はじめに
玉葱は、様々な料理で活躍する、使い勝手の言い野菜です。保存も効くため、家庭菜園で栽培し、保存しておくと何かと重宝するのではないでしょうか。今回は、玉葱の育て方について、種まきから苗の植え付け、追肥、収穫と、各過程での育て方のポイントをご紹介していきます。それほど難しいことはありませんので、ぜひ参考にしてみてください。
玉葱とは
玉葱はネギの仲間
玉葱はヒガンバナ科ネギ属に属する野菜で、球上になった球根部分を食べます。また、一般的ではないですが、葉っぱの部分もネギと同じように食べることもできます。古代エジプト時代から食べられていた野菜ですが、日本で栽培が始まったのは明治時代に入ってからとされています。
長期保存がきく野菜
玉葱は収穫した後、しっかりと乾燥させて保存することで、長期保存がきく野菜です。品種によっては半年以上保存がきくものもあります。家庭菜園でもたくさん栽培しておくことで、少しずつ食べることができます。反対に、採れたての玉葱はみずみずしく、甘みもあり、「新玉葱」として流通します。こちらは収穫の時期のみに食べられます。
玉葱の栄養素
玉葱には、ビタミン類など、特別高い栄養素が含まれているわけではありません。しかし、血液をサラサラにする効果のある硫化アリルと呼ばれる成分が豊富に含まれています。これによって、血圧を下げたり、糖尿病を予防したり、各種生活習慣病の予防に期待できると考えられています。また、この硫化アリルは、玉葱を切ったときに涙を流す原因となる物質です。
玉葱の栽培方法①:品種選び
極早生・早生種
栽培期間の短い品種です。8月の終わりから9月の初めに種まきをし、11月頃に苗の植え付けをします。収穫は3月から4月頃になります。ほかの品種に比べて育てやすく、栽培期間も短いため、初心者の方でも育てやすいでしょう。保存性はそれほどないため、新玉葱として食べるのがおすすめです。また、葉が倒れる前に収穫して、葉玉葱として食べることも可能です。
中生・晩生種
早生種などに比べて、種まき、収穫時期が遅く、保存性の高い品種です。9月中旬から10月頃に種まきをし、11月から12月の初めに苗の植え付けをします。収穫は5月下旬から6月の初めで、栽培期間も長くなります。苗が小さいうちに冬を迎え、寒さで苗が枯れてしまうこともあり、やや栽培が難しくなります。保存性が高く、品種によっては年明以降まで保存が効くため、たくさん作って保存するのがおすすめです。
目的に合った品種選びを
玉葱は、品種によって栽培期間やその後の利用方法が変わってきます。そのため、ご自身の目的に合った品種を選ぶことが大切です。栽培期間を短くしたい、新玉葱や葉玉葱を味わいたい場合は、極早生、早生種を選びましょう。長期保存をして少しずつ利用したい場合は中生、晩生種を選びましょう。さらにその中でも各メーカーが特色ある品種を開発していますので、目的に合わせて選んでみてください。
玉葱の栽培方法②:種まき
種まきの時期は重要
玉葱は、種まきの時期を間違えるとうまく育つことができません。種まきの時期を間違えると、球が大きく育たなかったり、季節外れの花を咲かせてしまったりします。品種や地域によって適した時期は変わってくるので、種を購入するお店で確認すると確実です。
苗床(畝)を作る
玉葱の苗を作る場合は、ポットなどではなく、畑で作ります。畑の隅などに、1㎡あたり60g程度の化成肥料をまき、深さ30cm程度までよく耕します。その後、排水性を高めるために、高さ10cm程度の畝を作りましょう。種まきの1週間ほど前までに終わらせておきましょう。
種をまく
まず、苗床に10cm間隔で、深さ1cmほどのまき溝を作ります。支柱などを土の上から押し付けるときれいに溝を掘ることができます。種は2~3cm間隔で一粒ずつまいていきます。土をかけたらしっかりと鎮圧をすることが大切です。そして、最後に水やりをしましょう。乾燥すると発芽率が落ちるため、こまめに水やりを行うか、不織布をべた掛けすることで感想を防ぐことができます。
発芽後の管理
発芽して順調に成長したら、間引きを行います。隣り合う苗の中からなるべく元気な苗を残して徐々に間引きを行います。一気に間引きをするのではなく、成長段階に合わせて少しずつ間引きし。最終的に苗の間が5~6cmになるまで間引きをしましょう。また、間引きをした後は指で軽く土寄せをすると効果的です。また、雑草に負けないように間引きと同時に雑草も抜きましょう。
玉葱の栽培方法③:土づくり
苦土石灰をまく
苗を植え付ける約2週間ほど前までに、苦土石灰を1㎡あたり100gをまいて深さ30~40cmほどまでよく耕しておきます。苦土石灰をまくことで、畑の土壌を玉葱が好む酸度に調整することができます。植え付けの直前ではなく、余裕をもって行いましょう。
元肥を施す
玉葱はたくさんの肥料を吸収する野菜です。あらかじめ肥料をまいておくことで、成長を促します。1㎡あたり1kgの完熟たい肥と、50gの化成肥料をまいて耕しましょう。こちらも、植え付け直前に施すと玉葱に悪影響を与える可能性があるため、植え付けの1週間前までに終わらせましょう。
穴あきマルチをはる
保温と、適度な土壌水分を保つためにマルチをはります。ホームセンターなどで、玉葱専用に15~20cm間隔で穴が開いたマルチが販売されていますので、専用のものを使うと便利です。まず、マルチを張る前に幅100cm、高さ5cmの畝を作ります。表面を平らにならし、マルチに緩みが出ないように、ピンと引っ張りながら張るのがポイントです。
玉葱の栽培方法④:植え付け
太さ5~6mmで植え付ける
玉葱は鉛筆ほどの太さより太い状態で寒さに当たると、花が咲く「とう立ち」と呼ばれる現象が起きてしまいます。とう立ちした玉葱は硬くて食べられなくなってしまいます。あまり太すぎるものを植え付けると、春になってとう立ちしてしまいます。また、細すぎる苗も冬の寒さに耐えられません。そのため、5~6mmの苗が理想的なのです。
苗の準備
玉葱の苗の植え付けは、土ごとではなく、苗のみを抜き取って移植するような形を取ります。そのため、まずは苗床から苗を抜き取らなくてはなりません。移植の際、根っこを痛めると、その後の成長に影響が出るため、移植ごてを使って優しく掘り起こしましょう。この際に植え付けに適したサイズのものを選別しましょう。
植え付けの深さに注意
マルチの穴1つに対して1本の苗を植え付けます。深さ2~3cmの穴をあけて、苗が垂直になるように植え付けましょう。この時、葉が分かれている部分まで土をかぶせてしまうと成長が止まってしまうため、植え付ける深さに注意しましょう。穴の深さを一定しにすために、細い棒の2~3cmのところに印をつけて、穴をあける深さを調整するのがおすすめです。
植え付け直後の管理
苗を植え付けた後、苗が根付くまではしばらくの間水やりをして苗が乾燥しないように注意しましょう。植え付け直後の苗は乾燥に弱いため、晴れが続くようであれば毎日水やりをしましょう。しかし、多湿な環境では病気も発生しやすいため、雨が降るような場合は水やりを減らすなど調整しましょう。
玉葱の栽培方法⑤:日頃の管理
水やり
玉葱を大きく育てるために、水やりは大切な作業になります。冬の間は雨の水だけでも大丈夫ですが、3月頃、成長を始めたころから水分不足になると、球が十分に大きくなりません。そのため、晴れの日が続くようであれば、2、3日に一度程度の間隔で水やりをしましょう。
とう立ちを防ぐ1回目の追肥
玉葱のとう立ち、は窒素が不足することでも起こります。苗の植え付けをしてからしばらくは、元肥の効果がありますが、徐々に肥料効果が薄れてきます。そこで、1月上旬から中旬頃に1回目の追肥を行います。1㎡あたりに50gの化成肥料をまきましょう。この時、マルチの上に肥料をばらまいても大丈夫です。雨や風で徐々にマルチの穴に落ちて少しずつ肥料の効果が表れます。
成長が再開したら2回目の追肥する
玉葱は2月下旬から3月上旬になり少しずつ気温が上がり始めると、徐々に成長再開するようになります。成長が再開すると葉数が増え、球の肥大も始まりますので、この時期に合わせて2回目の追肥を行いましょう。この時の追肥が遅くなってしまうと、球が肥大するのが遅れ、収穫後に腐敗しやすくなってしまうため注意しましょう。1回目と同じように化成肥料をまきます。
玉葱の栽培方法⑥:病害虫対策
玉葱につきやすい害虫
玉葱は比較的害虫に強い野菜です。しかし、時としてネギアザミウマやネギハモグリバエといった害虫に寄生されることもあります。万が一寄生しているのを見つけたら、一つ一つ捕殺するか、市販の殺虫剤をまいて対処しましょう。予防方法としては、害虫の嫌うキラキラした反射光を出すテープや、害虫を誘引して捕殺する捕虫シートを設置しましょう。大量発生すると手に負えなくなるため、こまめに観察をするようにしましょう。
玉葱がかかりやすい病気
病害虫に強い玉葱ですが、環境が悪いと、当然ながら病気が発症してしまいます。特にかかりやすいのは、苗立枯病や、灰色カビ病、柔腐病などです。いずれの病気も多湿な環境によって発症しやすくなります。そのため、畑の土壌を改善したり、畝を立てて排水性をよくすることが大切です。万が一発症してしまった場合は市販の薬をまいて対策をしましょう。
玉葱の栽培方法⑦:収穫
葉が倒れたら収穫する
順調に成長し、球が十分肥大すると、葉っぱが根元部分から倒れ始めます。全体の8割程度の苗が倒れてきたら収穫をしましょう。この時点で玉の肥大が止まるわけではなく、その後も成長を続けます。しかし、あまり長い期間畑に置いておくと腐敗しやすくなり、貯蔵性も落ちるため、葉が倒れてから1週間ほどを目安に収穫をしましょう。
収穫は晴れの日に
玉葱の収穫は、保存性を高めるために、土が乾いた晴れの日に行いましょう。土から抜いたらそのまま2日ほど畑に置いて表皮を乾かします。しっかりと乾かすことで病気を防ぎ貯蔵性が増します。天気が悪いようであれば、軒下などに移動して乾かしましょう。
風通しのいい場所で保管する
畑で乾かした後の玉葱は5~6個ずつをまとめて、葉をひもで縛りましょう。風通しのいい日下での軒下などに吊るしておくと保存性が高まります。吊るす場所がない場合は、コンテナなどに入れて、風通しのいい日陰に保管しましょう。また、種類によって保存できる期間は違うため、育てた品種に合わせて少しずつ消費していきましょう。
まとめ
以上、玉葱の栽培方法についてご紹介しました。玉葱の育て方のポイントは種まきの時期と追肥です。栽培期間中はそれほど手間はかかりませんが、時期にあった品種選びと、追肥をするタイミングを見極めましょう。収穫後も、長く保存がきく野菜ですので、多めに作って少しずつ食べていくのがおすすめです。育て方は決して難しくないので、ぜひ玉葱の栽培に挑戦してみてください。
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今回は玉葱の育て方についてご紹介しましたが、その他にも様々な野菜の栽培に関して、詳しく紹介した記事が沢山ありますので、気になる方はぜひチェックしてみて下さい。
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