で増やすことにより、親株を若返らせることができる増やし方としておすすめです。
増やし方<挿し木>の方法
挿し木は株分け同様、初心者の方でもできる増やし方です。挿し木の手順は、まず茎を土から3cmほど残して切ります。茎を15cmほどに切断して、葉を2~3枚残して挿し木(挿し穂ともいう)を作ります。次に湿らせたバーミキュライトに植えて発根を待ちます。挿し木をそっと引っ張ってみて、手ごたえがあれば発根している可能性が高いので、植木鉢に植え付ける増やし方です。
アンスリウムの育て方⑧剪定
剪定は簡単
アンスリウムを長く育てていると、はじめは直立していた茎が傾いたり、全体のシルエットがくずれてきたりしますので剪定が必要です。剪定せずに放置すると茎が曲がる、健康に育たないといった症状がでますので、定期的な剪定をおすすめします。剪定は初心者の方にも簡単にできますのでトライしてくださいね。
剪定手順
アンスリウムの剪定は、上から下へ行います。枯れたり変色した葉を取り除いたり剪定することからスタートしましょう。咲き終わった花は茎から剪定します。肉穂花序や仏炎苞は古くなるとだんだん緑化し、そのままにすると栄養分が株全体いいきわたりませんので、茎の根元から剪定します。環境によっては冬でも開花しますので、剪定は季節に関係なく行います。
アンスリウムの育て方⑨冬越し
冬の育て方は温度が大切
アンスリウムは熱帯の出身ですから、冬でも15℃ていどの温度が保てる室内で越冬させるのが理想的です。耐寒温度は10℃で、それ以下になると枯れてしまいます。冬は家の中で1番暖かい部屋で越冬させましょう。冬でも20℃を超えると開花する可能性があります。
冬の育て方は湿度がコツ
アンスリウムには、高めの湿度を維持するのが栽培のポイントです。冬暖かい部屋といえば居間ですが、暖房で室内が乾燥しがちです。できるだけ湿度を40%以上に保つよう、加湿器を活用したり、葉水を励行したりしましょう。
冬の育て方は温度変化対策を
天気予報で寒波の到来がわかれば、夜ダンボールをかぶせたり、ぷちぷちでふんわり覆ったりすると安心です。カーテン越しのやわらかい日差しが入る窓辺でも、夕方は一気に気温が落ちます。早めにカーテンをしめ、窓から部屋の中央よりに鉢を移動させます。
アンスリウムの育て方⑩病害虫
病気
アンスリウムの葉が輝きを失い、ベビーパウダーをまぶしたように見えたら、うどん粉病を疑います。多くの観葉植物が悩まされる病気で、原因はカビです。肉穂花序や若葉などに発生しやすく、はじめは粉状だった白いものが、やがて斑点になり、葉全体に広がります。光合成を困難にしますので、速やかに専用薬剤で対処しましょう。うどん粉病は湿度が大嫌いですから、普段から葉水を行い。予防薬も市販されていますので活用しましょう。
害虫
アンスリウムはハダニやカイガラムシがつくことがあります。ハダニは梅雨の終わるころから夏にかけて発生します。葉裏に潜み、葉の栄養分を吸い取るため、葉の表面に白い絣(かすり)模様が現れます。体調は0.5mmぐらい、体が赤い種類が多いので、ちょっと見ると赤い点が動いているように見えます。早期発見につとめ、発生してしまったら薬剤散布で退治します。カイガラムシは400種類以上いるといわれる、多くの観葉植物に発生する可能性のある害虫です。排泄物ですす病を起こしたり、アブラムシを呼び寄せたりします。幼虫なら殺虫剤で、成虫は歯ブラシなどでこすり取ります。
アンスリウムをもっと楽しむ
記念日に個性的な花束を
アンスリウムは観葉植物としてだけでなく、切り花として素敵な花束やブーケができます。「母の日」や「父の日」、結婚記念日、上司の退職祝いなど印象的なフラワーギフトとしておすすめします。アンスリウムの仏炎苞の色をミックスすれば、花言葉を気にせず贈れます。
ミニサイズの鉢植えは手渡しできる
1人住まいの方に大鉢のアンスリウムを贈るのはためらわれますが、ミニアンスリウムならスペースを必要としません。小さいので手渡しができ、好意が上品に相手の方に伝わります。
おうち時間に彩りを
部屋の雰囲気を簡単に変える方法として、アンスリウムをおすすめします。アンスリウムの鉢植えを飾ると、熱帯のリラックスした雰囲気が漂います。おうち時間こそアンスリウムの珍しい色や大胆な色を飾る冒険ができます。
まとめ
アンスリウムの育て方について順を追って説明しました。アンスリウムは熱帯の観葉植物ですから、初心者の方は初めての冬越しにとまどうかもしれませんが、温度や湿度の管理に気をつければ育てられます。お部屋の雰囲気を一気に熱帯風に変化させるアンスリウムは、育ててみると癒されたりリフレッシュできる観葉植物です。挿し木で増やせますので、園芸初心者の方もぜひ挑戦してみてくださいね。
アンスリウムが気になる方はこちらもチェック
アンスリウムをもっと詳しく知りたい方はこちらの記事もチェックしてみてください。花を咲かすコツや色別花言葉をはじめ、アンスリウムと並べて飾ると楽しい、同じサトイモ科の観葉植物の記事もおすすめです。

アンスリウムの育て方!花が咲かない理由と元気に育てる7つのコツをご紹介!
アンスリウムの育て方を紹介します。「花が咲かない」という悩みは、育て方と育てる品種に問題があります。花の生態を知ることで、鮮やかなアンスリウ...

アンスリウムの花言葉!色別で変わる花言葉の意味と由来をご紹介!
つやつやと光るユニークな花が特徴的なアンスリウム。アンスリウムは、大切な人へのギフトとしても人気が高い観葉植物です。人に花を贈るときには、花...
カラジウムの上手な育て方!葉が個性的で初心者でも簡単に育てられる人気の観葉植物!
カラジウムは風水でも使われる観葉植物です。カラジウムは簡単手入れで育てられるので初心者におすすめの植物となります。カラジウムの育て方を球根の...