オンデンザメってどんな魚?
深い海の底には、普段私たちの目では見られない未知の生物がたくさんいます。その中のひとつにオンデンザメという魚がいます。このオンデンザメ、何がすごいのかというとその巨大な大きさです。また、何やら寿命もものすごいことになっているとか。知られざるオンデンザメの生態について見ていきましょう。
オンデンザメ/分類
オンデンザメはツノザメ目オンデンザメ科に属するサメの仲間です。同じツノザメ科の魚の仲間には貴重な資源となる「アブラツノザメ」や「ダルマザメ」がいます。ツノザメ科の仲間は深海生物であることが多いです。オンデンザメも、まさしくそのとおりで深海に住んでいる魚類です。
オンデンザメ/学名
一方、オンデンザメの学名はというと「Somniosus pacificus」と付けられています。Somniosusとはオンデンザメ科の魚全体を意味している言葉で、pacificusはその生息する地域のこと。少し強引に日本語に訳するとすると、「太平洋深海に住むサメ」といった感じの学名になるでしょう。
オンデンザメ/外国名
オンデンザメの英語名は「Pacific sleeper shark」。太平洋の眠れるサメという意味となります。これはオンデンザメが深海に住むサメで未知な部分が多いことからこのような名前がついたのでしょう。
日本語名もチェック
生き物の名前の中には、しばしば英語名の訳を知ると日本語名とマッチしているものも見られます。オンデンザメの英語名と日本語名(漢字名含む)はどうでしょうか。続けて、オンデンザメの日本語名とその名前の由来をご紹介していきます。
オンデンザメ/和名・由来
魚にも日本語(漢字)の名前がつけられているものも少なくありません。オンデンザメもそうです。オンデンザメを漢字で書くと面白いことが見えてきます。オンデンザメの漢字名は「穏田鮫」。穏田とは農民が年貢に取られないようこっそり栽培した米のこと。また徳島県では彼岸花のことを「オンデン」と呼称します。この彼岸花からオンデンザメという名前がついたという説もありますが、真意は定かではありません。
英語名と似ている
穏田鮫にしても英語名のPacific sleeper sharkにしても、深海の魚であるオンデンザメの未知な部分を強調した謎の多い鮫という意味が強くあらわれています。
オンデンザメ/生息地域・分布
オンデンザメが確認されている地域、生息している地域は名前の通り太平洋です。その中でも寒冷地方の深度2,000mくらいまでの深さで確認できています。しかし、太平洋の中でも特に寒い海水の地域では、時折海面まであがってきていることもあり、しばしばオンデンザメが船の上から肉眼で確認されています。
分布
オンデンザメの分布は、日本、メキシコ(バハ・カリフォルニア)からベーリング海にかけてとなっています。
オンデンザメ/大きさ
ここまで、オンデンザメの名前の由来や生息地帯などをご紹介しました。そこでも、オンデンザメが深海に住んでいること、その生態などはわからない部分が多い謎の魚であるということは、チラリと垣間見えていました。しかし、未知なことが多いオンデンザメでも、特に特徴として注目されている部分がその大きさです。
確認ずみは4m
これまで捕獲されて確認されているオンデンザメの最大の大きさはオスのオンデンザメで440cm。メスのオンデンザメで430cmとなっています。これは捕獲できて、その大きさを測れたもののみの大きさです。深海カメラなどに映し出された巨大なオンデンザメの推定体長は700cmに及ぶものもいます。
成熟体長でも3.7m
最大体長であったり、カメラ越しの推定だけだと「その個体だけが特別大きかったのでは?」と思われる人もいるでしょうが、オンデンザメの成熟体長は370cmほど。どのオンデンザメも大人になると4m近くまで巨大な体になることがわかっています。7mの巨大な個体はさすがに特別な大きさといえるでしょうが、捕獲された最大体長は「普通よりも少し大きな個体」程度であるということが驚きですね。
オンデンザメ/生態・生育環境・寿命
オンデンザメは時おり海面近くまであがってくることがあっても、普通は2,000mまでの深海に住むといわれている魚です。サメや深海の生物を研究している学者でもまだまだ把握しきれていないことも多い謎多きサメです。その中でもわかっているオンデンザメの生態、寿命などをご紹介していきましょう。
食べ物
オンデンザメはその体の大きさから、非常に大食いの魚であることがわかっています。口に入るものは何でも食べるといわれています。魚、タコ、カニやエビなどの甲殻類はもとより、イルカや小さなクジラなどの海洋哺乳類の類も食べてしまいます。捕食するものの生死は問いません。それが死体であっても口に入ればオンデンザメの食べ物なのです。
深海の王
普通の個体でも400cm近くまで成長するオンデンザメは、その攻撃的な性格からまごうことなき深海の王として君臨しているでしょう。人以外には敵がいないとまでいわれています。
寿命
深海の王オンデンザメは、どうしてこのように巨大な体になるかというとその寿命も大きく関わってきます。オンデンザメの成長は非常にゆるやかで、生まれてから成体になるまで150年かかるといわれています。オンデンザメと近い仲間のニシオンデンザメの研究で500cmの巨大な大きさになるまで400歳プラスマイナス100歳程度必要と言われていますので、何百年という単位で生きている生物であると考えられています。
生殖
生態の中でも興味深いオンデンザメの生殖。これについては、どのような形でオンデンザメが増えるのかまだわかっていません。学者の研究では、おそらく母親の体の中で育ち生まれる「胎生」で繁殖する生き物であると考えられています。
オンデンザメ/その他特徴
形態
ここで、普通のサメと比べてオンデンザメにはどのような特徴があるのかご紹介します。オンデンザメの姿は流線型でよくあるサメの形となっています。体の色も濃い目のグレー。このあたりも一般的なサメの仲間のイメージとあまり変わりないでしょう。
深海生物の特徴
オンデンザメに限らず、深海に住む生物の体はやわらかくプニプニとしているものが多いです。オンデンザメの体もその特徴があらわれています。オンデンザメの肌は一般的なサメと同じく鮫肌でザラザラしていますが、その柔らかさは深海生物のそれとなっているのが面白いところです。
ダルマザメの攻撃
オンデンザメと同じく深海に住むサメの仲間に「ダルマザメ」がいます。こちらはオンデンザメと比べて体長もそれほど大きくならず、300mmから500mm。オンデンザメの1/10程度の大きさしかないサメですが、オンデンザメはこのダルマザメからよく攻撃を受けているようです。ダルマザメの攻撃の跡とみられる傷があるオンデンザメも珍しくありません。
オンデンザメは食用になるの?
体長が400cm以上になるオンデンザメ。もし、食べられるとすると大量の肉が取れて良さそうですね。しかし、オンデンザメが何かのタイミングで漁師の網に掛かったとしても、食用にされることはなくほとんどは廃棄されてしまいます。
アンモニア臭
オンデンザメに限らず、サメの仲間は死後しばらくたつとその肉からアンモニア臭がひどく立ち込め、とても人が口に入れて「美味しい」と感じることはできなくなります。このこともオンデンザメが食用にならないことの大きな理由となります。死後すぐに処理すればサメの死肉のアンモニア臭は防げますが、そこまでして食べたいと思うような美味しい肉ではないようです。
肝油の原料
肝油という食べ物をご存知でしょうか。ラグビーボールのような形をした小さな健康補助食品で、戦後の子どもたちの栄養補給として食べられていました。成長期の子供の体に良い食べ物として昔は小学校でも注文を取って販売する業者もいましたが、最近はあまりポピュラーな食べ物ではありません。オンデンザメの肝臓からは、この肝油の原料となる脂が取れます。オンデンザメを食品として使用するのはこの肝臓の脂くらいでしょう。
オンデンザメの飼育
とても謎に満ちたオンデンザメに興味を持たれた人もいるでしょう。では、生きたオンデンザメをダイバーではない人たちが見ることができる場所はないのか・・・というと、世界でただ1つ、それも日本にオンデンザメを飼育している水族館が存在していた事実がわかりました。
沼津港深海水族館
沼津港深海水族館では、2015年3月に少しの間だけオンデンザメを飼育、展示していたことが水族館のブログで好評されています。飼育員のブログによると、そのオンデンザメ体長は1.7m程度。まだ未成熟な個体であったということ。もし成体まで飼育できていたとすると飼育員が何世代にも渡って世話をすることになっただろうという感想なども添えられていました。
剥製展示
沼津港深海水族館のオンデンザメ飼育・展示は、たった7日間でオンデンザメが死亡したことにより終わってしまいました。現在では生きたオンデンザメを見ることはできませんが、沼津港深海水族館ではそのオンデンザメを剥製にして今でも展示・公開しています。生きていないとしても、オンデンザメの実物を間近でみたいという人はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
深海に住むとっても長寿で巨大なサメの仲間「オンデンザメ」の生態をご紹介してきました。深海にはこのように私たちの知らない大きくて未知な部分が多い魚も多くてとても興味深いものですね。生きたオンデンザメは見ることはできませんが、剥製なら展示されている水族館があります。休日にお子さんと一緒に大きなサメの剥製を見にいき、ここで知ったウンチクを話してあげると楽しい時間が過ごせるのではないでしょうか。
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