テネレ700のスペックを徹底検証!はじめに
ヤマハからテネレ700の日本国内発売が発表され、公式ホームページでスペックが明らかになりました。これまでホンダのアフリカツインにビッグオフ市場をほしいままにされていたヤマハ。そのプライドをかけたテネレ700の日本国内発売に心を熱くしているヤマハファンは多いことでしょう。昨今のアドベンチャーツアラーブームもあり、テネレ700はツーリングマシンとしても注目されています。
ここで検証するテネレ700のスペック
ここではテネレ700のスペックを確認し、日本国内ツーリングに相応しいオフロードバイクかを検証します。日本国内でのツーリングでは車両重量を含め、足つき性やローダウンが気になりますよね。また、後半ではアフリカツインなどとも比較!記事中ではテネレ700にまつわるユーチューブ動画を多めに掲載します。
では本題!日本国内で発売されるテネレ700のスペックから確認していきましょう。なお、この記事は2020年3月28日現在の情報をもとに作成しますことをご了承ください。
テネレ700のスペック:車体サイズ
ラリーイメージをツーリングスペックに①
ヤマハのテネレ700と大型バイク現行車を比較すると、車体サイズは非常に大柄だといえます。特に全長が長いですね。テネレ700より全長が長いのはホンダのゴールドウイングのみ。オフロードでのハードランでも安定感を得られる全長ですね。全幅や全高はホンダのCRF1100LアフリカツインやスズキのVストローム1000より抑えられています。
【テネレ700日本国内発売仕様のスペック:車体サイズ】
ヤマハ テネレ700 |
大型バイク 現行車平均値 |
|
全長 | 2370mm | 2194.5mm |
全幅 | 905mm | 831.8mm |
全高 | 1455mm | 1239.5 |
※2020年3月28日現在
テネレ700でのツーリング:車体サイズ
テネレ700の車体サイズは手強さを感じさせる反面、ツーリングでは疲労を軽減してくれると考えられます。長い全長は直進安定性に貢献しますし、ビッグオフとしては広すぎず狭すぎないハンドル幅がリラックスしたライディングフォームを維持させてくれるからです。駐車場が広い郊外のコンビニでは問題ないものの、スーパーやビジネスホテルの駐輪場では取り回しに気を遣う可能性があります。
テネレ700のスペック:エンジン
ラリーイメージをツーリングスペックに②
ヤマハのテネレ700と大型バイク現行車を比較すると、エンジン出力はやや控えめな印象を受けます。これは全排気量の大型バイクを対象にした平均値と比較したため。750cc以下の大型バイクと比較すると平均値に近いですね。MT07やXSR700のエンジンをベースに吸排気系をアレンジし、最高出力や最大トルクはテネレ700用に少し抑えられています。林道ツーリング向けに低中速域のトルク感が高められたといっていいですね。
【テネレ700日本国内発売仕様のスペック:エンジン】
ヤマハ テネレ700 |
大型バイク 現行車平均値 |
|
最高出力 | 72PS /9000rpm |
111.4PS /8884rpm |
最大トルク | 6.8kg/kgf・m /6500rpm |
9.70kg/kgf・m /7160rpm |
※2020年3月28日現在
テネレ700でのツーリング:エンジン
テネレ700に搭載されている270度クランクの水冷DOHC4バルブ2気筒エンジンはトラクションを稼ぎやすく、テネレ700のトルキーなエンジン特性を際立たせています。林道ツーリングはもちろん、アスファルトオンリーのツーリングでも楽しいエンジン特性だといっていいですね。ワインディングロードでのファンライドでも、癖のないトルク特性は強い味方になります。
テネレ700のスペック:足回り
ラリーイメージをツーリングスペックに③
テネレ700の足回りはハイスペックだといえます。同排気量クラスの現行車でこれだけ調整項目が多い車種はありません。初期動作に硬さを感じるというプロライダーの試乗インプレ動画もありますが、足つき性を改善するためにローダウンするのが前提なら、リヤの減衰力調整はありがたいですね。ローダウンするとリヤの減衰力特性が著しく変化します(柔らかい印象になります)。
【テネレ700日本国内発売仕様のスペック:足回り】
ヤマハ テネレ700 |
||
フロ ント |
サス | 倒立フォーク インナーチューブ径Φ43mm 圧側・伸び側減衰力調整 |
タイヤ | 90/90-21 | |
リヤ | サス | リンク式 プリロード調整 圧側・伸び側減衰力調整 |
タイヤ | 150/70-18 |
※2020年3月28日現在
テネレ700でのツーリング:足回り
テネレ700の足回りはパニアケースに荷物を満載するようなキャンプツーリングでこそ本領を発揮するといっても過言ではありません。特にリヤのスプリングプリロードを手動ノブで調整できるのがありがたいですね。パニアケースに荷物を満載したまま調整できますし、キャンプ場に設営したテントに荷物を置いて周辺ツーリングをする際にも容易に調整できます。ちなみに、プリロード調整は足つき性を改善するためのものではありません。
テネレ700のスペック:足つきと車両重量
ラリーイメージをツーリングスペックに④
ヤマハのテネレ700と大型バイク現行車を比較すると、足つき性を表すシート高は非常に高い反面、車両重量は非常に軽いといえます。250ccクラスのオフロードバイクと比較すると、足つき性を表すシート高は平均値に近い反面、車両重量は非常に重いですね。小柄なライダーは手強さを感じるかもですが、平均的な日本人男性なら何とかなる範囲。テネレ700は腰が高いので、オフロードバイクの経験がなければローダウンを検討しましょう。
【テネレ700日本国内発売仕様のスペック:足つき性と車両重量】
ヤマハ テネレ700 |
大型バイク 現行車平均値 |
|
シート高 | 875mm | 809.6mm |
車両重量 | 205kg | 232.9kg |
最小回転半径 | 2.9m | 29.8m |
※ちなみに、750cc以下クラスの大型バイク現行車の平均値は、シート高:798.9mm、車両重量:208.4kg、最小回転半径:2.91mです。
※2020年3月28日現在
テネレ700でのツーリング:足つき性や車両重量
テネレ700でのツーリングではローダウンする方が安心だといえます。ライダーの体格にもよりけりですが、車両重量が軽くても、足つき性が悪いと立ちごけする可能性があるからです。信号待ちで左足をつく道路の左端は排水のために傾斜していますし、林道の轍の高いほうにタイヤが乗っていると足つき性はさらに悪くなります。パニアケースに荷物を満載するようなキャンプツーリングならなおさらです。ショールームで跨るだけでは足つき性を判断できません。
テネレ700のスペック:最高速度
ラリーイメージをツーリングスペックに⑤
ヤマハのテネレ700を大型バイク現行車と比較すると、理論上の最高速度や時速100キロでのエンジン回転数は控えめな印象を受けます。これは、エンジンの項と同じく、全排気量の大型バイクの平均値と比較しているためです。750cc以下の大型バイク現行車の平均値と比較すると、極めて平均値に近いといえます。ちなみに、日本で国内発売されている大型バイクで最速なのはホンダのCBR1000RR-Rファイヤーブレードです(理論上の最高速度:359.9km/h※2020年3月28日現在)。
【テネレ700日本国内発売仕様のスペック:足つき性と車両重量】
ヤマハ テネレ700 |
大型バイク 現行車平均値 |
|
最高速度1 | 198.8km/h | 231.0km/h |
最高速度2 | 143.6km/h | 185.7km/h |
TWR | 30.174 | 25.548 |
100km/h | 4526rpm (69.6%) |
3862rpm (56.8%) |
※最高速度1:最高出力を発生させるエンジン回転数での理論上の速度
※最高速度2:最大トルクを発生させるエンジン回転数での理論上の速度
※TWR:車両重量を最大トルクで割った数値
※100km/h:トップギヤでの100km/h時の理論上のエンジン回転数
※()内は最大トルクを発生させるエンジン回転数比
※2020年3月28日現在
テネレ700でのツーリング:最高速度
テネレ700はピークパワーよりもトルキーなエンジン特性を重視するツーリングライダー向きだといえます。しかし、理論上の最高速度は法定速度をはるかに上回っていますし、高速道路でのエンジン回転数にも余裕がありますので、パワー不足を感じることはありません。近年はスピードジャンキーな高速ツーリングをするライダーが減りましたので、時代に合ったパワー感だといえます。
テネレ700のオプション:ローダウン
ラリーイメージをツーリングスペックに⑥
ヤマハのテネレ700でツーリングを楽しむなら、ローダウンを検討しましょう。大型バイクのメリットは長距離ツーリングでも疲労を蓄積しにくいところ。足つき性が悪いとツーリングの後半で体力を消耗しやすくなるからです。また、停止の度にお尻をずらせて足つき性をカバーすると、お尻が悲鳴を上げるほど痛みます。ヤマハはテネレ700のローダウン仕様も発売していますね。
テネレ700のローダウン仕様
テネレ700のローダウン仕様は、シートの交換とローダウンリンクロッドでシート高を約38mm下げられています。シート高が837mmになりますので、同じくヤマハのXSR770と同程度になるのです。通常仕様と価格が一緒ですので、お買い得感がありますね。ローシートを公道で試したあと、ローダウンリンクロッドで追加調整する方法も可能です。残念ながら、その場合はオプション価格が上乗せされることになります。
テネレ700のオプション:パニアケース
ラリーイメージをツーリングスペックに⑦
ヤマハのテネレ700でのツーリングにはパニアケースの追加も検討しましょう。腰が高いテネレ700のリヤシートにキャンプ道具などを積載すると、重心がさらに高くなってしまうからです。パニアケースを追加すれば重心を下げることなく積載量を増やせます。ただし、パニアケースを追加すると重量増となりますし、バイク乗り入れ禁止のキャンプ場では荷物を分散して運ばなければなりません。
パニアケースの価格
テネレ700をフルパニア化するのに23万円強(消費税10%込み)の価格が安いか高いか?専用設計の価格としては有意義な価格だといえます。ヘプコ&ブッカーから発売されているパニアケースで個性を強調するのもありですね。ヘプコ&ブッカーでのフルパニア化はソフトバッグや樹脂ケースなども選択できますので、価格を抑えやすくなります。
さて、ここからは後半!他車種と比較してテネレ700を検証しますね。
テネレ700とスペックを比較:CRF1100L
ビッグオフ横綱対決!
ヤマハのテネレ700のライバル車となるのはホンダのCRF1100Lアフリカツインです。CRF1100Lアフリカツインは長距離ツーリングでもお尻が痛くならないオフロードバイクとして人気があります。シート高を変えられるアジャスタブルシートはナイスアイデアですね。また、バリエーションモデルが多く、ツーリングのスタイルに合わせて選択できます。
比較ポイント:テネレ700とCRF1100Lアフリカツイン
テネレ700とCRF1100Lアフリカツインを比較するなら、電子制御システムが必要かどうか?をカギにするのがベストです。テネレ700はABS以外の電子制御システムを一切排したスパルタンな仕様で、ライダーの意思を尊重されています。しかし、CRF1100Lアフリカツインの電子制御システムは高級車並み。また、車体サイズは引き分けですが、車両重量や価格ではテネレ700の圧勝です。
テネレ700とスペックを比較:NC750X
アスファルトか?ダートか?
ホンダの同クラスからテネレ700の対抗馬を挙げるならNC750Xです。オフロードバイクに近いライディングポジションや低いエンジン回転数で速度を稼ぐ扱いやすいエンジンなどに、ツーリングマシンとしての資質を感じます。コンパクトな車体サイズや足つき性に期待できるシート高も魅力。クラッチ操作から解放されるDTC車もあります。NC750Xは疲労を軽減してくれる大人のアドベンチャーツアラーだといっていいですね。
比較ポイント:テネレ700とNC750X
テネレ700とNC750Xを比較するなら、あなたのツーリングスタイルに合っているかどうかを確認すべきです。テネレ700がオフロードバイクであるのに対し、NC750Xはアスファルトオンリーのオンロードバイク。カテゴリーは全く別物です。NC750Xの燃料給油口はリヤシート下にありますので、ツーリングでの積載性はテネレ700に軍配が上がります。その反面、NC750Xの安い価格は魅力です。
テネレ700とスペックを比較:MT-07
兄弟対決!
テネレ700のベースとなったMT-07とも比較する価値があります。MT-07はスポーツネイキッドスタイルでツーリングを楽しめるオンロードバイクですが、テネレ700とほぼ同型のトルキーなエンジンを搭載しているからです。タイヤサイズの違いを二次減速比で調整し、テネレ700は若干加速重視、MT-07は若干速度重視になっています。また、ラジアルタイヤのグリップ感はブロックパターンタイヤの比ではありません。
比較ポイント:テネレ700とMT-07
テネレ700とMT-07を比較するなら、車体サイズに注目するのがベストです。MT-07は大型バイクらしからぬ軽量でコンパクトな車体サイズが魅力!名機の香りすら漂う2気筒688ccエンジンを堪能するのが目的ならMT-07に軍配が上がります。また、破格ともいえるMT-07の価格も見逃せません。しかし、テネレ700には豪華な前後サスペンションをセッティングして飼いならす楽しさがあります。
テネレ700とスペックを比較:トレーサー
ワイルド?スマート?
テネレ700を一クラス上のトレーサー900GTと比較するのもありです。トレーサー900GTはサスペンションセッティングの項目が多いアスファルトオンリーのアルプスローダー。フロントサスペンションはフルアジャスタブル、リヤサスペンションはプリロード調整と伸び側減衰力調整ができます。オンロードバイクとしてはシート高がやや高いものの、車体サイズはテネレ700よりコンパクトです。
比較ポイント:テネレ700とトレーサー900GT
テネレ700とトレーサー900GTを比較するなら、CRF1100Lアフリカツインと同様に電子制御システムに注目するといいですね。オフロードでは電子制御システムの介入が邪魔をする場面がありますが、アスファルトでは備えていて損のない装備です。また、テネレ700と同じ価格で上級モデルのトレーサー900GTを所有できるのもメリット。当然ながら、高速走行での余裕はトレーサー900GTに軍配が上がります。
テネレ700とスペックを比較:Vスト650XT
ビッグオフ?アドベンチャーツアラー?
同排気量のアドベンチャーツアラーとも比較してみましょう。スズキのVストローム650XTは荒れた路面での高い走破性に人気があります。リヤサスペンションは油圧式のアジャスターノブでプリロード調整ができ、伸び側減衰力調整も可能です。トラクションコントロールや3段階調整できるウインドスクリーンなど、長距離ツーリングを快適にしてくれる装備が詰まったアドベンチャーツアラーだといえます。
比較ポイント:テネレ700とVスト650XT
テネレ700とVストローム650XTを比較するなら、270度クランクの並列2気筒と90°V型2気筒の違いを確認しておくべきですね。90°Vツインエンジンは270度クランク並列2気筒と同等の不等間隔爆発をバランサーなしで実現できるため、ダイレクトな加速感を得られます。その反面、エンジンが前後に長いため、バイクの重心が長くなりがち。車体はVストローム650XTが若干コンパクトですが、軽快さではテネレ700に軍配が上がります。
テネレ700のキャラクター:考察
テネレ700の優位性はどこに?
テネレ700のスペックを確認しているとアドベンチャースピリッツを掻き立てられますが、他車種と比較してみると迷いが生じます。実際、林道ツーリングや狭路巡りツーリングをすると舗装路を走行する距離が長く、未舗装路を走行する距離は極端に短いからです。通過せざるを得ない悪路を走破するための性能を備えたアドベンチャーツアラーのほうが日本国内のツーリングでの現実味がありますね。
250ccオフロードバイクと比較する
しかし、すっかり車種数が少なくなった250ccオフロードバイクを引き合いに出すと話は一変します。高速道路を快適に走行でき、長距離ツーリングでも疲労を蓄積しにくいビッグオフは魅力的です。また、テネレ700のトルキーなエンジン特性はギヤ固定でトラクションをコントロールできます。重量の重さやパニアケースのかさ張りなど、未舗装林道でのデメリットはあるものの、林道ツーリングでは250ccオフロードバイクより快適かもです。
スペックに見合った価格
テネレ700と250ccオフロードバイクを比較すると、価格差の大きさが気になります。しかし、その価格差は性能で相殺されると断言できます。テネレ700の車両価格はWR250Rの二倍ですので、決して安いとはいえません。しかし、排気量や最高出力は三倍になりますし、理論上の最高速度は約50km/h速くなるのです。しかもWR250Rのハイスペックな走破性を引き出せるユーザーなど一握り。長距離ツーリングも可能なテネレ700のほうが現実的だといえます。
テネレ700のスペックを徹底検証!まとめ
ヤマハのテネレ700のスペックを確認し、他車種とも比較して徹底検証しました。長距離ツーリングも可能なテネレ700は日本国内でのツーリングも楽しくしてくれる現実味があり、ライダーの新たなアドベンチャースピリッツを掻き立てることでしょう。何よりも、ラリーレイドでの栄光に彩られたテネレの称号!それに恥じないテネレ700のスペックに、新たな神話を築く素質を感じずにはいられません。
大型バイクが気になる人はこちらをチェック!
テネレ700以外にも、日本国内で発売されている大型バイクは長距離ツーリングに最適です。軽量でコンパクトな大型バイクや、AT限定大型二輪免許で乗れるバイクをまとめた記事もチェックしてください。また、今回は文字数の関係で他車種の理論上の最高速度を記載しませんでしたので、理論上の最高速度の計算方法を記した連載記事もチェックしてくださいね。
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ホンダ CRF1100Lアフリカツイン