フロントフォークのオイル漏れ対処法!
安定してバイクを走らせる上で、フロントフォークは重要な役割を担っています。しかし、フロントフォークは思いのほか注視しない部分ですので、気付くとオイルの漏れや滲みに冷や汗をかくこともしばしば。ここでは、オイルの漏れがあったり滲みがあったりしたらどうなるのか?構造は?そして、点検やメンテナンスに関わる交換部品や分解洗浄はどうするのか?について解説します。原付バイクにありがちなオイルを用いないフリクションダンパーについても後半で触れますね。
フロントフォークの役割
フロントフォークは路面の凹凸から受ける衝撃を吸収するのが役割です。また、フロントタイヤの路面追従性を高め、スリップしないようにホイールの動きを最適化しています。人間の体の部位に例えると、ヒザと同じ役割ですね。ヒザを曲げ伸ばしがしにくい状態で歩いたり走ったりするとどうなるか?胴体が上下に揺れやすいだけでなく、転倒したり、他の関節に負担がかかったりします。
フロントフォークの構造
バイクのフロントフォークはスプリングの伸縮とオイルの流動で路面の凹凸から受ける衝撃を吸収しています。多くのバイクのフロントフォークはテレスコピックフォーク。望遠鏡(テレスコープ)のようにアウターチューブとインナーチューブがスライドする仕組みが語源です。
スプリングの役割
バイクのフロントフォークに入っているスプリングは、伸び縮みする原動力を生み出しています。押すと縮み、離すと伸びる、その作用を生み出しているのがスプリング。バイクによって長さが定められており、規定以上の長さになっていなければ交換です。しかし、スプリングが劣化することはあまりなく、オイル漏れとも関係ありません。
フォークオイルの役割
フロントフォークにはオイルが入っていて、オイルの流動抵抗でスプリングの伸び縮みを制御している仕組みです。スプリングだけだとどうなるか?伸び縮みを繰り返し、ボヨンボヨンと跳ねる作用しかしません。シリンダー式の水鉄砲で水を吸うときや押し出すときに重さを感じますよね。水がオイル、手の作用がスプリング。その重さでスプリングの伸び縮みを制御しているのが原理です。
ダストシールなどの役割
フロントフォークのアウターチューブとインナーチューブにはオイルシールとダストシールが用いられています。オイルシールはインナーチューブとアウターチューブの機密性を高めるため、ダストシールはホコリがオイルシールの動きを阻害しないようにするためにあり、アウターチューブ内側の溝にストッパリングで固定されています。
フロントフォークのオイル漏れの原因
オイル漏れはバイクの涙です!
フロントフォークからのオイルの漏れや滲みは、オイルシールやダストシールが破損したり劣化したりすることで起きます。オイルシールやダストシールは耐久性が確保されているものの、伸縮するたびに擦り減ってしまうものです。また、オイルシールやダストシールの寿命は走行時の環境に影響されることも。オイルの漏れや滲みは、法定点検の項目に挙げられています。
ホコリやサビは大敵
フロントフォークのインナーチューブに付着するホコリや発生するサビは、オイルシールやダストシールを傷める原因になり、オイルの漏れや滲みにつながります。インナーチューブにはホコリが付着しやすいので、定期的に清掃する習慣をつけておきたいですね。雨天の走行や洗車のあとは水気を拭い、シリコンスプレーを噴霧してインナーチューブを保護しましょう。フロントフォークを常にきれいにしておくと、オイルの漏れや滲みを発見しやすくなります。
フロントフォークのオイルが漏れたらどうなる?
オイル漏れがもたらす危険
フロントフォークにオイルの漏れや滲みがあるとどうなるのか?ダンパーの効きが悪くなりますが、体感できるほどの変化ではないので、気付きにくいというのが事実です。大抵はアウターチューブの汚れで気付くことがほとんどですので、定期的に点検するのがベスト。フロントフォークを何度か強く伸縮させ、オイルがインナーチューブに付着していないかをチェックしましょう。ダストシールを外してチェックすると、オイルの漏れや滲み分かりやすいですね。
オイル漏れの放置は危険!
フロントフォークのオイルの漏れや滲みを放置するとどうなるのか?漏れたオイルがブレーキパッドに付着すると、ブレーキが利かなくなって危険です。また、漏れたフォークオイルがタイヤに付着するとスリップの原因になりかねません。そこまでひどいオイルの漏れに気付かないことは稀ですが、症状は徐々にしか現れないので、気付きにくいのが落とし穴。オイルの漏れや滲みは、ドライブチェーンへの給油(1,500km毎)をしたときにチェックすると安心です。
フロントフォークのオイル漏れをとめるには?
オーバーホールでオイル漏れを止める
フロントフォークにオイルの漏れや滲みがあったらオーバーホール(OH)しなければなりません。オイルの交換はもちろん、分解洗浄し、消耗部品を交換します。バイクのメンテナンスになれている人は自分で分解洗浄や部品交換をしますが、そうでない場合はバイクショップに依頼するのがおすすめです。
清掃分解や部品交換は大変!
オイル漏れを止めるために、フロントフォークを自分でオーバーホールするのは大変です。分解、洗浄、部品交換、組み立てと、行程は単純なものの、上手くいかなかったときの対処法に経験が必要だからです。交換部品は車種だけでなく年式やフレーム号機で違うので、パーツマニュアルは必須。トルク管理もしなければなりませんので、サービスマニュアルも必要です。しかし、時間と整備場所に余裕があれば、チャレンジする意味は大きいですよ。
オイルシールやダストシールを復活させる裏技!
オイルシールを復活させ、フロントフォークのオイルの漏れや滲みを解消する裏技動画を紹介します。オイルの漏れや滲みが少量ならば試す価値大!インナーチューブの隙間に超薄型の研磨シートを滑り込ませ、オイルシールを研磨してオイルの漏れや滲みを復活させています。目から鱗が落ちるレベルの漏れを止める裏技ですね。
フロントフォークのオイル漏れ:OH手順①
フロントフォークを外す
フロントフォークの消耗部品を交換し、オイルの漏れや滲みを止める手順を解説します。細かい構造はバイクによって異なるので、基本的な流れしか紹介できないことをご了承ください。フロントホイールを浮かせられる環境は必須です。バイクを横倒しにして作業をする方法もありますが、バイクを傷つけますし、作業がしにくいのでおすすめできません。
フロントフォークを外す手順
フロントフォークを外す手順は①トップブリッジのボルトを緩め、フロントフォーク上部のトップキャップを緩める②フロントフォークの下部に取り付けられたセンターボルトを緩める。内部のインナーロッドと共回りしないように、サスペンションを縮めた状態で回す③フロントフォークを外す、です。②のセンターボルトを緩めるのが最大の難関!タイダウンで締め上げ、フロントフォークを縮める方法がよく用いられます。
フロントフォークのオイル漏れ:OH手順②
フロントフォークを分解する
フロントフォークを分解する手順は①センターボルトを外す②フロントフォーク内部に入っているインナーダンパーを抜き取る③ダストシールを外す④ストッパリングを外す⑤オイルシールなどを外す、です。分解前にインナーチューブの露出した部分の長さを測るのがおすすめ。組みたてたあとと長さが違っていれば、間違った組み立て方をしているかもです。また、インナーチューブにサビが発生していたら、分解前に耐水ペーパーなどで磨いて落としましょう。
フロントフォークを分解洗浄する
フロントフォークを分解洗浄する手順は①フォークオイルを抜く②フォークボルトを緩める③部品をパーツクリーナーや洗油で洗浄する、です。フォークボルトは直下部のロックナットを保持しながら回します。部品の内部洗浄はしっかりおこなうのがおすすめ。あわててすぐに組み付けるとパーツクリーナーや洗油の成分残ってしまい、オイルの劣化を早める可能性があります。
フロントフォークのオイル漏れ:OH手順③
交換部品
オイルの漏れや滲みを止めるためのオーバーホールで必要な交換部品は①ダストシール②オイルシール③スライドメタルです。当然、フォークオイルも交換することになります。シール類が傷まないよう、組付けるときはグリスをたっぷりと塗り、インナーチューブはラップなどで保護します。交換部品であるオイルシールやスライドメタルをアウターチューブに打ち込むには専用工具が便利ですが、塩ビパイプで自作する人が多いですね。
オイルシールとダストシールの間に!
交換部品であるオイルシールやスライドメタルをアウターチューブに打ち込んだら、ストッパリングをかけた後、ダストシールを取り付ける前に、隙間にたっぷり耐水グリスを塗り込みましょう。フロントフォーク内に泥や水が浸入しないようにするためです。抜いたオイルが白く乳化していたという話を効きますが、それはフォークオイルに水が混入したためだと考えられます。
フロントフォークのオイル漏れ:OH手順④
フロントフォークの組み付け
フロントフォークを組み付ける手順は①フロントフォークを分解した手順と逆に組み立て、センターボルトを締め付ける②フォークオイルを規定量入れ、インナーチューブ上部からの油面の高さを確認する③フォークボルトをインナーチューブに取り付ける、です。センターボルトを締め付けるには、緩めたときと同じようにスプリングを縮めながら回しましょう。入れたばかりのオイルは泡立っていますので、何度かストロークさせて空気抜きをします。
フロントフォークのオイル漏れ:原付
原付バイクのフロントフォーク
ここまで解説してきたのはオイルダンパータイプですが、原付バイクの中にはフリクションダンパータイプのフロントフォークもあります。オイルをフロントフォークの内部に入れないことで、バネ下荷重を軽量化し、構造を単純化することでメンテナンス性を高めるためです。交換部品の品番さえ間違っていなければ、ホームセンターで購入できる工具でオイルの漏れや滲みを止められますので、初心者でもチャレンジする価値があります。
フリクションダンパータイプのフロントフォークは
フリクションダンパータイプの原付のフロントフォークは、樹脂製のピストンがインナーチューブ内で摩擦抵抗を生み出すことでスプリングの伸び縮みを制御します。樹脂製のピストンの磨耗を防ぎ、スムーズに動くようにするためにグリスを塗布するのですが、樹脂製のピストンが動くたびにグリスが緩くなり、黒いスラッジ状のダストシールから滲み出す、それがオイル漏れのように見えるのです。※スラッジ:劣化したグリスと汚れが混じったもの
同じ車種でもフロントフォークのタイプが違う原付
原付バイクによっては、同じ車種でもフロントフォークのタイプが違う場合があります。例えばアニメ「ゆるキャン△」で人気のヤマハ・ビーノ。キャブレターを搭載したSA26Jはフリクションダンパータイプですが、インジェクションを搭載したSA37Jはオイルダンパータイプです。ビーノの場合、フロントフォーク下部にセンターボルトがなければフリクションダンパータイプ、あればオイルダンパータイプだと判断しましょう。
フロントフォークのオイル漏れ:原付のOH
フリクションダンパータイプのOH
フリクションダンパータイプのフロントフォークをオーバーホールする手順は①取り外し②分解③洗浄④交換部品の取り付け④グリスアップ⑤組み立て⑥取り付け、です。原付バイク、特にスクーターはカバーで覆われているため、フロントフォークの取り外しや取り付けが難関。しかし、スズキのレッツのように、インナーチューブを抜くだけでフロントフォークの内部部品にアクセスできる原付バイクもあります。
交換部品を組み付けてグリスアップ!
フリクションダンパータイプの原付バイクは、交換部品を組み付けてグリスアップするだけですので、ダストシールやピストンが傷まないうちにメンテナンスしたいところです。定期的にメンテナンスしないとどうなるか?ピストンとインナーチューブがスラッジで固着し、フロントフォークが上下に動きにくくなります。また、オイル代わりになるグリスが切れ、樹脂製のピストンが溶けて固着すると、内部の部品を取り出すのが困難です。
フリクションダンパータイプの交換部品は?
フリクションダンパータイプのフロントフォークの交換部品は①インナーチューブアッシー(セット)②ダストシールです。フォークブーツは傷みやすいパーツですので、状態によっては交換部品の候補に入れましょう。取り外しの際にストッパリングを傷める可能性があるので、予備を準備。工具は家庭にある工具だけでもできますが、ストッパリングを外すスナップリングプライヤーとトルクレンチがあれば安心です。
フロントフォークのオイル漏れ対処法!まとめ
フロントフォークのオイル漏れ対処法をまとめました。フロントフォークは直進性や操縦安定性に大きく関わる部分です。しかし、定期的なメンテナンスは手間がかかります。せめて、点検だけでも日常的に行い、トラブルを未然に防ぎたいですね。オイルの漏れや滲みを止めるオーバーホールは大変な作業ですが、工具や環境さえそろえばユーザー自身でできます。工具は一度買うと一生モノですので、入手しても損しません。工具と一緒に、あなたが乗っているバイクのサービスマニュアルやパーツリストもそろえましょう。
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