はじめに
花粉は人類の天敵
目が真っ赤に腫れあがり、鼻水が止まらなくなる花粉症は本当に辛いものです。ときには症状に悩んだ結果、うつ病などの精神疾患を発症して日常生活すら困難になる方も。アレルギーの原因となる花粉は現代を生きるわれわれにとってはもはや天敵と呼べるほどの存在です。
外来特定法とは
ところで、外来特定法という法律をご存知でしょうか?日本在来の動植物に著しく悪影響を及ぼす外来種を「特定外来生物」と定義して、厳重に取り締まるという内容の規定です。
ブタクサをご紹介!
今回ご紹介するブタクサは、この法律によって指定されている特定外来生物なのです。風によって花粉を飛散させ、多くの人たちに地獄の苦しみを与える草、ブタクサについてご説明しましょう。
ブタクサってどんな草?
ブタクサってどんな性質の草なのか
ブタクサが多くの人たちを苦しませるアレルゲンとなる存在であることは、ほとんどの方がご存知なのではないでしょうか。しかし、実際にブタクサってどんな草なのでしょう。ブタクサってどんな形状で、どんな生態を持っているのでしょう。
敵を知り己を知れば
「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」と、大陸の故事にも記されています。ブタクサの症状などに言及していく前に、まずブタクサってどんな性質をもつ草なのか。そもそも由来はどこなのかを簡単に見ていきましょう。
キク科ブタクサ属の一年草
ブタクサはキク科、ブタクサ属の植物で、生態としては一年のみ花を咲かせてそのまま枯れていく一年草です。野原で自生しているブタクサは、その年かぎりで散っていきその一生を終えます。もちろん、花粉を飛散させて次代の子孫を残したあとで枯れていくわけですが。
背丈は4歳児の身長とほぼ同じ
ブタクサの長さは成熟したものでおおよそ100センチ前後にまで生長します。100センチというと、4歳児の身長とちょうど同じくらいの高さですね。自生する野草のなかではそれなりの丈があります。
黄色い花を咲かせる
ブタクサの花は黄色く、そして細かいのが特徴です。ブドウの房のように連なって3ミリほどの小さい雄花が密集して咲き乱れます。そして、雄花の下には同じく黄色いカラーの雌花が数個咲きます。
細かい切れ込みが入った葉
ブタクサの葉は細かく切れ込みが入っておりヨモギの葉に似た形状をしています。ヨモギは催事などで和菓子の材料として利用される草ですが、素人目にはブタクサとヨモギの葉を正確に見分けるのは困難でしょう。開花時期になれば簡単に見分けることが可能です。
ヨモギってどんな草?
ヨモギはブタクサと同じくキク科の植物で、薬用としても利用されるほか、食べる用途でも利用される大変有用な草です。ただ、ブタクサと違ってこの草は「多年草」、すなわち年をまたいで生育する植物。そして、残念なことにヨモギもブタクサと同じく花粉症を引き起こす草として知られています。
セイタカアワダチソウってどんな草?
ヨモギをご紹介したついでにもう一つ、「セイタカアワダチソウ」についても簡単にご説明しましょう。
セイタカアワダチソウは無害な草
この草はヨモギ以上に見た目がブタクサとよく似ており、少し前ではブタクサと同じく人体に悪影響のある植物であると誤解されてきましたが、実は花粉を飛散させない品種で人に対して悪さをしない草なのです。葉の形がブタクサよりも尖っており、そこが両種を見分ける特徴とされます。
ブタクサの名前と花言葉
ブタクサは漢字で「豚草」
ブタクサは漢字で表記すると「豚草」と書きます。そのままですね。この草の名前の由来は諸説存在します。
「ホッグウィード」は英語圏での俗称
もともと、英語圏でこの草はホッグウィードという俗称で呼ばれており、その名前をそのまま直訳して豚(ホッグ)草(ウィード)と名付けられたのですが、そもそもなぜ英語圏の方たちが、この草を指してホッグウィードと呼称していたのかは定かではありません。
名前の由来には謎が残る
家畜としていた豚がこの草を好んで食べるからだとか、豚の生息地である野原によくこの草が自生しているからだとかもっともらしく聞こえる説は多数存在しますが、断定できるだけの情報はまだ出ていません。
ブタクサの花言葉
古今東西、花を咲かせる植物には「花言葉」が存在します。このブタクサも例に漏れずきちんと花言葉が付けられています。
「幸せな恋」
ブタクサの花言葉ってどんなワードが思い浮かぶでしょうか。この草に苦しめられている方にしてみれば「試練」だとか「苦難」だとかネガティブな言葉が頭をよぎることでしょう。ブタクサの花言葉は「幸せな恋」と「よりを戻す」です。
花だけを見れば納得の愛らしさ
花だけを見れば確かに結婚式で花嫁が手に持っていても不思議ではないほど明るい色彩をした可愛らしい形の植物ですから、確かに納得できないこともないのかもしれませんね。
ブタクサの由来
ブタクサの由来は北アメリカにある
ブタクサはもともと日本には自生していない植物でした。この草の由来をひも解くと明治の初期にまでさかのぼります。もともとの原産地はアメリカ大陸の北部で、そこから観賞用や農業用、緑化のためになどなど、さまざまな用途でオーストラリア、ヨーロッパ、そしてアジアへと伝播されていきました。
マッカーサーの置き土産
この草が日本の大地に根をはりだしたのは明治の初期ですが、本格的に数を増やし始めたのは1945年、すなわち第二次世界大戦の終結後とされています。そのため、「GHQ・マッカーサーの置き土産」などと吹聴する輩が出るほどです。
繁殖力旺盛なブタクサ
ただ、この草自体がそもそも繁殖力旺盛で水面下でじわじわと個体数を増やしていく品種なのでマッカーサーがどうのというわけではなく、明治初期に流入してきたブタクサが自然と生息地を拡大した結果というだけの話なのでしょうね。
ブタクサの生息地
広範囲に生息する
現在のブタクサは、世界全体で見ればまず原産地の北アメリカはもちろん、オーストラリアやヨーロッパ、アジア諸国などを広く生息地としている品種です。
場所を選ばず根をはやす草
この草は温帯から熱帯の気候に適応でき、一年草で冬には枯れますが次の世代に種子を残して繋いでいくので寒期がある国でも生き延びられます。環境適応力が大変強い品種ですので、基本的に生息地の気候や状況に対応して繁殖していきます。
持ち込み禁止とする国もあるほど
国によってブタクサは入国の際に持ち込み禁止とされるほど。身近なところでは韓国などがブタクサの国内流入を厳しく取り締まっていますね。
国内では北海道から沖縄まで
日本もまたブタクサの生息地として数えられる国の一つです。日本ではもはやブタクサの目撃されない都道府県はほぼ皆無と言えるまでに定着しています。ただ、局所的に見れば、ブタクサの見られない市や町、村が存在するかもしれません。
花粉を飛ばして繁殖する植物
ブタクサは風で花粉を飛散させて種を残すタイプの植物です。ただ、スギなどと違ってあくまで背丈の低い草なのでそれほど遠くまで花粉は飛散しません。そのため、風の届かないような離島であればブタクサが生えていない場所がまだあるかもしれませんね。
野原や河川敷で根をはる草
日本国内では主に農地や荒地、野原や河川敷などで広く目撃される草です。先述したヨモギもブタクサと同じような場所で生息している植物なので、探せばこの両種が並んで生えているところがあるかもしれません。
ブタクサの花粉飛散時期
花粉の飛ぶ時期は7月~10月
ブタクサの花粉飛散の時期は、この草が花を咲かせる時期と密接に関係しています。この草が黄色い可愛らしい花を付けるのは7月から10月です。夏から秋にかけて、花粉による症状のためマスクをしている方が増えるのはそのためですね。
8月が特に飛散量が多いとされる
特に花粉が多く飛散するのは8月の夏まっさかりの頃だとされています。この時期はブタクサにとっても繁殖期。一年でその生涯を終えるブタクサが次の年に子孫を残すために、たっぷりと花粉を飛散させる時期です。
温暖化の影響で
花粉飛散時期は秋まで続きます。近年の温暖化の影響からか秋の終盤、11月にまで飛散時期がずれ込むことがあります。また、毎年の個体性質によって花粉の量が変わってくるので、特に繁殖欲が旺盛なブタクサの世代に当たりますと12月まで花粉が残ることも。
ブタクサのアレルギー症状.1
一般的な花粉症の症状
ブタクサの症状は他のスギやヨモギの例と類似しています。まず、セキがでます。そして、鼻水に鼻づまり。くしゃみがとまらなくなるといったことが起こり、さらに目が真っ赤に充血してかゆみが出てきます。
風邪とよく間違えられる
症状が風邪によく似ているため、初めてブタクサの症状が出た方はよく勘違いをしてしまいますね。病院で診断をして判明し、ショックを受ける患者さんが毎年必ず出てくると言われるほどです。
ブタクサ花粉で特に注意すべき症状
ただ、ブタクサ花粉の症状として特筆すべき事柄が二つ存在します。それは、「ぜんそく」と「口腔アレルギー症候群」です。
ブタクサ花粉によるぜんそく
まず、ぜんそくからご説明しましょう。ぜんそくはセキがとまらなくなるほか、呼吸するたびに「ひゅーひゅー」と乾いた空気音が鳴り息苦しさを覚えるなどの症状が出る病として知られています。
他の植物の花粉より危険性が高い
ブタクサはこのぜんそくを誘発しやすい草として医師より注意喚起されるほどの植物です。ちなみに同じく花粉による症状を引き起こすことで知られるスギの花粉は、ブタクサの花粉ほどぜんそくを誘発する効果はないとされています。この理由は、ブタクサ花粉の粒の大きさにあります。
細かな花粉の粒子が気管支に
この草の花粉はスギのものの半分程度の大きさしかありません。ブタクサの花は数ミリ程度の細かい花で、そこから飛散する花粉も当然、ごくごく細かな粒子状をしています。そのため、人が吸い込んだ場合には簡単に気管支に入り込み、ぜんそくを誘発するのです。
別名「ぜんそく草」
そのため、ブタクサは別名「ぜんそく草」と呼称されるまでになっています。鼻がつまり、鼻呼吸ができなくなると自然と口で呼吸する機会が増えますね。結果、口からダイレクトに気管支にブタクサの花粉粒子が入り込み、余計にぜんそくの症状が出やすくなるのです。
ブタクサのアレルギー症状.2
ブタクサ花粉による口腔アレルギー症候群
もう一つ、ブタクサ花粉について注意したい症状が存在します。それは「口腔アレルギー症候群」です。そもそもアレルギーとは、人体に入り込んできた異物に対するもともと人が持っている免疫機能の過剰反応で引き起こされる症状です。
普段食べる「あるもの」と同じ構造
ブタクサ花粉のアレルギー症状も同じく、異物(花粉)に対する人体の免疫機能の過剰反応に由来しています。ただ、厄介なことにブタクサの花粉を顕微鏡で観察したときの構造はわれわれが普段食べる「あるもの」の構造と非常に類似しているのです。
フルーツなどを食べる際には注意!
それは「フルーツ」「野菜」「ナッツ」などです。これらの食品はブタクサの花粉がもつアレルギー物質の構造と酷似した性質を持っているため、もしもブタクサに苦しめられている方がこれらのものを食べると、体が「あ、ブタクサ花粉がきた!攻撃しないと!」と誤認して過剰反応を起こす場合があるのです。
食べると体に異常が
これが「口腔アレルギー反応」と呼ばれる症状で、フルーツなどを食べると口のなかがピリピリと痺れたり、のどがイガイガとしたり、あるいは顔がむくんだりといった異常が生じます。
ブタクサアレルギーの方は要注意!
特に酷くなりますと、じんましんが体のいたるところに出てきたり、呼吸するのも困難な状態になったり、果てはアナフィラキシーショックを起こして昏睡状態に陥る可能性すらありますので、ブタクサに苦しめられている方は注意が必要です。
ブタクサの花粉対策
花粉対策は「手洗い」と「うがい」から
対策としては、まず手洗いとうがいが重要です。帰宅後にはまず衣服についた花粉を払い落としてから屋内に入るようにし、そして手洗いとうがいをしてできるかぎり花粉を体から取り除きましょう。
処方薬による対策も効果的
そして、マスクや処方された薬を服用すること。これも他の花粉症対策と同じですね。ブタクサ花粉症は患者数の多い症例です。アメリカでは人口の10パーセント以上がブタクサ花粉症を発症していると言われるほどのメジャーな症状ですのでマスクや薬もどんどん改良されています。
ブタクサ花粉に特に効果がある対策
さらに、ブタクサ花粉特有の対策として、ブタクサの生息地からできるかぎり離れることが効果的です。スギなどの花粉飛散距離の長い品種では逃れようがない場合がありますが、この草の場合には花粉の飛散する距離はごくごく短いのです。そのため、ブタクサが花を咲かせて繁殖する7月から10月の間は、野原や河川敷などからできるだけ離れて生活しましょう。
自宅周辺のブタクサは先に除去
自宅の庭先などに生えるブタクサは開花時期の前、すなわち、6月までに除草剤などで駆除しておくのが効果的です。一年草なので、その年の代を駆逐できれば他の生息地から飛散してこないかぎり、もう自宅にこの草が根をはることはありません。
まとめ
花粉症は本当に辛い
花粉症は本当に辛いものです。ブタクサをはじめスギやヨモギなど、アレルギー症状を引き起こす植物はいろいろ存在します。それらの草に悩まされている方たちにとっては、花粉飛散の時期は本当に、外出するのが恐怖に感じてしまうほどですよね。
万全の花粉対策を
ただ、ブタクサをはじめそれらの草のもつ性質や花粉飛散時期をあらかじめ知っておけば、多少なりとも余裕が生まれることでしょう。毎年訪れる苦難の時期を、何とか乗り切ろうではありませんか。
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