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頭が透明な深海魚「デメニギス」とは?その不思議な魚の生態や正体に迫る!

映画に出てくる怪物のような外見をした深海魚「デメニギス」は太平洋の北側に生息しています。存在が確認されてから既に約80年が経っていますがいまだ生態に未解明な部分が多い「デメニギス」。頭を覆う皮膚が透明で脳などが丸見えの魚「デメニギス」の正体について解説します!
更新: 2021年1月15日
石倉
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はじめに

異彩を放つ深海魚「デメニギス」

海底には多くの謎多き魚たちが生息しています。例えば、ヌルヌルの粘液で体を覆い保護している魚や、体全体をまるでクリアボディのように透明にしている魚など実にさまざまな特徴を有しています。そんな深海で暮らしている魚のなかでもとりわけ異彩を放つ魚が「デメニギス」です。

脳が透けて見える特徴的な魚

脳が外側から透けて見えるこの魚は、一見すると冗談のような外見をしていますが、過酷な深海で生活していくなかで、より長く生存できるように最適な形態へと進化した結果この姿に変貌したのです。今回「暮らし~の」では、この魚の謎多き正体について動画をまじえながら解説していきます。

頭が透明な深海魚「デメニギス」とは?

「デメニギス」の分類

分類 ニギス目デメニギス科デメニギス属
学名 Macropinna microstoma Chapman
英名 Barreleye
和名 デメニギス(出目似鱚、出目似義須)

ニギスの仲間である「デメニギス」。この科に属する魚は本種を含めても世界でたったの19種です。そのどれもが海域の深いところで暮らしている深海魚で、この魚も同科の仲間たちと同じく深海で暮らしていますが、日本でもときどき定置網にひっかかり漁獲されます。

なぜ「デメニギス」という名前なの?

皆さんは出目金(デメキン)をご存知でしょうか。筆者は子供時代によく縁日で金魚すくいをしたものです。金魚のなかでも目玉のぴょこんと飛び出た金魚、「出目金(デメキン)」は何としても掬い取りたい対象でした。

「デメニギス」の名前の由来は、出目金(デメキン)と同じです。ニギスのなかでも目玉が飛び出ているように見えることからこの名前が付けられました。

「デメニギス」の形態

「デメニギス」の形態は実に特徴的で、一度見たら夢に出てきそうな外見をしています。形態の尾に向けた後ろ部分は全体的に黒く、深海の暗所で姿を隠しやすいカラーリングをしています。ここだけを見れば、他の深海魚とそこまで差異は感じられませんね。

体長15センチほどの小さな深海魚

ただ、形態の頭に向けた前半部分はまるで透明なヘルメットを被った宇宙人のような外見をしています。脳がむき出しで何やら緑色の丸い物体が透けて見えるのです。ただ、この魚は体長にして15センチ程度と小型なので、まだ可愛げがありますね。

「デメニギス」の分布

この魚の分布は広く太平洋の北側、冷たい海流がある場所の水深400メートルから800メートルに分布しています。日本国内でも東北地方で稀に水揚げされる魚ですが、食用として流通はしていません。

頭が透明な深海魚「デメニギス」の生態

いまだ生態に謎多き深海魚

後述しますがこの魚は発見されてから既に80年ほどが経過しています。ただ、いまだに生態に未解明な部分が多く、謎多き深海魚として研究者らに熱い眼差しを向けられている魚なのです。今回は、そんな「デメニギス」の生態について判明しているところを解説します。


「デメニギス」の食性

この魚は主にクラゲなどを捕食しているとされています。あまり活発に泳ぎまわれる魚ではないため、深海にゆっくりと漂っているクラゲを捕食対象としているのです。

デリケートな「デメニギス」

「デメニギス」の生態がいまだ解明されない理由として、この魚が他の深海魚と比較してもかなりデリケートで発見してもすぐに命が尽きてしまうことが挙げられます。

すでに言ったようにこの魚は日本でも東北ではまれに水揚げされるのですが、頭の透明なヘルメット部分は水揚げされたときにもはやボロボロに損傷しているのがほとんどで、生きた個体を陸まで運べる機会はほぼゼロなので実態を掴むのが困難なのです。

頭が透明な深海魚「デメニギス」の特徴

「デメニギス」の頭の特徴とは?

この魚の頭部は透明なヘルメットのようになっています。頭のなかには緑色のまるで操縦席のような形状をした物体が2つ、横並びで存在し、その内側に黒い脳があるのです。この部分に生命活動に必要な全ての機能がぎゅっと詰まっています。頭部のなかはゼラチン質で満たされており、触れるとプルプルとした質感があるそうです。

「デメニギス」の目ってどこなの?

皆さんはこの魚の目がどこにあるのか分かりますか?頭部の前方、口の上に付いている2つの窪みがまるで目のように見えますが、実はこの部分は目ではなく鼻孔です。この魚の目は、透明なヘルメット内部に脳と一緒に格納されています。そう、あの緑色をした操縦席のような形状の物体こそ、この魚の真の眼球なのです。

「デメニギス」の目の特徴とは?

この魚の目には2つの機能があります。周囲を警戒しながら餌となる生物を探す「探索機能」と、餌を追尾しながら観察する「捕獲機能」です。深海魚は太陽光がほぼ遮断された暗い場所で暮らしているために視覚が衰えている種類も少なくありません。

そのぶんだけ触覚や嗅覚が発達しておりそれらの感覚に頼って生きている深海魚も存在します。古くは、この「デメニギス」もそんな特徴をもっているのではないかと誤解されていました。

「デメニギス」の目は可動式

この魚の目がまるで上方に固定された操縦席のような外見をしていることから、「深海から上方向のみしか視認できない魚」として誤解されてきたわけですが、生体で捕獲されることがほぼ皆無だったのも手伝ってなかなか真相が明らかにならなかったのです。

しかし、深海探査技術の発達によって生体の観察が可能になったことで、「デメニギス」の目が実は可動式で上方向から前方向、横方向にぎょろりと移動できることが判明しました。

「最高の眼」をもつ深海魚「デメニギス」

暗い深海で進化した魚は、その環境に適した形態へと体を作り変えていきます。この魚の場合は、海上からわずかに照らされる太陽光をより効率よく集光しながら、かつ餌の少ない深海で見逃すことなくクラゲなどを探せるように眼球を脳のある位置にまで後退させました。

一説によれば、クラゲの触手から保護するために皮膚内部に眼球を移動させたそうです。

機能性に優れた進化を遂げた

そして、グリーンの眼球を覆う部分を透明に変化させることでまるで全周モニターのようなサーチ機能を獲得したのです。一見、デタラメな形態のように思える「デメニギス」ですが深海魚のなかでもピカイチの機能性に優れた進化をした結果が今の姿だというわけですね。

頭が透明な深海魚「デメニギス」の発見

1939年に「デメニギス」の存在が確認された

この魚の存在が最初に確認されたのは1939年のことです。漁師の網にかかっていた摩訶不思議な形態をした魚が当時の学者らを驚かせました。ただ、網にかかった「デメニギス」は頭部が著しく損傷しており、生体時の姿とはかけ離れたボロボロの個体しか研究対象にできなかったのです。


2004年にようやく生体の観察に成功する

この魚を取り巻く状況が一変したのは2004年のことです。アメリカで行われた深海無人探査機による調査の結果、生体の「デメニギス」を初めて映像として観察することに成功しました。ここで、脳を含めた眼球などの器官が透明な皮膚で覆われているこの魚の全容の一端を解明できたのです。

2009年にモントレー水族館が成果発表

その後、同じくアメリカのモントレー水族館が生きた健康な「デメニギス」の観察を継続し、得られた成果を発表しました。もともと、「眼球は固定されており上方向しか視野がない」とされていたこの魚が、実は眼球を自由に動かせる魚であり、深海魚のなかでもトップを争うほどの広い視野をもっていることが証明されたのです。

頭が透明な深海魚「デメニギス」の動画

研究機関が発表した「デメニギス」の動画

2009年に研究機関から世界に向けて発信された「デメニギス」の生態についてまとめたレポートと動画は、強い衝撃とともに人びとの間で広まりました。「こんなエイリアンのような魚が本当にいるのか?」と、その存在すら疑問視していた方たちも実際に泳いでいる姿を動画で確認すれば、この魚の存在を認めざるをえなかったのでしょうね。

「デメニギス」はクラゲの餌を盗み喰う?

動画にて研究者は「デメニギスはクダクラゲの餌を横取りする」といった発言をしています。前述したように、この魚は主にクラゲを食べるとされていますが、実はクラゲだけでなくクラゲに絡まった小魚をも狙って盗み喰いをしていたというのです。深海の過酷な環境で生き抜くためには盗み喰いもやむなし、ということでしょう。

動画に出てくる「クダクラゲ」とは?

クダクラゲは一般的な「クラゲ」のイメージとは違う形態をしています。皆さんがイメージするクラゲはおそらく円盤のような形態をしており傘の下には無数の触手が伸びているのでは?

クダクラゲは丸みを帯びた形状ではなく細長い線のような形状をしています。深海を含めたいろいろな海域にさまざまな種類が生息していますが、今回はそんなクダクラゲの一種を映した動画を1つご紹介します。

頭が透明な深海魚「デメニギス」って食べられるの?

実際に「食べた」という話はまだない

存在が確認され、その特徴まで少しずつ解明されてきた「デメニギス」ですが、発見からすでに約80年が経とうとしているにも関わらず実際に「食べた」という話はまだありません。そもそも漁獲されることも少ないですし、もし漁獲されたとしても貴重なサンプルとして調査されますのでまだ「味」の評価をする段階にはないのかもしれませんね。

「デメニギス」はおそらく食べられる?

ただ、この魚は分類学上でいえばニギスの仲間です。ニギスといえば広く世界中で食用として愛されている深海魚ですよね。日本でも一般の鮮魚店などで安く手に入る人気の食材です。

深海魚のなかには「アブラソコムツ」のように食用が禁止されている有害な種類もありますが、研究機関によって解剖された結果、この魚には毒などは確認されなかったそうなので、「食べて食べられないことはない」というのが現時点での「味」の評価なのでしょう。

頭が透明な深海魚「デメニギス」を見られる水族館

日本で「デメニギス」を見られる水族館は?

結論からいえば、日本国内の水族館ではまだ「デメニギス」は見られません。深海魚を多く展示している静岡県の沼津にある「沼津港深海魚水族館」でも、この魚はいまだ展示されていません。

ただ、同水族館ではこの魚についても把握しており、ブログ記事でも言及されているため、近い将来展示される可能性はありますので、気長に待つのがよいかもしれませんね。


頭が透明な深海魚「デメニギス」に関するTwitter

「デメニギス」についての口コミをご紹介!

見る者を絶句させるほどの見た目をもつ魚が世界には何種類いるでしょうか。リュウグウノツカイなど特徴的でユニークな魚は多いですが、「言葉を失う生き物」として順位をつけるのなら「デメニギス」に勝るものはそういないでしょうね。

「かわいい!」と口コミで評判の深海魚

ただ、そんな摩訶不思議な魚「デメニギス」も一部の方には好意的に受け止められているようです。一見、眼に見える2つの窪みは鼻孔なのですが、何とも力の抜ける顔つきに見えてしまいますね。まさか、緑色の部分が眼球だとは初見ではまず見抜けないでしょう。

まとめ

脳まではっきり見える「デメニギス」の真実

見えてはいけないところまで、はっきりくっきりと表に出している「デメニギス」はいまだ生体で捕獲されている数が少なく、繁殖方法などの実態について未解明なところが多い魚です。まだ水族館には展示されていませんが、もしも展示されることがあれば足を運んで実物を観察してみたいですね!

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当サイト「暮らし~の」には、他にもユニークで少しグロテスクな深海魚についてまとめた記事がたくさん掲載されております。今回はそれらの記事のなかから特におすすめできる2記事をピックアップしておきました。「デメニギス」に負けず劣らずの面白い魚について知りたい方は是非チェックしてください!