いわしってどんな魚?
いわしの定義を簡単に説明いたしますと「ニシンの仲間の小型のもの」となります。ニシン亜目のものはマイワシだけなのですが、世界的に見るときちんと色分けされていないので(例えばウルメいわしは「ヘリング(ニシン)」に分けられる地域もある)、ニシンの仲間で良いと思います。
日本では古来より庶民の重要なタンパク源として重宝されてきました。漁業的にはマイワシ・カタクチいわし・ウルメいわしの3種を「いわし」としています。
いわしの生態
いわしの生息域
いわしは泳力が強いため世界中の海で生息が確認されていますが、群れで世界中の「沿岸」を回遊しているため海に接している国のほとんどが漁業対象魚にしています。
当然「いわし」と名付けられた魚は数多く確認されますが、日本の漁業的には前述の3種類のみを「いわし」と位置付けています。ちなみにロシア語の「イヴァーシー」は日本語の「いわし」が語源です。
いわしの一般的な旬
いわしは昔からよく獲れるため安く、「卑(いや)しい」魚であるとしてそれが「いわし」になったとか、魚へんに弱いと書くようにすぐに腐ってしまうため、「弱し」から変化して「いわし」になったとか説はいろいろです。
つまり「新鮮なうちに食べる」ことが前提の魚ですから、旬は「獲れたてのもの」です。脂ののりは種類によって違いますが、秋はどの種類も旬で脂のりは良いようです。古来より日本人に愛され続けている魚なのは間違いありませんね。
種類別いわしのいろいろ
マイワシ
主に東アジア全般(沖縄・奄美除く)の沿岸で獲れるマイワシは夏から秋の季節が旬で、特に関東地方では「入梅いわし」として茨城・千葉・神奈川あたりで6月頃に獲れるものが旬になります。
またマイワシは大羽(オオバ)・中羽・小羽と大きさで呼ばれることがあり、お刺身でいただくのであれば体長20㎝以上の大羽がおすすめです。真っ白に脂ののった旬のマイワシのお刺身は生姜で味が引き立ちます。
ウルメいわし
ウルウルとウルんだ大きな目玉が特徴なのが「ウルメいわし」です。マイワシと違い、本州だけでなくこのいわしは暖流に乗って南の海域にも現れます。私の住む奄美では30㎝前後のウルメいわしが時々釣れますが、小骨が多いため「ニギルメ」と呼ばれています。
ニギは棘(とげ)の意味です。体の中に小骨がビッシリ入っていますので、骨切りしてから料理しましょう。旬は秋から冬です。
カタクチいわし
口が片側(頭側)に寄っていることから「カタクチいわし」と呼ばれているこのいわしは日本の漁獲量全体から見て一番漁獲量の多い魚です。もともと大きくならない種類なので煮干しなどの加工品になることが多いのですが、稚魚は「シラス」と呼ばれて春のお楽しみの一つになっています。
また「アンチョビ」の材料としてもカタクチいわしは有名ですね。旬が目立たず、時期を選ばず、食べ方いろいろのカタクチいわしはとても重宝する食材です。
いわしの事がもっと気になる方はこちらもチェック!
今回いわし料理に特化した記事になっています。もっと詳しくいわしのことが知りたいなと思われる方もおられると思います。いわしの基本情報や雑学まで詳しい記事が「暮らし~の」のサイトの中にありますので併載しておきますね。興味のある方はこちらもチェックして下さいね。
いわしの生態や基本情報まとめ【魚図鑑】
イワシは、人間や魚や海に隣接する生き物の、重要な蛋白源で古くから日本では食卓に上る大衆魚です。秋には沿岸に押し寄せ、防波堤でファミリーの良い...
いわしのさばき方
いわしの手開き
ウルメイワシは手開きがいちばん簡単な魚なんじゃないかと思う。鮮度よければ絶品なので試して欲しい庶民の味方。 pic.twitter.com/P9EGsZFEGw
— ざざむし。の人 (@nekton27) July 29, 2016
いわしの手開きはどの種類のいわしにも通用する一番簡単な開き方です。頭を落としたいわしの内臓を指でこそげたら、中骨に沿って頭から親指でしごいていきます。これで半身がフリーになりますので、皮の端を持って身から剥がします。
残った半身も同様に親指で中骨をしごいて身を剥がします。皮を剥いたらはい、できあがりです。生食するなら、ウルメいわしの場合は骨切りしてからお刺身にしましょう。
いわしの三枚おろし
大羽のマイワシなどは包丁を使って三枚におろしましょう。頭を落としたら腹骨ごと腹身を斜めに切り落とします。お腹の掃除をしたら中骨に沿って頭から一気に尻尾までおろします。
ひっくり返して同様に中骨に沿って包丁を入れればあっという間に三枚おろしの完成です。後は皮をひき、お好きな美味しい料理に仕上げます。ウルメいわしの大型の物も同じ方法でいいですが、ウルメいわしの場合は尻尾から2㎝位はカットして下さい。小骨が多すぎますから。
旬のいわしの美味しい食べ方①
旨味のかたまり「お刺身」
脂ののった旬のいわしはぜひお刺身で食べて頂きたい。美味しいマイワシのお刺身はどんなお魚のお刺身より美味しいと感じます。旬と漁が正比例するお魚ですから、たくさん獲れて安く出回っている時ほど美味しいのがいわしです。
マイワシのこってりした旨味、ウルメいわしのあっさりした旨味、カタクチいわしのコクのある旨味、どのいわしもそれぞれの旬の美味しさがありますよ。
旬のいわしの美味しい食べ方②
さっぱり美味い「酢〆」
脂ののったいわしを濃いめのお酢できゅっと〆て余分な脂を落として旨味を閉じ込めると、野趣味豊かだったいわしが上品な一品になります。簡単な作り方を書いておきますね。動画の「三枚おろし」を参考に三枚におろしたいわしは「皮はむかずに」使います。後は塩と酢を用意して下さい。使うものはこれだけです。
いわしの酢〆の仕方
バットの下にまんべんなく振り塩をして、いわしを並べます。並べたいわしに上から振り塩をし、ラップをかけ冷蔵庫に20分から30分置きます。軽く水洗いしたら生酢に15分漬け込みます。キッチンペーパーでしっかり水分を拭き取ったら優しく皮を剥いてできあがりです。
後はお好きな大きさに切り分けてお召し上がり下さい。美味しいですよ。夏の暑い季節に良く合うお惣菜ですね。
旬のいわしの美味しい食べ方③
大量の野菜と一緒に「マリネ」
和の酢〆に対して洋のマリネもまたワインなどのお供にいかがでしょうか。マリネなどというとちょっと難しく感じますが、とても簡単ですので作り方を記しておきますね。まず旬のいわしを三枚におろし、皮をひきます。
両面に「軽く」塩をして10分ほどでキッチンペーパーで水分を拭き取ります。あとはマリネ液に30分から1時間ほど漬け込んだらできあがりです。ブラックペッパーとオリーブオイルを適量かけていただきましょう。
マリネ液レシピ
オリーブオイル50㏄、お酢30㏄、砂糖15g、塩3g、チューブにんにくBB弾2個分、胡椒少々、鷹の爪1本、あればローリエ。これを全部合わせ、砂糖と塩が溶けるまでシャカシャカすれば完成です。
漬ける気温(季節)や取り置きの状態によって、最初の塩加減を決めましょう。これはすぐに食べてしまうのを前提にした作り方です。大量の野菜と漬け込むと美味しいですよ。どの種類のいわしでも合います。
旬のいわしの美味しい食べ方④
優しい美味さ「つみれ」
旬の脂ののったマイワシでも、骨っぽいウルメいわしでも、脂の無いカタクチいわしでもどんな種類のいわしでも旬を選ばず美味しくいただけるのが「つみれ」です。それぞれのいわしの良さがあります。肉団子と違いあまりつなぎを使わずにふんわりと仕上げるのがコツです。
つみれだけで食べてもいいですし、つみれ汁として食べても、また冬の季節のお鍋の具材としても最高ですよ。つみれを茹でた出汁で汁を作るのですが、具にはごぼうが相性ばっちりです。
つみれレシピ
4人分量:いわしむき身300g(種類は問わず)、全卵1個、味噌10g、生姜小指の第一関節くらい(チューブなら3㎝)、長ネギみじん切り10㎝分。ネギ以外の材料をフードプロセッサーで混ぜます。ゆるすぎるようなら小麦粉大さじ1を足して下さい。
混ざったら長ネギのみじん切りを練り混ぜ、スプーンなどを使ってボールにして熱湯に落としてきます。火が通ったらバットに取っておきます。冷凍しておいても使えますよ。
旬のいわしの美味しい食べ方⑤
甘辛が美味い「かば焼き」
いわしを手開きで開く時に身はそのままで骨だけを抜くと、いわゆる「開き」の状態になります。それをかば焼きにして食べてみましょう。
「ウナギのお高い今、かば焼きをいただきたければ工夫をいたしましょう」などという料理が増えていますが、旬の「いわしのかば焼き」はそれ自体がとても美味しい料理ですよね。簡単なのでぜひお試しください。
イワシかば焼きレシピ
開いたいわしの両面の水分をきちんと拭き取りましょう。両面に薄く小麦粉をはたいたら薄くサラダオイルを塗ったフライパンで皮目から焼いていきます。両面焼き色が付いたら醤油・酒・みりん・砂糖を全て20gづつ(これを同割りと言います)投入します。
事前に混ぜておいても良いですよ。たれがトロリといわしに絡むまで煮詰め焼きしたらできあがりです。ご飯にぴったりの一品ですよ。
旬のいわしの美味しい食べ方⑥
サクフワが美味い「フライ」
青魚のフライってなぜあんなに美味しいのでしょう。いわしのフライもまたマイワシ、ウルメいわし、カタクチいわし等どの種類のいわしでも旬を選ばずとても美味しく作れます。
マイワシの捌き方はかば焼きと同じ、大きめのウルメいわしならハーフのフィレで軽く骨を切って、カタクチイワシならワタだけ包丁の先で出して丸のまま揚げてしまいましょう。
いわしフライレシピ(超裏ワザ)
いわしの下ごしらえができたらバッター液を作りましょう。このバッター液は私のオリジナルです。小麦粉と「手間のいらない天ぷら粉」を4:1で混ぜて水で溶くだけ。卵を使わないので作り置きができます。
これに具材をくぐらせてパン粉を付けて揚げるだけです。トンカツでも野菜でもなんでもカリッと揚がりますよ。爆発も少ないです。
旬のいわしの美味しい食べ方⑦
地中海の香り「オイルサーディン」
これはもう絶対にカタクチいわしがおすすめです。骨まで軟らかく煮たカタクチいわしを、たっぷりのオリーブオイルと共に薄切りバゲットに乗せていただけばお口の中に地中海の風が吹きますよ。
使用するカタクチいわしは塩水の中でグルグルすればウロコが綺麗に剥がれますから、肌に傷をつけずに下ごしらえができますよ。
オイルサーディンレシピ
ウロコの取れたカタクチいわしの頭を落とし、内臓を抜きます。あくまで丁寧に下ごしらえしましょう。下ごしらえが済みましたら10%の塩水に2時間漬け込みます。布巾やペーパーで水気を切ったらお鍋にいわしを並べます。
ニンニクスライス3片分、鷹の爪の種を抜いて輪切り1本分、ローレル2枚をいわしに乗せ、ひたひたのオリーブオイルで約2時間煮たらできあがりです。ビンなどに入れて1週間くらいで食べきりましょう。
オイルサーディンの煮かた
まず一緒に煮るローレルですが、これはガスの炎でサッと炙ってから使いましょう。香りが出ますよ。次に火加減ですが、超弱火で80度以上にしないように加減します。これが結構大変なのですが、身離れや反りがでないように火を止めたり点けたりして加減します。もしも身だけをいただくのであれば「中火で10分」ほど煮込めば充分です。
旬のいわしの美味しい食べ方⑧
新鮮さが命「生シラス」
生シラスは旬の一時期だけのお楽しみだと思われていますが、実は一年中漁はあります。ただ春から夏にかけてのちょっと大きめのものが一番美味しい旬とされています。
脂がのっているわけでもなく青魚特有のコクがあるわけでもないのですが、食感と軽い甘み、何よりも「新鮮な物を食べている」感を感じられる食材です。産地に行かないとなかなか新鮮なものは食べられませんので、食したい方はぜひ産地まで足を運んで旬を堪能して下さい。
生シラスは産地で食べる
季節ものの生シラスを食べるには産地と時期が大事です。幾つか産地と時期をご紹介しておきますね。産地1、愛知県篠島。時期、初夏。産地2、愛媛県宇和。時期、4月から11月。産地3、和歌山県湯浅。時期、5月と10月。産地4、静岡県駿河湾。
時期6月から9月。産地5、広島県江田島。時期、6月から11月。産地6、神奈川県江の島周辺。時期、4・5・7・10月。おおむね春から秋が旬の季節ものですね。
いわしの釣り方
旬のいわしを防波堤で狙う
陸っぱり釣り師の中にはいわしの季節になるとワクワクされる方が少なくありません。いわしは「釣り船を仕立てて」釣りに行く種類の魚ではありません。どちらかといえば防波堤釣りの「外道」扱いの魚です。
しかし旬の脂の乗ったいわしが沿岸に寄ってきたと情報が入ったらぜひ出かけて行って釣竿を出して下さい。その季節、釣りたての旬だけが味わえる幸せが待っているのですから。
防波堤釣り仕掛け
いわしは堤防などから「サビキ仕掛け」で狙うのがベストです。4m前後のロッドとスピニングリールにサビキ仕掛けとアミカゴを付けて海面から沈ませるだけです。
アミカゴにアミコマセを入れてアミを振り出しながら釣り針を沈ませていくと集まってきたいわしが針に喰い付きます。季節と時合さえ合えば三桁くらいは釣れてしまいます。新鮮ないわしを自力調達しましょう。お手軽な釣りですよ。
僥倖は突然に
いわし類は実は釣果が安定しない魚でもあります。釣具屋さんなどからの情報で「大漁間違いなし」と太鼓判を押されて、実際に現地に行くと「さっきまで居たのになあ」などと言われたりします。
またその逆に突然海が湧いたようになっていわしの大群が防波堤に押し寄せることもあります。大した手間ではないので、釣行には必ずいわしの仕掛けを携帯しておきましょう。
旬のいわしはお魚屋さんでも
たくさん獲れる時が旬
どの種類の魚でもそうなのですが、近海物であれば「たくさん獲れる時が旬」であると言えます。つまり安くお魚屋さんに並んでいる時が一番美味しい旬なんです。
網で漁獲することの多いいわしは、どっさり獲れた時はスーパーなどの店頭にも安く並ぶことがあります。秋口の季節には見逃さないで下さい。脂ノリノリの美味しい旬のいわしを手に入れましょう。
いわしの栄養素
DHAとEPA
いわしにはDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)がバランス良く含まれていると言われています。両者とも必須不飽和脂肪酸の仲間で、体内に入ると善玉コレステロールを増やしてくれ、中性脂肪を減らしてくれます。
そのおかげで高血圧や動脈硬化などから体を守ってくれるといいます。また脳の機能を活性化させ、頭を良くするともいわれています。たくさん摂りたいですね。
カルシウムとタンパク質
昔から強い体を作るために「煮干しやメザシは残さず食べろ」と言われたものです。それには根拠がありました。干して水分を飛ばした食品の中でいわしはカルシウム含有量がダントツに高く、タンパク質は生のいわしでも100g中約20gもあります。
食べ過ぎは良くありませんが、体を作る基本の栄養素が多いのは嬉しいですね。ちなみに私の母は煮干しのことを「カルシウム」と呼んで、おやつに出してくれていました。
旬のいわしを堪能しよう!
これからいわしの美味しい季節がやってきます。時期の脂の乗ったいわしは本当に美味しいですし、またひと手間かけた保存食としてもその能力はとても高い魚です。ただし鮮度が命の魚です。手に入れたらすぐに処理しましょう。
生で、焼きで、揚げ物で、和食で、洋食で、どんな食べ方にも対応してくれ、また安価で手に入る魚です。いわしの季節には「いわし尽くし御膳」などの食べ方もおすすめです。美味しいいわしをどんどん食べましょう。
いわしの事がもっと気になる方はこちらもチェック!
普段一番接する機会があるのは「マイワシ」だと思います。もう少しウルメいわしやカタクチいわしの詳細が知りたいと思われる方もおいででしょう。
「暮らし~の」のサイトの中にウルメいわしの食べ方や、カタクチいわしのあれこれに詳しい記事がありますので併載しておきますね。興味のある方はこちらもチェックして下さいね。
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