越田弥吉 岩手産木灰
草木灰とは?
古くから使われている資材
現代社会で使われている肥料はいつできたのでしょうか?少なくとも悪臭はせず撒くだけと使いやすい化成肥料は1800~1900年代頃に作られた新しい技術です。それ以前は現在も使われている動物の糞、完熟や完全発酵という概念はおそらくなかったでしょう。一方今回紹介する草木灰は江戸時代より前から使われている歴史のある資材になります。作り方も変化することなく植物を燃やしただけのなんの加工もない灰です。
原料で差がでる
どんな植物の灰を使っているのかで成分が変動します。これは堆肥も同じで発酵牛糞だったり発酵鶏糞だったりで効果効能が変わってくるのと同じです。ただし灰以上でも以下でもないので堆肥ほど原料の違いで大きな差は生まれません。主な成分はカリウムと石灰になります。他には多少という表現になりますが、リンも入っているので植物の肥料としていろいろ効果効能があります。
草木灰の歴史
諸説あるのですが、平安時代、鎌倉時代にはすでに牛糞などの堆肥と同じように草木灰が使われていたようです。現代社会のように機械がなくても作り方が簡単かつ目に見えて球根などに作用することから重宝されてきた古から続く伝統的な資材ですね。江戸時代には灰問屋が灰をを集めて農民(農家)に販売していたと言われています。
草木灰の効能1
球根や根を育てる
植物の成長に欠かすことができない要素が3種類ありそのうちの1つが、カリになります。主に根に作用すると言われて、丈夫になったり、育ちやすくする効果があります。根を育てることから球根の植物にも相性がよく、球根の植物は栄養を貯めることができるので即効性のカリウムは非常に効果的ですよ。根が元気になることで病気の予防やアブラムシなどの被害に遭っても弱らない根になります。
即効性とは
そのまま文字通り効き目がすぐに現れると言う意味になります。成分がゆっくりじわじわと長く効くものは緩効性肥料といい、植え付ける時に土に混ぜ込む元肥として使うことが多いです。植物の栄養になるまで時間がかかる堆肥が元肥によく使われます。緩効性の化成肥料もありますよ。有機肥料は効き目が遅い物が多い中、草木灰の成分は水に溶けやすくすぐに効果があらわれます。どちらがいいという訳ではなく使い分けるのが正しい使い方です。
草木灰の効能2
花付きと実付きよくする
植物を栽培するうえで欠かせない2つ目の要素がリン酸です。主にリンと呼ばれていて果実や花に影響し、果物や野菜の実付きを良くし、美しい花をたくさん咲かせます。草木灰にはカリほど豊富に含まれていないので、リンによる実付き、花付きを過度に期待しないようにしましょう。草木の成長に欠かせない3つ目の要素として窒素もありますが、草木灰には含まれていません。
窒素が含まれている草木灰もある
原料の草木によって灰に含まれている成分が変化することは先程紹介したように、窒素も入っている草木灰があります。これも草木を燃やした後の灰に由来するので、科学的に足したものではありません。窒素は主に葉に影響し植物を大きく栽培する時に必要です。ただし窒素が豊富にありすぎると、徒長(とちょう)と言う無駄に成長し病気やアブラムシなどが来やすい弱い状態になり、花や果実ができなくなるので大量に与えると逆効果です。
草木灰などのパッケージにあるのNPKとは
肥料の袋やパッケージをよく見るとNPKというアルファベットと共に8:8:8や、4:8:3などの数字が書かれています。これはN(窒素)、P(リン)、K(カリ)の量(比率)を表していて、草木灰は一般的にはN0:P3:K6ぐらいになります。この比率が灰によって違うので実際に使う時にチェックして分量などを確認してくださいね。
草木灰の効能3
草木灰はphを高める
草木灰は堆肥と同じように主に肥料として使われますが、石灰を含むので強いアルカリになるためphを調整する機能もあります。phとは土の性質を表す指針となる数値で7が中性、7より高いとアルカリになり7より低いと酸性に分類されます。草木によって好むphが違うので一概に言えませんが、弱酸性で育つものが多いです。目安としては6前後になりますが、とうもろこしや稲などイネ科やさつきやブルーベリーなどのツツジ科は酸性を好みます。
草木の種類でphも異なる
越田弥吉 岩手産木灰
日本の土は酸性なので草木灰などのアルカリの物質を使ってphを調整しましょう。草木灰だけで調整するとカリが過剰になりやすいので、他の堆肥を混ぜて使ったり、石灰を使います。灰を混ぜることでphが高くなり、酸性の土地を弱酸性に矯正し栽培に適した土ができます。草木灰という名前ですが、草だけ燃やした灰と木だけ燃やした灰もありますよ。成分がやはり異なるので必ず確認してくださいね。
草木灰の効能4
草木灰は虫除けに使える
効能に虫除け、殺虫効果もあります。灰だから虫除けになるというわけではなく、強いアルカリというのがポイントです。虫除け効果があらわれるのでアブラムシやヨトウムシ(ヨトウガの幼虫)、モンシロチョウの幼虫など小さいながら無視できない昆虫の防除に役立ちますよ。葉に草木灰がかかることで臭いを嫌いモンシロチョウなどが卵を産み付けない効果もあると言われているので無農薬で栽培たいときに、草木灰は頼れる存在になりますよ。
草木灰は病気予防に使える
虫除け以外にも病気の予防にも効果があると言わていて、撒くだけでうどんこ病、モザイク病なのどの予防も可能です。これも虫除けと同じようにアルカリだからできることになります。草木灰は草木の栄養となる肥料としての役目だけではなく農薬のように虫除けから病気の予防まで幅広い効能があるため根に栄養を貯める球根の花、野菜などろいろな植物に使えますよ。
草木灰の使い方1
草木灰は土に混ぜる
草木灰を土壌改良材として使う場合も肥料として使う場合も基本的には土に混ぜましょう。草木を燃やした灰なので柔らかく簡単に崩れすぐに粉状になるため、他の肥料が飛ばされないそよ風みたいな少しの風でも簡単に吹き飛びます。草木灰を土に混ぜると風の影響を受けず、土壌改良材としての効果がより発揮できます。ただし草木灰は水に溶け出しやすい成分なので元肥としてはあまり長く効き目はないでしょう。
有機肥料と混和する
草木灰はカリが多いですが、リンや窒素をあまり入っていないため他の肥料と併用するという使い方が多いです。草木灰と相性のいい資材はカリが少ないものがおすすめになります。例えば窒素が多く入っている油かすやリンも多い魚粉などと一緒に使うことで草木灰に足りない栄養分を補えますよ。カリだけでは球根を大きくしたり根を丈夫にするだけで肥料としての効能は万能ではありません。
草木灰は風対策必須
追肥として草木灰を使う場合も撒くだけでは風で飛ばされるので土をかぶせたり溝を作ってそこに草木灰を入れるなどして風に飛ばされないようにひと手間加えましょう。草木を育てたり病気の予防にもなる便利な灰ですが、使い方に工夫がいるためだんだん使う人が少なくなってきた資材です。草木灰は花や実付きに影響するカリが多いので咲く前に使うと効果的になりますよ。
草木灰の使い方2
草木灰で病害虫対策
草木灰を病気や虫除けとして使う場合そのまま撒いたあと上から水を与える使い方もあります。灰が草木の葉に付着して汚れても大丈夫です。付着することで病気や虫除け対策になりますよ。堆肥のように発酵臭もなく臭いがしないので不快になることは少ないでしょう。灰なので白~黒になりますが水やりと共にだんだん目立たなくなりますよ。基本的には灰と土を混ぜて使うのですが、防虫をメインにするならそのまま振りかけましょう。
水に溶かす
夜露、朝露が葉に残っていると付着して効能が得られやすいですが、乾いているとやはり風に弱いので水に溶かして上澄みだけつかうとサビ病やモザイク病などの病気やアブラムシ、ヨトウムシ、青虫(モンシロチョウの幼虫)などに対してより使いやすい防虫、液肥ができますよ。
乾燥に使う
じゃがいも植え付け時に元気よく成長するようにわざと種芋を切ります。そして病気にならないように、腐敗しないように断面に灰をつけて植えます。灰を断面にしっかり塗りつけることで、土の中で断面から病原菌が入ってこないように予防できます。腐敗しにくくなるのは灰が余分な水分をとり乾燥が早まるためです。
草木灰の撒きすぎは逆効果
どんな資材も過多は良くないのですが、草木灰は特に注意しましょう。防虫目的で大量に灰を撒いてしまうと土がアルカリになってしまいます。鶏糞と混合させた場合さらにアルカリになるので注意してくださいね。
草木灰の注意点
化成肥料と同時に使用しない
草木灰と同じ石灰は植え付け2週間前に撒くことが多いです。これはある程度石灰がなじまないと化成肥料で有毒なアンモニアガスが発生したり石膏のようにカチカチに固まったりすることを避けるためです。草木灰も同じで化成肥料と併用は避けておきたいですね。アンモニアガスが発生すると酸素を奪うため葉が黒くなる被害をうけ急激に弱ります。
与えすぎ注意
大量に与えるとアルカリになるのでよくありませんが、水に溶けやすいことから悪影響をおよぼすことは少ないと言われていて、やりすぎたと思ったら水をたくさんまいて素早く溶かせば被害を抑える事ができますよ。堆肥のように時間がかかるものではないので簡単にリカバリーできます。
草木灰の作り方
草や木を燃やすだけ
冒頭で紹介したように草を燃やしたあとの灰なので簡単に作れます。作り方は稲わら、剪定したときにでた枝、その他野菜や草を乾燥させたものに火を付けていくだけになります。薪ストーブや暖炉がある家では薪ストーブなどを使ってできた灰がこそが草木灰です。正確に言うと草は使っていないので木灰になります。
草木灰の作り方1
難しいことは考えず感覚的には焚き火をする感じで大丈夫です。周りに燃え広がらないように適当な大きさの穴をほり、よく乾いた草木に新聞紙などを利用して火を付けていきじっくり燃やしていきましょう。灰が欲しいので燃え残りがないようにしっかり燃やしますが、高温にならないように大きな幹などは入れないようにしましょう。また風のある日は火の粉や灰が飛びやすく危ないので日を改めたほうが安全です。
草木灰の作り方2
全体が灰になったらジョウロをつかって優しく水をかけて消火しましょう。灰は軽いのでホースなどで勢いよくかけると水に浮いてあふれたり、勢いで飛び散ってしまいまよ。その後土をかぶせ、プラスチックの板などで雨が染みこないようにして2日ほど待て草木灰の完成です。草木灰は水に溶けやすい成分が多いので、自然に消火できる環境であれば水をジョウロでかけないほうが成分の多い灰ができますよ。くれぐれも周りに注意して作業をしましょう。
勝手に草木を燃やすのは法律違反
いろいろなものに使える便利な灰は、作り方も簡単なため今すぐにでも作ろうと思うかもしれませんね。しかし勝手に草木を燃やすのは条例などで規制されていることが多いため、地方自治体に問い合わせる必要あります。地方によって条件付きで草木灰の製造(焚き火をして灰を作る)ことも可能な場合もあるので条件の確認もしてみましょう。
草木灰の作り方と使い方のまとめ
草木灰は便利な灰
草木灰は地中では球根などの根にいい影響を与え、地表では防虫などに効果がある便利な灰です。しかし注意しないとアルカリ性になってしまいます。草木灰の作り方は草木を燃やしてできるので作り方そのものは簡単ですが、法令の関係で作るのが難しいので草木灰はホームセンターや園芸用品店などで買ったほうがいいでしょう。草木灰は水に溶けやすいので球根を水耕栽培するときに水に溶いて使えますよ。アンモニアガスとphに注意しましょう。
肥料が気になる方はこちらもチェック!
草木を育てるうえで欠かせない肥料は草木灰以外にもたくさんあるので、よかったらチェックしてくださいね。
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