エチレンガスとは
可燃性の気体
エチレンガスは可燃性の気体で、水に溶けず甘い香りがあると言われています。用途としては塩化ビニルやポリエチレンの材料として使われ、工業用にわざわざ生産している二重結合の炭化物です。
野菜や果物などの植物からも発生するということを聞いたことがある方は少し意外に思ったかも知れませんね。エチレンガスとは身近なところで利用されている工業用の基剤でもあります。
植物のホルモンの一種
エチレンガスがもっているもう一つの顔が有名な植物関連のことです。エチレンガスとは野菜や果物などの植物由来のホルモンの一種でもあります。ホルモンとは野菜が果物に傷ができたとき、日当たりが悪かったりなど悪いことに対応して放たれる物質のこと。
天気がよく光合成がたくさんできた、根張りが良くなったなどのいいときにも何らかの作用が働いている可能性もあり、人間を含め生体がもつ不思議な物質です。
エチレンガスの発生方法1
原油から作る
化学製品の基剤という顔があるエチレンガスの発生方法は人為的に原油から作る方法で生産されています。ナフサと呼ばれる石油の一種で沸騰するまでの温度(沸点)が30度~80度程度の軽質ナフサが工業的に作るエチレンガスの材料です。
あとは熱分解などをする専用の設備を利用して軽質ナフサからエチレンガスができます。エチレンガスはポリエチレンなどの材料となり大量に使われるためこのような人為的な発生方法が採用されています。
自然界にあるエチレンガスでは足りない
エチレンガスは人為的に発生させなくても自然界に存在するものです。
化石燃料を使って、軽油やガソリンのように発生させなくても自然界にあるもので代用できそうですが、エチレンガスは化学工業の最も基本となる材料と言われていて平成30年のエチレンガスの使用量は日本だけでも1,323,256tにもなります。人為的に作らないと、植物から集めるには足りない途方も無い量です。
エチレンガスの発生方法2
植物から発生する
植物の由来ということですのでもう一つの発生方法は、自然発生です。植物が成長度合いに応じて発生させますよ。
この発生方法は単純に植物が生えているだけでいいので大掛かりな装置などは不要ですが、前述したようにこの発生方法は自然任せのため人為的に作らないと工業用品に転用できるほど入手できず、自然由来のため安定的に発生するとは限らないので化石燃料から人為的に作らないといけません。
知らないうちに発生する
冬になると箱単位でみかんやりんごなどが販売されています。こたつにみかんという組み合わせは日本人なら誰もが憧れるシチュエーションですよね。しかし箱単位で買うといつの間にか底の方のみかんなどが腐ってしまうことがありませんか?
じつは重さで傷ついたわけではなく、エチレンガスの影響でもあります。全ての野菜や果物などの植物から発生するというわけでないのですが、エチレンガスが発生しやすい種類などがあります。
エチレンガスが発生する果物(野菜)とは
有名なのは「りんご」
エチレンガスが発生しやすい果物の中で特に有名なのは、アダムとイブが食べた言われている禁断の果実「りんご」です。ニュートンが万有引力を発見したのもりんごと言われていますね。
同じようにりんごにまつわる話としてはキウイフルーツの隣にりんごを置いておくとキウイフルーツがすぐに熟成するという話があります。これはりんごのエチレンガスの効果により熟れるということで、りんごはエチレンガスを発生する果物として有名です。
その他発生しやすい果物(野菜)
りんご以外に発生させやすいのはメロン、桃、アンズ、洋梨、パッションフルーツ、パパイヤ、アボカドなどもそうです。箱で買いやすいみかん、柿なども出します。
エチレンガスは植物の成長にも働きがあるため、ほとんどの果物で発生し、さらに普段は出さなくても熟れたフルーツからもエチレンガスは発生しますよ。有名なりんごは品種によって発生するガスの量に差があると言われていて「つるが」、「黄王(きおう)」はガスが多いです。
発生しない品種とは
基本的にエチレンガスが発生する仕組みはフルーツが熟れたときです。しかし「しなのゴールド」、「さんふじ」、「ふじ」はあまり出さない品種です。なんでも入れておけばいいというものではないので注意したいですね。
スイカやキウイフルーツ、ぶどうや、さくらんぼやニンジンやアスパラガスに芽キャベツやカーネーションやバラなどは発生しにくいです。
エチレンガスの効果・メリットについて1
未熟な果物を熟成させる効果
前述したように、エチレンガスが発生する果物と成熟していない果物を袋の中などにいれて一緒に保管すると、果物が素早く熟成して食べごろを迎えます。常温で保管して追熟させるのが面倒な場合や時間がない場合に便利な方法です。
これがエチレンガスの効果でありメリットのひつです。熟成する時間が少なくなる仕組みとしてはエチレンガスが未成熟な果物に対して早く熟れるように指示をするといった感じになります。
気体なので容器にいれておくといい
カゴの中に一緒に入れておくよりも、袋やケースのなかなど空気の流れが滞る場所にいれておくとより効果的です。エチレンガスは甘みのある気体とは言え、無色の気体です。
そのため発生していても空気の滞留によって周りに分散してしまうと、一緒に成熟していないフルーツを置いておいてもあまり意味がありません。エチレンガスがもつ成熟を促すというメリットを活かすには保管場所、保管方法を考えてみましょう。
エチレンガスの効果・メリットについて2
一部野菜の鮮度を保つ
エチレンガスをうまく使うと「一部」の野菜の鮮度を保つことができます。一部というのがポイントです。例えば、じゃがいもの芽は有毒なソラニンが含まれているため発芽してしまうとそのままでは食べられなくなります。
芽の部分を大きく切り落とすなどの工夫が必要になります。このときにエチレンガスと一緒に保管しておくと発芽しないようにできるので、鮮度を保ったまま保存できるというのが2つ目のメリットとなります。
ケーキの鮮度を保てる
少し不思議なことですが、植物から生まれの物質ですが植物以外にも作用します。誕生日やクリスマスに食べるふわふわのスポンジケーキは買った当日は美味しいのですが、余って冷蔵庫で保存するとスポンジや生クリームがぱさついたり、固くなったりしたことがありませんか?
このときにりんごと一緒に保管すると、エチレンの効果でスポンジや生クリームぱさつかず、買ってきた当日の美味しい状態をキープしてくれる働きがあります。
エチレンガスの効果・メリットについて3
成長速度を早める
エチレンガスが持つ3つ目のメリットは植物の成長速度や度合いを早めるという効果です。これは後述するデメリットでもあるのですが、エチレンガスは成長に関する物質ともいわれているので、タイズなどの芽を食べるもやしを早く成長させ、すぐに出荷できるようにするためにエチレンガスの成長速度を早くする仕組みが使われています。
ただし同じように芽を食べるスプラウト類はエチレンガスを使わずに栽培していますよ。
スプラウト類とは
スプラウトとは大根(かいわれ大根)キャベツや豆苗、ブロッコリーなどの若い芽を食べる野菜の総称でスプラウトの中にもやしも含まれていますよ。スプラウトでもかいわれ大根などの緑の芽をたべるものと、もやしのように光に当てず育てるのでは種類がことなります。
エチレンガスのデメリットについて1
成長させすぎるのがデメリット
前述したように成長速度を早くする、熟成させるという効果はデメリットにもなります。というのも果物が熟成した時を思い出してみてください。桃がわかりやすいかも知れませんね。
熟成した後の果物は組織が柔らかくなり、水分が出てきたりと形状を含めて質感が変わってきてやがて腐ってしまいますよね。つまりエチレンガスの影響で熟成しすぎて、想定より早く食べられなくなる可能性もあるということです。
熟れるとエチレンガスが出る
普段はあまり出さなくても熟れるとエチレンガスを発生させるものが多いです。たとえばりんごと一緒にプラム(すもも)を保管していて忘れてしまい、プラムが熟れててくるとりんごのガスとプラムのガスで高濃度になり一気に鮮度が落ち腐るなんてこともあります。
エチレンガスのメリット、デメリットは僅かな違いなので今く活用しましょう。
エチレンガスのデメリットについて2
鮮度を落とす
葉物野菜など追熟や熟れるという概念がない植物とエチレンガスが触れてしまうと鮮度を落とす原因となるところが2つ目のデメリットです。
葉物野菜の鮮度を落とすというのは、葉が黄色くなったり(枯れているように見えたり)、しなびているということです。よって冷蔵庫で葉物野菜など追熟という考え方がないものと一緒に熟れるとガスを発生する果物、もともとガスを発生させやすい果物を一緒に保管しないようにしましょう。
エチレンガスが発生する食品の保存方法
熟れやすくするためには、袋やケースに入れないと空気の流れで分散して効果がなくなると紹介しましたが、冷蔵庫で保管する場合は空気の流れは基本的にありません。
あったとしても蓋の開け閉めや、冷蔵庫の機能で流れる程度となり冷蔵庫自体が大きなケースの役割を果たすので注意しましょう。エチレンガスが発生してしまうものを冷蔵庫で保管するときは、袋に入れるなどして小分けにすることで多少鮮度の低下を抑えられますよ。
エチレンガスを上手に使うには
仕組みはいっぱい開発されている
エチレンガスのメリットである成長速度を早めるという効果を応用した仕組みもいっぱい考えられています。例えば追熟剤として多孔質構造の石(ゼオライト)とエチレンガスを利用した製品はそのままでは売れにくい、キウイフルーツを追熟させるために開発された仕組みを応用した製品の一つです。
似たようなものでは八百屋などで使われるエチレンガスのボンベやスプレー缶などもあり、フルーツを食べ子頃にして売るための製品です。
鮮度を保つには
前述とは逆に成長速度を早めすぎて腐敗させてしまうこと、食材の鮮度を落としてしまうというデメリットに対する製品もたくさん発売されています。
こちらも小さな穴が無数に空いているゼオライトを使っただけの製品で冷蔵庫に入れておくと有害なエチレンガスを吸い取ってくれるので葉物野菜などの鮮度が保てます。炭を入れておいてもいいでしょう。同じような仕組みで冷蔵庫用加湿機などがありエチレンガスの影響を抑えてくれます。
エチレンガスのまとめ
上手に活用しよう
エチレンガスの発生方法は発生しやすい果物を置いておくだけです。エチレンガスにはメリット、デメリットがあるので、発生しやすいフルーツを扱うときは注意しましょう。
エチレンガスを発生させたくないときは炭や除去剤がを使い熟れたものはそのままにせず、食べるようにしてくださいね。野菜や果物だけではなく、すぐに食感が変わってしまうケーキ類の保存にも使えるところもポイントです。
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