鶏糞とは
鶏糞とは読んで字のごとく鶏の糞を肥料にしたものです。野菜が生育するためには栄養が必要ですが、野菜が吸い上げることでどんどん土の中からなくなっていきます。そこで肥料を与えることで栄養補給してやる必要があります。
鶏糞には野菜の栄養となる窒素、リン酸、カリウムがすべてバランスよく含まれているので堆肥としてよく利用されています。
鶏糞の歴史
鶏を飼う養鶏の歴史は古く、紀元前にまでさかのぼります。はるか昔から人類は鶏の肉を食べたり、卵をとったり、または時を告げる鳥として鶏を飼ってきました。
同時に鶏糞も昔から利用されてきました、草や木の実などを食べた鶏の糞をまた土に戻すことで循環することを昔から知っていたんですね。現在の鶏糞は養鶏場で作られたものがほとんどですが、有機堆肥を使うことで自然の中の循環にかかわることができますね。
鶏糞の種類
発酵鶏糞
鶏の糞はそのままでは鶏の排泄物と栄養素と微生物が混ざり合った状態です、これをしばらくおいて発酵させたのが発酵鶏糞です。発酵鶏糞はさらっとしていてそのまま畑にいれることができます。発酵することで微生物により鶏の糞が分解されているので、すぐに栄養として効果があります。
乾燥鶏糞
乾燥鶏糞は鶏の糞を乾燥させたものです。粉状になっていて、そのままの糞よりもにおいが少ないです。乾燥鶏糞は乾燥させただけなので発酵していません、土にいれてから発酵が始まるので効果が出るのが遅い特徴があり、発酵が進むにつれてにおいがきつくなります。
鶏糞ペレット
鶏糞をペレット状に固めた肥料が鶏糞ペレットです。高温で処理することでペレット状に加工しています。粒状なので使いやすいのが特徴で熱を加えて作ってあるのでにおいが少ないのが特徴です。ペレットに固めるために完熟していないので使うタイミングには注意が必要です。
鶏糞の成分
鶏糞には窒素、リン酸、カリウムといった野菜の肥料に欠かせない成分が含まれています。これにより鶏糞は野菜の成長に効果があり、元肥・追肥どちらでもつかうことができます。
鶏糞はほかにカルシウやマグネシウムといった成分も含みます。有機堆肥なので割合にばらつきはありますが、肥料に必要な成分はバランスよく入っていますね。また化学肥料を使いたくない方には有機堆肥である鶏糞はおすすめです、肥料の効果もよく出ます。
野菜の種類に注意
野菜でもマメ科の野菜など窒素が少ない方がいい野菜があります。マメ科の植物は根粒菌という菌と共生していて、根粒菌がマメから水分を受け取る代わりに窒素作り出す関係にあります。このため窒素が多いと実をつけないつるボケになってしまいます。作る野菜の種類に合わせた肥料選びをしましょう。
鶏糞の特徴
栄養成分のバランスがいい
鶏糞は栄養成分のバランスがいい堆肥です。栄養成分のもととなるのは鶏の食べたエサの未消化分で、鶏は食べたものの吸収率が悪く70%ほどです。これが糞となり菌と混ざって発酵することで堆肥となり、栄養分を残したまま肥料になります。食べているものの種類により成分は少し変わりますが、基本的にはどんな鶏糞でもほとんど同じです。
肥料の効果が早い
鶏糞は効きが早いとはよく言われ、昔から肥料としてよく使われてきました。中には化学肥料よりも早く効くという方もいるぐらいです。それは肥料に必要な成分が入っているからです、いろいろなものを食べる鶏の消化しきれなかった分が菌に分解されています。
昔から鶏の糞を堆肥にすることで窒素やカリウム、リン酸などの物質を循環させてきました、鶏糞には昔からの知恵が詰まっています。
鶏糞の注意点
いろいろな栄養素が入っている
鶏糞は鶏の糞から作った有機堆肥なので微量ながらいろいろな成分が入っています。一般的な鶏糞は飼育されている鶏の糞です。鶏は卵をとるためにブレンドされた餌を食べています、これが排泄されて栄養分になっています。
種類や量によりばらつきはありますがマグネシウムやカルシウムなどの成分を含んでいます。野菜には肥料として効果がありますが、与えすぎは肥やけを起こしやすいので量を考えた使い方をしないといけません。
未発酵鶏糞に注意
鶏は鳥類なので牛などの哺乳類とは消化と排泄のプロセスが違います。特に排泄は尿と糞を同時にしています、尿には窒素が多く含まれるので鶏糞には窒素が多くなり即効性が高くなります。未発酵鶏糞は尿に含まれる尿酸がまだ分解されていない状態です。
土にいれることで発酵が始まりますが、においや熱を発するので注意が必要です。初めて使う場合で肥料としてつかうのであれば完熟した鶏糞を選んでください。
牛糞との違い
牛糞の特徴
牛糞は土をふかふかにする効果があるとよく言われます。完熟した牛糞はにおいもなくさらさらした土のような状態になっています。これを土に混ぜておくと土がふかふかになり、いわゆる団粒構造に近くなります。牛糞は鶏糞よりも栄養素は少ないですが、土壌改良の目的や元肥として使うのに適した堆肥です。
鶏と牛の違い
鶏と牛はまず食べているものが違います。鶏はなんでも食べ消化しきれない分の成分が肥料になっていると説明しました。一方牛は草をたべます、草を反すうしながらゆっくり消化していきますが草の繊維質は残ります。
この繊維質が土の間に入り隙間を作ることで、牛糞は土をふかふかにする効果があります。また牛は草だけを食べるので鶏糞に比べて牛糞は栄養分が少ないです、鶏糞のように肥料の強い効果は期待できません。
鶏糞と牛糞の使い分け
昔からいろいろな家畜を飼いながら、その堆肥も利用してきました。鶏糞と牛糞は使うタイミングを分けて適切に使いましょう。鶏糞は元肥でも追肥でも使えます、栄養分は多いので使う量を使いすぎないように使って野菜を大きく育てましょう。
牛糞は土壌改良や元肥に向いています、土をふかふかにする効果は鶏糞にはありません。土づくりの段階で牛糞を使用してふかふかの土を準備しておきましょう。
元肥と追肥
元肥とは
元肥は「もとごえ」と読みます。野菜の植え付けの前に土に施す肥料のことで、他に基肥(きひ)や原肥(げんぴ)と呼ぶこともあります。野菜の種類により土に入れる方法が違い、土全体に入れる全面施肥、溝状に土を掘ってそこへ肥料を入れる溝施肥があります。
野菜の種類により根の広がり方が違います、地表近くに根が広がる種類の野菜には全面施肥、栽培期間が長くなる種類の野菜には溝施肥が向いています。
追肥とは
元肥は野菜の成長に必要な栄養を土に施しますが、それだけでは足りないので追加する必要があります。これが追肥で「ついひ」と呼びます。野菜の種類に関わらず必要な肥料の総量は決まっていて、肥料を与えれば与えるだけ収穫できるということはありません。
さらに一度に必要なすべての量を与えても効果が出ません、そこで追肥として段階的に与える必要があります。
鶏糞の使い方
元肥でも追肥でも使える
野菜の成長に必要な肥料ですが、鶏糞は元肥にでも追肥にでも使えます。ただし鶏糞は完熟でない場合、土に入ってから発酵が始まるので効果がでるのが遅くなります。肥料を入れるタイミングを考えた使い方をしないと思うような効果がでません。すぐに使いたいのであれば完熟の鶏糞がおすすめです。
使い方の注意点
鶏糞は栄養成分が多く肥料としての効果は大きいですが、反面使い方により悪影響が出る場合があります。根に直接鶏糞が当たると肥やけを起こします、肥やけとは肥料により根が傷んで株の元気がなくなったり、最悪枯れてしまうことがあります。
根菜の場合又われを起こすので、鶏糞を使う時は根に直接当たらないように注意しましょう。
鶏糞の効果
化学肥料と同じ効果
鶏糞の効果は基本的には化学肥料と同じです。これは化学肥料と同じ窒素、リン酸、カリウムといった成分が入っているためです。よく鶏糞は効果が早いと言われますが、それは完熟の場合だけなので選ぶ種類は注意しましょう。
鶏糞ペレットは粒状で使いやすいのですがペレットに固めるために完熟していない種類があります。表示をきちんと見て選んでください。
カルシウム分が含まれている
鶏のエサには卵の殻を作るためのカルシウム分が含まれています、これを食べている鶏の糞にもカルシウム分が含まれていて鶏糞に残っています。このカルシウム分が少し厄介です。
土作りで酸度調整のために石灰を撒きますが、鶏糞を使いすぎると石灰を撒いたのと同じ効果が出てしまい土がアルカリ性に傾いてしまいます。またカルシウム分が土を固める効果があるので注意が必要です。
鶏糞の適切な使用量
鶏糞は優れた堆肥ですが使い方には注意が必要です。使う場所と使用量に特に注意しましょう。基本的に使用量は化学肥料と同じで、1回に30gほどです。追肥では必ず完熟のものを選んでください。ペレットの場合は完熟していないので効きが遅いです、使うタイミングには注意してください。
鶏糞を使ってみる
どんな肥料がいいのか
例えばこれからトマトの栽培をするとします。初心者の方であればいろいろな本やネットで情報を集めてから必要なものを揃えていくことと思います。いろんな情報を集めていくうちにたくさんの人がそれぞれ違うことを言っている場合があることに気付くでしょう。
例えば鶏糞は効きが早いと言われますが、最近の研究でそうではないということが分かったとかどちらを信じればいいのか初心者にはさっぱりです。
試行錯誤が大切
農業を長くやってきた先輩の意見は聞くべきだと思いますが、間違っている可能性もあります。作る野菜の種類や自分の土地の特性もバラバラに違うでしょう。
やはり自分でいろいろ試してみるしか方法はありません。鶏糞が栄養成分のバランスがいいなどの基本的な情報は同じです。これをともに自分でいろいろ考えてやってみましょう、これが家庭菜園の楽しい部分ではないでしょうか?
土づくりは1年ではできない
野菜を作るうえで一番楽しいのは収穫ですね。自分で苦労して育てた野菜を収穫するのは格別の楽しみがあります。収穫を楽しみにしている方には聞きたくないことかもしれませんが、土づくりは1年ではできません。
毎年毎年気候も違えば土の状態も変わります。土と野菜とじっくり向き合っていろいろ試してみてください。いろいろ頑張った結果おいしい野菜が実ればそれは格別の喜びになるでしょう。
まとめ
鶏糞は使いやすい堆肥です。栄養成分が含まれていて、化学肥料と同じように使うことができます。効果がよく出る反面使い方と使う量には注意してください。追肥に使う場合は必ず完熟のものを選んでくださいね。
堆肥というと初心者には種類が多く違いが分かりにくいですね。鶏糞は手に入りやすく、使いやすいので初心者でもおすすめですよ。化学肥料を使わずになるべく有機肥料を使いたいという方にもおすすめです。
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