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アラフィフチャリダーが行く!北海道小旅行【最終回】

3泊4日の短いながらも充実した旅、最後の夜を迎えました。最後の夜も小さな無人駅で迎えます。眠れなくなるほど悩んだ僕は短いながらもいつも通っている道を、あえて自分の足で旅して来ました。何を感じ、何を得たのか。8回に渡って綴ってきた物語の最終章。ご覧ください。
更新: 2023年4月13日
おとうさん
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やっぱり楽しい!ステーションビバーク

撮影:ライター

疲れきった身体を何とか動かして、少し高いところにある駅構内に荷物を運んだ。

駅には普通ある駐輪場が見当たらない。

案内板を見ると、少し離れたところにあるようだ。

荷物から解放され、すっかり軽くなった自転車にまたがり、1区画離れた駐輪場で休んでもらう。

駐輪場とは名ばかりの草の生い茂った原っぱは、真新しい自転車からシダの葉に飲み込まれそうな物まである。

何となく停めていそうで、こういったところは暗黙の了解で停める場所が決まっている。

なるべく輪を乱さない位置に自転車を停めた。

汗を拭こうと思ったら

霧雨の坂道をずっと登ってきたので、汗で体中ベトベトだ。

特に首の回りがひどい。

大量にかいた汗が乾いて塩になり、ジャリジャリしている。

一刻も早くサッパリしたくてトイレに入る。

しかしきれいな駅舎にそぐわない、汲み取り式のなかなかの臭いがするトイレだった。

いくらガサツな僕でもこれは耐えられない。

それでも下着だけ取り換えて、とりあえず駅に誰も居なくなった隙を見て何とかすることにした。

何とかといっても構内で裸になるわけにいかない。

妻が「お風呂入れなかったら困るから」と持たせてくれた残り3枚の汗拭きシート。

シャツやパンツに手を入れてサッパリする。

僕はスキンヘッドなので2~3日頭を洗わなくても気にならない。

最悪こうして汗を拭くときに一緒に拭けばいいのだ。

スキンヘッドは実にアウトドア向きなヘアースタイルだ(ヘッドスタイル?)

夜ご飯は玉子丼スパゲッティ

撮影:ライター

夜ご飯は初日の夜と同じ、スパゲッティ。今日は玉子丼のレトルトをかける。

ハヤシライスのときは何となく味をイメージできたけれど、玉子丼はまったく未知の世界。

それでもスパゲッティの炭水化物と卵、玉ねぎなどの野菜で栄養はバッチリだ。

一口。

うまい!ハヤシライスと同等か、もしかするとそれ以上かもしれない。

コショウが無いのが悔やまれるが、玉子ベースのソースなので、あればほとんどカルボナーラだ。

これは新たな発見。

ソロキャンプのメニューに加えよう。

独りの夜にバーナーの燃焼音が心強い

撮影:ライター


僕の身体は180㎝90㎏。そこそこ大きな体をしている。

それでも知らない町で一人で過ごす夜は心細い。

そんなとき、僕を励ましてくれるのがコンパクトバーナーだ。

小さな体で数分で水をお湯に変える逞しさ、そして何よりその燃焼音が心強い。

暗闇の中で静かに、逞しく鳴る「コー」という音はヒーリングミュージックと言ってもいいほど心を安定させる。

最後の朝もスパゲッティ

撮影:ライター

夜、妻に連絡して、3日ぶりに息子の声を聞いて就寝。

駅にはコンセントがあることが多いので、本当はダメなんだろうけどスマホを充電させてもらう。

住宅街にある駅なので、遅い時間まで乗降があったが、シュラフを広げその上に座ったら誰もこっちを見ない。

することがないので地図を広げ旅人を気取ってみた。

朝。誰かがドアを開けて行ったのか寒い。おまけに蛍光灯には蛾がたかっている。

駅の入口にあった自動販売機で季節外れの温かいコーヒーを買う。

僕は毎朝コーヒーを飲みたくなる無類のコーヒー好き。

けれど特段こだわりはなく、普通に缶コーヒーも飲む。

最後の朝もスパゲッティだ。

そろそろご飯が食べたいが、この不自由さも旅の醍醐味。

有ることが難しいで、有難いを噛みしめる。

トイレの水は使えないので、自販機で水を買って茹でた。なんだかとても損した気分だ。

食器はウェットシートで拭いて終わり。細かいことを気にしてはいけない。

朝靄の中出発

撮影:ライター

錦岡駅から見る住宅街はまだ生活の音がせず、登りきった太陽は厚い雲に隠れている。

露が滴る自転車を軽く揺らし、朝靄に濡れたシートをグローブでサッと拭う。

総重量20㎏だった荷物もずいぶん軽くなった。自転車への積み込みもなれた。

けどそれもこれが最後だ。

帰ろう。

さあ出発だ。

雨の国道36線

僕は雨男。

北海道を縦断した時も半分雨だった。

もちろんわずか4日の旅でもしっかり雨に打たれる。

行きは晴天だった国道36号線を今度は雨の中、反対側の車線を通る。

前回、人力移動の旅では同じ道を通るのがイヤだと書いたと思う。

しかし見ている方向、時間、タイミングでずいぶんと見え方や感じ方が変る。

と今になって思う。

この時は雨と強風でそれどころではなかった。

向かい風に顔をしかめ、水たまりの跳ね返りに唇をゆがめ、叩きつける雨に悪態をつきながらひたすらペダルを回すだけだ。

至福の一杯 ファミマのコーヒー

雨がやんできた。

雲行きはまだ怪しいのでレインウェアは脱げないが、少し腕まくりをする。

そろそろコーヒーが飲みたい。

白老(しらおい)の国道沿いに喫茶店らしき建物があったはずだ。そこに行こう。

と思ったらまだやっていなかった。というかそこは焼き肉やだった。

ガックリしてとにかく「こーひーこーひー」と唱えながらファミリーマートについた。

しっとり濡れた身体にエアコンの冷気が刺さる。

コンビニの店員にしては珍しく「寒かったっしょ、どっから来たのさ~」と話しかけられた。

「なんも札幌まで行っただけ。いま帰るとこ」「きぃ付けんだよ」

レジ横の挽きたてコーヒーを狭い駐車場のタイヤ止めに腰掛けて飲む。

「うんめぇ~~」とカイジばりの声が出る。

我慢していたのもある。寒さと旅の終わりというフィルターもかかっているだろう。

けれど、もう4日も妻とモーニングコーヒーを飲んでいない。

そんな想いが熱いブラックコーヒーに溶けていた気がする。


出川のてっちゃん

モーニングコーヒーの向こうに家族を思い、いよいよラストスパートだ。

天気も回復傾向。

見慣れた道を軽快に進む。

そうだ、この日のためにスマホに入れてきた曲をかけよう。

出川哲朗が出演する「充電させてください」のテーマソングだ。

「さすらおう この世界中を 転がり続けて歌うよ…」

義父が見ているのを横目で見ただけなので、ここしか分からない。

歌詞はおろか題名もよくわからない

けれど上記の歌詞とメロディーラインが実に北海道自転車旅行にピッタリだ。

~さすらおう、この世界中を。転がり続けて歌うよ~

the北海道!国道沿いに馬の牧場!

撮影:ライター

そろそろ休憩がしたいなと思っていた頃、国道沿いに牧場があった。

馬のことはよくわからないが、おそらくサラブレッドだろう。

あし毛というのだろうか、白い綺麗な馬がいる。

それが霧の中で草を食んでいる。

煙草を吸ってすぐに行こうと思っていたが、しばし眺めていた。

旅ももうすぐ終わる。急ぐ必要はない。

子どもは100%泣くthe北海道なモニュメント

撮影:ライター

これも「the北海道」といった感じだろう。

ここまで来たら自宅はもうすぐ。

このモニュメントというか看板はいつも目にしているので気にしていなかったが、なかなか珍しいらしい。

子どもが見たら恐らく泣く。若くて可愛げのあった妻も当時は怖がっていた(今もかわいいと付け加えておく。別に慌てていない)

中はお土産屋さん。値段はごにょごにょだが、広いトイレがあるのでここを通ったときに寄ってみてもいいだろう。

登別のトンネル

登別市についた。

4日前のおじさん。すでに懐かしくなっている。

訪ねようかと思ったけど、疲れていたのでまた今度。

息子を連れておもちゃを見に来よう。

登別にはこの旅最後の坂がある。

でも「めんどくせぇな」とずっと思っていた。

というのも、登別から自宅に向かう側の車線にはトンネルがあるのだ。

行きは「トンネルなど横着してはいかん!」と意地を張っていたが、思い出で一杯の心にそんな思いが入る余地はない。

ウソつきました。

実はこのトンネル、昔家族の乗った乗用車が死亡事故を起こし、それ以来ちょっとしたスポットになっているのです。

こわくて通れなかったのです。

口調を戻して。

疲れた身体で坂を登るのが嫌だった。

こわいと言っても一瞬なのでトンネルを選択。

海沿いにハンドルを切り恐怖と闘いながらペダルを踏むと、なんと工事中。

建て替えられるらしい。

こわさはとりあえず置いておいて、人間ズルはいけないと最後の最後で思い知らされた。

引き返し、勢いゼロで登坂車線のある急な坂を登る。

旅で一番きつい坂だった。

最後の一服。さあ、旅も終わりだ


撮影:ライター

急な坂を越え、いよいよラストスパート。

車で出かけたときも「帰ってきたなぁ」と思う橋に差し掛かる。

橋なので当然車の時は通り過ぎる。

けれど今は自転車だ。

せっかくだから橋の上で煙草でも吹かそう。

海に続く川に水鳥がいた。

優雅に泳いでいると思ったら、急に潜って魚を採っていた。

採れたのだろうか?採れたことに喜びを感じるのだろうか?悔やむのだろうか?

きっとただただ食うために潜るのだろう。

生きるために挑むのだろう。

Q.旅で得たものは?A.何もありません

家についた。

息子と買い物に出ていた妻は、途中で僕を見かけたそうだ。

けれど「家でしっかり迎えようと声を掛けなかった」と僕に言っちゃうのが実に彼女らしい。

息子は友達と遊びに行った。

いつもの日常。僕が変ることで家族に変化が生まれる。

表題。旅で得たもの。

特に何もなかった。

けれど感じたものはあった。

気がする。

欲しい、欲しいと思っているうちは何も得られないし、満たされない。

与えられたものに感謝し、感じ、考える。

考え、伝える。

でも人間だから感じたことも、考えたことも忘れる。

僕はバカだからなおさらだ。

人より一生懸命感じて、忘れた時は助けてもらうし、助けたい。

そしてそれが、輪になる。

もし旅で得たものは?と聞かれれば、たぶんそう答える。

 

おわり。

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