スナップエンドウ(サヤエンドウ)とは
スナップエンドウはサヤエンドウの一種
マメ科エンドウ属の「サヤエンドウ」は、豆がまだ柔らかいうちに収穫し、サヤごと食べる種類のエンドウ豆の一種です。さらに、「スナップエンドウ」は、そのサヤエンドウのうち、1970年代にアメリカから輸入された、グリーンピースから改良された新しい品種です。
また、よく似た名前の「スナックエンドウ」は、種苗会社「サカタのタネ」から種が販売された際の商品名で、スナップエンドウと同種のものです。混同されやすいため、1983年に農林水産省によって、名称が統一され、「スナップエンドウ」が正式名称となりました。
スナップエンドウの特徴
エンドウは、中近東から中央アジアが原産地です。歴史は古く、古代ローマ、ギリシャ時代から栽培されていたといわれています。スナップエンドウは、生育に適した気温は15~20℃と、冷涼な気候を好みます。
スナップエンドウの栄養
スナップエンドウは緑黄色野菜の一種で、体内でビタミンAに変わるβ-カロテン、ビタミンB1、ビタミンC、カリウムなどの栄養を多く含みます。またサヤごと食べるので、食物繊維も摂ることができます。
肉厚なサヤに甘みがあるスナップエンドウは、同じサヤエンドウの仲間の絹さやなどに比べても食感のよさなどから、子どもにも人気があります。
スナップエンドウ(サヤエンドウ)の品種
スナップエンドウ:つるあり種
つるが伸びる品種のスナップエンドウです。つるなし種に比べ背丈が約120~150cmと高くなり、長期間収穫できるため、収穫量が多く望めます。
支柱を立ててつるを絡ませながら育てます。背丈を高く育てられる場合はつるあり種を栽培したほうがいいでしょう。側枝がよく分枝し収穫量が多い「ジャッキー」、サヤが9~10cmと大きい「グルメ」などの品種が販売されています。
スナップエンドウ:つるなし種
つるがない種類のスナップエンドウです。背丈は70~80cmほどと、つるあり種に比べ低くなります。その分、収穫期間は若干短くなります。プランターや狭い場所などで育てるのに向いています。
植え方、育て方はつるあり種と同じです。つるはありませんが、支柱を立て、主枝をテープで誘引して育てます。生育の早い「ホルンスナック」などの品種があります。
キヌサヤエンドウ
江戸時代から日本で栽培されてきたキヌサヤエンドウ(絹さや)は、スナップエンドウに比べサヤが薄く柔らかいのが特徴です。サヤが若いうちに採取します。
キヌサヤエンドウにも、つるあり種、つるなし種、また白花種と紅花種があります。極早生種の「兵庫絹莢」などの品種があります。また、サヤが10cm以上になる「大型絹さや」と呼ばれるものには、「オランダ大莢」「仏国大莢」などの品種があります。
スナップエンドウ(サヤエンドウ)栽培方法のコツ
栽培方法のコツ.その1
エンドウの植え方は、サヤエンドウ類(スナップエンドウ、キヌサヤエンドウ)も実エンドウ(グリーンピース)も同じです。
エンドウは連作を嫌います。同じ場所で育てると、立枯病などの病害が現れたり、土壌中の栄養分が不足し生育が悪くなります。連作障害を避けるためには5年以上休耕させなければいけません。そのため、栽培する場所を数区画に分け、毎年栽培する作物を変える輪作を行うなどの対策をします。
栽培方法のコツ.その2
スナップエンドウは、冬越しの際、あまり小さすぎる苗でも大きすぎる苗でも寒さの被害にあいやすくなります。枯れてしまうことがあるので、種を植え付ける時期を守り、苗を15~20cmの大きさで冬越しさせるのがポイントです。
スナップエンドウ(サヤエンドウ)の植え方
植え付け方法1.土壌の準備
前回エンドウ類を植えてから5年は経過した土地を準備します。エンドウは酸性土壌に弱いので、植え付けの2週間前に苦土石灰を撒いてよく耕し中和しておきます。撒く量の目安は、1平方メートルあたり150g程度です。
また、植え付け1週間前になったら、堆肥2kgと元肥(化成肥料)50gを施し、よく耕します。エンドウ類は、肥料にチッソ分が多く含まれるとツルや葉が繁りすぎ、実の付きが悪くなるため、リン酸分とカリ分の多い化成肥料を選んで施すようにします。チッソ分の目安としては、1平方メートルあたり10g程度に抑えます。肥料の与えすぎには注意します。
その後、種まきまでに畝立てをします。畝は、10~20cmほどと高めに土を盛ることで、水はけがよくなります。さらに畝の上に黒マルチを張ることで地温を高くすることができます。
植え付け方法2.種まきの方法
地植えの場合の種の植え方は、穴あけ器などを使い、マルチに種まき用の穴を30cm間隔で開けます。3cmほどの深さを掘り、1穴に4~5粒の種をまきます。種の上から2cmほど土をかぶせます。その後、水をたっぷり与えます。種まき後、鳥などに種を食べられてしまうのを防ぐため、防虫ネットや寒冷紗などで畝を覆っておくとより安心です。
植え付け方法3.種まきに適した時期
寒冷地以外では、秋に種まきをし、春に収穫するのが一般的な植え方です。10月中旬から11月上旬を目安に種まきをします。
スナップエンドウは寒さに当たることで花芽の分化が進みますが、種まきの時期が早すぎると、冬を迎える頃苗が30cmほどまで大きく育ちすぎて、寒さに弱くなってしまいます。
逆に種まきが遅すぎると、冬にまだ苗が小さい状態で、これも寒さで枯れる恐れがあります。12月下旬~2月の極寒期を迎える際、15~20cm程度の草丈になるよう、種まきの時期に注意する必要があります。
寒冷地の場合は、春(3~4月)に種まきし、6~7月に収穫する植え方が適しています。また、寒冷地以外でも、春に種をまき、夏に収穫する植え方もできますが、その場合は秋まきに比べ収穫量が少なくなります。
植え付け方法4.苗を植え付ける場合
種をそのまま地面に植える植え方のほかに、ポットに種まきし苗を育ててから植え付ける植え方もあります。植え方は、9cmポットに4粒種まきをし、発芽したら3本に間引きします。本葉が2~3枚になったら、株間を30cm開けて、地面に植え付けます。また春になると、園芸店でポット苗が出回るので、それを購入し植え付けることもできます。
スナップエンドウ栽培方法1.発芽後の管理方法
種をまいてから、1週間程度で発芽します。発芽気温は20℃です。本葉が2~3枚になったころ、生育のいい苗を2~3本残し、あとは間引きします。苗の株元に土寄せをし、防寒のため藁やもみ殻、刈り草などを敷いてあげるといいでしょう。
水やりに関しては、水のやりすぎに注意します。地植えの場合は、葉がしおれるようであれば水やりをする程度で、それ以外は必要ありません。プランターの場合は、土の表面が完全に乾いてからたっぷり与えます。
スナップエンドウ栽培方法2.防寒対策
12月下旬から2月頃の時期にかけては、寒さが一番厳しくなります。この時期、苗は根を深く張り強く育っていきます。畝全体に不織布をかけてあげると防寒対策になります。また、畝の北側か西側に笹竹などをさしてあげると、北風除けになり、霜の被害から守ることができます。
スナップエンドウ栽培方法3.支柱立て
エンドウ類には支柱が必要
2月頃になるとつるあり種のスナップエンドウはつるが伸びてきます。その前に1.5~2mの支柱を立て、誘引ネットやひもを貼っておきます。つるが伸びてきたら、ネットに絡ませます。
支柱を立てネットにつるを広げながら育てることで、つるどうしが絡まったり葉が密集して生育が悪くなることを防ぐことができます。
また、主枝の背が高くなると、強風などでネットからつるが外れやすくなるため、ビニールテープなどで結んでおくと安心です。
つるなし種のスナップエンドウの場合も、支柱をたて、枝を絡ませるようにテープなどで誘引します。つるなし種の場合は草丈が70cm程度と短いので、1mほどの高さの支柱を立てます。
支柱立ての方法
スナップエンドウに適した支柱立ての方法に、「合掌式」と「スクリーン式」があります。合掌式は、支柱を斜めに交差させて立て、横に1本渡して固定させる立て方です。また、「スクリーン式」は、50~60cm間隔で1本ずつ立てた支柱を柱にし、土に20~30cmの深さで挿します。両方とも間につるもの用のネットを張ります。
スナップエンドウ栽培方法4.追肥
追肥の時期
スナップエンドウは、種まきから収穫までの期間が長いため、肥料を追加で施す「追肥」が必要です。
秋まきの場合の追肥の時期は、(1回目)種まき後1ヶ月、(2回目)開花前、(3回目~)その後1ヶ月ごとに収穫終了まで となります。 春まきの場合の追肥の時期は、(1回目)開花後、(2回目)収穫最盛時期、(3回目~)その後1ヶ月ごとに収穫終了まで となります。
追肥の方法
追肥の量は、化成肥料を1平方メートルあたり30g程度を目安とします。この場合も、チッソ分の少なめの化成肥料を施します。追肥の方法は、株元の土を軽く耕して化成肥料を撒き、しっかりと土寄せをしてあげます。
スナップエンドウ栽培方法5.開花
スナップエンドウの花は、種を撒いてから140~150日ほどして開花し始めます。花色には白色と紅色の種類があります。
スナップエンドウ栽培方法5.収穫
スナップエンドウは、品種にもよりますが、開花後約20~30日で収穫できます。種を秋まきした場合は、4~5月が収穫時期になります。中の豆が肥大して、サヤが鮮緑色でみずみずしく膨らんだ時期に収穫します。
サヤの長さが7.5cm、幅1.5cmくらいのときが収穫の目安の時期です。収穫が早すぎたり遅すぎたりすると、サヤのみずみずしさや甘みが損なわれます。 収穫方法は、実を茎から引きちぎるか、ハサミを使って実の付け根の茎を切り取ります。
スナップエンドウのプランターでの栽培方法
ベランダなどで手軽に栽培できる
スナップエンドウはプランターでも栽培できます。プランターの場合は幅60cmほどのものを選び、苗どうしの間を20cmほど空けて種または苗を植え付けます。
プランターの場合、草丈があまり高くならない「つるなし種」を選ぶのもいいでしょう。用土は野菜栽培用の培養土を使用すると手軽です。支柱はつるなし種の場合、1mほどのものを立てて主枝を絡ませながら育てます。
肥料の与え方は地植えの場合と同様、元肥としてチッソ分の少ない化成肥料を混ぜ込んでおき、肥料を数回与える追肥も適期に行います。
スナップエンドウがかかる病気
立枯病
スナップエンドウの生育が悪くなり、葉が黄色くなり、最終的には株全体が枯れてしまうことがあります。これは、立枯病によるものです。立枯病の原因は、同じ土地でエンドウ類を連作することや、土地の水はけが悪いことなどが挙げられます。
この病気を防ぐためには、前回エンドウ類を育てた時から5年以上期間を空けること、また土壌改良によって水はけをよくすることです。
うどんこ病
おもに収穫期の後半、5~6月に発生しやすいのがうどんこ病です。小さな白い粉模様が発生し、葉全体に白カビがついてしまいます。これも株を枯らせるため、薬剤などで早急に対応します。
スナップエンドウにつく害虫
ハモグリバエ
別名「エカキムシ」とも呼ばれるハモグリバエは、幼虫が葉の中にもぐりこみ、白い線をかくように食害してしまいます。生育を悪くするため、発生したら早急に殺虫剤で駆除します。
アブラムシ
春先に発生するアブラムシは、葉や茎から栄養分を吸い取ってしまうとともに、ウィルスを媒介する原因にもなります。繁殖力が旺盛なため、こちらも発生したら早急に捕殺するか殺虫剤で駆除する必要があります。
スナップエンドウが枯れてしまう原因
連作障害、寒さなど
スナップエンドウの株が黄色くなり枯れてしまうことがあります。原因としておもに考えられることは、「連作障害による立枯病」「防寒対策不足」「酸性土壌」「水のあげすぎ」「病害虫」です。
上述したとおり、エンドウ類は連作に非常に弱い作物です。連作しないように気をつけます。ほかに、苗が小さすぎる、または大きく育った状態で12~2月の厳しい冬越しをさせると枯れてしまうことがあります。
とくに霜がおりるような土地で育てると、根が地面から浮いたままになり、やがて枯れてしまうことがあるため、藁などで防寒対策をしっかりしてあげる必要があります。霜がおりてしまい、根が地面から浮いてしまったら、足で踏むなどして根元の地面を固めてあげましょう。
スナップエンドウおすすめの調理方法
筋取りして塩茹でに
ヘタを少し折って内側の弓なりに沿って筋を引っ張ります。次に外側の筋を引っ張って取ります。熱湯に塩をいれ、さっとゆでたら、冷水に取って色どめします。そのままマヨネーズをかけたり、鰹節と醤油をかけたり、胡麻和えなどにして食べると、スナップエンドウ独特の食感と甘みが楽しめます。
炒め物やサラダ、パスタなどにも
食感がよく、甘みがあって大人にも子どもにも食べやすいスナップエンドウは、洋風、和風、中華などさまざまな料理に合います。油との相性もよいため、炒め物も人気があります。また鮮やかな緑色が、料理の色合いも引き立て、煮物のあしらいや、お弁当に入れてもカラフルになり重宝します。
スナップエンドウを栽培してみよう
スナップエンドウの植え方、育て方などをご紹介しました。はじめの土作り、支柱立て、肥料を数回施す追肥など手間はかかりますが、ポイントをつかんでしまえば、スナップエンドウは生育が旺盛で、たくさんの実を収穫できる野菜です。ご自宅で育てた新鮮なスナップエンドウを味わえるのは格別の楽しみですね。ぜひ栽培に挑戦してみてください。