九谷青窯について
九谷青窯の歴史
九谷青窯(くたにせいよう)は1971年に石川県の能美市で作られるようになった陶器です。秦耀一さんという陶芸家がこの陶器作りを始めました。彼の元に陶芸を行う若者が集まり、それぞれが食器を作りながら互いの技術や個性を高め合ってきました。現在では日本のみならず世界中に九谷青窯の魅力に惚れ込んだファンが大勢できるまでになりました。
九谷青窯のコンセプト
九谷青窯は長い歴史を持つ九谷焼を受け継ぐものですが、これまでの九谷焼とは趣が違います。九谷青窯は美術品として飾られる物を生み出そうとしているのではありません。特別な機会のために使われるものではなく、日々の食事に使用するためのものなのです。
九谷青窯の技術
九谷青窯では古くから地元に伝わる技術が用いられています。特に色絵付けはこの陶磁器のポイントとなる技術です。これは、器に焼くと透明になるうわぐすりをかけてから焼き、その後に絵を描いて、さらに焼いて仕上げる技術のことです。可愛らしくて優しい雰囲気の色絵が施されている食器が多いことは、九谷青窯の魅力の1つです。
九谷焼について
九谷焼の歴史
九谷焼は1655年に、有田で陶芸の技術を学んだ後藤才次郎が加賀藩の指示を受けて作り始めました。しかし九谷焼は100年ほどすると作られなくなってしまいました。その後、陶器づくりがより一般的になってくると、1823年に再び九谷焼が作られるようになったのです。現在では石川県の金沢の名産品として有名な陶磁器です。
九谷焼の特徴
九谷焼は色鮮やかで繊細な絵柄が特徴で、色絵陶磁器と呼ばれます。色絵陶磁器を作っているところは他にもありますが、その中でも特に広く知られているのがこの陶磁器です。色絵の部分は絵具の塗り方を工夫することで立体的になります。繊細ながらもダイナミックな色絵が九谷焼の魅力です。
九谷焼の種類
九谷焼には陶器の九谷焼と磁器の九谷焼があります。九谷で色絵付けされた陶磁器全般が九谷焼と呼ばれるので、器の種類は関係ありません。
陶磁器について
陶磁器の特徴
『やきもの』と言われることもありますが、陶器と磁器の2つを合わせていう言葉が陶磁器です。陶器と磁器の違いですが、まず原料が違います。前者は粘土からできていますが、後者は岩石からできています。そして、陶器は生地の向こうに明るさを感じることができるのに対し、磁器は光が透けて見えないという特徴があります。
陶磁器の扱い方
陶磁器の中でも陶器は水分を吸いやすいという特徴があります。ほどんどの陶器にはうわぐすりがかかっているのでそれほど神経質になる必要はありませんが、陶器は色のついた水分を吸収して汚れが染みついてしまう危険があるのです。陶器の食器を買ってきたら、まず水かお湯につけてから実際に料理を盛って使用することをおすすめします。
九谷青窯の特徴
若い作り手たち
九谷青窯を作っているのは、日本各地からやってきた10人ほどの若い陶芸家たちです。これはこの工房の特徴の1つと言えます。というのも、他の工房で作業をしている工芸家たちはもっと年齢層が高いことが多いからです。
作り手たちの関係性
陶磁器を作る他の工房では熟練した陶芸家がいて、その人の元で若い陶芸家たちが作業をしているという関係性が一般的ですが、九谷青窯はそのような制度のもとで作品を作っているわけではありません。それぞれの陶芸家たちが互いを刺激し合いながら、技術と魅力を高め合っているのです。
オリジナリティー
九谷青窯では陶芸家が食器のコンセプトを考え、粘土でその形を作り、色絵を付けてというすべての工程を1人で行うという特徴があります。これらの工程はすべて九谷青窯の工房内で行われています。他の工房では、それぞれの工程を別々の人が担当するのが普通です。しかしここでは陶芸家たちが自分の作品を販売してくれる所を探したり、店と交渉したりもしなければなりません。すべてを自分で行うことでオリジナリティーある食器を生み出せることがこの陶器の魅力なのです。好きな作品に出会ったら、その作り手について調べてみるのもおすすめです。
九谷青窯のデザイン
自由さ
九谷青窯の食器は作り手によって絵柄の量やバランスがまったく違うのが特徴です。デザインはとても自由なので、この自由さに魅力を感じるファンは大勢います。この陶磁器には明るい色合いでちょっとキュートな雰囲気のものから、藍青色をベースにしたシンプルでシックなデザインのものまであります。それぞれ雰囲気が異なるので、様々なシリーズをチェックしてお気に入りの食器を探すのがおすすめです。
新たな技術
九谷青窯には昔からある九谷焼のデザインには使用されていない技術も取り込まれています。例えば、点で絵を描く点描という技術は九谷焼では使われませんが、九谷青窯ではこの点描を作品に取り入れている陶芸家もいるのです。
デザインの特徴
九谷青窯には陶磁器の白い部分を上手く生かしてカラフルな色絵を施したものや、お皿全面に藍青色一色で模様を描いたものなど様々なデザインがあります。特に植物をデザインに用いる場合が多いです。斬新なデザインばかりではなく、お皿の端だけを黒く色付けした伝統的なデザインの食器もあります。
九谷青窯の色
色のバリエーション
九谷青窯の食器にはカラフルなものや、藍青色一色のもの、使用する色の数を2-3色だけに限定したものなどがあり、使用される色は陶芸家によって様々です。同じ九谷青窯でも陶芸家によってバリエーションを楽しめることはとても魅力的です。
特徴的な色
九谷青窯の食器をみると、藍青色が頻繁に使用されていることに気づきます。これは絵を描くときの下絵に使う呉須という顔料の色です。古くから九谷焼に使われる5色の色は九谷五彩とよばれ、この5色とは赤、紺青、黄、紫、緑です。これらの色は九谷青窯でも見かけるものです。ちなみに黄、緑、紺青、紫色を使用したものは青手古九谷と呼ばれます。
九谷青窯の食器
九谷青窯の食器の種類
九谷青窯の食器には大小様々な丸皿や角皿、飲み物を飲むためのカップ、茶碗、鉢型の器などがあり、その種類は様々です。大量生産はできませんが、どれも日常生活で使いやすいサイズや柄、持ちやすさにこだわって作られているので、老若男女問わずおすすめできる食器です。
九谷青窯の日常使い
現代の日常の食生活に取り入れやすいスタイルが九谷青窯の食器の魅力です。この食器に多く用いられている藍青色は、和食器だけでなく実は洋食器にもよく使用される色なので、九谷青窯は和食だけでなく洋食を盛りつけてもよく馴染むのです。また、この陶器の明るい色や自然をテーマにしたデザインは、似た雰囲気のある北欧デザインの食器と合わせて使用するのもおすすめです。
九谷青窯のシリーズ
九谷青窯の食器はデザインによってシリーズ化されており、誰が作ったのかも分かるようになっています。シリーズごとに特徴がはっきりしていて、同じ九谷青窯でもそれぞれ印象がずいぶん違います。同じシリーズで統一感を持たせてみたり、他の食器と組み合わせたりと、様々な楽しみ方をすることができるのです。
九谷青窯の色鮮やかな食器
植物のデザインを施したシリーズ
九谷青窯の高さんが作っているシリーズには、植物のモチーフを描いたものがあります。このシリーズには草や実の愛らしいデザインが施されています。植物の部分は藍青色で優しく描かれ、葉の部分には小さく色絵が施されています。色が強すぎず、優しい雰囲気なので、可愛らしい雰囲気は好きだけれども控え目な作品を好む人におすすめです。
藍青色と黄色をメインにしたシリーズ
九谷青窯の米満さんが作っているシリーズのうちの1つには、レモンがなっている木を描いたものがあります。白地の食器の上に藍青色の下書きが描かれており、そこにレモンの黄色が映える作品となっています。和食器なのですが、色使いや雰囲気に西洋的な印象も感じる作品です。和食の時だけでなく海外の食事にも九谷青窯を使用したいという方にもおすすめのシリーズです。
九谷青窯の単色使いの食器
藍青色を基調とした九谷青窯
九谷青窯の高原さんが作っているシリーズはいくつかありますが、そのうちの2つは藍青色を基調としています。これらのシリーズは白い表面の上に呉須の藍青色で絵が描かれているもので、色のコントラストが美しいです。九谷青窯のシリーズの中でも特に日本らしさを感じることができます。九谷青窯の中でもより派手さの少ないシリーズなので、可愛らしいデザインはちょっと苦手という人におすすめです。
赤を基調とした九谷青窯
赤色の色絵を基調とした九谷青窯の数は少ないのですが、食卓に置くと注目を浴びる九谷青窯の食器です。食器の表面が白いので赤色はとてもよく映えるのです。ベースに用いられている藍青色との組み合わせも非常に綺麗で、アジアの料理やエスニックな食材との相性も良いです。
九谷青窯の白い食器
縁取りされた食器
黄色や緑といった顔料を用いていない九谷青窯の食器ももちろんあります。柄を入れるのではなく、端の方にすこしだけ色を入れた食器もあるのです。白の面積の多い九谷青窯の皿は、どんな料理を乗せても絵柄が邪魔にならないところが魅力です。
無地の食器
九谷青窯には必ずしも色絵が施されているということではありません。陶器の色をそのまま生かした食器も数多く制作されています。どんな料理にも使いやすく、柄物の食器は少し苦手という方でも抵抗なく使用できる器です。
九谷青窯の形のポイント
ろくろで作る食器
粘土のかたまりを器の状態にする方法の1つにろくろがあります。両手で粘土を挟み込むようにしながら形を整えていくので、すべての作品に少しずつ違いが生まれます。機械製とは異なり世界に2つとない食器を使用できる喜びがあります。
原型を使って作る食器
九谷青窯の平皿などは、粘土を原型となるパターンに被せるようなかたちで場合があります。こうすることでろくろだけでは作ることのできない、直線的な形の食器も生み出すことができるのです。このため、販売されている食器には色々な形状があり、お店で商品を見ていると選ぶのに困ってしまうほどです。
九谷青窯の製造工程
粘土から器へ
最初の段階として、まず粘土を機械と手を使ってしっかりと練ります。この手で行う工程には経験と技術が必要です。そして、ろくろやパターンを使って食器の形を作ります。形ができたら、表面がさらさらするまで2日間ほどしっかりと乾かします。
食器の下絵と焼き
食器が乾いたら窯に入れて熱します。こうして食器がしっかりと固まったら、下絵を描きます。このラインが藍青色になります。この上にうわぐすりをかけるので下絵は見えなくなります。それを窯で1回目よりも高い温度で10時間ほど焼きます。
色絵付け
うわぐすりは焼かれて透明になっています。色絵付けをしない作品であればこれで完成です。色絵付けをする場合は、この上に色をつけてもう1度焼いて完成です。最初の工程から完成まで長いものだと10日ほどかかります。
九谷青窯と料理
九谷青窯と和食
和食器である九谷青窯は当然のことながら和食とよく合います。特に白地に藍青色の食器は、落ち着いた印象なので使いやすいです。日本茶を飲んだりするときにちょうど良いサイズの器も数多く販売されています。
九谷青窯と洋食
異国の面影もある九谷青窯は、日本食だけでなく海外の料理との相性もいいです。他の洋食器と組み合わせて使用してもあまり違和感がありません。また、手のひらサイズの皿も多く販売されていて、お菓子やちょっとしたデザートを乗せるのにもちょうど良い大きさです。
九谷青窯の魅力
使いやすさ
九谷青窯の食器の魅力はその使いやすさです。陶芸家たちはその食器に料理を盛りつけたときのことを考えて食器を作っているので、どんな料理が映えるデザインになっています。また、飽きのこないデザインなので、今まで九谷焼には興味がなかったという人にもおすすめできます。
作り手との距離の近さ
九谷青窯は作り手がはっきり分かるのも魅力の1つです。大量に同じような形状で作られている食器とは違い、作り手の顔が分かるという安心感があります。それぞれの陶芸家の作品に個性があり、その人の想いや表現したい事を感じることができます。
手頃な値段
九谷青窯のもう1つの魅力が食器の値段が手ごろなことです。日々の暮らしの中で使ってほしいという思いで作られているので、あまり高価な食器はありません。高級な器は使用するのに勇気が必要だったり、特別な機会にしか使用しなかったりしますが、九谷青窯はあまり堅苦しくなく使用できる所もおすすめするポイントです。
まとめ
九谷青窯は九谷焼の路線を引き継ぎながらも、独自のコンセプトで食器を作り続けています。優しい色使いと使いやすいデザインが魅力の食器です。それぞれの陶芸家が食器を購入する人のことを考えて、想いを込めて作っていることが感じられる食器ですので、機会があったらぜひ手に取ってみてください。
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九谷青窯以外にも素晴らしい食器は数多くあります。和食器や海外の食器など様々な食器について知り、実際に触れてみて、お気に入りの1枚を探してみましょう。
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