トレッキングポールとは?
トレッキングポールとは登山など起伏のある山道を歩く時に助けとなる杖(ストック)のことです。その見た目から「二足歩行の人間が四足歩行になる」と言われることもあります。初心者や体力がない人が使うものというイメージがあるかもしれませんが、上級者にとってもメリットがある道具です。
トレッキングポールの効果
トレッキングポールやストックを使うことによって、登りでは腕などの上半身の力で前への推進力を得ることができます。逆に下りでは着地の時の衝撃を和らげ、膝や腰への負担を減らすことができます。足場が悪い岩場や急な斜面で転倒するリスクを抑えることができるので、より安全かつ効率的に登山を楽しむことができるでしょう。
トレッキングポールの種類
登山用品店では様々な種類のトレッキングポールが売られています。自分に合ったものを選ぶためにトレッキングポールの種類について知っておきましょう。
グリップはI字型とT字型
I字型
基本的に両手で1本ずつもって使うグリップです。バランスが取りやすいので、登山や長い起伏のある道を歩く時におすすめです。高い段差はグリップの下の部分を握ると登りやすくなります。
T字型
基本的に片手1本で使うタイプのグリップで、地形の変化の少ない平坦な道を歩く時におすすめです。片手が空くので、写真を撮りながら歩くこともできます。また登りと下りで握り方を変えることでより安全に使うことができるでしょう。
素材はアルミとカーボン
トレッキングポールの素材はカーボンとアルミの2種類があります。
アルミは安価ですが、カーボンに比べると重く、長時間の使用では疲労がたまりやすい点がネックです。カーボンはアルミに比べると高価ですが、軽くてしなやかさがあります。目的や用途に合わせて選ぶようにしましょう。
収納方法も2種類
使わない時は縮めて収納するトレッキングポールですが、その方法も2通りあります。テレスコーピング(望遠鏡)式は直径の異なるシャフトを望遠鏡の筒のようにしまう、昔からある収納方法です。
比較的安価ですが、ザックに入るほどには小さくならないためザックの外側に固定する必要があります。折りたたみ式は同じ太さのシャフトをワイヤーでつないでおり、ザックの中にいれることもできるほど小さくなります。価格は高価なものが多いです。
トレッキングポールの適切な長さは?
せっかく購入したトレッキングポールが長すぎた、短すぎた…という失敗は避けたいですよね。ここではトレッキングポールを購入するときに1番注意したい長さについて解説します。
身長別長さの選び方
適切な長さの計算方法
平地を歩く時や登山の時のトレッキングポールやストックの長さは身長×0.63(cm)が目安と言われています。ただ、ノルディックウォーキングの場合は身長×0.68(cm)が目安と言われています。ここでは主な身長毎の目安を表にまとめましたので、参考にして下さい。
身長(cm) | 長さ(cm) =身長×0.63 |
140 | 88 |
145 | 91 |
150 | 95 |
155 | 98 |
160 | 101 |
165 | 104 |
170 | 107 |
175 | 110 |
180 | 113 |
185 | 117 |
登りや下りの時の適切な長さは?
登りと下りの場合は平地に比べてトレッキングポールの適切な長さも変わってきます。登りでは5-10cm程度短くし、下りでは5-10cm程度長くする必要があります。そのため、上記の適切な長さ±10cmまで調整できるものを選ぶと良いでしょう。
例1)身長170cmの場合
170cm×0.63=107cm⇒97cm~117cmまで調整できるもの
例2)身長150cmの場合
150cm×0.63=95cm⇒85cm~105cmまで調整できるもの
メーカーによって長さのサイズはさまざま
メーカーの商品仕様には「サイズ 110cm~130cm」と言ったように調整できるサイズが表記されています。調整できるサイズはメーカーによってさまざまです。メーカーによっては、長さが何種類かあるものも多いので確認してから購入して下さい。サイズが同じでもグリップが小さく、ストラップが小さな女性向けもあります。
トレッキングポールの長さを店頭で確認する
適切な長さは計算でも求められますが、やはり実際に現物を確認した方が安心です。店頭で現物を確認して購入する場合、実際にトレッキングポールを持ってみて下さい。
平地で体の真横にストックを突いた時、肘がほぼ90度になるのが目安の長さです。また登りで使うときは腰の高さまで、下りで使うときは胸の高さまでの長さが必要です。必要な長さまで伸び縮みするかどうか試した方が良いでしょう。
トレッキングポールの長さの調整方法
トレッキングポールの適切な長さについて知ったところで、長さの調整方法について見て行きます。
種類別の長さ調整方法
レバーロック式
レバーロック式は片手でレバーを操作できるので、素早く長さを調整することができます。女性や力のない方にも向いたロック方式です。まずレバーを上げてロックを解除、シャフトを下に引き出して、適切な長さにします。次にレバーを閉じてロックを固定します。収納する際は再びロックを解除して、シャフトを縮めましょう。
スクリューロック式
スクリューロック式は昔からあるロック方法で、安価なものが多いです。シャフトを回す際にやや力が必要です。長さの調整にはまず太いシャフトを握り、細いシャフトを反時計回り(左側)に回してゆるめます。長さを決めてから、時計回り(右側)に回して固定します。収納する際はシャフトを反時計回りに回転させてゆるて縮めましょう。
ピンロック式
ピンロック式はシャフトをピンで固定するタイプです。コンパクトで軽いですが、強度は他のロックに比べると低いものが多いです。まずシャフトを伸ばして、長さを調整します。次にシャフトの穴からピンを出して固定しますが、ロックがしっかりとかかっているか注意して下さい。収納する際はピンを押しながら、短くします。
トレッキングポールを使った正しい歩き方
トレッキングポールを使うときに1番重要なのは普段の歩行の姿勢を崩さないことです。ストックに頼りすぎると逆に腕や肩、背中への負担が増すこともあります。平地や登り、下りでの正しい歩き方についてそれぞれ紹介します。
平地での使い方
ポールの位置に注意
平地でトレッキングポールを使う際は、ポールは体の真横、反対のかかとの延長線上につくようにしましょう。体の前にストックを突いてしまうと、ストックが邪魔をして前に足を踏み出し難くなります。視線はやや前方を見て、歩幅を広めにとってリズムに乗って歩きましょう。
グリップの握り方
ストラップの輪に下から手を通し、グリップとストラップをまとめて握ります。ストラップが手首をしっかりとサポートし、軽く握るだけで腕の力を効率的に伝えることができるので疲れにくい握り方です。グリップの落下も防ぐことができます。
登りでの使い方
斜面等の登りでもポールは反対側の足のかかとの延長線上につくようにします。ポールは肩より低い位置に持ちます。ロンググリップの下を持ち、短く使っても良いでしょう。歩幅は狭くし、ポールで上半身から推進力を得て進みます。
下りでの使い方
下りの時は体の横にトレッキングポールを突き、ポールに軽く体重を預けながら足を下していきます。ポールで体のズレを防ぎながら、足裏で静かに着地して足場を確保しましょう。歩幅は平地で歩く時の半分以下になるようにします。
グリップは上から握っても良いでしょう。ポールを先に下に突いて、体重をポールに預けて下るのはポールの破損や怪我にもつながる危険な使い方です。トレッキングポールはあくまでスキーのストックのように、バランスを整えて登山を補助してくれるものと考えて下さい。
ゴムキャップが必要な場合は?
トレッキングポールの先は金属製でとがっています。一般の道路、苔や樹木等の傷つけやすい登山道、さらに視視線保護の道等ではゴムキャップを取り付ける必要があります。また雨に濡れた滑りやすい岩道やぬかるんだ道を歩く際も安全のため、ゴムキャップをつけるのがおすすめです。
トレッキングポールの収納方法
ザックに固定する方法
手を使わなければならない急な登りの時などはトレッキングポールをザックにしまう必要があります。ザックの中に入らない場合、ザックの横に落ちないようにしっかりと固定します。ザックの横のポケットにストックを逆さまに入れて、ザックのコンプレッションベルトで固定しましょう。中にはストックを固定する機能がついたザックもあります。
ザックに固定する場合の注意点
ザックに固定する際、バスケットやトレッキングポールの先端が上を向いてすれ違う人に怪我を負わせる恐れがあります。ストックの先端にはゴムキャップをかぶせ、バスケットは巾着袋や布で覆いましょう。
トレッキングポールのメンテナンス
トレッキングポールは使った後のメンテナンスを怠ると鉄の部分が錆びてしまうこともあります。正しいお手入れ方法について知っておきましょう。
使った後はすぐにメンテナンス
使った後のトレッキングポールはレバーやシャフトをゆるめて、ゴムキャップやバスケットなども含めすべてパーツ毎に分解しましょう。こびりついた泥や汚れを落とし、乾いた布で丁寧に水分を拭き取ります。完全に乾くまでは壁に立てかけておいて下さい。
正しい保管で長持ち
完全に乾いた後は専用の保存袋があれば、それに入れて保管します。通気性の悪いビニール袋等で保管するのはNGです。
まとめ
トレッキングポールの選び方と正しい使い方について紹介しました。ポールの扱いに慣れるまでは平坦な道で練習してから、本番の登山に臨むのがおすすめです。トレッキングポールを上手く使って、安全で快適な登山を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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