ヒメシャラとは
ヒメシャラは、日本(本州中部地方より以西)が原産のツバキ科ナツツバキ属の落葉高木です。スラッとした繊細さを見せる樹形が特徴的で育てやすいことから、洋風、和風どちらの庭園にも似合うシンボルツリーとして人気が高まっています。ナツツバキとは同属ですが種類が違います。葉や花姿は良く似ていますが、ヒメシャラはナツツバキと比べても樹の高さはそれほど大きくなく、葉も花も小振りなのが魅力です。その特徴から“姫(ヒメ)”が付けられました。
ヒメシャラの特徴
ヒメシャラの樹形はそれほどの高さでもなく、全体に華奢であることが特徴で、幹は百日紅の幹の様に滑らかで、褐色の薄い樹皮を纏い、枝葉や花の外面に白い毛が付いていることが、ナツツバキとの違いで特徴です。花は6~7月頃の時期に、約2~3cmほどの椿の花に似た柔らかい5弁の白い花を咲かせます。花は一日花ですが、次々と咲かせます。秋の時期には薄緑からオレンジ、赤と葉の色をランダムに紅葉させますので、年間を通して風情を楽しめます。
沙羅双樹とは違うシャラの木
シャラの木というと、沙羅の木を思い浮かべ、「祗園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必滅の 理をあらはす」と琵琶を弾きながら語る「平家物語」を連想することと思いますが、耐寒性のない本物の沙羅双樹は日本では育種することが出来なかったために、平家物語の一節の沙羅双樹は、葉や花の咲き方や樹形も良く似た夏椿(ナツツバキ)を植えたとものという説があるのです。沙羅の木は、仏教では三大聖樹のひとつとして崇められるフタバガキ科コディアウエム属の木。原産地が熱帯で高さも20~30mにもなる高木樹です。
ヒメシャラの別名と花言葉
ヒメシャラには、異なった呼び名が複数あります。その特徴である滑らかな木肌と樹皮が剥げ落ちることから一見“サルスベリ”に見間違うことがあり、そのまま別名とされていたり、また、「猿田木(サルタノキ)」という別称も有ります。ナツツバキほどの高さもなく、葉も花も小さいことから「小夏椿(コナツツバキ)」の別名があります。
花言葉
ヒメシャラの花言葉は、その樹形の美しさに似あった意味合いがあります。ナツツバキより樹高も高さがなく、小さく可愛い花を楚々と咲かせることから「愛らしさ」、薄緑の柔らかい葉に包まれて密やかな咲く花姿から「謙虚」という花言葉が表現されています。ちなみにナツツバキの花言葉は、やはり一日花ということから「儚い美しさ」「哀愁」が付けられています。
ヒメシャラの仲間(種類)
ヒメシャラの原産は日本とされています。ナツツバキの小型種で、樹形の美しさと手入れもしやすいことから、庭園でのシンボルツリーとしても人気種です。同属の仲間としてはナツツバキを始め、北米と東アジアなどに8種ほど生育しています。
種類
福岡県と大分県にまたがる高さ1199mの標高で日本二百名山のひとつである「英彦山(ヒコサン)」で発見されたことから名付けられた「英彦山姫沙羅(ヒコサンヒメシャラ)」、神奈川県周辺の場所にのみ生育する希少種の「東国姫娑羅(トウゴクヒメシャラ)」、中国原産で花びらの縁が薄黄緑色を帯びるのが特徴の「常盤夏椿(トキワナツツバキ)」、同じく中国原産で、花びらの一部運が薄ピンクを帯びる「ピンクナツツバキ」、「北米原産で開花時期は秋の時期の9~10月で、雄しべが青いのが特徴の珍しい「マラコデンドロン」などがあります。
ヒメシャラはガーデニングにも最適
「日本三大美幹木」と言われているのが、青桐(アオギリ)、白樺(シラカバ)と並んでいるのが「姫沙羅(ヒメシャラ)」なのです。ヒメシャラは、人間に例えると八頭身美人の様にほっそりした樹形で、高さも約3~5mほどのスラリとした立ち姿で、幹は比較的真っすぐに伸び、枝も上方に張ることから、面積があまり広くない庭の場所でも植栽可能です。初夏の可愛らしい花と、滑らかな木肌、小振りで風にそよぐ葉、秋には紅葉と、四季を通じて目を楽しませてもらえます。植え方には花壇などとも良くマッチし、花壇作りのガーデニングのシンボルツリーとして利用できる最も相応しい樹木です。
ヒメシャラの増やし方と育て方・その①
ヒメシャラの植え方と手入れ・植える場所
樹形も高さもすっきりとしているために、狭い庭といった場所でも植栽することが可能です。ヒメシャラの生育条件として注意したいことは、乾燥に弱いことと、ある程度の日当たりの良さは必要ですが、強い陽射しを受け続けると葉焼けを起こし芽吹きにも影響を及ぼします。
植え方の場所の環境
植え方の注意点として、植える場所の環境は、午前中は日当たりが良く、午後は陽射しが弱まる、いわゆる半日陰状態になり、西日などが直接射さない場所が適します。また、根元は湿潤性を好みますので、株元近くに低木を一緒に植えるか、宿根草などのカバープランツを植えて表土が乾かない様にする工夫が必要です。植える時期は後述しますが、葉が落ちている時期に行います。
ヒメシャラの増やし方と育て方・その②
ヒメシャラの植え方と手入れ・用土
ヒメシャラを地植えにする際の用土は、肥沃で水捌けが良く、通気性や保水性が良いことが条件です。ヒメシャラは乾燥に弱いために湿潤な用土が必要ですので、腐食質の多い湿り気のある土壌が適当です。特に注意が必要なのが、真夏の高温によって土壌が乾燥してしまうと木全体を弱らせてしまいます。庭土が粘土質である場合は、庭土を深めに掘り下げて、黒土に腐葉土を3割方混ぜ込んだ用土に替えると良いでしょう。鉢植えにする場合は、赤玉土(小粒)4:黒土4:桐生砂2の割合で混ぜ合わせた用土を使います。
ヒメシャラの増やし方と育て方・その③
ヒメシャラの植え方と手入れ・水やり
ヒメシャラは乾燥に弱いために水切れを起こすと弱ってしまいます。特に真夏の時期は注意が必要で、朝早い時間と夕方日が落ちてからの水やりをするのが良いでしょう。乾燥した日々が続き、土壌が乾いてしまうと次第に葉が元気を失い垂れた状態になって、枯れてしまう場合があります。表土が乾き始めたら直ぐに水をたっぷり与えます。その際に樹木全体に葉水を掛けてあげると虫の予防にもなり、葉や枝に付いた埃なども洗い流せますよ。真夏の時期は株元にマルチングを施して、表土の乾燥を防ぐ手入れ法もあります。
ヒメシャラの増やし方と育て方・その④
ヒメシャラの植え方と手入れ・肥料
ヒメシャラは、肥沃な土壌を好みますが、基本的にあまり肥料を与えなくても良く生育しますが、植え付ける際には2週間ほど前までに、堆肥と腐葉土、油粕を用土に良く漉き込んでおきます。植え付けて2年ほど経た時に、2~3月上旬の頃に寒肥として窒素分が割合として多い「有機質配合肥料」を施肥します。その際は、株元から50cm~1mほど離れた場所の周りの土を少し掘り起こして施肥し、腐葉土と黒土を混合した土を被せておきます。後は花が終わった頃にお礼肥として、油粕と化成肥料を少量施す程度で大丈夫です。
ヒメシャラの増やし方と育て方・その⑤
ヒメシャラの植え方と手入れ・植え替え
ヒメシャラは落葉樹ですので、植え付け及び植え替えの適期は、葉が落ちた後の10~12月頃、若しくは芽吹き前の2月下旬~3月下旬頃を目安とします。苗を植える際の注意点として、半日陰の風通しの良い場所を選び、根巻き、あるいはポットの大きさの2~3倍ほどの植穴を掘り、予め作っておいた、堆肥や腐葉土と黒土の混合土で植え、鋼管支柱などの添え木を立てておきます。敷き藁(わら)か腐葉土などでマルチングを施しておくとベストです。
鉢植えにしている場合
鉢植えにしている場合は、用土の通気性を良くするために2~3年に一度行えば良いでしょう。植え替える際は一回り大きめの鉢を用意し、旧鉢から抜いた株は、根回りの土はあまり落とさない様に注意して新しい鉢に移し替えます。必ず鉢底には大きめの軽石などを敷いて水捌けを良くする様にしましょう。
ヒメシャラの増やし方と育て方・その⑥
ヒメシャラの植え方と手入れ・増やし方
ヒメシャラの増やし方の方法としては、花後にできる種を直接用土に蒔いて発芽させる方法と、新しく伸びた枝を挿し穂にして、挿し木で増やす方法があります。
種で増やす
種蒔きは、秋になって良く熟した種を採取し、新聞紙などに乗せて半日陰の場所で1週間ほど乾燥させ、黒土:7ピートモス:3の用土を入れた4~5号のビニールポットに植えて、水気を切らさない様にします。翌春には発芽しますので、本葉が4~5枚ほどに生長したら鉢に植え替えます。
挿し木で増やす
挿し木では、芽吹いて後の6~7月頃に伸びた新しい枝を挿し穂として使用します。10~15cmの葉を3枚ほど付けた新枝を切り取り、挿し口を斜めにナイフなどで削いでから30分から1時間ほど水に浸けて水揚げをします。赤玉土(小)5:鹿沼土(小)2:バーミキュライト3の用土に挿します。乾燥させない様に水気を保つ様にします。発根促進剤を挿し口に塗ると発根率が良くなる効果が期待できます。
ヒメシャラの増やし方と育て方・その⑦
ヒメシャラの植え方と手入れ・剪定
ヒメシャラは高さも樹形もすっきりとしていますので、剪定はあまり行いません。無理に切り詰める強剪定をすると、芽吹きが出来なくなり枯らしてしまう原因になります。但し、細枝が混み合って風通しが悪くなると病害虫の発生に繋がりますので、間引く程度の剪定を行います。その場合の時期は1~3月上旬頃に行い、下がり枝や閂(かんぬき)枝、横に張り出した平行枝などの不要枝は幹から出ている元から切る様にします。理由は枝の途中で切ると、切り口から新枝を複数芽出しして、余計に混みあってしまい、樹形も悪くしてしまうからです。
ヒメシャラの増やし方と育て方・その⑧
ヒメシャラの植え方と手入れ・病害虫
ヒメシャラは前述した通り、適当な高さで立ち姿も美しいのですが、細枝が混みあってきて風通しが悪くなると病害虫が発生する恐れがあります。また、ツバキ科特有の害虫が発生することがありますので注意を怠りなくする様にしましょう。苗の購入する時に病害虫の有無を良く確認することが大切です。
ヒメシャラに発生する病害
ヒメシャラに発生する病害としては、サビ病や輪紋葉枯病など葉に病斑ができるものと、幹や根に発生する白紋羽病や幹心腐病があります。どちらも春、秋の多湿の時に発生します。葉の裏に黄白色の斑点があるのを見つけ次第、病葉を全て摘み取って廃棄します。白紋羽病や幹心腐病は病菌によって発生し、木の生育状態が悪くなり、根部が腐って枯死します。葉が黄色くなって落ちたり、枝の下側に溝状の凹みがあるのを見つけたらボルドー液などの農薬を患部を重点にして散布します。
ヒメシャラに発生する害虫
ヒメシャラの害虫は、チャドクガやコガネムシが見られます。チャドクガはツバキ科の葉などを食害し、葉全体を丸坊主にしてしまう有毒の毛虫です。発生初期なら捕殺すれば良いのですが、集団でいる幼虫のうちに、枝ごと切り取ってしまい、殺虫剤を噴霧して退治しておくのがベストです。抜け殻や死骸には決して素手で触らない様にしましょう。コガネムシは夜行性でやはり葉を食害します。葉に付いているのを見つけたら、家庭用のスプレー式殺虫剤で良いので、噴霧して退治しましょう。
病害虫の防除
ヒメシャラの病害虫から守る点については、どちらも発生時期となる春5~7月、秋9~10月の雨の多くなる季節に注意が必要です。新しく伸びた枝先を良く観察して、葉などが不自然にねじれていたり、変色していないかを良く見ます。一度病害虫が発生した木は、次の年にも発生し続ける可能性が高いですから、防除対策として、病害は糸状菌が嫌うアルカリ性の石灰を土壌に撒いておく方法もあります。害虫対策には、早い時期からアセフェート系水和剤などを樹木全体に散布しておくと効果が期待できます。
ヒメシャラの増やし方と育て方・その⑨
ヒメシャラの植え方と手入れ・ポイントと注意点
ヒメシャラはナチュラルな庭造りにも最適です。ヒメシャラを独立した一本の庭木(単幹)とする場合は、ガーデニング花壇のシンボルツリーとして、周囲には高さの低い雑木や草花などを配すと見栄えのする樹形となるでしょう。数本の幹が立つ株立ちのヒメシャラは、幹自体が細く、向こう側が透けて見えるので、遠近感を活かした庭の景観を雑木林風に仕立てたい場合に有効です。株元にはグランドカバーの草木や自然石などを配置すると雰囲気がでます。注意点としては、土壌を乾燥させないことと、植栽の場所が半日陰になる様にすることです。
ヒメシャラが枯れてしまう原因!
ヒメシャラが枯れてしまう原因としては、病害虫の場合もありますが、一番多い事例が夏枯れによるものです。前述の通り、ヒメシャラは非常に乾燥に弱く、夏場の時期の高温にも耐えられません。ヒメシャラは根の張り方が浅いために表土が乾くと水分を補給しづらくなります。また、1日中陽射しが強く当たり過ぎると、葉焼けを起こして木自体を弱らせてしまいます。植え方で注意したいのは、西日などが当たらない半日陰の場所に植えることと、潅水を忘れない様にすることが大切な手入れのコツです。
まとめ
ヒメシャラは、樹高も適当な高さで、その特徴的なたおやかな樹形から近年、庭園木として人気のある樹木です。初夏の頃には椿の花に似た可愛い花も咲かせ、秋には葉を美しく紅葉させます。風にそよぐ様にも癒しの気分に誘ってくれます。そんなガーデニングにもおすすめのヒメシャラの特徴や増やし方、育て方などをご紹介してみました。植える場所や用土、水やりに注意すれば育てやすい樹木です。
シャラの木についてはこちらもチェック!
シャラの木の他、庭園樹については「暮らし~の」内に詳しい記事が紹介されていますので、ぜひご覧になっていただけると幸いです。
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