はじめに
庭や鉢でイブキジャコウソウを楽しむ方法
イブキジャコウソウという植物をご存知でしょうか。10センチほどの背の低い植物ですが春の開花時期にはピンク色(中には白い色の花も)の花をたくさん咲かせる可憐な草木。山や海岸や平地などどこでも自生しているくらいとても丈夫で育て方も簡単です。岩場にも映える野性味あふれるその姿は和風の庭やグランドカバーなどにもよく用いられます。この植物の特徴と育て方や挿し木などの増やし方を解説していきましょう。
イブキジャコウソウについて
イブキジャコウソウという植物はいったいどんな性質を持っていて、どんなものと同じ仲間なのか気になりますね。まずはこの植物のそんな基本情報から見ていきましょう。緑の葉や茎が伸びていくのも綺麗ですが、ピンクの花が咲く開花時期は一番の見ごろの時期。その季節もご紹介します。
イブキジャコウソウの基本情報
科・属:シソ科イブキジャコウソウ属
原産地:日本の北海道から九州まで
学名:Thymus quinquecostatus
名前の由来:伊吹山でよく見られる麝香(じゃこう)のようなよい香りのする植物。
別名:イワジャコウソウ・ナンマンジャコウソウ
イブキジャコウソウの開花時期
この植物の開花時期は6-8月。少し遅い春から夏までが花が咲く時期。花ひとつひとつの大きさは7ミリ程度ととこちらも樹姿同様小さなものですが、先端に固まって咲くことから開花時期にはとてもかわいらしい姿を見せてくれます。
イブキジャコウソウの特徴
イブキジャコウソウの代表的な特徴を3つご紹介しましょう。名前の元となった特徴でこれを楽しむという人が多いものや、見た目から受ける印象とはまったく違った特徴などいろいろです。この特徴が庭造りのヒントや育て方のアイデアにつながるでしょう。
特徴1.芳香
この植物の特徴といえば、名前にもなるくらいのよい香りの植物であること。香る部分は花だけでなく茎・葉と全体なので花のない時期でも良い香りがします。
特徴2.矮性低木
パッと見て10センチほどの背丈しかありませんので、小さな草と思われることが多いですがこの植物はれっきとした低木。鉢植えにして冬は室内で管理することで長くいつまでもその姿を見せてくれます。
特徴3.ハーブの仲間
イブキジャコウソウはハーブとしても有名なタイムの仲間。この植物自体もハーブティーにして飲むことができます。そのお茶には利尿や発汗のほかに強壮作用もあるので体が疲れているときや風邪をひいたときに飲まれるハーブです。
イブキジャコウソウの植え方育て方1.日当たり
イブキジャコウソウのことがだいぶわかってきたところで、早速育て方の解説に入っていきましょう。まずはこの植物が好きな日当たりから。置き場所を決めるのは園芸をする上で最初におこなう大切なポイントです。これによってその草木の生育が変わってくるともいえます。
イブキジャコウソウの好む日当たり
日当たりが好きな植物で日陰に置くと徒長しがちになります。ロックガーデンやグランドカバーにも使われますが木の下に入ったりすると樹姿が乱れるので、そのような使い方をする場合はそちらに伸びていかないように先に別の植物を植えてしまった方がよいでしょう。
庭植えの置き場所
日のよく当たる場所に植えっぱなしで放置しておくと、茎を伸ばしてそこから根が出て簡単に増えて範囲を広げてしまうので、囲いを作ったり段を設けたりと少しでも茎や葉が伸びていくのを阻害するような庭デザインの場所に植え付けてください。
室内での置き場所
日陰では徒長するので室内でも明るい日あたりのよい場所に置くようにしてください。常緑なので冬の寄せ植えにも使われるでしょうが、室内でもしっかりと間延びしないように育てるにはとにかく日当たりのよい場所に置くのがポイントです。
イブキジャコウソウの植え方育て方2.土
一般的な植物用の培養土でも良いですが、もう少し水はけのよい土を作ってあげることでよりこの植物は喜んで健康的に大きくなってくれます。その土の作り方・配合をご紹介しましょう。庭植えの場合は植え付け場所の土壌改良用の苦土石灰と一緒に混ぜ込んでください。
イブキジャコウソウの土づくり
イブキジャコウソウ用の土は赤玉土ではなく鹿沼土をメインに用います。そこに赤玉土や軽石の小粒なものを混ぜていきます。割合は5:4:1程度で。それらの土を用意できない場合は一般的な培養土でも育てることは可能です。できるだけ水はけがよく保湿性があるものを選ぶとよいでしょう。
初心者にもおすすめの花の培養土
市販の培養土でおすすめなのが山野草の土として配合されたもの。さきほどの配合がほぼそのまま再現されているので、こちらを使うことでそれぞれを個別で集めて配合せずとも、イブキジャコウソウ用の土として手軽に活用できます。
イブキジャコウソウの植え方育て方3.植え方
増やし方が簡単なイブキジャコウソウは植え付けすることも多く簡単にできるお世話ともなっています。植え付け時に根はほとんどなくても枯れずに、根を出しながらそのまま大きくなりますので神経質になる必要もないのが初心者向けなところ。
イブキジャコウソウの植え方時期
この植物の植え付け時期は春と秋の2回。春の場合は芽出しの前に植え付けてしまうのがよいでしょう。平らな地面よりも少し盛り上がり気味にすると形よく仕上がります。
イブキジャコウソウの植え方1.庭植え
庭に直接植える場合はその場所の水はけに注意しましょう。水がたまりやすいようなところである場合、一度土を深く掘って腐葉土やピートモス(調整済みのもの)を混ぜ込んで水はけをよくしておいてください。また先ほども申し上げたとおり、横に葉や茎を伸ばして広がっていきます。自由に増えてほしくない場合は、石やブロックなどで囲いを設けて広がりすぎを防止しましょう。
イブキジャコウソウの植え方2.鉢植え
鉢植えの場合は大きめの広鉢にするときれいに増えていきます。一般的な鉢であると垂れるように鉢の縁からはみ出して下へと伸びていきますのでそれを楽しむという植え方もあります。
イブキジャコウソウの植え替え
鉢が根でいっぱいになってきたら新しい大きめのものに植え替えましょう。あまり根ばかり大きくなっているようであれば、1/3くらいまでならカットしてコンパクトにしてしまった方が生育が良い場合も。時期は植え付け時と同様に春か秋にします。
イブキジャコウソウの植え方育て方4.室内管理
日陰に置くとひょろひょろと背ばかり伸びて葉と葉の間も間延びしたような姿になってしまうイブキジャコウソウ。室内管理は難しそうに感じるかもしれませんが、日当たりさえ注意すれば冬は室内で管理した方が霜の心配がなく安心です。
イブキジャコウソウを室内で育てる
葉はやや多肉質ですがこの植物はあまり乾燥を好まない性質があります。冬の乾燥した風はイブキジャコウソウに直接当てないようにしましょう。霜にもそれほど強くありませんので鉢植えで室内管理するのがおすすめ。
鉢植えで室内管理
イブキジャコウソウの冬の室内管理は場所にはあまりこだわりません。霜がおりないような場所であれば室内にこだわらず玄関先のポーチの下に置いておいても。どの場合においてもよく晴れた日中は十分陽の光に当ててあげ徒長しないようにしてください。
イブキジャコウソウの植え方育て方5.剪定
高温多湿な日本の夏は苦手とする植物がほとんど。イブキジャコウソウもその中のひとつです。できるだけ風通しがよくなるように夏前には剪定をおこなってください。もう少し早めに花の時期が終わりそうなころにやってしまっても構いません。
イブキジャコウソウの剪定時期
イブキジャコウソウの剪定を行うならば、開花時期が終わったあとか風通しをよくするために夏前にはしましょう。剪定の方法は簡単で、根元から数センチくらいのところで揃えてしまうだけ。木の高さも10センチくらいしかありませんので、そこから立ち上がっている花の部分や伸びすぎた茎を切るようにするとよいですね。
剪定のやり方
風通しを良くするためについ剪定しすぎてしまうと次の芽が上がってこなくなってしまいます。生えている根元の部分をよく確認して、そこから数センチ分の緑の茎や葉っぱは残しておくようにしてください。目安は動画で確認できるくらいの枝の長さです。広がりをおさえるためには外側の茎はもっと短めに剪定してしまってもかまいません。
イブキジャコウソウの植え方育て方6.増やし方
この植物は増やし方も簡単。挿し木と株分けどちらで増やすかは、そのタイミングによって変えると良いでしょう。植え替えと一緒に済ませてしまうなら株分けを。剪定後であるなら挿し木で増やす時といえます。
イブキジャコウソウの増やし方は2種類
イブキジャコウソウは放置しておいても広がっていきますが、もっと株の数を増やしたいという場合は剪定で切り取った枝を利用して挿し木をするか、掘り返して株分けするというやり方もあります。茎の部分から簡単に根づくので挿し木が簡単で初心者の方にもおすすめです。
増やし方1.挿し木
イブキジャコウソウの茎はイチゴのランナーのような役割りがあって、そこから根づいて栄養を補給しようとします。根がついてからカットして別に植え替えても良いですし、剪定で切った枝を鹿沼土のポットなどに置き、根だしをさせても。そのままポットで管理して植え替えの時期になったら庭や鉢植えとして植え付けてあげてください。
増やし方2.株分け
鉢植えのものを植え替えするときに、手で割れる部分で分けて植え付けてください。そのとき根がないような状態でも葉の裏からでも根が出てきて栄養を補給できますので心配ありません。こちらの方法も初心者の方でも土や時期を間違えさえしなければ、まず失敗することはないでしょう。
まとめ
イブキジャコウソウは栽培も簡単な初心者向けの植物
イブキジャコウソウの特徴や育て方をご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。草ではなく低木ですので扱い方も簡単で冬越しも楽に行えるでしょう。春になるとかわいらしいピンク色の花を咲かせてくれるこの植物、気をつけるのは横にどんどん広がっていくので他の植物の生育の邪魔をしないよう囲いをしたり剪定することで物理的に伸びをセーブすること。剪定をした枝は挿し木にも使えますので増やし方にも挑戦してみてはいかがでしょうか。
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