クロダイの分類
スズキ目、タイ科、ヘダイ亜科、クロダイ属、クロダイ
クロダイは、ヘダイ亜目、クロダイ属の魚です。ヘダイ亜科とはマダイ等の赤いタイに対し、クロダイやヘダイなどの銀や黒いタイを指します。クロダイ属に属し、近縁種にはヒレに黄色みが入った「キチヌ」や「ミナミクロダイ」が居ます。
クロダイの外国名
Japanese black porgy
クロダイは「Japanese black porgy」といい、porgyはタイ を指し、日本の黒いタイです。 近縁種のキチヌは「Yellowfin sea-bream」sea-breamの事もタイ 科の魚を指し、黄色いヒレのタイです。 ミナミクロダイは「Okinawa sea-bream」で沖縄の鯛です。
クロダイの学名
Acanthopagrus schlegelii
クロダイの学名は「Acanthopagrus schlegelii」で棘のあるタイとい う意味を指します。 キチヌは「Acanthopagrus latuｓ」 ミナミクロダイは「Acanthopagrus sivicolus」とそれぞれの学名で 呼ばれます。
クロダイの名前の由来
黒い鯛
クロダイはマダイに比べて黒い事から由来しています。またクロダイの事をチヌと関西地方や釣り人の間では呼び、チヌの由来は過去に大阪湾の事を茅渟と呼び、そこで盛んに釣られていた人気の魚から由来したといいます。キチヌは黄色いヒレのチヌで、釣り人から名前が波及しています。
クロダイの地方名
クロダイの地方名
カワダイ（北陸地方）クロデ（山形県・千葉県内房）ケンダイ・タケチヌ（島根県）シノコダイ（山形県鶴岡市）チヌ（関西）チンタ（愛知県）その他全国の漁港などで様々な名前で呼ばれます。
クロダイの出世名
クロダイはスズキやブリのように成長過程で、出世名で呼ばれます。関東では10㎝までは「チン」10㎝～20㎝を「チンチン」20㎝～30㎝を「カイズ」30㎝以上を「クロダイ」と呼びます。 珍しい出世名では10㎝を「イッサイ」10㎝～20㎝を「ニサイ」と高知では呼びます。
クロダイの分布
クロダイ、キチヌ、ミナミクロダイの分布
クロダイは北海道から九州南岸まで、日本の海域、河口域に広く分布します。日本以外では朝鮮半島全域、台湾、東シナ海大陸沿岸、南シナ海、ベトナムです。 キチヌは千葉県以南の南日本、日本以外では朝鮮半島南岸、台湾その他東シナ海、南シナ海沿岸、フィリピン、オーストラリア沿岸に広く分布します。 ミナミクロダイは奄美群島から南西諸島に分布する固有種と考えられています。
クロダイの生息域
クロダイの沿岸性、汽水性
クロダイは沿岸の浅い水域に生息しています。素の水深は50m以下で、夜間の捕食時には1mの浅瀬にも入ってきます。港や河口の波静かな水域に生息し、厳寒期以外は活動します。スズキと同様に河川にも入り淡水域で釣れる例がある程ですが、淡水域は、餌を取る為に遡上し、河口付近の汽水域を住処にしています。
クロダイの形態
クロダイ
側扁平の楕円形のバランスよい形の魚です。口元から背にかけてはマダイより鋭い鋭角で精悍な容姿です。色は背から体の中央側面にかけて黒褐色と銀色の混合色で野性味がとても強い印象です。 体長は50㎝前後で3kgまでの物が一般的ですが、記録では70㎝の漁獲もあります。
キビレ
形はクロダイに酷似しますが、若干クロダイより頭部がシャープで、ヒレも大きいです。これはクロダイよりさらに汽水性が強い為といわれます。体色はクロダイより薄い銀褐色でひれに黄色い模様が不規則にて入ります。体長はクロダイに準じ50㎝前後です。
ミナミクロダイ
形はクロダイと酷似し、区別が難しいほどです。色はキビレに似て、銀褐色ですが、キビレの様なはっきりした黄色のひれは入らず、クロダイとキビレの中間の様な容姿になっています。またエラには黒い模様が入るのが特徴的で、体長は上記2種に準じます。
クロダイの生息環境・生態
食性
クロダイは肉食性に近い雑食性で、カニやエビなどの甲殻類、イソメなどの多毛類、岸壁のイガイやカキなどの貝類、更には小魚、藻を食べるまるで、食べれるものなら何でも食するといった大食漢です。またクロダイは前歯に犬歯があり、奥歯に臼歯があって、前歯で甲殻類などを噛み砕き、奥歯で藻などを噛み潰す、人間の歯の様な構造を持ってます。この為雑食性で何でも食べる事となっています。
夜行性
クロダイは夜行性の魚です。浅い海域に棲むクロダイは、時折大型のサギなどに捕らえられたり、襲われます。この関係性で長い時間の中で備わった習性での夜行性といわれます。昼間のクロダイは用心深く、めったに姿を見せませんが、日没後は大胆になり、釣り場の足元にまで忍び寄ってきます。
クロダイの性質
クロダイの性質は警戒心がとても強くて大胆です。大きな個体は学習能力に長け、釣り人の間では50㎝以上の大物を釣る事は中型を釣るより何倍も難しく、何倍の価値があるといわれます。それは50㎝を超えるクロダイは、10歳を超えていて学習能力に長け、釣れる可能性が何倍も難しくなるからです。記録では70㎝の漁獲があり、60㎝クラスのクロダイが釣れてもおかしくないのですが、ほとんど聞かない位、それは大物程賢く、成長していく魚なのです。
産卵
クロダイの産卵は春先から初夏にかけて浅瀬の藻場などで行われます。この時期には漁港付近の浅瀬に、クロダイが産卵で寄ってきて大物を狙えるために「のっこみ」と呼び釣り人が堤防に集まり釣りに興じます。クロダイの産卵は深夜に行われ、先述の浅場で雌雄が集まり、雌が放卵して、雄が放精します。鮭と同じ様ですが全く違う事が2つあり、雌は卵を合計で200万粒放卵しますが、長い期間をかけて何回にも分けて放卵します。また、海面表層に放卵しますので、多くの卵は他の魚に食べられてしまいます。生き残った強い個体が、海域の生態系の上位として君臨します。
クロダイの釣り情報
この項は【魚種図鑑】なので、釣りの概要をご紹介します。 釣り方の詳細はURLを貼りますので、そちらを御参照 する様にお願い致します。
クロダイ釣りのポイント
クロダイが釣れる場所は漁港や港湾の防波堤を主体に、河川の防波堤、河川内の橋桁廻などや干潟や砂浜、急深のサーフ、ゴロタ（大石、大岩）の浜、内湾の磯場など、内湾ではほぼ、何処にでも生息していて、狙えます。
クロダイ釣りのシーズン
基本的に釣ろうと思えば、一年中、手を凝らせば狙える魚です。そんなクロダイですがシーズンといえば春先から晩秋までです。ベストシーズンは5月～7月の産卵の「のっこみ」です。次に釣果が出るのは真夏の夜間、秋のまづめから夜間の釣りで釣果があります。冬の水温が下がる時期は深場のクロダイを狙うか、温排水の活動している物を狙う、限定的な釣りになります。
クロダイの釣り方
クロダイの釣り方は様々ありますが、代表的な釣り方の概要を紹介します。 ・ウキ釣り … ウキ釣りは移動式のウキを付け、餌とコマセを同調するように漂わせ、集魚してハリの餌にアタックさせ釣る方法です。コマセの動きに餌を合わせる為、ガン玉オモリで調整します。 ・落とし込み釣り … 岸壁のカニやイガイを食べに来たクロダイに、同じ餌を岸壁に落とし込んで釣る釣りです。同じ餌と、足を使って探し、気配を消す事がポイントです。 ・ルアー釣り … クロダイのルアー釣りはチニングといわれ、クロダイの食べるカニやエビに模したワームや、河川ではナブラの小魚を演じる等リアルな「マッチザベイト」で臨む事が大事な釣りです。
クロダイ釣りの餌釣りのタックル
ウキ釣り クロダイの餌釣りは磯投げ竿でに中型の磯のスピニングリールで組み合わせます。このセットは他の釣りからも流用出来、専門の物でなくても使用出来ます。 落とし込み釣り 4m前後の落とし込み釣り用の竿を使用し、片軸の落とし込み専用の物をセットします。どちらも専用の物があるので、専門的に狙いたいのであれば、タックルをそろえる事を、おすすめします。※下記のリンクにて専用ロッドの紹介があります。
クロダイのルアー釣りのタックル
シーバスロッドやエギングロッドのタックルが流用可能ですが、ロッドに関しては、大物を釣った場合、エギングロッドでは頼りなく、シーバスロッドではアタリを拾いずらいので専用ロッドを用意する事をお勧めします。 ※下記のリンクにて専用ロッドの紹介があります。
クロダイの餌釣り
クロダイのウキ釣りではコマセにアミエビを使い、付け餌に刺し網を基本的には使用します。その他、コマセに市販の練り餌さを混ぜてり、餌に団子を使用したりします。いずれも付け餌と集魚用のコマセを同じ場所に同調させることが大事です。 落とし込み釣りは岸壁に付いている貝やカニを食べている所に同じ餌を落とし込み釣る釣りなので、似た様な餌、若しくは現地で餌を調達し、落とし込みます。足を使って、自然に餌を落とし込む事が肝心です。 ※詳しくは下記のリンクを御参照下さい。
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クロダイのルアー釣り
クロダイのルアー釣りはざっくりというと、ブラックバスのルアー釣りと、通じる所が多く、ブラックバスをやったことがある人なら、すんなりとなじんでいけると思います。マッチザベイトと、ポイント、のっこみや回遊を覚えてしまえば半分は釣れたようなものです。が、やはり当然ですが、そんなに単純ではありません… ※ですので下記のリンクで釣り方の詳細を参照下さい。
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クロダイの釣り動画
チヌのライトウキフカセ釣りin大阪南港
大阪南港でのウキフカセ釣りの動画です。撒き餌を有効に使って、クロダイを集めて釣りを有効に進めています。マルキューさんの撒き餌の実証実験の様な動画です。
クロダイ流儀 落とし込み釣り編 ［壁際スレスレを狙う落とし方の基本］
堤防を足を使って効率よく、理論的に解説し、何匹も釣り上げています。落とし込み釣りで釣れるのか？と、懐疑的な方は必見です。
【チニング】ライトタックルで狙うチヌ
Arukazik japanブランドビルダー/中崎優斗氏のチヌゲームの動画です。タックル、ルアーの説明から入る、河川内でのチニングです。根掛かり回避の解説などもあり親切です。ランカーに近いチヌをあっさりと釣り上げています。
誰でも簡単チヌゲーム！！/ 中島成典 ・ジャッカル
ジャッカルのテスタ-中島成典 氏のちびチヌヘッド、ちびチヌ蟹でのチニングの動画です。水中の動画があって、実際現場で操る時のイメージングに役立ちます。これは釣れますよ！というジャッカルさんの動画です。続けて見ると、次の動画では淀川でガッツリと釣っています。
クロダイの味・選び方
クロダイの味
クロダイは釣った場所、季節によりますが旬の美味しい物は鍋や刺身で大変美味しく戴けます。また湾奥や河川の水質が悪い所に居着くクロダイも、適切な処理をすれば臭みも抜け美味しく戴けます。手間は掛かりますがその美味しさは、マダイやコチに比肩する程です。
クロダイの選び方（一匹物）
一匹物で選ぶ場合は、全体が肉付が良く色付きも鮮やかで、大きすぎない物から選びます。目の濁りが無く、エラは赤く綺麗な物を選びましょう。
クロダイの選び方（切り身）
切り身は、血合いの赤色が鮮やかで、身に透明感があるものを選びます。白身部分に黄色みがあり、透明感の無い物は、鮮度が落ちています。また、タッパーの底にドリップ（汁）が出ている物、切り身の切り口が乾いて変色している物、臭いを発している物は避けます。
クロダイの栄養
クロダイは高たんぱく低脂肪の、ヘルシーな食材です。また栄養素が多く、グルタミン酸、アスパラギン酸やビタミンB6 、ナイアシンと体に良い要素が多い健康食で、その白身自身が良質のたんぱく質なので、獣肉などのコレステロールの多い食事と組み合わせる事によって、健康に良い食生活が送れます。
クロダイの栄養素の効能
アスパラギン酸は利尿効果があり、デトックス効果があります。また、疲労回復、スタミナ強化では有名です。グルタミン酸は出し汁の旨み成分で有名ですが、脳への神経伝達物質の役割があり、脳の活性化効果があります。 ビタミンB6はタンパク質を分解して、アミノ酸に替え体内の良化へ促す効果があり、ナイアシンは肝機能効果を増強し、2日酔い予防や、肌荒れ、血行促進、エネルギー代謝促進のデトックス、老化防止効果があります。
クロダイの料理
クロダイの刺身
大きめのクロダイは刺身で戴きましょう。旬は秋から春の物が脂がのって美味しいです。三枚おろしにして皮を引き、少し薄めのそぎ造りで食べます。水質の悪い所で獲った身は3枚卸しにしてキッチンペーパーで臭みの原因の水気を抜き、様子を見ながら1～2日冷蔵庫で寝かします。臭みが無くなったら、刺身で食べましょう。
クロダイの出汁鍋
クロダイの鍋は三枚に卸した身と、頭と、中落を使用します。昆布だしとアラを（頭、中落）加えて出汁を取って酒とみりん塩で味を調えます。その後野菜、豆腐、切り身を加えて、煮立ったら完成です。クロダイの出汁が調和した絶品鍋です。
クロダイの鯛飯
お米に、出汁用の昆布と水を入れ、鱗、内臓、エラを落としたクロダイをフライパンで両面を焼きます。釜の中に酒、みりん、醤油、塩、ショウガのみじん切りを適量で投入し焼きあがったクロダイを釜に投入し炊飯をスタートします。炊きあがったら身をほぐして混ぜ合わせ完成です。鯛飯ならぬ黒鯛飯です。
クロダイの寄生虫
タイノエ・アニサキス
黒鯛にはタイノエという意成虫が口の中に寄生します。これは人には無害なので、敏感になる必要は薄いですが、ゴキブリの様な大きさと形ですので、虫嫌いな人が見た時に、気絶してしまわないかと心配です。 また、アニサキスも少なからずいる可能性がありますので、ご紹介します。これは有名な寄生虫で 人体に入ると人間の胃に噛み付き、胃壁を傷つけ大変な腹痛を起こします。 ミミズの様な寄生虫なので目視が出来、もし発見したら、生食はあきらめるか、一度熱を通すか冷蔵して殺菌してから調理します。 諦めが付かない場合は、非常に大変ですが、薄造りで刺身を作り、全て目視確認をすれば大丈夫です。
クロダイの逸話・雑学
クロダイの性転換
クロダイは生まれた時は雄として生まれ、4歳になると雌へ性転換します。しかし全ての雄が雌へと転換する訳では無く、ホルモンのバランスで不足した雄は雄のまま生き続けます。
クロダイの江戸時代の扱い
クロダイは江戸中期に縁起が悪い魚として江戸庶民から嫌われていました。理由諸説ありますが、赤い鯛に対し、黒い鯛という事で、縁起を担ぐ江戸庶民は、お祝いの席に乗せなかったようです。それどころか妊婦に食べさせると流産してしまうとのデマまで流れ、ひどい扱いを受けていました。一方、伊勢の国では「ナベワリダイ」と呼ばれ、鍋を箸で突いて割ってしまう程、美味しい鯛との誉れある呼び名で愛好されています。瀬戸内海各地では「チヌご飯」として古くから鯛飯と同様、家庭のご馳走として愛されてきました。
クロダイまとめ
クロダイの時代
クロダイは古くから日本の歴史に登場する魚で、奈良時代に時の朝廷に、大阪湾で漁獲した物を献上されています。しかし、中国では古くから忌み嫌われる魚として、古くから記されてきました。汚物でも何でも食べてしまう魚として…その前に汚物を海に流し、それを伝える文化に首を傾げてしまいますが。 そんな影響もあり、不遇の時代を経て今日、歴史上一番日の目を見ている時ではないかと感じます。クロダイ用の竿やルアーやリールが日々開発され、子供から大人まで夢中になってクロダイを追いかけています。黒鯛師は先見の目でクロダイを愛し釣行していて、ようやく時代が追い付いてきた感があり、これから更に多方面で熟成されていく事を期待します。
