炭疽病とはどんな病気?
炭疽病は植物の病原菌
炭疽病とは、野菜や果樹、花に症状がでる病気で、人に症状がでる炭素症や炭疽菌とは異なります。日本ならではの湿気が多い環境で症状がでやすく、古くから農家やガーデニング愛好者の天敵です。しかし、適切な対策法や予防手順を知っておけば、炭疽病から作物・草花を守れます。炭疽病の具体的な症状、原因、対策や予防法を確認しましょう。
黒い斑点のカビが目印
名称からして恐ろしい炭疽病は、黒い斑点が目印の病気です。炭疽病になると、野菜や果樹の種類にかかわらず葉、野菜や果樹本体に黒い斑点が出現します。病気になりたての頃からごく小さな黒い斑点が現れますが、始めのほうは黒茶色に近い色味です。
症状が進むと斑点の色味は白っぽくなります。他の病気と比較すると判断しやすいので、対策も立てやすい病気です。菌のもとはカビの1つである糸状菌で、糸のように胞子を拡散しカビを増殖させます。
炭疽病の被害時期とは
炭疽病が野菜や果樹に現れやすいのは、湿気があり気温も高い時期です。また、降雨量が多い時期も危険と言えます。具体的には4月から8月頃と考えましょう。この時期の日本は湿気がこもる、気温が高い、降雨量が多いという炭疽病にとっては好条件な気候なのです。
しかし、他の時期も同じ条件が重なれば炭疽病がでる可能性もあるので注意して下さい。時期にかかわらず野菜や果樹を日々観察し、変化に気付けるようにしておくのがおすすめです。
炭疽病の症状とは
炭疽病を発症する野菜・症状
炭疽病の被害が出やすいものとして、主に野菜と果樹が挙げられますが、特に野菜は被害が多いと言えます。具体的な種類はと言うと、きゅうりやインゲン、ゴーヤなどの種子系の野菜の他、ほうれん草や白菜、小松菜、春菊等の葉物野菜です。
また、いちごやすいかなどの果物系の野菜も炭疽病になる確率はとても高いと言えます。葉物は葉自体に斑点が出現し、少しずつ穴が開き始めます。果物の場合は本体にカビがでて、末期になると落果してしまうのです。
炭疽病を発症する果樹・症状
野菜と並んで高確率で炭疽病が現れやすいのが果樹です。品種はりんご、柿、マンゴー、みかん、梨などが挙げられます。野菜とは症状が少し異なり、果実自体が病気になるのが特徴です。具体的な症状としては、果実自体に黒く小さなカビが現れます。
果実内部まで進むと、カビの大きさが目に見えて大きくなるのが特徴です。ここまで末期になると落果してしまいます。野菜は葉に症状が現れますが、果樹は本体が病気になる分被害も甚大と言えるでしょう。
炭疽病を発症する草花・症状
炭疽病と言うと野菜や果樹のみというイメージですが、草花も症状がでることがあります。具体的な草花の種類は、シンビジウム、コスモス、シクラメン、トルコキキョウなどです。草花が炭疽病になった場合、野菜とほぼ同じ症状がでます。
葉にカビが少しずつ増えて、一見すると枯れたかのように穴が開き始めるのです。頻度としては少ないですが、茎に同じ症状がでることもあります。花本体には炭疽病がでることはほぼないと考えてよいでしょう。
炭疽病の原因とは
<原因1>湿気
炭疽病はいくつかの原因が重なることで病気になるのですが、1つ目の原因として湿気が挙げられます。炭疽病は分かりやすく表現するとカビなので、一般的にカビが好む環境が原因となると考えるとよいでしょう。
畑などの屋外の場合は水のあげ過ぎ、室内の場合は夏場の高湿気に注意して下さい。特に日本は真冬を除いて湿気がとても多く、炭疽病が出現しやすい気候です。梅雨や秋雨の時期は特に注意深く観察する必要があります。
<原因2>降雨
炭疽病は、降雨量も大きく関係しています。梅雨以外の時期に雨が降り続くこともありますが、炭疽病は雨が大の好物です。葉や果実が雨で濡れ続けると、カビの胞子が瞬く間に増えます。
数日前まで何も問題がなかったのに、雨が続いた直後に炭疽病が一気に進行していた、ということもあるのです。湿気と同様に、降雨量が多い場合は定期的に様子を見てあげましょう。
<原因3>水はけの悪さ
炭疽病は水はけの悪さも原因となりえます。一般的に植物は、水はけのよい環境が丈夫に育ちやすいです。ぬかるみのような場所では、炭疽病のみならず植物全般に悪影響と言えます。そのため、湿気や雨が避けられると思われがちな室内でも、水はけの悪い状態だと炭疽病の原因となるのです。
<原因4>葉の混み合い
炭疽病の最後の原因としては、葉の混み合いが挙げられます。ガーデンニングを始めたばかりだと、葉が混み合うと言ってもイメージが湧きづらいですね。分かりやすく言うと、枝葉の量が多すぎるということです。
水はけと同様に、植物は風の通りがよいほうが強くしっかり育ちます。枝葉が多く茂っていると一見よいことのように感じますが、適度な間合いがないと水分がこもってしまうのです。水分がこもった環境は、炭疽病が高確率ででると考えましょう。
炭疽病の対策・治療方法とは
<対策・治療1>病気部分をよける
炭疽病に対する対策・治療法で最も手軽にできる方法は、病気の部分をよけるやり方です。炭疽病がでてしまっている病体部分を丸ごと取って下さい。取る際にどこまで取れば迷うところですが、病体部分を含む枝や苗をすべて取るのが無難です。
仮に葉1枚のみに炭疽病がでているだけだとしても、病体部分から他の枝葉にうつる可能もあります。(人が手で触ってもうつることはありません。)発症していなくて綺麗だとしても、将来を見据えすべて取ってしまいましょう。
<対策・治療2>薬をあげる
2つ目の対策法としては、薬を与えるという治療法が挙げられます。ただし、炭疽病の場合は症状がかなり進んでいると、薬を与えたとしても完治するのは難しいと言われています。初期の段階で発見できた場合に投薬を試してみるのがおすすめです。
薬と言っても初心者だと農薬を選ぶのは難しいですよね。また、農薬はどんな種類の植物にも使えるわけではなく、農薬ごとに散布できる植物が決まっているのです。まずは園芸店の店員に聞きながら薬剤選びをしましょう。
<対策・治療3>剪定する
病体部分をよけるという対策と併せて、剪定をするのも手軽な対策法です。病体部分の除去とセットの治療法と考えるとよいでしょう。病気になった葉や枝、苗を取ったら、周りの枝葉量が多い部分を剪定して下さい。
透かし剪定と言いますが、全体を見た時に透けて見える程度まで切り落とすことで、風が通ります。予防法の1種でもありますが、すでに炭疽病を発症していても初期であれば剪定で進行を止められるでしょう。また、他の枝葉にうつるのを防げます。
<対策・治療4>雨風をよける
材料などが必要となるので簡単にはできませんが、雨風をよけるのも炭疽病の進みを止める対策となります。庭などで育てている場合は、家庭用の遮光カーテンを使ったり、軒下や玄関先に避難させてみるのがよいでしょう。ただし、適度に太陽光が当たるようにして下さい。
その他、家庭用のビニールハウスもありますが、内部の温度や湿度が上がります。農薬と同様に初心者だと管理が難しいので、控えたほうが無難です。
予防するのが最適な対策
炭疽病がでてしまった場合、4つの対策・治療法を品種に合わせて施すのがよいですが、炭疽病を発症させないのが何よりの対策となります。1度炭疽病になってしまうと治療も時間やお金を要するので、予防しておいたほうが手間が省けるのです。誰でも簡単にできる予防法を紹介するので、ぜひ実践してみて下さい。
炭疽病の予防法とは
<予防法1>用土にこだわる
野菜や果樹の炭疽病を予防するポイントとしては、用土作りがとても大切と言われています。水のはけがよい用土が、炭疽病を予防するのに適切です。用土の中で水のはけがよいとされるのは、赤玉土と言えます。赤玉土は盆栽や鉢植えでも頻繁に使われる種類の土です。
炭疽病を予防するためには、赤玉土を6割ほど、そこに腐葉土を3割、堆肥を1割ほど混ぜた用土を作りましょう。ただ、この配合はあくまでも基本なので、育成地の状況に合わせて調整するのがおすすめです。
<予防法2>薬を試してみる
炭疽病の予防法として薬剤投与という方法もあります。一般的に農薬は複数の品種に使えるものが多く、炭疽病単体を予防するというものはありません。また、すでに発症してしまった状態に効くタイプと、予防に使うタイプは異なります。
農薬を試したい時は、店員に確認して購入するようにしましょう。合わせて、既述の通り農薬は使える品種が決まっているので注意して下さい。
<予防法3>定期的に剪定する
炭疽病を予防するには、常に風が通りやすい環境にしておくのがおすすめです。鑑賞という意味では緑が生い茂る様子は美しいものですが、炭疽病をあらかじめ防ぐという観点からするとよくないでしょう。
花芽や葉芽がない枝、上に向かって大きく伸びる徒長枝がないかを日々確認し、定期的に剪定を施してあげましょう。また、剪定をする際は、できる限り枝元に近い位置で切るのがおすすめです。そうすることで水分や肥料の吸い上げもよくなります。
<予防法4>植え付け間隔に注意
複数の苗を同じ場所で育成する場合は、植え付ける間隔を近くしないように注意して下さい。プランターなどで場所が限られている時は、植える苗自体を少なくしましょう。たくさん収穫したいと苗を至近距離で多く植えると、湿気がこもりやすくなります。
等間隔で植え付けていくと、炭疽病を高い確率で予防できるのです。また、等間隔で植えることで、根の栄養状態もよくなります。丈夫に育てるためにも間を取って植えるようにしましょう。
<予防法5>水のあげ方に注意
炭疽病を予防するには、水のあげ方も注意が必要です。水をあげ過ぎると、過度な湿気が発生し、炭疽病の源となります。用土の表面に触れてみて、少し湿り気があるくらいがちょうどよいでしょう。
あげる頻度は種類によって異なりますが、春夏は1日1回から2回程度、秋冬は2日に1回程度がおすすめです。育てている地域によっても変わるので、直接触れながら確認するようにして下さい。
炭疽病の人への被害とは
炭疽病は人の病原菌ではない
炭疽病は野菜や果樹にかかりやすい病気と聞くと、人へうつることがあるのかどうかが気になるところです。炭疽病は植物ならではの菌なので、人にまったく同じ炭疽病がうつるということはありません。植物が風邪にかからないのと一緒です。
また、人がかかると言われる炭疽症や炭疽菌は、植物がかかる炭疽病とは異なる菌体になります。炭疽病になってしまった植物が庭などにあるからといって、人体に影響を及ぼすということはないので安心しましょう。
病気部分をよけるのがベター
炭疽病は人に被害はでませんが、病体部分と周辺はよけるのが無難です。炭疽病の症状がある作物を使うと、カビを摂取するのと同じになってしまいます。野菜や果実を収穫する際に炭疽病を見つけたら、その部分はさけて取るようにして下さい。
仮に葉1枚のみ炭疽病にかかっている場合でも、周辺の作物までさけるのが安全です。収穫時はまず枝葉と果実全体を見て、炭疽病の病体がないか目視するようにしましょう。
直接手に触れないようにしよう
最後の注意点として、炭疽病の発症箇所は直接手で触れないようにするということが挙げられます。仮に炭疽病になってしまった野菜や果物を手で触れたとしても、人にうつるということはありません。
ただ、手で触れることでカビの胞子が舞うことがあるのです。胞子が舞うと知らぬ間に経口吸収する可能性もあります。炭疽病の症状がある野菜や果樹を除去する際は、手袋やマスクがあると安全です。よけたものは袋に密閉し、早々に処分するようにしましょう。
まとめ
炭疽病は植物にでる病原体で、糸のようなカビの1種です。野菜や果樹、草花に症状がでますが、用土の水はけ、湿気、剪定に注意することで予防できます。また、人の病原菌とは異なるのも特徴の1つです。
炭疽病になった作物を料理などに使ってしまっても人が発症することはありませんが、さけたほうがよいと言えます。本記事を参考に、炭疽病を予防して丈夫で強い野菜・果樹を作りましょう。
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