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お米の害虫「ノシメマダラメイガ」
米びつのなかに小さな幼虫を見つけてびっくりしたことはありませんか? それはノシメマダラメイガかもしれません。ノシメマダラメイガは刺したり毒を持つなどということはありません。しかし、放っておけばお米だけでなく、小麦粉や時にはお菓子など、さまざまな貯蔵物に食いつき、多くの食品を害しながらどんどん増えてしまう恐れもあります。生態や特徴を正しく知って、適切な駆除や予防などの対策をしましょう。
まずは次の項から、基本的な情報や和名の由来についてご紹介します。
ノシメマダラメイガの基本情報
英名と学名から分かること
ノシメマダラメイガというのはガの種類の一つで、英語では Indian meal moth といいます。インディアンミールはコーンミール(とうもろこし粉)のことなので、直訳すると「コーンミールのガ」です。この命名からコーンミールなどの食材に昔から発生していたのだろうと想像できます。また、生物の分類を表す命名法である学名(ラテン語)では Plodia interpunctella[Pyralidae]となります。Plodiaは属を、Pyralidaeは科であるメイガ科を指しています。
和名の由来
漢字ではノシメマダラメイガのことを「熨斗目斑螟蛾」のように書きます。熨斗目(のしめ)とは、着物の柄のひとつです。ノシメマダラメイガの翅(はね)の模様が熨斗目の柄に似ていることからこの名前になったといわれています。そのほかに、以前は、ノシメマダラメイガをノシメコクガ(熨斗目穀蛾)と呼んでいた時期もあるようです。
メイガの仲間
ノシメマダラメイガはチョウ目メイガ科に属しています。メイガの仲間は、農作物や米などの貯蔵穀類などを食害するものも多く、世界的にもメイガの種類のうちいくつかの種類は食品害虫として知られています。なかでも、もっとも有名な食品害虫のひとつがノシメマダラメイガです。同じようにして、穀類などの食べものに発生するガの種類として、ほかにはスジマダラメイガなどの種類も知られています。
次からは、6つの項目に分けてノシメマダラメイガの生態や特徴について詳しく紹介していきます。
生態1.ノシメマダラメイガの一生と寿命
発生頻度は1年に3~4回です。基本的には1年中発生しますが、最も活発なのは初夏から初秋にかけてのあたたかい季節です。夏ならば、卵から幼虫が孵(かえ)るのは数日で、22〜45日間は幼虫として米などを食べて成長します。その後はサナギとなり、1週間ほどで成虫へと羽化します。成虫としての命は1週間から2週間くらいです。寒い環境では成虫へ羽化することなく、幼虫の姿のままあたたかくなるまで眠ります。
生態2.ノシメマダラメイガの卵
【卵】色やかたち
卵は、大きさが直径0.4mm前後の楕円形をしています。色は乳白色です。お米をとぐためにお米を取り出したときなどに、生米のひとつひとつをよく見てみて、小さなツブツブがくっついる場合があります。また、生米をバッドなどに広げたときに白い砂のようなツブツブが混じっているかもしれません。そういうものを見つけたら、それはノシメマダラメイガの卵である可能性があります。
【卵】場所や周りの環境
親は、生まれてくる幼虫の餌として、米、小麦粉、そのほかいろんな食品のある場所を見つけ出し、食品の入っている袋やケースに上手に入り込んで産卵します。ちなみに、成虫は同時に200個近くもの卵を産みつけるといわれています。したがって、増殖速度が非常に速いため、対応が遅れるほどに駆除は大仕事になります。
生態3.ノシメマダラメイガの幼虫
【幼虫】色やかたち
孵化(ふか)した幼虫は脱皮を繰り返して大きくなっていきます。卵から生まれてすぐは体長2~3mmで頭部が茶褐色、胴体(腹部)は淡いピンク色やオレンジ色などをしています。蛹(さなぎ)になる直前には体長が10~12mmとなり、頭部は茶褐色のままですが、胴体は白っぽくなります。ただし、胴体の色は環境などによって変わります。
【幼虫】食性、発生環境
食害をするのは幼虫であるこの時期です。幼虫は小麦粉、米ぬか、米粉などの穀物の粉をもっとも好み、そのなかに紛れて生活します。しかし穀粉だけではなく、穀類や乾燥果実やコーヒー豆、クッキーやチョコなどのお菓子、資料やペットフード、調味料など、ありとあらゆる種類の食料を食べます。傾向としては、比較的油分の多い乾燥加工食品から発生することが多いようです。
【幼虫】特徴その他
アゴが強い
ノシメマダラメイガの幼虫は非常に強いアゴをもっています。生米を噛み砕いて食べるのはもちろん、お菓子やインスタント食品のケースを食い破ってなかに入り込むことも得意です。
フンが赤い
幼虫は赤色のフンをすることが特徴的です。ただし、赤い色のフンは、スジマダラメイガなども同じようにするため、赤いフンが見つかったというだけでノシメマダラメイガだと断定することはできません。
糸を吐く
ノシメマダラメイガの幼虫は糸を吐きます。その糸で米粒などの穀物を綴って巣のようなものを作ったり、表面に細かく糸を貼って覆ってしまう場合があります。
寒いとあたたかくなるまで休眠する
寒い場所や季節では、幼虫はサナギにならずに、自分の吐いた糸で体を覆ってあたたかくなるまで休眠します。環境が整ってあたたかくなるとサナギになり、その後成虫へと羽化します。
食べてしまっても害はない
ノシメマダラメイガの幼虫に気づかず、誤って食べてしまったとしても、これまでに健康被害の報告はありません。特定のアレルギーなどでない限り、健康面での問題はないと考えてよいでしょう。
生態4.ノシメマダラメイガのサナギ
【サナギ】色やかたち、発生環境
ノシメマダラメイガの幼虫はエサを食べて脱皮を繰り返したあと、通常生後22日から45日ほどでサナギとなります。穀物のなかに潜り込んだり、食品の箱の隙間や棚の後ろなど、狭い場所に入り込んで安全な場所選びます。サナギの大きさは8mm前後、色は黄褐色です。1週間ほど経たあとに成虫となります。
【サナギ】サナギは繭(まゆ)に覆われる
例外もありますが、ガの多くの種類ではサナギに変態する前に繭(まゆ)を作ることが特徴です。多くのガは、サナギの時期に達すると口から吐いた糸を上手に編んでからだを覆い小部屋を作ります。有名なのはカイコで、「絹(シルク)」とはカイコの繭から作られたものです。ノシメマダラメイガも繭を形成し、そのかたちは12mm程度の楕円形、色はおおよそ黄褐色です。カイコほどしっかりしてはおらず、なかのサナギが透けて見えるほどのものです。
生態5.ノシメマダラメイガの成虫
【成虫】色やかたち
サナギからガの成虫になるまでは1週間ほどです。成虫の大きさ(体長)は7~8mm、翅(はね)を広げると14mmほどになります。前翅の色は、根元側から順に、淡黄色、灰褐色、赤褐色です。色の境目はグラデーションではなくくっきりと分かれています。また、体の色は、頭部が紫赤色で腹部が灰白色です。
【成虫】場所や周りの環境
サナギから羽化したノシメマダラメイガの成虫はそこから出て飛び立っていきます。成虫は屋内だけでなく屋外でも生存できるため、オスとメスが出会い、交尾する場所はさまざまだと考えられます。交尾が済んだメスは卵を産むために、幼虫の餌になる食品を見つけるために飛び回ります。なお、寒冷な環境では活動できません。また、明るい場所は嫌う傾向があるようです。
【成虫】特徴その他
昆虫では時々あることですが、驚くべきことに、ノシメマダラメイガの成虫は餌を全く食べません。何も口にせずに1~2週間ほど生き続け、繁殖のみを行い、その生涯を終えます。もうひとつ意外性のあるところでは、ノシメマダラメイガを含むメイガの種類は、一般的なガのイメージと異なり、「光に誘引されない」という特徴があります。したがって、例えば夜間に蛍光灯に集まる、などということはありません。
生態からわかる対策 ① 発生の予防
【発生の予防】こまめな掃除
成虫が米や穀粉などに産卵することが発生の始まりです。例えば、米びつの周りに米ぬかが溜まっているとそこから発生することになります。そのため、定期的にスケジュールを組んで、棚からすべての食品を出し、こぼれ落ちた穀粉や、食品くずを拭きあげるなどして、こまめに掃除する習慣を作り、発生源のない状態を保つことが予防の第一歩です。
【発生の予防】密閉容器に保存
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ノシメマダラメイガの成虫が卵を産めないようにするためには、食品を保管してある場所をきれいに保つことに加えて、米や穀粉といった食品を、全く隙間のない容器に保管することが大切です。紙袋などではなく、密閉性の高い容器を用意することをおすすめします。また、振り掛けらるタイプの調味料容器の場合、外蓋が開いていると、振り掛け用の穴から虫が入り込んで中で幼虫が育つ場合もあるため注意が必要です。
【発生の予防】貯蔵期間を短く
ノシメマダラメイガの幼虫の餌となるような食品については、貯蔵期間を短くしてこまめに入れ替えることも大切です。例えば米びつであれば、大きなものではなく小さな容器にして、すべて使い切ってから新しい米に入れ替えるようにします。そうすれば、万が一ノシメマダラメイガが発生したとしても被害を最小限に抑えることができます。食材のストック品自体を容量の小さいものにすることも有効です。
生態からわかる対策 ② 駆除対策
【駆除対策】食材の廃棄と周辺の点検・清掃
保管してあるお米や小麦粉などの食品のなかに幼虫をひとつでも見つけたら、そこには既に多くのノシメマダラメイガの幼虫や卵が発生していると考えるべきです。名残惜しいかもしれませんが、ノシメマダラメイガを根絶したいと思うのであれば、その食品はすべて廃棄し、周りの食材もなかにノシメマダラメイガが入り込んでいないか点検しましょう。また、周辺の棚なども徹底的に清掃して駆除します。
【駆除対策】殺虫剤
清掃が終わったら食品棚に殺虫剤をスプレーしておくことで、さらに発生を抑えることができます。食品害虫用の殺虫剤には、安全性の高いもの(ピレスロイド系)、業務用などの殺虫殺傷効果の高いものなど、色々なものがあります。好みに応じて選ぶようにしましょう。場合によっては、廃棄した食品にも殺虫剤をスプレーしておくとよいかもしれません。
部屋のなかを成虫が多く飛んでいるような状況であれば、室内に充満するタイプの殺虫剤を使う方法もあります。ただし、食品の中に潜り込んでいるノシメマダラメイガを駆除することはできません。
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【駆除対策】フェロモントラップ
メイガの仲間は光に誘引されないため、ライトトラップで捕まえることはほぼできません。別の方法として、オスの成虫をよく捕獲できるフェロモントラップが市販されています。普段はなかなか目を向けることがないので気づきませんが、実はノシメマダラメイガは人の生活の暮らしのそばに普通にいるガです。ノシメマダラメイガが出現しているかどうかを知りたい場合は効果的です。
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まとめ
いかがだったでしょうか。ノシメマダラメイガの特徴や生態について詳しくご紹介しました。ノシメマダラメイガがお米や小麦粉などの食品を食害するのは幼虫の時期であることや、一度に卵を200個近く産むこと、成虫となり一般的なガの姿になってからは一切食べものを口にしないこと、光には集まらないことなどを知っていただけたかと思います。
正しい知識で害虫予防!
食品害虫は、よく生態を知り特徴をとらえることにより、発生の予防や駆除をより効果的に行うことができます。ノシメマダラメイガの場合は、卵を産みつけられるのを未然に防ぐことや、もし幼虫を発見したら周辺まで含めて徹底的に駆除することが大切です。ぜひこの記事を参考に、効率的にノシメマダラメイガの予防や駆除を行ってくださいね。
ノシメマダラメイガの正しい駆除・対策方法が気になる方はこちらもチェック!
本記事のほかにも、当サイト「暮らし~の」にはノシメマダラメイガなどの食品害虫の対策記事がたくさんあります。ぜひ参考にしてみてくださいね。
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