はじめに
そもそもエチオピアとは
エチオピア料理とはどんなものかと聞かれたら何と答えますか?そもそもこの国の名前を聞いてすんなりと世界地図からこの国の場所を指で示せる方は日本には少ないかもしれません。
アフリカ大陸の東端にある国
エチオピアはアフリカ大陸の東端にある国です。東西南北さらに北西と北東の6方向を他国で囲まれた内陸の国で、さまざまな文化が混在するトラディショナルな国。文化が混ざれば当然、食べ物も多様なものがあります。
内陸国ならではの多文化国家
そんな多様な食文化が入り乱れている国においてもとりわけ目立っている料理があります。
その料理こそ、何を隠そう、インジェラ。日本人には聞きなれないこの料理は何でも雑巾のような食感だとか腐ったような酸味があるだとか、さんざんな感想が散見しているなにやら不気味な印象のある食べ物。今回はこのインジェラについて取り上げていきましょう。
エチオピア料理「インジェラ」とは
エチオピアのソウルフード
インジェラという食べ物は日本で言うところのお米、欧米で言うところのパンですね。現地の方にとっては欠かすことができないまさにソウルフード!この国の方たちはこの料理を朝昼晩の三食とついでにオヤツにも食します。
紀元前から存在するインジェラ
この料理の歴史は古く、紀元前の時代から存在した記録があるほど、現地の文化に根ざした食品なのです。
エチオピア料理「インジェラ」と形状
作り方はクレープと似ている
インジェラの形状を日本の方にも分かりやすく例えるなら「クレープ」が一番近いです。実際にこの料理はクレープと同じような作り方となります。
クレープと同じように具と食べる
クレープと同じように穀物粉をもちいて作った生地を鉄板や土鍋で薄く焼き上げるという作り方となります。そして、これまたクレープと同じように、具となる材料と一緒に食べるというわけです。
クレープと違って小麦粉は使わない
この料理は一見すると小麦粉が使われているような印象を受けますが、実際には小麦粉は一切使用されていません。この料理に使われるのはテフです。そう言われても日本の方にはこのテフというものが一体全体どういうものか見当もつきません。
エチオピア料理「インジェラ」とテフ
テフは穀物
この素材は野菜ではなくいわゆる穀物に部類されているものでさらにイネ科に分類されます。イネ科と言えばわれわれが主食とするお米や欧米の方が主食にするパンのもととなる小麦と同じです。
テフの消費量は年間150万トン!
エチオピアにおいてはこの植物が広く栽培されて食用として利用されます。その消費量はこの国だけで年間でおおよそ150万トン以上に。
大豆の収穫量の約5倍も食べられるテフ
この量は大きすぎてピンとこないかもしれませんね。日本人には豆腐だとか納豆だとかで何かと縁が深い植物である大豆が日本国内で収穫される量が30万トンほどですから、そのおおよそ5倍だと考えてください。
エチオピア料理「インジェラ」と作り方
生地を発酵させるのが作り方のポイント
作り方としては、まずこのテフを細かく挽き、水を入れて生地のもとが出来上がりです。この生地のもとを2~3日ほど乳酸菌で発酵させて加熱調理すればこの料理の完成です。
家庭ごとに作り方がある
インジェラの作り方は以上の方法が基本です。ただ現地の一般家庭ではテフの粉以外にもとうもろこしやオオムギなどの穀物粉も混ぜて、合わせてインジェラを焼くという作り方もあるのです。この作り方の場合はインジェラ特有の酸味や風味がだいぶマイルドになって食べやすいものとなります。
テフ100%のインジェラはクセになる味
日本では味噌汁の味が家庭ごとに変わると言いますが、この国ではこの料理こそがオフクロの味、ご家庭の味になるというわけです。
ただ、現地の方に言わせると「酸味の薄いインジェラなんてインジェラじゃない!」ということで、テフ100%のインジェラにも根強い人気があり、日本でも本場の味にこだわって作り方を工夫しているレストランもあるのだとか。
観光客の方にはクセがありすぎるのか
ちなみにテフ100%で作られたもののほうが食感は他の穀物粉を混ぜたものより滑らかで独特で、通の方はこちらの方を好む傾向があるようです。ただ、こちらのインジェラの食感はあまり観光客の方たちには評判がよろしくありません。
クレープやホットケーキのような気泡が
また、作り方の最終工程である焼きの仕上がりによって、インジェラにはランクがあります。この料理は焼き上げると表面に穴が無数に空きます。ホットケーキの生地をひっくり返すときの目安になるようなポツポツとした穴を思い浮かべてください。あのような穴が多いものの方がランクの高いインジェラとなります。
しっかり焼いたものは現地人には低評価だが
そして焼き上がりの色も重要な要素です。より淡い焼き色が高ランクなのです。ただ、日本人の方にとってはもっと香ばしくカリッと焼き上げてもらった方が美味しく食べられるという感想が多くなります。
エチオピア料理「インジェラ」と味の真相
味は酸味があり色合いはクレープと違って灰色
インジェラの味ですが、発酵して作られると知ったときに勘のよい方はピンときたことでしょう。そう、この料理はものすごく酸味があるパンチのきいた味です。この料理はテフという植物で作られます。
小麦粉を使って作られるクレープのように美味しそうな色合いではなく、この料理の色合いは、あえてはっきり言うなら「汚い」です。
ただの雑巾ではなく使い古した雑巾
まるで雑巾、しかも年末に大掃除をした後で汚れきったような雑巾の色合い。現地観光をした方はやはりこの料理を指して雑巾と表現しますが、それは正しい感想です。また、見た目だけではなく味も、繰り返しになりますがとても強い酸味があります。
雑巾なんて言うけど本当のところは?
「そうは言っても、実際には味は美味しいのでは?」と考える方も当然いるはず。実際、インジェラはこの国ではどこの料理屋へ行ってもほぼ必ず100%に近い確率で提供されます。
なぜなら、この国では卵料理だろうと魚料理だろうと肉料理だろうとほぼ絶対にこのインジェラをお皿の代わりにするからです。結果、旅人は必ずこの食べ物を胃に入れることになります。
クセがありすぎて断言できない
そして、問題の味なのですがオブラートに表現すれば「クセのある味」です。この味を美味しいと思える方もいます。ただ、少ないです。この味をまずい思える方もいます。きっと、多いです。そんな味となります。
エチオピア料理「インジェラ」と食べ方
酸味に対抗できる濃い味の食べ物と
この料理を食べる際には作法というか、正しい食べ方とでも言うべきものがあります。この食べ物の酸味の強さを打ち消すと言うか、誤魔化すと言うか。とにかく味の濃いものが具として適しているとされます。
辛味のある食べ物をクレープのように巻いて
例えば、現地では辛味の強い食べ物を具としてこの料理につけて食べるのが主流です。おそらく、現地の方たち以外の観光客ですと、インジェラは「まずい」食べ物なのかもしれません。
エチオピア料理「インジェラ」と観光
エチオピア観光では必ず食べることに
ただこの国を観光する場合にはこのインジェラを避けて通ることはまず不可能です。この国を観光の際にこの料理を何とかして口にいれないようにあらかじめコーディネーターに相談をする方がでるほどですが、まず徒労に終わります。
美味しいかまずいかは関係ない!
この料理から逃れるとこの国で口に運べる食べ物がほとんどなくなるとまで言われるので、この国の観光者はこの料理と仲良くせざるをえないのです。
エチオピア料理「インジェラ」と栄養
雑巾のような見た目に反して
ただこのインジェラ、実はすごく栄養価の高い食べ物となります。原材料のテフは小麦と比べて鉄分が豊富で高地の険しい環境で生活してきた現地の方たちの健康は、この栄養価抜群の植物で作られたインジェラで培われてきたのです。
酸味があり雑巾のようだが高級な食べ物
その栄養価の高さは世界からも注目を集めており、アメリカをはじめ、オーストラリアでもテフの栽培が開始されました。ちなみに現地以外でこの穀物を手に入れたいと思うとかなりの高額になります。テフは世界的に見たら高級食材なのです。つまり、この素材を使ったこの料理もまた高級料理と呼んでもよいのかもしれませんね。
エチオピア料理「インジェラ」とワット
ワットもエチオピアのソウルフード
インジェラを食べる際に人気の具としては、「ワット」が挙げられます。ワットの作り方は肉に野菜、そして豆類をスパイスなどと一緒に煮込んでいくというもの。これもまたこの国のソウルフードと呼んでもよいレベルで現地の方にとっては人気のある日常的に食べられている一品です。
インジェラをお皿にしてワットを食べる
香辛料を効かせて辛味をつけたこのワットとともに食してこそ、本場の食べ方であると言えるのです。現地ではワラ製のテーブルの上にまずインジェラをまるでテーブルクロスのように敷いてから上にワットをかけて食事の準備とするのです。「美味しいだけではなく食器の代わりにもなる最高の食べ物!」というのが現地の方の評価だとか。
エチオピア料理「インジェラ」を味わえるお店5選!
美味しいか、まずいかはご自身で
日本国内でも現地、エチオピアのソウルフードであるインジェラを楽しめるお店はいくつかあります。この料理は、繰り返しますが大変クセのある味わいです。そのため、一概に美味いかまずいかを断定できない部分があります。
東京と大阪のおすすめ店をご紹介!
その判断は是非、皆さんの味覚でもってして欲しいというのが正直なところです。今回は東京を中心に数店と大阪で、現地の料理を実際に食べられるお店のなかから特に美味しいと評判のところをピックアップしました。
どのお店も日本人でも気軽に入店できる気さくなお店です。是非、お店選びの参考にしてください。
エチオピア料理「インジェラ」を味わえるお店.1東京
クイーンシーバ エチオピアレストラン
東京都目黒区東山にある料理店のクイーンシーバはジャンルとしてはアフリカ料理店となります。ここではエチオピア料理を初めとした多種多様な料理を楽しめます。
東京で本場のエチオピア料理を
また、コース料理も充実しており価格もリーズナブルで品数も豊富です。お肉はもちろん、お野菜もたっぷりと使われた料理たちは、はじめて現地の料理を食べる方の「アフリカ観」を確実に、よい意味で打ち壊すものとなっています。
店長さんの人柄もよく、日本に来て頑張っている現地の方がよく来店してくるそうで、母国のお話を快くお聞かせいただけることもあるようです。
エチオピア料理「インジェラ」を味わえるお店.2東京
サファリ (SAFARI)
東京都港区赤坂にある料理店のサファリはアフリカ料理を出してくれるのはもちろん美味しい現地のカレーも提供してくれるお店となります。
居酒屋としての顔も持っているようで日本人に親しみのある焼酎やカクテル、ワインはもとよりエチオピアやアフリカで親しまれているビールなども用意してもてなしてくれるようです。
嬉しいコースもたくさんある
また、コース料理もあり、そしてお酒好きには嬉しい飲み放題コースもあります。宴会などでの利用も可能なのであらかじめ予約をして向かうとよいですよ。
エチオピア料理「インジェラ」を味わえるお店.3東京
ディアフリック
東京都世田谷区奥沢にある料理店のディアフリックはアフリカ料理だけでなくアジアやエスニック料理までもカバーしてくれている嬉しいお店となります。
店内はトラディショナルともエスニックとも少し趣が異なった、まるで若者向けのおしゃれなバーのような雰囲気でレンガ調のカウンター席はさながら洋画に出てくるワンシーンのようなクオリティがあります。
時間を忘れるお洒落な空間
コース料理もA、B、Cと三種類あり、また2時間の飲み放題コースも完備しているので存分に現地の料理を楽しめます。雰囲気がよくあまりにも居心地がよいため時間ギリギリまで満喫してしまう人が多いのだとか。
エチオピア料理「インジェラ」を味わえるお店.4東京
アディス
東京都目黒区中根にある料理店のアディスはアフリカ料理店というくくりにはおさまらない多国籍な料理が楽しめるお店です。地中海の食材を生かしたさまざまな料理は来るお客さんに大変評判がよいものとなっています。
大盛況の人気店
ここでもインジェラを楽しめるのですが、それはずばり店長さんがエチオピア出身というのが大きな理由です。まさに、「故郷の味」と言いますか、本場の味を知り尽くしている店長さんの朗らかな人柄によって口コミが口コミを呼んでお店は大盛況。
時間に余裕があれば貴重なお話を聞けるかも
ただ、現地のお話を聞かせて欲しいという方がこのお店を来店する場合には一つ注意があります。このお店は店長さんがお客さんに提供する料理を調理しているのですが、当然店長さんと談笑している間、調理はストップしています。
快くお話をしてくれる店長さんなのですが、もしもお話を楽しみたいという方は時間に余裕をもって来店するとよいですよ!
エチオピア料理「インジェラ」を味わえるお店.5大阪
アクスム
大阪府大阪市中央区東心斎橋にある料理店のアクスムはアフリカ料理の専門店です。アフリカ料理はもちろんですが、ここは特にカクテルにこだわりがあるお店ということで有名です。近くにある大学などでは異文化について専攻する学科が多くあり、その学生たちで賑わいをみせている活気のあるお店となります。
まるでエチオピアにいるかのような空間
現地からのトラディショナルな雰囲気が漂う絨毯が敷かれた店内はまるで日本にいながらエチオピアの風を肌に感じているかのような錯覚すら感じてしまいます。
夕方の5時から開店して日をまたいで翌日の朝3時まで営業というストロングスタイルな開店時間も頼もしいところです。ゾウのロゴマークで知られる海外のビールを楽しみながら、エチオピアのインジェラを食べるのも乙なものですよ!
まとめ
強烈な酸味をまずいと感じるかは
エチオピア料理のインジェラはいかがでしたでしょうか。
「まずい」という評判を聞くと、何だか口に運ぶのを不安に思ってしまう方も多いでしょうが、この酸味の強い料理は単純に美味しいかまずいかを断言できない複雑な味をもつ食べ物なので、こればかりはご自分の舌で美味しいかまずいかを決めていくしかありません。
雑巾のようなフォルムだが
ただ、もし現地を観光したいという方はあらかじめ日本でその味に慣れておくことをおすすめします。初見ではその雑巾とクレープを足して2で割ったかのような外見にひるむ方が多いのですが、一度食べてみるとさらにひるみます。
酸味が必ずクセになる!
ただ、美味しいかまずいかはともかく、数日たつとまた猛烈に食べたくなる方が続出する、まさにクセがあってクセになる味なのです。
今回は東京と大阪の数店舗しかご紹介できませんでしたが、全国にインジェラを味わえるお店はひっそりとオープンしていますので是非探してみてください。そして、雑巾のようなフォルムを恐れずにどうぞ、食べてみてください。きっといろいろな意味で皆さんを楽しませてくれるはずですよ!
エチオピアには他にもたくさんの名物料理が
また、このインジェラ以外にもエチオピアにはたくさんの名物料理があります。前述したように、この国はいろいろな国と交流があるトラディショナル、国際的な国家です。
もしも、日本で現地の料理を食べられるレストランや料理店に行く機会があったなら、是非コースでいろいろな種類のものを体験してみてください。必ずや、皆さんの舌を満足させるものに出会えるはずです。
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この記事でご紹介したもの以外にも海外には面白い食べ物がたくさんあります。「暮らし~の」でそれらの情報をチェックして他のトラベラーに差をつけましょう!