リアルすぎる着ぐるみ型の熊の寝袋とは?
寝袋の常識をくつがえす熊の寝袋
寝袋(シュラフ)は登山やキャンプで使われる寝具の一つですが、今回紹介する着ぐるみ型の熊の寝袋は、寝袋の用途の常識を根底からくつがえす発想に基づいて作られています。機能は寝具の寝袋ですが、形状はまさにリアルな熊そのものなのです。
この寝袋を着てキャンプ場や山中で寝そべっていたら間違いなく警察沙汰になります。もし猟師がそばにいたら猟銃で撃たれる危険さえあるくらいリアルな熊の姿をしているのです。
ネットで話題になった熊の寝袋
この熊の寝袋は、実はオランダ在住の日本人女性アーティストが自身のHPで発表したアート作品です。HPに掲載されてこの熊の寝袋があまりに衝撃的だったので、欧米の多数のサイトで紹介され、そのリアルさとユニークさで一気に世界中の話題をさらいました。
もちろん日本でも話題沸騰中です。今回はそのリアルすぎる熊の寝袋の魅力や特徴、作者のコンセプトや込められた思いなどを詳しく紹介していきます。
リアルな熊の寝袋の特徴と魅力
寝袋として発売されたわけでもなく、ただHPで発表されただけなのに、どうしてこのように多くの人の関心と話題を集めたのでしょう。リアルな熊の寝袋の特徴と魅力や構造などを検証して、話題を集めるなぞと答えに迫ってみます。
熊の寝袋の名称は「The Great Sleeping Bear」
アート作品であるリアルな熊の寝袋には「The Great Sleeping Bear」という名称が付けられています。まさに「眠れるグレートな熊」です。この寝袋の中に寝そべってチャックを閉めれば、中に人間がいるとは思えないまさに「眠れる熊」そのものになり切れます。
そのくらい精巧でリアルな熊を再現している寝袋なのです。キャンプ場でこの寝袋を着ていたら警察沙汰や猟銃で撃たれそうになるのも納得します。
The Great Sleeping Bearの形状
「眠れる巨大な熊」の寝袋のサイズは長さが約190cm、重さは5.5kgもあり、熊のような体格をした大人がすっぽり入れる大きさです。毛の素材は、動物を使用しないフェイクファーやポリエステルを使用し、熊の牙や爪もポリエステルで精巧に作られています。
動物素材を使わずにリアルな熊を実現しているのは、自然保護を大切にする作者の意図と創意を表しているのです。まさに寝袋の概念を超えた芸術作品と言えます。
構造と機能
アート作品とはいえ、寝袋としての機能をきちんと備えているのが、この熊の寝袋のすごさであり魅力です。ジッパーを開けば中はフカフカで、ピンク色をしていて作者の女性らしい感性を感じます。
内側のピンク色はひょっとすると熊の肉をイメージしているのかも知れません。中に入りジッパーを閉めると、ちょうど熊の口の部分に顔がきます。口は開閉ができるので閉めてしまえば、まさにスリーピングベア(熊)になる構造です。
熊の口から現れる人の顔!
熊の口を開いたとき、中から人間の顔や手が現れるとは誰も想像がつきません。そのくらいリアルな熊の姿をした寝袋なのです。だからこそ作った作者自身もやたらな場所で使用しないように、猟銃で撃たれる危険があると警告しています。
人はみな「恐いもの見たさ」という願望を持っているのでホラー映画や怪獣映画が成り立つのです。この熊の寝袋はリアルな構造で、危険があるからこそ人気と話題を呼んでいるとも言えます。
リアルな熊の寝袋が誕生した経緯
The Great Sleeping Bearを製作した作者の意図
この熊の寝袋は安易に人の注目を集め、ビジネスにする意図で製作されたのではありません。当初は熊の彫刻にすることが計画されていたと言われています。それがなぜリアルな形状をした熊の寝袋になったのでしょう?
そこにはドイツで起きた熊の事件が大きく影響し、作者の自然に対する深い思いとコンセプトが込められているのです。リアルすぎる熊の寝袋が誕生するまでの経緯を探ってみましょう。
ドイツの野生ヒグマ「ブルーノ」事件
実はドイツの熊は1835年に絶滅し、以降野生の熊の生息は確認されていないのです。ところが170年ぶりにイタリアからアルプスを越えて、ドイツに逃げてきたヒグマが確認され、ドイツ中が大騒ぎになりました。
それは日本に出現したアザラシの「タマちゃん」のように人気の的になり「ブルーノ」と名が付けられたのです。しかし熊はアザラシとは違い人間に危害を及ぼす危険があるので、人気とは裏腹にその対処に困りました。
野生の熊「ブルーノ」の最後
ドイツ国民の人気をさらった野生の熊「ブルーノ」の対処について大論争が巻き起こりました。それは「ブルーノ」が養鶏場のニワトリを食べたり、牧場を襲って多くの羊を殺すなど問題を起こしたからです。
村に乱入して警察署の前に座り込んで休憩をとるなど、呆れるほど大胆な行動をする熊でした。貴重な研究材料として、約1750万円の懸賞金をかけて捕獲しようとしたが失敗し、結局最後は猟銃で射殺されてしまったのです。
アーティスト石澤(ISHIZAWA)の思い
悲惨な最期をとげた「ブルーノ」のニュースに石澤さんは心を痛めました。野生の熊にとって、ニワトリや羊を襲うのは自分の命を守る行動です。結果として人間に危害を加えることになり射殺されるという悲劇のストーリーを、熊の立場で考えたらと石澤さんは考えました。
石澤さんにとって熊は幻想的な夢や感動を与えてくれる存在でした。アルプスを越えドイツをさまよった熊「ブルーノ」を作品として残したいと考えたのです。
リアルすぎる熊の寝袋に込められているもの
最初は熊の彫刻を作ろうと石澤さんは思ったそうですが、それでは野生の熊「ブルーノ」の気持ちが伝わらないと考え、リアルな熊の寝袋を作ることを思い立ちました。
リアルな熊の形の寝袋に身を委ねることで、人間の目線ではなく、少しでも熊の目線に近づこうとしたのです。リアルな熊の寝袋という作品で「安住の地を求めてさまよう熊の姿となることで、現代社会の束縛から脱出する」というコンセプトを表現しています。
リアルな熊の寝袋の作者
アーティスト石澤英子(EIKO ISHIZAWA)のプロフィール
リアルすぎる熊の寝袋を製作した石澤英子は、奈良県出身のれっきとした日本人女性で、19歳のときにオランダに渡りヘリット・リートフェルト・アカデミーに入学しました。
この大学は世界各国から学生が集まる国際色豊かな美術学校で、デザイン教育を軸とし実践的で個性を自由に伸ばす校風です。そこで石澤は応用美術と工芸を学び、後にサンドバーグ大学院に入り、現在はアムステルダムで活動しているアーティストです。
EIKO ISHIZAWAの作品と作風
EIKO ISHIZAWAの作品は、彫刻や立体アート、アートフォトや版画、ファブリックデザインなど多岐にわたっています。またその作風は映画監督のようだとよく評されます。映画監督は脚本と役者の個性やアドリブで作品が作り上げられて行きます。
石澤にとって、素材や色・デザインがそれぞれ役者であり脚本であり、その共存や依頼関係で抽象化されたものが作品なのです。しかもその根底には自然への愛が存在します。
リアルな熊の寝袋はアーティスト石澤のコンセプトの結晶
アーティスト石澤の作品に対する「自然から得られる自由を楽しむ精神を、日常生活の中に抽象的なユーモアをもって挿入する」というコンセプトから生まれたのが、リアルすぎる熊の寝袋です。
その製作のきっかけとなったのは、先に紹介した野生の熊「ブルーノ」事件ですが、作品の根底には石澤の自然に対する愛情があります。リアルすぎる熊の寝袋は、石澤のコンセプトを最大に表現した最高傑作と言えるのではないでしょうか。
リアルな熊の寝袋の値段
リアルな熊の寝袋はアート作品なので値段(定価)はありません。ただ寝袋という商品のイメージがあるので、一般的な芸術作品とは少し違うようです。
ネット等であまりに反響が大きかったので一時24万円という値段で販売されたことがあったようですが、現在は残念ながら販売されていません。しかしいまだに「どこで買えばよいの?」と入手を希望する声があとを絶たないそうです。もしかすると販売される日が来るかもしれません。
もしもリアルな熊の寝袋が発売されたら?
これはあくまで仮定の話ですが、全くその可能性がないわけでもありません。「もしもリアルな熊の寝袋が発売されたら?」を検証することは、面白半分ではなく作者アーティスト石澤さんの真意を知るきっかけになるかも知れません。そういう気持ちで読んでいただければ幸いです。
購入してキャンプで使うのは危険すぎる
一度は着てみたいと思う魅力的な熊の寝袋ですが、あまりにリアルな熊の寝袋なので、キャンプでこの寝袋に入って寝て朝起きたらキャンプ場が大騒ぎになっている可能性は大です。ひょっとすると警察に通報され、消防団や捕獲作戦が行われてしまうかも知れません。
人を驚かそうとこの寝袋を着て山中をうろつくなどは猟師に撃たれる危険があるのでもってのほかです。もし発売されても寝袋としてキャンプで使うのは危険すぎます。
イベントやパーティーで使ってみたら?
イベントやパーティーで使えば非常にインパクトがあり効果的です。しかし最初に人が中に入っていることを知らせておかなければ、会場から人が逃げてしまい、やはり警察に通報されるリスクがあります。
また人を驚かせるだけの目的は、作者(アーティスト石澤)の意図に反するのかも知れません。イベントやパーティーでは自然を愛する作者の意図を汲んで、リアルさを楽しむプロデュースが必要ではないでしょうか。
使用場所や使用目的を選ぶ必要あり
これだけ話題になり魅力があるリアルな熊の寝袋は、アート作品ですが人気があり寝袋という商品カテゴリーなので近い将来発売される可能性があります。
しかし作者の石澤さんは「やたらな場所で使用しないように、本物の熊に襲われたり猟銃で撃たれる危険がある」と警告しているのです。つまりハンターに狙われるだけでなく、本物の熊が縄張りを荒らされたと思い襲う可能性があります。使用場所や目的を選ぶことが必要です。
発売されたらその適正価格は
通常の寝袋は、機能や耐寒温度にもよりますが数千円から最高レベルでも数万円が上限です。このリアルな熊の寝袋は過去に24万円の値が付いたというのは寝袋の値段としては破格になります。
仮に量産すれば値が下がるのが一般常識ですが、精巧なリアル性とアート作品としての付加価値を加えるとどのくらいの価格が適正なのか、正直言って見当がつきません。一般的に価格は少数の手作りなのか量産品かによっても変動します。
10万円で販売されたら買う?買わない?
実は「10万円で販売されたら買う?買わない?」のような質問や値段の付け方は愚の骨頂なのです。なぜならば「リアルすぎる熊の寝袋」は寝袋の機能は持っていますが、もし発売されても寝袋として購入する人はおそらく皆無ではないでしょうか。
一度は着てみたい熊の寝袋ですが、警察沙汰や猟銃で撃たれる危険をかえりみず、キャンプで使用するのはリスクが高すぎます。購入するとすればアート作品としてなので定価がないのです。
他のアニマル寝袋との違い
一般的な寝袋の種類
寝袋は大きく分けて「封筒型」「エッグ型」「マミー型(人形型)」の3種類ですが、このほか特殊な寝袋として「人型」と「アニマル型」があります。
人型の寝袋は宇宙服のような形状をしており、手足を通せる構造になっていて立って歩けるのが特徴です。アニマル型は動物をデフォルメしたものが多く、中でも熊の柄は人気が高く大人用からキッズ用まで多種類が販売されています。
一般的な熊の寝袋の特徴
一般販売されている熊の寝袋は、キャンプを楽しくする、または寝るのを嫌がる子供達をなだめる目的で作られているのがほとんどです。そのため熊のデザインはユーモラスで楽しげな表情をしています。特にキッズ用は可愛らしい熊ちゃんです。
アーティスト石澤の寝袋のように、リアルで鋭い熊の表情をした寝袋は一つもありません。それは寝袋を作るコンセプトが最大の違いで、商品としての寝袋と作品として作る寝袋の違いなのです。
アーティスト石澤のユーモアのセンス
ユーモアとは、おもわず笑いや笑顔がこぼれるものと解釈している人がほとんどです。ところがアーティスト石澤のユーモアのセンスは全く違います。
「自然を愛し楽しむという精神を、日常生活の中にユーモアをもって挿入する」というコンセプトは、単に楽しげなデザインで表現するのではなく、厳しい自然や鋭い表情を日常生活(寝袋)の中に取り入れることもユーモアの一つと言っているのです。この点が最大の違いになります。
一度は着てみたい!リアルすぎる熊の寝袋
まとめ
あまりに衝撃的でリアルすぎる、アーティスト石澤の熊の寝袋の魅力や特徴を紹介してきました。現在は販売されていませんが、人気が高く需要が多いので将来販売される可能性もゼロではありません。一度は着てみたいリアルな熊の寝袋がもし販売されたなら、この記事を参考にして使うシーンや目的を細心の注意を払って着てみてください。
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出典:unsplash.com