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【山岳遭難事故まとめ】事例から原因を読み解く。万が一の際の対応・対策を学ぼう

山岳遭難事故とは山において生死にかかわる事態に遭遇し、救助要請をしなければならない状況のことです。過去の遭難事例のまとめから原因を読み解き、悲惨な事故をなくし登山の醍醐味を堪能するのが登山家の願いです。万が一の際の対応・対策もまとめて解説します。
2022年3月12日
eiji0601
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山岳遭難事故とは

救助要請をしなければならない状況

出典:unsplash.com

山岳遭難事故とは登山で生死にかかわる緊迫した状況に直面し、自分やグループが自力で下山できない状況に陥ることです。その場合には救助要請をしなければなりません。しかし救助要請をするにはその手段を知ることが重要です。

現在はGPS機能付きのスマホが普及していますが、スマホがない時代にはグループの誰かが自力で助けを呼びに行かなければなりません。そのため過去には悲惨な遭難事故の事例がたくさんあります。

最も多い遭難事故の原因は道迷い

出典:unsplash.com

警察庁がまとめた山岳遭難事故データによれば、山岳遭難発生件数が最も多かった2018年には2661件の事故があり、死者と行方不明者は342人負傷者は1201人にも昇っています。

原因のまとめでは道迷いが約40%と圧倒的に多く、滑落(18%)や悪天候・雪崩などが続きます。今回は遭難の原因が最も多い道迷いを重点に、遭難のまとめや事故の体験から学べるもの、遭難を回避する対策と対処法を解説しましょう。

道迷いによる遭難事故記録のまとめ

警察庁がまとめた山岳遭難データで最大の原因が道迷いです。また道迷いは登りより下山途中に多くおきています。その体験記録は道迷いの遭難がどうして起こるかをまざまざと教えてくれる教訓です。事故の記録のまとめから遭難防止につながる興味深い体験実例を2つ選んで解説しましょう。

①唐松尾山遭難(2015年5月)

出典:pixabay.com

奥秩父に位置する標高2109mの唐松尾山に単独登山で登り、下山途中で道迷いをし3日間山中をさまよい歩いた遭難事故です。

下山を始めてから4〜5分後に方向がおかしいかもしれないとは思ったものの、安易に進みすぎた結果逆方向に進んでしまったのが遭難の原因です。道迷いに気づいたときにはもう手遅れで、3日間さまよい歩き携帯の電波が届く場所にやっとたどり着き、救助要請をして助かりました。

思い込みは判断と行動を狂わせる

この遭難の最大の原因は方向がおかしいかもしれないと感じたときに、道を戻らず思い込みで前に進んだことです。このとき戻ろうと決断していれば遭難事故は回避できたはずです。

事故の体験記録のまとめから、思い込みが心を支配し判断や行動を狂わせてしまったという教訓を学びましょう。また「まだ頑張れる、どうにかできるはず!」という自身への励ましも道迷いを悪化させ負のスパイラルに落ち入る可能性があるので要注意です。

②熊倉山遭難(2006年10月)


出典:unsplash.com

この遭難事故は72歳の男性が、単独で秩父の熊倉山に日帰り登山に行き行方不明になり、半年後に死体で発見された悲惨な事例です。

遭難の原因はハイキング気分の軽装で、入山・下山ルート・目的地も家族に伝えずにふらっと出かけたことです。そのため山岳警備隊が捜索を開始しても、手がかりが「秩父の山」というだけでまったくなく捜索が打ち切られてしまいました。半年後に釣り人により頭蓋骨が発見され、死亡が確認されました。

所持品(遺品)は1冊の手帳と観光パンフレット

発見された遺品の手帳に行動が克明に記録されていたことから、道迷いによる遭難であることが判明しました。その際に発見された所持品は観光パンフレットだけです。

この教訓のまとめから見えてくるものは、たとえ低山の日帰り登山でもツエルトや食料、ヘッドランプ、地図・コンパ スなどの最低限の登山装備は持参しなければ命に関わる遭難につながるということです。

雪山の悪天候による遭難事故記録のまとめ

雪山の悪天候による遭難事故は、大量の遭難者が出る事例が多くあります。たとえ万全な装備をしていても雪山では何が起こるかわかりません。想定外の状況に遭遇することが多々あります。悲惨な雪山遭難の事故例を2つ紹介します。

①常念岳遭難(2001年1月)

出典:pixabay.com

中房温泉を出発し北アルプスの名峰2500m級の燕岳〜大天井岳〜横通岳〜常念岳〜蝶ケ岳を2白3日で縦走する計画で、常念岳を超えた稜線で突然の強風と吹雪に見舞われ視界がきかず方向を失った遭難事故です。

経験したことがない強風で樹林の中に逃げ込むが、地図を見ても位置がわからず「このままでは死んでしまう」という恐怖にかられ判断力を失い、とにかく谷方向に下ることを決断したのが遭難の最も大きな原因です。

雪山で谷(沢)に降りたのが致命傷

恐怖から判断力を失い、なりふり構わず沢を下り凍傷が悪化、さらに滝壺に落ちたことにより、尻まで水に浸かってしまい最悪の事態に。濡れたままシュラフに滑り込み天候回復を待ちましたが、翌日になっても吹雪が止まず、翌々日にやっと山荘にたどり着き救助されました。

稜線の突風は凄まじく沢に回避したい心情はわかりますが、谷は危険が多いので絶対に降りてはいけません。山は稜線を下る鉄則を忘れないようにしましょう。

②愛知大学山岳部薬師岳遭難(1963年1月)

出典:unsplash.com

冬の北アルプスの薬師岳(標高2926m)に登山した愛知大学山岳部13名が、全員死亡した悲惨な大量遭難事故です。二つ玉低気圧の影響で猛吹雪となり山頂を目前に登頂を断念し下山したのですが、途中でルートを見失う道迷いで13人全員が死亡しました。

パーティーの中で誰一人として地図とコンパスを携帯していなかったことが最大の遭難原因です。猛吹雪の中で方向を見定める手段は地図とコンパス以外にありません。

GPSがあっても地図とコンパスは必須

この事故記録のまとめからの教訓は、地図とコンパスの重要性です。現在はGPS機能付きのスマホが普及していますが、GPSで現在位置がわかっても地図読みとコンパスが使えなければ何にもなりません。

猛吹雪の中では視界はほとんどきかず、進行方向の判断はGPSではつかないので地図読みとコンパスが最善の方法です。普段から地図読みとコンパスの使い方を学んでおきましょう。


トムラウシ山遭難事故まとめの教訓

警察庁の遭難事例のまとめで最多の遭難者18名(うち死亡者8名)を出したのがトムラウシ山遭難事故です。トムラウシ山(標高2141m)は北海道の大雪山・旭岳の南に位置し、日本百名山に数えられ独特の山容が人気の名峰です。

旅行代理店が企画募集した登山ツアーで経験が少ない一般人が参加しておきた遭難事故なので注目されました。参加者は50代〜60代の男性5人に女性が10人、ツアーガイドが3名の18名です。

①企画された登山ツアー計画

出典:pixabay.com

旭岳温泉を出発し、ロープウェイで標高1600mの姿見駅(山頂駅)から登山を開始、白雲岳山小屋とヒサゴ沼山小屋を利用し大雪山系の主な稜線を縦走し2白3日でトムラウシ温泉に下山する計画でした。

ところが台風が近づき風雨が強まる中、ヒサゴ沼山小屋をトムラウシ山頂に向け出発しています。このときガイドはラジオの十勝地方の天気予報で「曇り、昼過ぎから晴れ」を聞き、天候は午後には回復すると判断して出発しました。

②遭難事故が起きた経緯と原因

遭難事故は化雲岳とヒサゴ沼分岐の間にある平坦な「神遊びの庭」付近でおきました。遭難は急激な暴風雨によりグループの何人かが低体温症で動けなくなり、死のビバークを余儀なくされたことにより起きました。

これはガイドが天気予報を誤認し、台風は通常北海道に近づけば弱まるという思い込みが死のビバークにつながった最大の原因です。ツアーガイドの判断と企画した旅行代理店の責任は後日裁判で有罪の判決が下されました。

③平坦な地形が低体温症のリスクを高める

出典:unsplash.com

トムラウシ山の遭難現場は「神遊びの庭」と呼ばれる平坦な地形の場所です。平坦な地形は滑落や雪崩の危険が少なく安全なように思えますが、実は雪山では風や雪を遮るものがなく低体温症に陥る遭難事故が多発しています。

トムラウシ山の遭難も平坦な地形で起きた低体温症による遭難事故の典型です。トムラウシ山遭難事故まとめの教訓から雪山では「平坦地形=低体温症」のリスクが高いと肝に命じておきましょう。

道に迷ったときの対応と対策

警察庁の遭難事故の原因データのまとめで最も多いのが道迷いです。中でも特に道に迷うケースが多いのは下山途中です。登りは山頂に向かうルートがはっきりしていますが、下山ルートは分岐点が多く正規のルートではないケモノ道などに踏み込み道迷いが起こります。そのときの最善の対応と対処法を解説しましょう。

①元の位置まで戻る

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何度も繰り返しになりますが、山で道迷いを感じたときは必ず元の位置に戻るのが登山の鉄則です。しかし、その場面に直面すると恐怖と焦りで鉄則を忘れ、前に進んでしまうのが多くの遭難が起きる原因になっています。

道迷いを起こしたと思ったときには、面倒でもルートがわかる位置まで戻ることが遭難のリスクを回避する最善の行動です。道を戻ることは精神的にも体力的にもきついのですが、命を守ることと考え対処しましょう。

②冷静に行動する


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山での道迷いは焦りと恐怖で冷静さを失い正しい判断ができなくなってしまいます。まず心を落ち着かせ冷静に行動することが遭難を防ぐ最善の対策です。

日暮れも近づき予定の山小屋に着くことや下山が不可能と判断したら、冷静に安全な場所を探しビバークの準備をしましょう。暗くならないうちに早めの決断と行動が非常に大切です。山の日暮れは早く真っ暗になってしまうことも予想されるので、ヘッドランプは必ず携帯しましょう。

③絶対に谷には降りない

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遭難事故事例のまとめでわかるように、谷や沢に降りることは遭難のリスクが高くなり大変危険です。道迷いは歩き回るのでその疲労から、登ることよりつい楽な低い谷に行きたくなるかもしれません。

しかし谷は崖や滝に滑落する危険があり、怪我をして動けなくなってもスマホや携帯の電波が届かないので救助要請もできなくなります。道に迷ったときは絶対に谷に降りないのが登山の鉄則と命じておきましょう。

遭難を回避し登山の醍醐味を堪能しよう!

山岳遭難のまとめ

出典:unsplash.com

警察庁発表の山岳遭難事故のまとめで、事故原因で最も多いのが道迷いです。道迷いを起こさないための地図やコンパス、GPS機能付きのスマホ、緊急避難(ビバーク)をするツエルトや防寒着に緊急用食料(チョコレートなど)の装備を持参することが大切です。

ここまで紹介した遭難事故の事例のまとめによる教訓を学び、登山の鉄則や道迷いの最善の対策・対処法を参考にして、安全で楽しい登山の醍醐味を堪能しましょう。

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