熊とはどんな動物?
日本に生息する最大・最強の哺乳類
熊は日本に生息する最大で最強の哺乳類です。体長は100〜250cm、体重は最大で500kgにもなり、鋭いカギ爪とパワーは強力で遭遇による人身事故が年間50〜150件も起きています。
熊の普段の生息域は山奥の森の中ですが、山菜採りや登山では熊の生活圏に人が踏み込むことになるので、遭遇する危険性が高くなるのです。普段はおとなしい熊でも生活圏を荒らす敵とみなし人を襲うことがあります。
日本に生息する熊の種類と分布
日本に生息する熊はヒグマとツキノワグマの2種類です。ヒグマは北海道の約半分の森林地域に生息する茶褐色の毛色をした熊で、ツキノワグマは本州と四国の落葉広葉樹林帯に生息し首に月輪模様があります。東北〜中部地方の60%、関東・近畿・中国地方の30%で出没する熊です。
どちらの熊も生活圏を守るため本能的に敵を撃退しようとします。今回は熊の生態や特徴、遭遇したときの対処法とNGな注意点を解説しましょう。
熊の生態
熊に不幸にも遭遇したとき、熊に対応する対処法がいくつかありますが、状況により異なるので100%完全な対処法は正直言ってありません。しかし熊の生態を知ることで、最低限身を守る対処法やNGの対処法が見えてきます。熊の生態を詳しく解説しましょう。
①熊の生活圏
熊は主に山奥の森林帯が生活圏で、山にある植物系の食料やハチミツや昆虫などを食べる雑食の哺乳類です。登山やハイキングは熊の生活圏に人が踏み込むことになるので、遭遇して襲われる可能性があります。
また熊は冬に冬眠するために秋に大量の餌を食べるのが習性です。ところが天候不順などで山の実りが十分でないと人里に下りてきて畑などを荒らす被害がでたり、平地でも遭遇する可能性が高くなるので注意しましょう。
②暖冬の年は要注意
熊は食料(エサ)がなくなる冬には冬眠するのが習性です。ところが暖冬で雪が少なく、山に熊のエサになる木ノ実などが残っている場合は冬眠しない熊がいます。熊は冬眠しているので大丈夫とたかをくくっていると、冬でも遭遇することがあるので注意しましょう。
③熊は守りの動物
熊はライオンなどの肉食獣とは違い、普段は非常に温厚な動物です。しかし子熊や生活圏を脅かすものに対しては果敢に撃退して守ろうとします。そのパワーたるや半端ではありません。
つまり熊は相手が何もしないのなら攻撃はしませんが、熊の生活圏に踏み込む敵とみなせば、最強のパワーで敵を撃退しようと襲います。熊は守りの動物なので、人間がそれを犯す存在ではないと思わせることが遭遇したときの最善の対処法です。
熊の特徴と習性
熊は意外な特徴と習性を持っています。熊は獰猛(どうもう)で強く怖い動物と思っている方が多いのではないでしょうか。ところが熊は意外に穏やかで守りを重視する動物です。しかし守るべきものを犯す敵とみなせば最強のパワーで立ち向います。熊の特徴と習性を紹介しましょう。
①嗅覚
熊の嗅覚は犬のなんと7〜8倍もあると言われています。犬の嗅覚が人の数千〜数万倍ということを考えると、熊の嗅覚はとてつもない数値で数キロ先の匂いを嗅ぎ分ける能力があるのです。だからハイキングや登山では匂いの強い食品を持ち歩かないことが、熊に遭遇しない対処法になります。
②食性
熊の食性は植物系の雑食です。冬眠から目覚めた春はフキや筍などの山菜や木の芽を食べます。夏は植物のほかアリやハチなどの昆虫類や蜂蜜を食べ、秋には冬眠に備えドングリや栗などの木ノ実を大量に食べるのが習性です。しかし天候不順で山の木ノ実が不作になると里に下り畑を荒らすことがあります。
③冬眠
冬眠は多くの動物が行う本能行動で熊も同じように冬眠します。冬眠は食料(エサ)がなくなる冬を越すための合理的な方法で、眠ることでエネルギーの消費を最低限に抑えるのです。ただ暖冬などで山に熊のエサになる木ノ実が残っている場合は冬眠しない熊がいるので注意しましょう。
④繁殖
熊は4歳〜6歳で繁殖可能な体に成長し、6月〜7月に繁殖期を迎えます。他の動物でもそうですが繁殖期(発情期)は気がたっているので注意しましょう。
約3週間の発情期にメスは1匹〜数匹のオスと交尾し、7〜8ヶ月の妊娠期間を経て冬眠期間中に1〜4匹の子熊を出産します。子グマを連れた母熊は防衛本能が高いので、遭遇したら特に対応と対処法に注意しましょう。
熊と遭遇したときの正しい対処法
熊に遭遇したときの対処法はいろいろあり、中には効果がない俗説もあります。俗説には逆効果となり襲われることがあるので危険です。俗説に惑わされない正しい対処法を学びましょう。ここでは遭遇した距離の状況による対処法を紹介します。
①遭遇距離が20m以上の対処法
熊は通常は温厚な動物なので、20m以上離れている地点で遭遇した場合には、できるだけ刺激しないように静かに立ち去る対処法がベストです。20m以上離れていれば熊は敵とみなさず、まず襲われる可能性が少ないので冷静に対応し、落ち着いて静かに行動しましょう。
②遭遇距離10m〜5mの対処法
10m前後で熊に遭遇した場合は「オイっ」と声を出し、こちらの存在を熊にアピールする対処法があります。熊が驚いて立ち去る可能性がありますが、100%確実な対処法とは言えません。熊がこちらに気づかない場合は静かに立ち去る対処法を取りましょう。
5m前後でいきなり遭遇した場合に効果がある対処法は熊よけスプレーです。この対処法はかなりの実績がありますが、携帯していてとっさに使えなければ意味がありません。
③襲ってきた場合の対処法
いろいろな対処法を試みても効果がなく、熊が襲ってきた場合は自分の身を守ることを第一に考えましょう。首や手首などの重要部位を守るようにザックなどで覆い、身をかがめて地面にうずくまる対処法がベストです。
運を天に任せるような対処方ですが、被害を最小限に抑える咄嗟の行動としては最適の対処法です。とにかく自分の身を守ることを最優先にしてください。
熊遭遇の経験による対処法
熊に遭遇したときの対処法はさまざまありますが、熊の習性など生物学的見地によるものと経験値による対処法があります。実際の経験は科学的な検証では得られない、生の熊に対応した対処法です。熊に実際に遭遇した経験による対処法を紹介しましょう。
①何かを振り回す
過去に82歳のおばあさんが熊に遭遇したとき、竹のクマデを振り回したら熊が逃げていったという例があります。運がよかったと言えばそれまでですが、クマデやザックを振り回したりシートを広げたりする対処法は、熊には人間が大きく見え通常ではない動物の形に見え逃げ出すのかもしれません。
傘を広げる対処法で熊を追い払ったという例もあるようです。ただし必ず成功するという確証はありません。
②木に抱きついて身を隠す
熊に遭遇したとき木に抱きついてじっと静かにしていたら、熊が気づかず去っていったという漫画のような対処法があります。熊は動くものに対応する習性があるので、木に抱きついて身を隠している人間をなんだろう?と注視はしますが、敵とは思わず襲わないのかも知れません。
試してみる価値がありそうな対処法ですが、熊がそばにいるのに静かにじっとしているのは、恐怖に打ち勝つ精神力が必要です。
③熊の目を見ながらゆっくり後退する
これはよく耳にする対処法ですが、失敗する可能性があります。山は斜面や石や木の根っこなどの障害物が多いので、後ろを見ずに転ばないように後退するのは至難のわざです。もし転倒したら熊はすぐに襲ってきます。平坦な場所なら効果がある対処法です。100%確実な対処法はないので状況により判断するようにしましょう。
熊と遭遇したとき絶対NGな行動と注意点
①背中を見せて逃げる
背中を見せて逃げるのは絶対にやってはいけない行動です。熊は自分より弱い動物と判断すると襲う習性があり、走っても熊の走るスピードは時速40km〜50kmもあるので逃げ切れるものではありません。背中を見せずゆっくり真っ直ぐに後退しましょう。左右に動くのも熊に認識されやすいのでNGです。
②死んだふりと大声を出す
死んだふりをするのは完全に俗説なのでNGです。熊は死肉も食べるので死んだふりをしても興味を示し近寄ってくるので、その恐怖に耐えきれず動いてしまえば即襲われます。大声で叫ぶのも逆に熊を刺激して襲われる可能性があるのでNGです。とにかく熊を刺激することが最も危険なので注意しましょう。
③ゴミを放置する
キャンプやバーベキューで食べ残しのゴミを放置するのもNGです。熊は学習能力が高く、人間の食品の味を覚えるとその食べ物に執着します。また熊の嗅覚は犬以上に鋭く数km先の臭いまで嗅ぎ分けるので、臭いのある食品を持って山を歩くと襲われる可能性が高くなるので注意しましょう。
熊との遭遇による事故例
環境省発表の事故例と注意点
かつて里山の山林は人の手で管理されていたので、熊などの野生動物が人里に近づくのを防いでいました。ところが山林がある里の過疎化と高齢化が進み、山林を管理する人手が減っていいるのが現状です。そのため奥山と里近くの人と動物の棲み分けの環境が崩れ、熊が人里にも出没することが多くなっているので注意してください。
事故例
ドングリ類が凶作になった平成18年には、熊が人里近くに多く出没し全国で150件の負傷事故が発生し、うち5名の方が亡くなっているのです。事故の多くは山菜採りやキノコ狩りで発生していますが、児童生徒の通学路にも出没し通学途中の中学生が熊に襲われた事故が報告されています。
熊の生態と遭遇の対処法を学び安全な登山を!
熊との遭遇の対処法のまとめ
熊は日本に生息する最大で最強の哺乳類です。北海道にはヒグマ、本州と四国の一部にはツキノワグマが生息し、森林や山が多い日本の国土の40%以上に熊が生息しています。過疎化や高齢化で里山の環境が変わり出没する地域が増えているのが現状です。
ここまで熊の生態や習性、熊と遭遇したときの対処法や絶対にしてはいけないNG行動も合わせて解説してきました。これらを参考にして、安全な登山やハイキングを楽しみましょう。
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出典:photo-ac.com