岩手山に登ってみよう
岩手山は岩手県にある標高2,038mの火山で、十和田八幡平国立公園の中に位置しています。岩手山は、岩手県を代表する作家である宮沢賢治が何度も登山に訪れたことでも有名な山であり、岩手県の象徴とも言えるでしょう。
岩手山は標高が2,000mをこえていることもあり、高山植物を楽しめる山です。山開きは7月のため、登山計画には注意しましょう。この記事では日帰り山行を楽しめる登山ルートを6選紹介していきます。
注意事項
この記事の情報は2022年2月現在のものになります。岩手山は火山のため、岩手県のホームページなどで火山情報に注意しておきましょう。また、登山口の様子や登山ルートの変更、避難小屋の状況なども直前に登った人の情報を収集することをおすすめします。
登山口へのアクセスはバスを利用することが多いですが、バスの運行状況も計画を立てる際に調べておくと現地で迷いません。しっかりと情報収集をしておきましょう。
岩手山とはどんな山?
岩手山はそのなだらかな裾野から「南部片富士」と呼ばれて岩手県の象徴になっています。古くから信仰のための登山が盛んで、現在でも当時の登山道を登れるほど整備が行き届いた山です。
岩手山は現在でも活動中の活火山で、周辺には多くの温泉が湧いています。温泉地が登山口になっているルートも少なくないため、下山したときのお楽しみとして好んでいる人もいるほどです。
岩手山にある7つの登山道
岩手山には登山道が7つあります。西麓から登る七滝コースと松川コース、南麓から登る網張コースと御神坂コース、東麓から登る柳沢コースと焼走りコース、上坊コースです。
これらの登山道は最短で7時間弱という長いコースタイムになっていて、早朝に出発すれば日帰りもできます。今回の記事では7つの登山道のうち、縦走になる松川コースを除いた6つを往復のコースタイムとともに紹介していきますので、参考にしてみてください。
初心者向けの7時間コース4選
①溶岩流を見ながら登る焼走りコース
焼走りコースは、岩手山国際交流村の付近の登山口から登り始めます。コースタイムは7時間ほどで、日帰り登山の一般的なルートです。急な上り坂も少ないため、難易度が低く初心者向けのコースになっています。
焼走り溶岩流を左手に見ながら登っていくと、1時間半ほどで眺めのいい第2噴出口に到着です。遮るものがないため遠くまでよく見渡せる絶景ポイントなので、休憩にはうってつけの場所と言えるでしょう。
コマクサの群生地を眺めながら山頂へ
第2噴出口を過ぎるとコマクサが群生する登山道になります。コマクサは7月頃に開花するピンク色の花で、砂礫を好んで生育するのが特徴です。岩手山では焼走りコースにコマクサが多く見られ、コマクサロードとも呼ばれています。
上坊コースとの合流点であるツルハシ分れから平笠不動避難小屋に到着すると、岩手山の山頂はすぐそこです。平笠不動避難小屋までは2時間半、避難小屋から山頂までは40分のコースタイムになります。
②昔からの信仰の道・柳沢コース
馬返し登山口から入山して1時間弱登ると、安全な潅木帯を登る新道と展望がいい岩場を登る旧道の分岐点に差し掛かります。どちらも2時間半ほどかかるので、岩場を登る自信がない人は難易度の低い新道を選ぶといいでしょう。
柳沢コースは岩手山の表参道と呼ばれるほどメジャーな登山道で、コースタイムは全体で7時間50分の長丁場です。避難小屋を2つ経由するため、初心者は休憩を挟むペース配分の参考にしてください。
避難小屋を経由するので初心者向きのルート
柳沢コースでは、岩手山八合目避難小屋と不動平避難小屋の2つの避難小屋を経由します。そのため、日帰り山行では休憩ポイントになり、1泊2日の山行では宿泊場所になるため難易度が低く、初心者におすすめの登山ルートです。
7月などで天候が急変したときやお鉢めぐりをしたいときなど、体力を温存して下山したい人は岩手山八合目避難小屋での宿泊を検討してみてください。どちらも予約制ではないので満員に注意しましょう。
③岩手山の最短距離を登る上坊コース
上坊コースは、上坊神社の登山口から入山します。かつては岩手山信仰の登山道として栄えていた道で、その名残のように道の脇に祠が並んでいるのが特徴です。コースタイムは7時間20分ですが、最短距離を登る登山道になっています。
焼走りコースとの合流点であるツルハシ分れまではダケカンバが生い茂る鬱蒼とした森の中を進むため、難易度は高くないものの厳かな雰囲気の登山道です。人通りが少なく静かな登山が楽しめます。
余裕があれば岩手山のお鉢めぐりもおすすめ
お鉢めぐりは岩手山の山頂の火口をぐるっと1周するコースです。コースタイムは1時間ほどとなっていて、途中で岩手山神社奥宮に参拝できます。周りに高い山がなく秋田駒ヶ岳や八幡平などの山を見渡せるのが特徴です。
時間に余裕があればぜひお鉢めぐりもしてみてください。避難小屋は山頂付近に3つあるので、日帰りだけでなく1泊2日の予定でお鉢をめぐるのもおすすめです。
④最短時間で登る御神坂コース
御神坂コースは上坊コースと並んで信仰登山の旧登山道で、岩手山の南麓を一直線に登っていくルートです。コースタイムは6時間50分と岩手山の登山コースの中では最も短いですが、それだけに急な坂を登る必要があります。
御神坂登山口から1時間40分ほど登ったところにある大滝展望台からは、大滝や周囲の山々の眺望が楽しめるため、人気のスポットです。秋の紅葉は見事なため、多くの観光客が訪れます。
山頂まではひたすら急斜面を登る
大滝展望台からは2時間20分ひたすら急な坂を登りつづけることになります。避難小屋やエスケープルートもないため、体調や天候には気をつけましょう。展望台から20分ほどで森林限界を迎えるため、眺望は一気に開けます。
鬼ヶ城分岐で岩手山の西麓の登山道と合流し、不動平避難小屋で柳沢コースと合流するため、人通りが一気に増えて渋滞するかもしれません。あらかじめ混雑状況を調べておくといいでしょう。
中級者向けの8時間から9時間コース2選
⑤なだらかな斜面を登る七滝コース
七滝コースは県民の森キャンプ場にある七滝登山口から入山します。コースタイムは8時間と長丁場で、難易度は高くありませんが持久力が必要とされるコースです。県民の森から落差20mの七滝まではミズナラの森が続く歩きやすい道になっています。
40分歩くと到着する七滝展望台は、七滝を眺めながら休憩ができるポイントです。冬は氷瀑となるため、冬でも観光客で賑わっています。氷瀑を見る場合はツアーに参加すると安全でしょう。
大地獄分岐から先は足元に注意
七滝から2時間ほど歩くと大地獄分岐に差し掛かります。その名のとおり、この分岐から先は蒸気を吹き上げる火山獄谷や火山湖を堪能できるコースです。
途中で鬼ヶ城という岩場のコースと、お花畑という高山植物が群生するコースに分岐します。難易度はお花畑コースの方が低いため、どんな風景を見たいかで決めるといいでしょう。不動平避難小屋で他の登山道と合流し、岩手山の山頂を目指します。
⑥9時間の長丁場になる網張コース
網張コースはコースタイムが9時間と長丁場ですが、網張温泉のリフトを使って標高1,320mの犬倉駅まで行けるため、40分で高度を稼げることで人気です。リフトのある網張温泉までは盛岡駅からバスが出ているため、アクセスがよく観光客も多く訪れます。
終点の犬倉駅から10分ほど歩くと犬倉山への分岐に差し掛かり、さらに1時間歩くと姥倉山への分岐に差し掛かるほど縦走路として整備されているのが特徴です。
黒倉山を経由して岩手山へ
姥倉山との分岐である姥倉分岐で松川コースと合流すると、黒倉山が見えてきます。黒倉山に寄るコースとそのまま切通しの分岐に行くコースがあるので、体力と相談してどちらかを選びましょう。
切通しから北に10分歩くと七滝コースと合流する大地獄分岐に差し掛かり、お花畑コースに行けます。そのまま直進すると岩場の多い鬼ヶ城コースになるため、登山道の分岐点を間違えないようにしましょう。
岩手山で宿泊できる避難小屋3選
①岩手山八合目避難小屋
岩手山八合目避難小屋は、岩手山の登山道の中でも最も大きい避難小屋です。収容人数は100人ほどで、多くの登山ルートで利用されます。7月の山開きから10月までは管理人が常駐しているため、安心して利用できるのがポイントです。
宿泊協力金は大人が1,700円、毛布は1枚500円から貸し出してもらえます。屋外には湧き水もあるため、日帰り山行でも水の補給や休憩に利用してみてください。
②不動平避難小屋
多くの登山コースの途中にある不動平分岐にある無人の避難小屋です。収容人数は20人と少なく、水場もないため八合目の避難小屋まで行く必要があります。冬期は雪が深くなるため、2階から出入りするのが特徴です。
収容人数が少ないため、満員になる可能性を常に考えておく必要があります。満員の場合は、気象条件が悪いなどの悪条件がなければ、歩いて10分のところにある岩手山八合目避難小屋を利用しましょう。
③平笠不動避難小屋
焼走り登山口と上坊登山口から登るコースで通る避難小屋で、山頂である火口の北側に位置しています。収容人数は15名の無人の避難小屋で、トイレ休憩をする人が多いです。
岩手山山頂のお鉢めぐりをしたあとに宿泊することも可能なので、下山のコースによっては平笠不動避難小屋に泊まるかもしれません。収容人数が少ないため満員には注意が必要です。水場はないので、水が必要な場合は岩手山八合目避難小屋まで行きましょう。
初心者でも岩手山に挑戦してみよう!
岩手山は岩手県最高峰の山であり、7つもの登山口を抱える整備の行き届いた山です。国立公園の一部であり、高山植物や焼走り溶岩流などめずらしい自然現象を楽しむ難易度の低いルートもあります。
コースタイムが7時間から9時間と初心者には難易度が高いルートもありますが、日帰りにこだわらずに避難小屋に1泊すれば安全に登れるのが岩手山の特徴です。盛岡駅からのアクセスもよいため、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
岩手山への登山が気になる方はこちらもチェック!
岩手県には岩手山のほかに、トレッキングやバスで頂上まで向かって日帰りで散策を楽しめる八幡平があります。また、岩手県以外の東北地方にも多くの名山があり、登山客を惹き付けてやみません。
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