ナンバンギセル
ナンバンギセルとはどんな植物?
変わった形をした面白い植物を育ててみたいと考えている方におすすめなのが「ナンバンギセル」です。こちらは普通の植物と違って、宿主がいないと生きていけない、寄生するタイプの植物。一般的な植物とは違うものの、育てやすいので初心者の方でも大丈夫です。育てる際は宿主となる植物も一緒に用意しましょう。今回はそんなナンバンギセルの基本情報や育て方を解説していきます。
ナンバンギセルの特徴
ナンバンギセルとは?
ナンバンギセルとは、ハマウツボ科ナンバンギセル属に分類される一年草です。原産地はアジア圏で、アジアの亜熱帯から温帯に分布しています。日本でも、北海道から沖縄まで広く自生しており、馴染み深い植物です。大きさは10㎝前後まで成長することが多いのですが、暖かい地域ではもっと大きく育つこともあります。最大の特徴は寄生植物であることで、他の植物の根に寄生し、宿主の養分を取って成長していきます。
ナンバンギセルの宿主になる植物は?
宿主になる植物は主にイネ科の植物です。一般的なのはススキやイネで、育てる際には小型のススキを宿主にして育てる場合が多いです。他にも、ミョウガやショウガ、ホトトギス、サトウキビなどにも寄生します。必ずしもイネ科に寄生する訳ではなく、他の科の植物に寄生する場合もあります。宿主から栄養をとって成長する為、宿主が枯れるとナンバンギセル自身も枯れてしまうのですが、大株のススキが弱るほど栄養を吸収していきます。
ナンバンギセルは初心者でも育てやすい?
初心者の方が気になるのが育てやすさですが、宿主に寄生させなければならない特殊な部分はあるものの、栽培自体は簡単です。寄生先となる宿主をしっかり育てられれば問題なく、宿主としてよく利用されているススキは簡単に育てられる為、あまり心配はいりません。宿主が生育不良になると一緒に調子が悪化してしまいますので、宿主を元気に育てていきましょう。
ナンバンギセルの開花時期
開花時期は8~10月と、夏時期に花を咲かせます。花色は紫が基本色で、種類によっては少し違った色のものもあります。花の形が特徴的で少しうなだれているような印象があります。花の大きさは2~3㎝程度。茎は黄色です。また、本当の茎部分は赤褐色なのですが、ほとんど地上には出ていません。花の後には後ろに丸い実が出来て、その実の中に種が出来ます。種は粉のように小さな種となっており、種を使って増やしていけます。
ナンバンギセルは万葉集にも出てくる寄生植物
古くから知られていた花であり、実は万葉集にも登場しています。万葉集で「道のべの尾花が下の思い草 今更さらに何をか思はむ」という和歌が出てきますが、この「思い草」というのがナンバンギセルのことなのです。また、万葉集以外にも、江戸時代の俳句では秋の季語として使われており、昔から親しまれてきた植物であることが分かります。ちなみに、サトウキビに寄生すると困るので、万葉集に出ている植物とはいえ嫌われることもあります。
ナンバンギセルの種類
ナンバンギセルの種類①オオナンバンギセル
Data#1: オオナンバンギセル(大南蛮煙管 - Aeginetia sinensis)
— 〻 Q U A L S (@februere) March 6, 2017
本州 / 四国 / 九州に分布し、深山の草地に生育する。アジアでは、中国の中部に分布する。 pic.twitter.com/U3DhC2f5eh
こちらは名前の通り、本種よりも大きく成長する種類です。本種よりも5~10㎝程度大きくなります。その他は本種に似ていますが、茎の色が少し違う他、萼の先端がとがりません。こちらも日本で自生している種類ではありますが、実は場所によっては準絶滅危惧種とされており、数が減っています。保全対策として、園芸目的での採集の禁止や、草地の維持管理が挙げられます。
ナンバンギセルの種類②ヒメナンバンギセル
こちらは本種よりもサイズが少し小さい種類です。本種よりも5~10㎝ほど小さく成長します。また、花の色が赤紫色ではなく青紫色になるのが特徴。分布地域は狭く、北関東だけに分布している種類で、クロヒナスゲという植物にのみ寄生する珍しい植物です。
ナンバンギセルの花言葉と名前の由来
ナンバンギセルの花言葉
花を咲かせますので、花言葉も持っています。花言葉は「物思い」と「遠距離恋愛」です。花の見た目がうな垂れているようであり、何かに悩んでいるような様子が由来となっている花言葉となっています。どちらの花言葉も明るいイメージの花言葉ではありませんので、贈りものには不向きな花と言えます。どなたかに分けてあげる際は、花言葉の内容や由来も伝えてあげた方が良いでしょう。
ナンバンギセルの名前の由来
花言葉と共に気になるのが名前の由来ですが、この名前は見た目から付けられています。南蛮から渡来したキセルの形に似ていたのが由来です。漢字で書くと「南蛮煙管」となります。また、思い草と呼ばれることがありますが、これは万葉集が由来となっています。キセルソウと呼ばれることもあります。学名は「Aeginetia indica」となっており、ギリシャの医師だった「Aegineta」という方の名前が由来です。
ナンバンギセルの販売価格は?
ナンバンギセルの販売価格
ナンバンギセル
気になる販売価格ですが、日本全国に分布している草花とはいえ、沢山栽培されている訳ではないので、販売価格は少し高めです。販売される際は、他の植物に寄生した状態の苗が販売されます。主にススキに寄生した状態で販売されるのですが、ワイルドオーツなどに寄生させたものもあります。種はあまり流通していませんが、お知り合いからもらえることもあるかもしれません。お店で見かけなければ、ネットショップを利用しましょう。
ナンバンギセルの選び方
もしお店で購入する苗を選べる際は、本体もさることながら、宿主の状態が良いものを選びましょう。本体は宿主の状態に左右されます。生き生きとした雰囲気のものを購入して下さい。また、栽培前に病気や害虫被害があると心配ですので、病害虫の様子が無いかも見ておきましょう。ネットショップでは購入する苗を選べない場合が多いので、信頼出来るお店を利用して下さい。
ナンバンギセルの育て方①環境
ナンバンギセルは地植え?鉢植え?
育てる形ですが、宿主に依存することになりますので、宿主が快適な環境で育てる必要があります。ススキ類は地植えでも鉢植えでも育てられますので、お好きな方で育てていきましょう。苗で購入した際は元々鉢に入っているかポットに入っていますので、鉢に入っている場合はそのまま育てていっても良いでしょう。地植えにしたい場合は植え替えて育てていきます。
ナンバンギセルに適した生育環境
生育環境も基本的には宿主のことを考えて選びます。ススキは日光を好みますので、日当たりの良い場所で育てていくと良いでしょう。ただし、ナンバンギセル自体は少し日陰になるような場所を好みますので、開花の時期が来たら明るい日陰程度の場所に移してあげて下さい。他の宿主の場合、その植物に合わせて栽培環境を選びましょう。
ナンバンギセルの育て方②用土・植え付け
ナンバンギセルの用土
用土についても宿主を優先して考えます。ススキの場合は一般的に販売されている草花用の培養土を使用出来ます。元々自生しているような植物ですので、あまり神経質になる必要はありません。また、ご自身で土を用意する場合は、赤玉土を5割、腐葉土を3割、桐生砂を2割の割合で混ぜた用土を使用するのがおすすめです。少し湿り気がありつつも、水はけの良い土が良いでしょう。
ナンバンギセルの植え付け
苗で購入した場合は、購入してすぐに植え付けます。鉢植えにする場合は、鉢底ネットと鉢底石を敷いて、用土を入れ、苗を置き、隙間に土を入れたら水やりをしましょう。元々鉢に入った状態で売られているものはそのまま育てて構いません。また、地植えの場合もほぼ同様にして、植穴を掘って植え付けていきます。地植えの場合、土の状態が悪そうであれば腐葉土を混ぜておきましょう。
ナンバンギセルを種まきする場合
春に種をまいたナンバンギセルが出た!縞ススキの根に寄生してます。 pic.twitter.com/5LGgYdYFim
— 木谷美咲@新刊『食虫植物のわな』11月発売 (@Dionaeko) September 4, 2014
種まきから始める場合は、3~6月に種をまきましょう。宿主となる植物の根本の土を払って、根を露出させます。その根に細かな種をこすりつけるように播きます。確実に寄生するかは分かりませんので、何箇所かに分けて播いておくと安心です。また、根を少し割いて中に種を入れるという方法もあります。
ナンバンギセルの育て方③水やり・肥料
ナンバンギセルへの水やり
育て方・栽培で大切なのが水やりですが、水やりも宿主に合わせましょう。大半の植物は、鉢植えであれば土の表面が乾いてから水やりをします。地植えにした場合は雨水がありますので、ほぼ水やりは不要となるでしょう。真夏でよほど乾燥している場合のみ水やりをします。水切れして宿主の植物が枯れてしまえば、ナンバンギセルも一緒に枯れてしまいますので注意して下さい。
ナンバンギセルへの肥料
肥料も水やり同様に、宿主に合わせて施します。ただし、自然下で寄生しているような植物は沢山の肥料を必要としない場合が多いです。ススキも肥料を与えなくても育ってくれる植物です。もし葉の色が悪ければ、5~7月に液体肥料を月2回程度与えると良いでしょう。養分が取られていきますので、取られる養分を補充してあげるイメージです。多く寄生していればそれだけ養分が取られますので、施肥の準備はしておきましょう。
ナンバンギセルの育て方④植え替え・増やし方
ナンバンギセルの植え替え
ナンバンギセルは一年草の植物ですので、植え替えの手間はありません。宿主である植物が植え替えを必要とする場合は植え替えをしましょう。ススキの場合は鉢植えで育てると根詰まりしますので、1~2年に一回植え替えをします。地植えであればそのまま放っておけますので、栽培が簡単です。
ナンバンギセルの増やし方①種の採取
11月17日にナンバンギセルを見に行ってきました。花はもう終わり、実が割れて種が見えているのもありました。結構大きな種だなと思ったら、この黒い鞘の中に小さな種がたくさん詰まってるみたいですね。 pic.twitter.com/EAdsMSxl4g
— にゃごにゃ (@nyagnya) November 18, 2017
増やし方は種まきになります。まずは種を採取しましょう。花が咲き終わると花の後ろに実がつきます。花後1~2ヶ月ほどで種が熟して、サヤが黒っぽくなってきますので、そのタイミングで種を採取しましょう。実の中には粉状のとても小さな種が入っています。種をビニール袋に入れて、冷蔵庫で春まで保管しておきます。採取する際、風で種が飛ばされないよう気をつけて下さい。
ナンバンギセルの増やし方②種まき
これは野生のススキに寄生していた「ナンバンギセル(南蛮煙管)」を種から開花させました。花の茎がススキ色で花が薄紅色をしています。万葉集に詠まれている、ススキに恋して頬を赤く染めてそばにそっと寄り添う「想い草」。想い草のイメージにぴったりの可愛い花色です。 #オモイグサ #万葉集 pic.twitter.com/tRG9hI2cFg
— kiyoさん (@hisuitree) August 24, 2017
種まきの適期は3~4月上旬です。先述した種まきのやり方と同様に、宿主となる植物の根に軽くこすりつけるようにして種まきをしましょう。発芽率はあまり高くありませんので、多めに播いておきます。もし沢山発芽してしまったら、間引いて調整すると良いでしょう。種まきが終わったら水やりをして完了です。
ナンバンギセルの育て方⑤手入れ・病気・害虫
ナンバンギセルの手入れ・病気
自然に自生している植物ですので、特別に手入れすることはあまりありません。毎日様子を見てあげて、宿主とともにおかしな状態になっていないか見ておきましょう。また、病気についてもあまり心配ありません。水やりをしすぎて宿主が根腐れにならないよう気をつけて下さい。
ナンバンギセルに付く害虫
害虫被害もあまり無いので安心ですが、外で管理しているとナメクジによる食害を受けることがあります。ナメクジは夜に動いて昼間は隠れていますので、もし食べられている様子であれば、周辺の石や鉢の底などをチェックし、見つけたら補殺しておくと良いでしょう。
まとめ
今回の「ナンバンギセルとは?万葉集にも出てくる寄生植物の基本情報を解説!」はいかがでしたでしょうか?古くから親しまれてきた植物ではあるものの、寄生植物であることを知っている方はあまり多くありません。万葉集にも登場する馴染み深い植物ですので、興味が湧いた方は育ててみましょう。栽培は難しくありませんので、ぜひ気軽に育ててみて下さい。
ナンバンギセルが気になる方はこちらもチェック!
今回はナンバンギセルについて解説させて頂きましたが、他にも観葉植物・ガーデニングに関する記事が沢山あります。気になる方は是非見てみて下さい。

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