ぼかし肥料とは
ぼかし肥料とは、米ぬかなどいくつかの有機物を混ぜ合わせて発酵させた肥料のことになります。 使用する有機物の種類や量で、肥料の3要素「チッソ・リン酸・カリ」のバランスを整えることができるんですよ。それに、栽培している植物の根っこや、土の中にいる微生物に対して悪影響をおよぼすガスが出ません。 ぼかし肥料は作り方と使い方が簡単で、高い効果を得られます。自作だけでなく販売もされています。
ぼかし肥料を使う理由
肥料には、有機物を使った有機肥料と、無機物を使った化成肥料に分けられます。それぞれにメリットとデメリットがあり、どれを使うかは、栽培している植物やどう育てていきたいかによって変わってきます。 有機栽培をおこなうのであれば、有機肥料を使わないといけません。ただ、通常の有機肥料はいくつかの難点があります。その解決策として利用したいのが、ぼかし肥料です。
有機肥料とは
自然環境への配慮や健康志向の高まりから、オーガニックなものが流行っています。オーガニックとは「有機」ということ。ここでいう有機とは、生物由来の炭素を持つ有機化合物のことをさします。 有機肥料とは、この有機物のみを使用した肥料のことです。一般的には有機物を微生物が分解し、肥料として使える状態になった堆肥(たいひ)のことをいいます。
堆肥のデメリット
堆肥は、わらや草などの植物や、動物の糞尿が原料になります。この原料を仕込んでから、長期にわたって寝かせないといけません。堆肥の作り方は大変で、時間がかかります。それに原料から発せられる臭いの問題もあります。農家でなければ、近所迷惑になってしまうことでしょう。
有機肥料のデメリット
有機肥料は無機養分になってから、肥料としての役目を果たします。これは土の中にいる微生物の力が必要になります。なので土の状態によって効果が異なってくるんです。また、無機養分になるには分解される工程が必要なので、効き目があらわれるのは遅くなります。このように有機肥料は、使い勝手の悪い部分がでてきます。
有機肥料のメリット
有機肥料のメリットは有機ということだけではありません。土によくなじみむため、肥料としての効果が長続きします。それから、濃度の問題による害を植物に与えづらいことや、土壌(どじょう)が豊かになることなどがあげられます。 化成肥料はもとから無機養分だけなので効き目は早いのですが、効果があまり続きません。とはいっても、効き目がゆっくりとあらわれて効果が長続きする緩効性(かんこうせい)の化成肥料もありますが。
ぼかし肥料の効果/他との違い
有機肥料のデメリットとメリットを説明してきたところで、ぼかし肥料の効果も加えて違いをみてみましょう。 有機肥料の効果があらわれるのは遅いということが、理由と共に分かりました。ぼかし肥料の場合は発酵させていて、多くの微生物を含むことなどから、すぐに強い効き目があらわれます。 有機肥料は効果が長続きします。ぼかし肥料も有機物を原料にしていますので、同様に長い効果を得られます。
ぼかし肥料はいいとこ取り
つまりぼかし肥料は、有機肥料と化成肥料のメリットを兼ね備えた肥料、ということなんですね。 簡単にまとめると、有機肥料よりも早く効き、液体肥料などの化成肥料よりも長く効く。それに有機物を原料にしているから、環境によく有機栽培にもってこい!作り方や使い方は簡単で、臭いの問題もなし。さらに効果が強いので量が少なく済むんですよ。
ぼかし肥料の材料
ぼかし肥料の万能さが分かったら、さっそく使ってみたいと思いませんか?販売しているものもいいですが、作り方は簡単なので自作もチャレンジしてみましょう。 まずは材料の用意ですね。代表的な材料は、米ぬかや油かす、動物の糞などですが、チッソを含んだ有機物であればどんなものでも使えます。販売しているものではなく、コーヒーのカスなど生活の身近にあって、不要でお金のかからないものがいいですよ。
気をつける材料
木質の材料に関しては、発酵と分解に長い時間がかかってしまうので使わないようにしてください。木材はもちろん、木の皮やクズなど細かい状態でも同様です。
材料の特性を知る
ばかし肥料を作る材料の種類や量、組み合わせは特に決まっていません。どの材料を使ってどのくらいの量にして、何を組み合わせるかで、できあがる肥料が変わってきます。 なので、栽培する植物にとってベストなぼかし肥料を作るためには、使う材料が肥料になった時にどんな成分の効果をあらわすのか知っておきましょう。チッソなら油かす、リン酸なら魚粉、カリなら草木灰(そうもくばい)などです。
米ぬかベース用の材料
今回はオーソドックスな米ぬかをメイン材料にした、ぼかし肥料の作り方と使い方をご紹介していきます。作るにあたっての材料は下記になります。 ■米ぬか:7.5kg ■油かす:2.5kg ■貝化石:2.5kg ■水:1.25L ■発酵促進剤:少量 水を加えた米ぬかだけでも発酵しますが、発酵や分解のスピートアップと、失敗を減らすために発酵促進剤(はっこうそくしんざい)を少しだけ加えます。
発酵促進剤
発酵促進剤は、発酵と分解をうながしてくれます。他にも同じ効果が得られる土着菌(どちゃくきん)があります。色んな木が生えている林で、落ち葉の奥などに潜んでいる白い菌です。発酵促進剤でなく土着菌を加えてもいいですよ。 ぼかし肥料には菌がいるので、すでに作った分を少量でも次回作る分へ混ぜると、その菌によって同等のぼかし肥料ができあがります。
ぼかし肥料の作り方
ぼかし肥料の作り方は2つに分けられます。 ■好気性発酵(こうきせいはっこう)は、2週間〜1ヶ月ほどと早くできあがりますが、途中で空気を入れ替える切り返しを数回おこなわないといけません。 ■嫌気性発酵(けんきせいはっこう)は、2ヶ月〜3ヶ月ほどと出来上がりが遅いものの、密閉して発酵させるので、切り返しをしなくて済みます。 今回は簡単な嫌気性発酵での作り方をご紹介します。
材料を混ぜ合わせる
材料がそろって作り方を決めたら、材料を混ぜ合わせていきます。分量はちゃんと計量してくださいね。 この作業で一番気をつけないといけないのが、水の分量です。水分の配合は40%にしないといけません。水が多いとくさって失敗してしまいます。材料を手でギュッとすれば固まるけど、指で触れるとくずれるぐらいが目安です。
混ぜた材料を密閉する
米ぬかをベースにした時は素手で混ぜてみてください。スベスベ肌になれますよ。よ〜く混ぜたら、密閉できる袋へ入れます。通気性のないナイロン袋や、丈夫であればゴミ袋でもOK。 嫌気性発酵では発酵の最中に空気(酸素)が加わってしまうと、水と二酸化炭素に分かれてしまいます。肥料として使えなくなるため、なるべく真空になるようきっちりと密閉してくださいね。
ぼかし肥料を発酵させる
材料を混ぜて袋へ密閉したら、あとは発酵を待つだけです。目安として、春夏は1ヶ月〜2ヶ月間、秋冬は2ヶ月〜3ヶ月ぐらいになります。気温の暖かい方が早く発酵します。嫌気性発酵なので、袋を開けずにただ待ちましょう。 発酵までの目安期間が過ぎたら、袋を開けて匂いをかいでみます。成功していたら発酵した甘酸っぱいような匂いがしますよ。これで、ぼかし肥料として使うことができます。
ぼかし肥料を保存する
ぼかし肥料をいっぺんに使うということはないので、保存が必要になります。出来上がったぼかし肥料はかたまっているので、よくほぐしてください。そして日の当たらない風通しがよい場所へ置いて乾燥を待ちます。乾燥によって発酵を止め、保存できる状態にします。 ぼかし肥料は時間の経過と共に、肥料としての効果が少なくなってきます。半年〜1年以内ぐらいまでが使用期限です。
ぼかし肥料作りの失敗
発酵期間を待ってワクワクで袋を開けたら、水気が多くてビッショリ。これは残念ながら失敗です。 失敗の原因No.1は、材料を混ぜ合わせる時点で水の分量が多いこと。水の量はしっかりと測りましょう。 それと嫌気性発酵させているのに、空気が加わってしまうこともよくある失敗の理由です。好気性発酵であれば空気を加えますが、切り返しの作業で空気を入れ替えて発酵させますので問題ないんですね。
作り直す前に
失敗したら作り直すことになります。でも失敗分を使って再挑戦できますよ。米ぬかを追加して全体が適切な水分量になったら、よく密閉してまた発酵させます。発酵期間は始めからから作る時と同じです。 嫌気性発酵の期間は長くても3ヶ月ぐらいですが、もう待てない!という時には、販売されているぼかし肥料も検討してみてください。
販売されているぼかし肥料
ぼかし肥料はたくさんの種類が販売されているので、用途に合ったものがきっとみつかります。使われている材料をよくチェックして、今後作る時の参考にするのもいいですね。 それに販売されているものだと、説明文などを読めば効果や分量がある程度なら分かります。なのでぼかし肥料を初めて使うなら、お試しにちょうどいいかもしれません。
ばかし肥料の注意点
ぼかし肥料は、強い効果と即効性があります。中でもチッソ分が多いため、与えすぎると茎や葉っぱが成長し過ぎてしまいます。その結果、メインの実ができない、できた野菜がくさりやすい、病害虫の被害を受けやすいなどの問題が出てきてしまいます。また、根っこに触れると肥料やけを起こしてしまうことも。 特に夏の暑い時期は、チッソ分が溶け出しやすいので注意してください。
ぼかし肥料の使い方
上項の注意点の通り、ぼかし肥料は強い効果を発揮します。そのことを念頭に、少量だけ使うようにしましょう。 植物を植え付ける時にほどこす元肥(もとごえ)は、通常の有機肥料を使う場合の半分ほどの量にします。ただ、植物の栽培に慣れていない人は、元肥として使わない方が安全です。 追肥としての使い方が多くなります。土の上へ少しだけまく程度にしてくださいね。
ばかし肥料のまとめ
ばかし肥料とはどんな肥料か、作り方や使い方など簡単な方法を説明してきました。販売もしているので作るのが簡単でないと思った人は、用途にあったものを選んで買ってください。簡単だと思った人は、販売されているものを検討しつつ自作も試してみるのがいいですよ。 有機栽培をおこなうなら、ぼかし肥料がおすすめです。効果の期待できる肥料を使い効率よく育て、たくさん収穫しましょう!