黒松を盆栽に仕立てたい!
黒松は日本原産?
黒松は盆栽だけではなく、日本の名のある庭園で見かけることが多いですね。世界の中で自生樹が鑑賞できるのは日本と韓国が挙げられ、数量としては日本が断然多いと言われています。
日本の有名な黒松としては、京都府の天橋立・福井県の気比の松原・佐賀県の虹の松原です。日本の三大松として、外国からの評価も非常に高い黒松と言えます。盆栽ではない黒松は、幹表面の模様や松ぼっくりがなる様も鑑賞するポイントです。
黒松盆栽の作り方・育て方を知ろう
盆栽に仕立てられる松は数種あり、黒松の他に赤松や五葉松といったタイプもあります。赤松と五葉松は黒松よりも葉がしなるのが特徴で、五葉松は黒松よりも幹がずっしりしている点が異なるのです。
黒松は3種の中で最も葉が鋭角で、盆栽に仕立てると古風な雰囲気を醸し出します。作り方も難しくなく、初心者でも安心です。育て方を確認して、立派な黒松の盆栽を造りましょう。
黒松盆栽の作り方【仕立て材料】
<作り方1>黒松の選び方
黒松の盆栽を造るには、黒松苗を購入しましょう。初心者が失敗しづらい方法としては、盆栽のみを専門とする造園店で購入するのがおすすめです。盆栽家が一定のレベルまで剪定をした黒松が手に入ります。
園芸店で購入する場合は、幹元がずしっと重みのある苗を選びましょう。また、枝や葉に優しく触れてみて、張りがあるものが望ましいです。まれに根元部分が腐りかけていたりするものもあるので注意して下さい。
<作り方2>用土
購入時の用土をそのまま利用してもよいのですが、養分をしっかり回すためには自分で用土を作るのがおすすめです。黒松の盆栽には、赤玉土を主として利用します。
赤玉土の他、桐生砂や矢作沙を少量混ぜ合わせても構いません。もしくは園芸店で盆栽用と表記された用土でもよいでしょう。いずれにしても、黒松の盆栽の用土は水のはけがよくなるタイプの用土を選んで下さい。
<作り方3>苔
黒松の盆栽には表面張りに使う苔も必要です。盆栽に使われる苔は、すな苔やおきな苔、すぎ苔、はい苔が人気と言えます。すな苔はヒトデのような形が目印で、おきな苔はやま苔とも呼ばれ、長さが短くふんわりとした感触が魅力です。
すぎ苔は黒松の葉とどことなく似た形をしており、長さがあります。はい苔は道端に自生していることもあり、強さが特徴です。器が小さい場合は短く張りやすい苔など、器や好みに応じて選んでみましょう。
<作り方4>植樹作業
実際に植樹の作業をしていきます。黒松を植える器に底石とネットを置き、根をピンセットでとかした黒松をセットしましょう。その後、用土をそっと押さえるように入れていきます。用土を入れる際は、強く押さえると根が弱るので注意して下さい。
次に裏面を湿らせた苔を用土表面に張ります。苔は水分をはじく特性が多少あるので、はじめは用土の半分程度に苔を張るのがおすすめです。苔を張り器底から水が流れ出るくらい散水したら完成となります。
黒松盆栽の作り方【日常手入れ】
<作り方1>育成手入れ場所
黒松の盆栽は日当たりがよいところが適所です。黒松の盆栽に限らず、松柏類の盆栽は日当たりがない場所では思うように生長促進されません。日当たり場所を探し、基本は外で育成・作業をするようにしましょう。
また、お正月や慶事の際など部屋の中に黒松の盆栽を置きたい時は、短時間をおすすめします。日当たりがない場所に長期間置くと、葉がへたるので注意して下さい。
<作り方2>散水手入れ
一般的に盆栽は水分が多いほうがよいというイメージですが、黒松の盆栽は別です。日当たりに注意した上で、少しからっとする程度の用土を目安としましょう。散水手入れは、表面がからからに乾いてから作業して下さい。
具体的な頻度としては、春から夏時期は1日2回ほど、秋時期は1日1回程度、冬時期は3日に1回程度でよいでしょう。また、1週間に1回ほど霧吹きで葉に散水してあげることで、葉に張りがでます。
<作り方3>時期別手入れ注意点
黒松の盆栽は1年中育てやすく、適宜手入れしていれば枯れる心配はあまりありません。ただし、夏の時期は紫外線量も多いので、葉がやけてしまう可能性もあります。風がよく通り、なおかつ日当たりも確保できる場所で作業しましょう。
黒松の盆栽は、冬のつめたさにも堅固です。むろで管理しなくても、枯れることはないでしょう。購入したばかりで黒松自体が小さい場合や、枝が弱っている時は軒下や玄関内に入れてあげて下さい。
黒松盆栽の育て方【基本剪定手入れ作業】
<育て方1>基本剪定とは
黒松の盆栽の剪定にはいくつか種類があるのですが、基本剪定とはいたる場所から長く伸びた枝(徒長枝)を落とす作業を指します。徒長枝の剪定をすると、樹形を保つだけではなく、他の枝葉に均等に養分・水分が行き渡りやすくなります。葉の鋭角さも鑑賞点である黒松は、徒長枝の剪定で見た目を美しく維持するのが大切と言えるでしょう。
<育て方2>剪定時期・期間
黒松の盆栽の基本的な剪定時期は、新しい葉芽が出始める直前の期間となります。黒松の盆栽は、12月から2月下旬頃の冷えが強い時期の剪定は厳禁です。この期間に剪定すると、枝や葉が枯れる可能性があるので注意しましょう。
具体的な時期は3月から4月上旬あたりがちょうどよいです。仮に太い枝を落としても、新しい芽が準備している時期なので、過度な心配はいりません。適期までは育成期と考え、散水や日当たり・風通しのみ気を付けてあげましょう。
<育て方3>剪定の手入れステップ
基本的な剪定ステップは、特別な技は不要です。黒松の盆栽の樹形全体を見て、過度に伸びた枝を根元から落としましょう。内側に入った枝や、葉が下向きに伸びている枝なども合わせて確認して下さい。
黒松の盆栽の基本剪定は、不要と思われる枝がなければ無理に作業しなくて構いません。無理に行うと、反対に枯れることもあります。樹形を見て理想と異なる形の場合、混み合って風の通りが悪そうな時のみ手入れして下さい。
剪定した後の注意ポイント
黒松の盆栽に基本の剪定をした後は、癒合剤を利用して切り口を保護してあげましょう。癒合剤とは、盆栽や鉢植えに使う傷口剤です。癒合剤を活用すると、剪定はさみによる傷の治りを助けるとともに、害虫や雑菌から守る機能もあります。
いくつか種類はありますが、黒松盆栽にはペーストタイプのものが使い勝手がよいでしょう。剪定を終えたら、適量を塗って下さい。また、剪定後は日常手入れと同様に散水や日当たりに注意しましょう。
黒松盆栽の育て方【芽の剪定手入れ作業】
<育て方1>芽摘みと芽切りを知ろう
黒松の盆栽を美しく育成する中で、芽摘みと芽切りというステップが大切になります。芽摘みとは、黒松の葉の頂部分から出る芽を摘む作業です。芽摘みをすると枝の出を調整できるので、理想の型を造形しやすくなります。
一方の芽切りとは、当年の新しい芽を落とすことです。芽切りをすると落とした箇所から新たに芽(2番芽)が出るのですが、育成期間がないので魅力的な短い葉をつけます。
<育て方2>時期・期間
芽摘みの時期は、新しい芽が見え始める4月上旬から5月下旬を目安として下さい。特に育成して数年経つ黒松はでる芽の数も多いのでよく観察しましょう。反対に枝や葉が幼い時は、芽を摘む作業の必要はありません。
芽切りに関してはもう少し遅く、5月下旬から7月頃がよいでしょう。そもそも芽切りは伸びきった芽を落とす作業なので、芽がすでに摘まれた黒松盆栽は作業不要の時もあります。自分の黒松盆栽の経年数や状態に応じて判断しましょう。
<育て方3>芽摘み・芽切りステップ
芽摘みはまず、黒松の葉のてっぺん部分に注目すると、ふわふわとした穂のような芽があります。この芽を手で断ち切るように落としましょう。2つ以上でている場合は、最も生長している芽を取って下さい。また、薄茶色の芽は見逃さず摘みます。
芽切りの場合は、薄緑色の新しい芽を探して下さい。この芽を元部分から断ち切りましょう。もし薄緑色の新芽が見つからない時は芽切りの必要はありません。状態をみて対応して下さい。
黒松盆栽の育て方【肥料入れ】
<育て方1>肥料は必須?
黒松の盆栽の場合、肥料をあげることで新しい芽がつきやすい傾向にあります。そのため、育成段階の小さい黒松の盆栽は肥料をしっかり施すことで、樹形造形がしやすくなるのです。
一方である程度樹形がかたまった黒松の盆栽は、肥料あげ過ぎると徒長枝が伸び、樹形が悪くなります。自分の理想に近い形となったら、肥料は少なく調整していくのがよいでしょう。
<育て方2>施肥時期・期間
黒松の盆栽は、基本的に新しい芽が準備する手前で施肥します。具体的には4月から11月あたりに施肥するのがおすすめです。肥料を与える頻度としては月に1回を目安としましょう。12月から3月上旬あたりの寒い時期は、黒松の生長も緩やかになるので肥料を必要としません。肥料やけを起こさないように注意しましょう。
<育て方3>肥料選びのコツ
黒松の盆栽には、効きがゆっくりめな玉状の肥料がおすすめです。液体タイプもありますが、効きが早く養分過多で枯れる可能性もあります。盆栽器のサイズに合った小粒肥料がよいでしょう。
黒松に限らず盆栽は玉状の肥料を使うことが多いのですが、油かすは養分としてもちょうどよいと言えます。化学肥料もありますが効きが強いので注意して下さい。裏面表記をよく確認して購入しましょう。
<育て方4>施肥ステップ
施肥は器のサイズと、黒松の盆栽の健康度によって用量が変わります。基本的には1号サイズの器に1玉と考えると分かりやすいです。葉が変色したり枯れている場合は、施肥不要と考えましょう。
肥料は単純に用土に置くだけでも構いませんが、軽く埋めるようにすると落ちる心配もありません。ミニ盆栽の場合は、専用ケースを使うのもよいでしょう。散水時に湿ることで、肥料が溶けてくれます。
黒松盆栽の育て方【植え替え手入れ作業】
<育て方1>植え替えのメリット
黒松の盆栽は適宜植え替えをすることで、新しい根の生長が助けられます。また、根の整理をせずに長年同じ器で育てていると、少しずつ根の行き場がなくなりやがて根が腐る可能性があるのです。根が腐ると葉の枯れや変色にも繋がります。
黒松の盆栽のサイズや生長度に合わせて植え替えをすると、黒松ならではの葉のとがり・重厚感のある樹形を保てる、というメリットがあるのです。重厚感のある黒松の盆栽を楽しむためにも、一定の植え替えを推奨します。
<育て方2>植え替え時期・期間
黒松の盆栽を植え替え作業は、施肥時期と同様に新しい芽が出始める直前がベストです。植え替えによって器内の環境や根がリフレッシュすることで、芽や枝の出もスムーズになります。具体的には4月から5月下旬頃がよいでしょう。
植え替えの頻度は、育成段階の黒松の場合は3年に1回程度として下さい。樹形がかたまった黒松は4年に1回ほどがよいでしょう。
<育て方3>植え替え資材
植え替え時に使う資材としては、仕立て材料とさほど変わりません。用土の他、苔、剪定はさみ、ピンセット、器、針金を準備しましょう。器については現行のサイズより1号大きいものがおすすめですが、根を断ち切って同様の器を使っても構いません。
針金は器底の穴から通して、黒松をしっかり固定するために使うものです。針金を使わずに鉢植え仕様でもよいのですが、用土と針金を合わせて使うことで用土が根にしっかり絡みつき丈夫になります。
<育て方4>植え替え手入れステップ
まずは黒松を現行の器から出し、根をピンセットでとかしてあげましょう。古い用土を振り落とすように下に向かってとかして下さい。その後、全体の根を半ばまで断ち切り、合わせて横向きに生えた上根は根元から落としましょう。
根を調整したら、ネットや用土を敷き、針金を設置した器に黒松を配置します。中央に黒松を置き、70%ほど用土をかぶせ、針金を交差させて下さい。その後、用土を少量かぶせ、裏面を湿らせた苔を張ったら完成です。
まとめ
黒松の盆栽の作り方や育て方を紹介しました。黒松の盆栽を立派に育てるポイントは剪定作業です。無駄な枝を断ち切る根本の剪定と、芽摘みや芽切りを覚えると手入れもだいぶ楽になります。また、日当たりや散水に注意することで枯れる心配もありません。記事を確認しながら、荘厳な佇まいの黒松盆栽を造形しましょう。
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