ファレノプシスとは?
ファレノプシスの原産地は、東南アジア周辺の熱帯、亜熱帯地域が主です。高温多湿のジャングル地帯にあって、地面に根を下ろすのではなく、樹木の比較的高い位置にある幹の途中や枝などに寄生して根を這わす「着生植物」ですので「着生蘭」と呼びます。よく寄生植物と間違えられますが、そもそも寄生植物とは他の植物に寄生してその養分を吸収して生育している植物の事を言います。一方着生蘭は寄生した植物からは養分を得ることはしません。幹や枝にしっかりと根を絡みつかせて固定しています。他の洋蘭との違いは養分を蓄えておく「バルブ(塊茎)」がファレノプシスにはないこと。ベロの様な肉厚の葉で養分を蓄えます。
ファレノプシスはCAM植物
幾筋も張り出している根は層がスポンジ状の形を成していて、水分の補給や特殊な光合成を行う機能を持っていて、葉や茎に水分や養分を蓄えておく事ができるのです。この様な特殊な機能を有する植物などをCAM植物と呼び、砂漠のサボテンなどもこれに当ります。熱帯地域が原産のファレノプシスなどのCAM植物は樹上にある為、夜間の涼しい時にCO2(二酸化炭素)を取り込み、昼間は気孔を閉じて水分が蒸発してしまうのを防ぎます。他の植物との違いは光合成を昼間行うのとは逆の作用をしていると考えて下さい。
ファレノプシスの語源と日本での呼び名
ファレノプシスは日本では花姿が蝶に譬(たと)えられて、蝶の別称の「胡蝶(こちょう)」を付けて品種名を「胡蝶蘭」と名付けられています。学名は「ファレノプシスアフロディテ(Phalaenopsis aphrodite)」であり、「蛾」の意味の(phalaina)と「~の様」の(opsis)の二つの単語が組み合わされ、これにギリシャ神話の愛と美と性を司る女神「アフロディテ」の名を付けて表記されています。英名での呼び名も「モス・オーキッド(蛾に似た蘭)」とされていますので、やはり日本と同じ感じ方をされている様です。ちなみに、欧米では蛾も蝶も区別をつけない呼び方をしています。
ファレノプシスの種類
ファレノプシスの原種には50種程あり、特徴的な種類を交配させて様々な品種が作り出されています。一般にはラン科ファレノプシス属とされていますが、別種の属の種も含まれています。近縁とされ様々の花色を持つドリティス属がそれです。また、ドリティス属とファレノプシス属との交配が進んで、作り出された種をドリテノプシス属と呼称しています。こうして多彩な交配種が生まれ、花の大きさや花色、花姿など様々な品種が出回っています。主な品種では、定番の純白の花色の白花系、ピンクや紅色の赤花系、黄色系の花の黄花系、花びらに斑が入る斑入系、小輪系の花を咲かせるミディ系など他にも様々の品種があります。
ファレノプシスが贈り物として人気の秘密
日本でもファレノプシスは「胡蝶蘭」と呼びギフトとして高い人気を誇っています。一鉢に植えられている茎の本数と花の輪数によって価格が違ってきます。人気の秘密の第一は花の豪華さと「清純」「幸せを運んで来る」の花言葉によるもので、花の色によって贈り物の使い分けができます。第二は花の見ごろが長いことで、1ヶ月~2ヶ月程は花を楽しむことができるのです。第三は香りなどもなく、花粉も極少ないので飾る場所の環境にも適しています。
贈る際のマナー
胡蝶蘭をギフトとして贈る際には相手方の状況も把握をしましょう。大きな鉢は飾っておくスペースがなかったなんて事もあります。また、茎の本数では4という数字は日本では忌み数となりますから、花茎は3本立や5本立など奇数のものがベストです。病気見舞いに鉢物は根が付くといわれてタブーです。開業のお祝いでは赤字や火事を連想させるという意味で赤一色の花色のものはNGです。贈る相手の心象を考えて間違いのない品種を贈りましょう。
ファレノプシスの花言葉
日本ではファレノプシスの花言葉は「清純」「幸せを運んでくる」とされていますが、花色によって花言葉がそれぞれ違います。白色は「清純」「純粋」、花の中央にある突起の色は黄、赤、紫など色々ですが花弁が白一色であれば白色です。ピンク系は「あなたを愛します」。最近開発育種された花色で青があります。花言葉は「尊敬する」「愛情」とあり、花色の珍しさも手伝って慶弔を問わずに贈り物とされています。その他、黄、紫、復色系、ミディ系などがありますが、ファレノプシス自体の花言葉の良さからあらゆる場面での最良のギフトとなっています。
ファレノプシスの管理その①
基本的な育て方:置き場所
日本で育種する場合、環境的には6月から9月の気温の高い時期がファレノプシスにとっては一番成長できる時期です。翌年に開花をさせるには置き場所によって左右されます。ファレノプシスは手入れの仕方によってより長い期間楽しめます。贈られたファレノプシスは直接エアコンの風などが当らない明るい場所に置きましょう。直射日光が当る場所は葉焼けを起しやすいので注意しましょう。
株から育成の場合
株からの育て方は、18度以上の温かさを好みますので室内で管理します。5月から9月下旬頃までは屋外の50%程度遮光した半日影の場所に置きます。花芽を形成する秋は18度以下の温度に3週間ほど慣らします。冬季は室内に取り込み15度~18度の温度を維持します。春気温が15度以上になったら戸外の風通しの良い場所で管理します。順調ならば6月~7月頃に開花します。蕾には乾燥させない様に時折霧水をかけてあげましょう。
支柱立て
花茎は少しずつ伸張しますので、蘭用鉄線で支柱を立て茎を少しずつ上向きに茎止めテープで支えます。茎は少しずつ太くなっていきますので、余裕をもって緩めに止めておきます。注意することは、曲がった茎を強引に起すと折れてしまいかねませんので無理をせずに行いましょう。
ファレノプシスの管理その②
基本的な育て方:水やり
株は水苔で植えられていますので、水苔の表面を触ってみて乾いていたらたっぷりと水を与えて下さい。その場合、水の浸透が早いので鉢底から水が溢れて床を汚しかねませんので、戸外に出すか、鉢ごとバケツなどに入れて与えると良いでしょう。3本ないし5本立ちの場合はそれぞれがビニールポットに一株ずつ植えられたものが寄せられていますので、一株ずつ与えて下さい。比較的乾燥状態には強いので加湿状態を嫌います。絶えず水を与えるのは根腐れを起こしますので良くありません。
冬季の水やり
株を冬越しさせるには水やりは少なくします。水苔が完全に乾燥している状態の時に与える様にします。但し、常時加温している温室などで育成している場合は生育期間と同様の水やりが必要です。
ファレノプシスの管理その③
基本的な育て方:肥料
花の咲いている期間と冬季及び夏場の高温時には肥料は与えません。株が冬を越し気温が有る程度高くなる5月頃に新しい根(根の先端が緑色になっていたら元気な根です)が株の根元からたくさん出始めていたら水やりを兼ねて液体肥料を約1000~1500倍に希釈したものを1週間に1度の割合で与え、10月初旬頃まで施肥します。秋は三要素(N・P・K)の内リン酸分(P)が多めが良いでしょう。
施肥の注意点
固形の緩効性肥料を置く場合には注意が必要です。置き肥と液肥の両方施肥するのは考え物です。肥料のやり過ぎは根腐れの原因ともなります。水やりの回数がそれほど多くないので成分が浸透しにくく、また根に直接触れた状態であると却って根が傷ついてしまいかねません。間違いやすいのが同じ肥料でも即効性の科学肥料は肥料過多となり株を却って弱らせる原因になりますので避けて下さい。
ファレノプシスの管理その④
基本的な育て方:植え付け・植え替え
植え付け、植え替えとも適期は根が成長する5月から7月にかけてです。周期は2年に1回程度で、黒っぽく古くなった水苔を交換します。まず株の大きさに合った通気性の良い陶器の蘭用懸崖(けんがい)鉢を用意します。水捌けと通気性を良くする為に鉢底に大粒の軽石を鉢の3分の1ほどまで入れておきます。用土としては、細かくしたバークや椰子殻のチップ、水苔などが用いられますが、水苔が通常使用されます。
植え付け手順
予め水を入れた容器に水苔をいれて水を含ませておきます。株の根に良く絡ませる様に水苔を軽くしぼったものを満遍なく貼り付けてから鉢に入れ、更に株を落着かせる為に水苔を足し、ヘラなどで鉢の縁際を良くついて隙間をなくして完成です。
ファレノプシスの管理その⑤
基本的な育て方:花後の手入れ
花は下方から萎れてきますので、萎れた花は取ってしまいます。花茎の半分ほどまで花が無くなったら茎の途中から2~3節を残して切り取ります。葉の生育もしっかりしていて、株も大きな場合は切り取った途中の節から新たに茎が伸び2番咲きが楽しめます。但し、2番咲きをさせると次年に花が付かなくなる事があります。新しいもので株を大きく育てたい場合は2番は咲かせない方が良いでしょう。葉がだらしなく垂れてあまり元気がなく株にも葉が少ない場合は、株自体が弱ってしまっていますので花茎は根元から切り取り株の養生を図ります。
ファレノプシスの管理その⑥
基本的な育て方:病害虫
ファレノプシスの病害虫については常に注意を払い、早目の発見と対処を図ることが大切です。温度や湿度などの変化にも微妙に反応して病気や害虫の発生に繋がります。ファレノプシスを育てるには病害虫について最低限の知識と対応の仕方を憶えておいた方が良いでしょう。
ファレノプシスの病気
ファレノプシスの病気は主に細菌やカビ、ウィルスなどによって葉や根に発生することが多く、最悪枯死してしまうことがあります。植物の病気全般に言えることですが、病気は早く見つけて、早く処理することが間違いなく大切です。主な病気の種類を挙げてみます。
軟腐病
葉の表面に水で濡らした様な小さな斑点が出来て放置すると褐色に色が変化して拡大し腐っていきます。腐った部分からは異常な臭いを発します。細菌やカビが要因とされるもので、病状が葉全体や根元まで進んだ場合は株ごとの処分しか防ぐことができません。見つけ次第ハサミかカッターで斑点の部分の周りを大きめに切り取って廃棄処分し、塩素系殺菌剤を塗布しておきます。進行の早い病気ですので早目の処理が重要です。
褐斑病
褐斑病は、カビ(糸状菌)による病気で様々な種類の植物にも発生します。最初、葉の表面に小さな円い斑点が出来、次第に褐色や黒っぽく色が変化して拡大し枯らしてしまいます。春から秋にかけて風通しが悪かったり湿度が高い状態で多く発生します。早目のうちに病葉を切り取り処分して薬剤を散布しておきます。
灰色カビ病
花びらに小さなソバカス状の小さな斑点が生じ、多いと見苦しくなります。ボトリチス菌が空気中に多く浮遊していて蘭などの葉や花に付着しています。湿度が高くなり気温も18度を超える状態になると菌の胞子が一斉に発芽して薄い花びらの組織内に根を伸ばして広がっていきます。少量であればそのまま放置しても良いのですが、酷い状態であれば花茎を切り取り廃棄します。対策は湿気を防ぐ事で、晴れて温かい時以外は葉や花に霧水は掛けない事です。
ファレノプシスの害虫
害虫はあらゆる植物にも発生しますが、ファレノプシスも例外ではなく、ウィルスやカビは害虫を媒介して病害の元となったり、排泄物が病気を誘引する原因ともなります。害虫は早期発見、早期駆除が基本です。主な害虫を挙げてみましょう。
ハダニ
梅雨明け時から8月の高温時に発生することが多い害虫です。葉の裏側がベトベトする状態となって、さらに白い斑点状になり、葉自体の艶も失われます。ハダニの予防には、気温が高めの乾燥期に葉水を万遍なくまめに掛けてあげることです。発見次第殺虫剤を散布します。
カイガラムシ
カイガラムシが発生し気付くのが遅れると完全な駆除が難しい為、早目に発見することが大切です。葉や茎にこびりつく様に付着して養分などを吸汁してしまいます。発見次第歯ブラシ状のものでこそぎ落とし、ファレノプシスに害を及ぼさない薬剤を散布します。
スリップス
スリップスはアザミウマとも呼ばれ菊類などに良く発生しますが、5月頃から高温で乾燥する時期が最も多く、ファレノプシスにも寄生して蕾(つぼみ)や花に害を与えます。蕾や花の縁などの色が変るなどの異変が生じたら殺虫殺菌剤で駆除します。
その他の害虫
その他の害虫には、アブラムシ、コバエ、ナメクジなどが見られます。アブラムシやコバエは見つけたらすぐに薬剤(家庭用殺虫剤でもOK)を噴霧します。ナメクジは室内で管理する場合は心配ありませんが、温室などでは発生して夜間に花や葉などを食害します。予めナメクジ駆除剤を発生する場所に置いておくと効果があります。
まとめ
現在洋蘭といわれる品種は3万種ほどとされています。ファレノプシスは、その内50種ほどがファレノプシス属とされています。発見されたのはおよそ200年ほど前で、主に英国で交配育種されて現在の様々な美しい花が作り出され、高級なギフトとして人気があるのは間違いありません。日本に渡ってきたのは約1900年頃です。ファレノプシスについてご紹介してきましたが、これからも魅力的な美しい花として脚光を浴びてゆくものと思われます。
ファレノプシスについてはこちらもチェック!
ファレノプシスは、花鉢の贈り物として間違いなく定番となっています。その育て方や種類、品種をご紹介してみましたが、ファレノプシスについて興味をお持ちになったら「暮らし~の」で解りやすい記事が紹介されていますので、ぜひご覧になってみて下さい。
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