アイヌとは
アイヌ民族とは
アイヌ(アイヌ民族)を定義すると、北海道・樺太(サハリン)・千島列島・カムチャツカ半島南部に居住していた民族です。母語はアイヌ語を使います。 元来は物々交換による交易を行う狩猟採集民族で、当初は文字を持ちませんでした。生業の毛皮や海産物などをアムール川下流域や沿海州それからカムチャツカ半島といった地域で交易を行っていました。
アイヌの食文化について1
アイヌの狩猟は夏の1時期をを除いて1年の大半の時期に行われました。ユク(yuk エゾシカ)、キムンカムイ(kimun kamuy ヒグマ)と言う獣類やクスイェプ(kusuyep キジバト)、コペチャ(kopeca マガモ)などのの鳥類を狩って食べ物としました。
アイヌの食文化について2
海への漁も盛んに行われました。丸木舟を漕ぎ出して、エタシペ(etaspe トド)、サメ(same)などの大型ものを捕らえたり、網や釣竿でヘロキ(heroki ニシン)、イワシ(iwasi)などの小型のものを捕りました。巨大なフンペ(humpe 鯨)は浅瀬や岸に乗りよせる「寄り鯨」の場合だけ捕り、食べ物を確保していました。
アイヌ・アイヌの食文化を知る参考漫画
『ゴールデンカムイ』は、作者「野田サトル」による漫画で、明治時代末期の北海道を舞台にした作品です。この作中で北海道にまつわる料理や食べ物が多く登場し、主にアイヌ料理が取り上げられ、調理方法(レシピ)や食事内容が細かい描写で描かれています。当時のアイヌの事だけでなくアイヌ料理・食文化をより詳しく知るには欠かせない漫画です。
アイヌ料理と食事について1
オハウ ohaw(煮込み汁)
米などの主食を食べないアイヌの食文化でも、メインともいえる食べ物がこちら。獣肉や鮭などの魚肉、山菜、野菜を鉄鍋で煮込んだ汁物です。これはスープと言うより鍋に近いかも。また北海道の郷土料理として有名な石狩鍋、三平汁の起源とも言われています。心身冷え込む極寒の地に住むアイヌの人々の心と体を温めてきた料理です。
ラタシケプ rataskep(野草による煮物や和え物)
ラタケシプを直訳すると「混ぜたもの」と言う意味。これは山菜や野菜、豆類を柔らかく汁気が無くなるまで煮込み、軽く潰してから獣脂、魚油、少量の塩で味を整えて作ります。日常の食べ物だけでなく、儀式などの供物としても利用されます。チエトイ(珪藻土:アイヌ語で「我ら食べる土」の意)を用いて山菜類を和えた「珍味」も好まれます。また食べ物によっていろいろなレシピがあります。
サヨ sayo(粥)
アイヌの人々はピヤパ(稗)やシアマム(米)で炊いた薄い粥を食べます。大抵は穀物のみで炊き込みますが、まれに山菜などを炊き込む場合もあります。ただし、あくまで「主食」としての食べ物と言う事ではなく、脂こい汁物や焼肉、焼き魚で腹を満たしたのち、「口直し」として茶のようにすすられるものです。
シト sito(団子)
穀物の精白や製粉を臼による手作業で作られていた時には贅沢な高級品で、イオマンテ(熊送り)やイチャルパ(祖霊祭)といった、ハレの日の供物や食べ物して作られることが多かった団子。材料はメンクル(黍:キビ)、ムンチロ(粟:アワ)、シアマム(米)などありますが、メンクルで作られた物を本式としていました。
チタタプ citatap(肉や魚のたたき)
アイヌ語で、「我々がたくさん叩いた(チ・タタ・プ)」と言う意味。 カムイチェプ(鮭)をはじめ、スプン(ウグイ)、ウッタプ(カスベ)などの魚。ユク(鹿)、キムンカムイ(ヒグマ)、モユク(狸)といった獣肉も同様に叩きます。冬期には大量(数日間)のチタタプを作って食べます。チタタプの鮮度が落ると、つみれのようにして汁に入れます。
アイヌ料理と食事について2
サッチェプ satcep(乾し魚)
秋に取れる鮭は生食用以外に獲られ、半年間の保存食に加工します。頭と内臓を取り除き、戸外で乾燥させてから屋内に取り込み、囲炉裏の煙で燻製にします。夏に採れるマスなどは、開いてから火で炙り、焼き干しに加工します。乾し魚、焼き干しはそのままほぐして食べるか、水でもどして汁の実、煮物として食されます。
サッカム satkam(乾し肉)
獣肉はごく新鮮ものに限り、肉から内臓まで生で食します。それと同時に端境期を考えて乾し肉に加工します。主にユク(鹿)、キムンカムイ(ヒグマ)の肉を細かく切り分けた後、大鍋で軽く茹でて汁気を切り、囲炉裏の上に吊るし、乾燥させつつ煙を当てて作ります。サッカムはそのまま食べるか、水から煮込んで汁物にして食べます。
ウバユリ澱粉
トゥレプ(turep オオウバユリの鱗茎)から得られる澱粉は、アイヌ民族が用いる植物質の食品の中において、穀物以上に重要な位置を占めます。そのため、一連の澱粉採集作業の間、「酒」と「色事」に関する会話はタブーとされ、これを破ると澱粉が落ち着かなくなり、うまく沈殿しなくなるという言い伝えがあります。
オントゥレプ onturep
これは直訳すると「醗酵させたウバユリ」と言う意味。トゥレプ(オオウバユリ)からウバユリ澱粉を抽出する際に、同時に集めた皮や繊維などのカスを醗酵させて作った保存食です。食べる際はこれを砕いて水でもどし、団子にしてサヨ(粥)に入れます。
ポッチェイモ
秋に収穫された馬鈴薯(イモ)のうち、形の悪いものや小さいものをそのまま戸外に放置します。するとイモはが活きの温度で凍るのと融けるのが繰り返され、イモの組織は破壊され、ぶよぶよした手触りになります。これを水に漬けて溶かし、底に沈んだ澱粉を取り出して丸め、暖かい場所に並べて醗酵させれば、キメの細かい馬鈴薯澱粉となります。
アイヌ料理と食事について3
酒(トノト)
アイヌの酒は稗(ヒエ)を麹で醸した醸造酒。見た目や味はどぶろくに酷似します。酒作りは、女性の手のみで行われます。周囲からカッケマ(淑女)と尊崇される人徳備わった女性がふさわしいとされ、若い女性、特にメノコタスム(生理)は不浄とされ、作業できません。また日高地方のアイヌには、「津波の神は酒粕を嫌う」との伝承があります。
茶
アイヌの茶は冷帯気候の北海道に自生する木の実や皮、薬草の煎じ汁(茶外茶)です。主にプシニ(pusni ホオノキ)の枝や実、オマウクシニ(omawkusni コブシ)の皮や枝、ハシポ(haspo イソツツジの葉)、エント(ento ナギナタコウジュの茎葉)、ウペウ(upew イブキボウフウの根)、と言ったものを、煎じて茶のように飲んでいました。
樹液
北海道に自生する、甘い樹液を蓄えたものを樹木のニワッカ(樹液:「木の水」)として飲料や調味料に用いました。春先のカパッタッニ(シラカバの幹)に傷を付ければ、大量の樹液が流れ出します。この樹液をタッニ・ワッカ(シラカバの水)と呼び、周囲に水場がない場所で野営する際の炊事の水にや飲用に使います。
代表的なアイヌ料理のレシピ
オハウの作り方(レシピ)
1、鍋に水を入れて小魚の焼き干しや獣の骨を入れて点火し、出汁を取ります。 2、大まかに切った肉や魚を入れて煮ます。 3、乾肉、乾魚も可能ですが煮込み時間をかけます。 4、アクは薬効成分なので、取り除きません。 5、野菜は根菜などの煮えにくい物、繊維の多い山菜類、最後に葉物野菜を入れます。 6、柔らかくなるまで煮込んだら、少量の塩、魚油、動物性脂肪、等でで味を整えます。 7、風味付けとして乾燥させたプクサ(ギョウジャニンニク)や焼き昆布の粉末を振り掛けます。
シト(団子)の作り方(レシピ)
1、一晩精白された穀物を水に漬けケて置き、 2、水から上げたのち、もう一晩かけて水を切ります。 3、穀物を臼に入れ、数人で搗いて粉状にします。 4、出来上がった粉を湯で練上げます、 5、最終的に厚さ1センチ、直径7、8センチの大きさに丸めます。 6、大鍋に湯を沸かし、鍋底に焦げ付かないように注意しながら茹で上げます。
鮭のチタタプの作り方(レシピ)
1、鮭の頭、アラ、白子をイタタニ(丸太を輪切りにして作った俎板)に乗せます。 2、重みのある刃物でペースト状になるまで刻み、叩きます。 3、葱、プクサ、メンピロ(ノビル)、のみじん切りを薬味として加えます。 4、仕上げに塩と焼き昆布で味を整えます。
北海道のアイヌ料理店
阿寒湖湖畔「民芸喫茶ポロンノ」
住所:北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4-7-8 営業時間:5月~10月10:00~21:30 11月~4月 12:00~20:30 定休日:不定休 電話:0154-67-2159 北海道内最大の「アイヌコタン(アイヌの集落)」がある阿寒湖畔にあります。これは正しく本場のアイヌ料理の食事を楽しめるお店ですね。
札幌にあるアイヌ料理店「海空のハル」
住所: 北海道札幌市中央区南3条西4丁目 J-BOXビル5F 電話: 050-5887-1812 営業時間: 月~土、祝日、祝前日: 17:00~23:30 (料理L.O. 22:45 ドリンクL.O. 23:00) 定休日: 日(月曜日祝日の際は日曜日は休まず営業し、月曜日が代休) 各種クレジットカード可能 北海道最大の町札幌でもこちらで、伝統的なアイヌ料理の食事が楽しめます。
東京にもあるアイヌ料理店「ハルコロ」
アイヌの本場「北海道」でしかアイヌ料理が食べられない?いえ、そんなことはなく東京でも1か所(本州でも唯一)アイヌ料理を食べられるお店があります。そのお店の名前は「ハルコロ」韓国や東南アジア、最近では中東のお店もひしめき合うエスニックタウン新大久保にあります。是非気軽にアイヌの食文化に触れて食事をしてください。
東京のアイヌ料理店「ハルコロ」の人気メニュー1
ここで、東京でアイヌ料理の食事ができる「ハルコロ」の人気メニューを紹介します。
Ainu Food
ラタシケプ(かぼちゃのまぜ煮)550円 チポロイモ(イクラじゃがいも)550円 イモシトセット(イモ・かぼちゃ・ヨモギ)500円 ムニニイモ(ジャガイモの保存食:ある時だけ)時価 サーモンルイベ(冷たい刺身)750円 オハウ(汁)400円
Deer meat
鹿肉のステーキ 1350円 鹿丼 950円 ジンギスカン 1100円 炙りポン酢 800円 ハムソーセージ 750円 炙り山わさび 800円
東京のアイヌ料理店「ハルコロ」の人気メニュー2
ラーメンサラダ 850円 ハルコロサラダ 大 800円 ハルコロサラダ 小 600円 ザンギサラダ 700円 ザンギ 600円 糠(ヌカ)サンマ 450円 氷下魚(こまい) 400円 ほっけ 1300円 鮭焼 550円 鮭とば 650円 鮭めふん 600円 鮭チャーハン 700円 チポロ(イクラ)おろし 550円 親子おろし 700円 ほたて高菜ガーリックチャーハン 800円
東京のアイヌ料理店「ハルコロ」の基本情報
店名:ハルコロ (HaruKor) 予約・お問い合わせ:03-3368-4677(予約可) 住所:東京都新宿区百人町1-10-1 JR山手線新大久保徒歩1分、 JR 総武線南口徒歩3分 新大久保駅から120m 営業時間:[月〜金]11:30〜14:00 17:00〜24:00(L.O.23:00) [土・日・祝]17:00〜24:00(L.O.23:00) 定休日 木曜・他に不定休あり クレジットカード不可
まとめ
アイヌ料理は、狩猟や漁で手に入れた自然の恵みを、食文化としていて、その場で食べるための食べ物としてだけでなく、保存食として保存する方法も熟知しています。アイヌ料理を食事する方法として、アイヌの本場北海道だけでなく、東京のハルコロと言うお店でも本格的なアイヌ料理を食べられ、アイヌの食文化に触れることができます。また、アイヌ料理はレシピもそれほど難しくないものばかりなので自作も楽しいです。