松ってどんな植物?
古くより日本庭園にはなくてはならない存在の松。お正月の「松竹梅」飾りとしても有名です。日本の本州の山に自生していて、比較的育てやすい樹木です。また秋につく実を「マツボックリ」と呼び、クリスマスリースの資材としても可愛らしく人気があります。
花の特徴
松には雌花と雄花があり、同じひとつの株につく雌雄同株です。雄花は松の枝の根元にあり小さなボールがたくさん集まったような形をしています。対して雌花は雄花よりも枝の先にあります。
葉の特徴
松の葉は、大きく、尋常葉(針葉)・子葉・初生葉・鱗片葉の4つがあります。よく目にするのはこのうち尋常葉(針葉)で、一般に松の葉というと尋常葉(針葉)のことを言います。色は美しいグリーン色をしていて、形は細く先がとがっています。
松の葉のトリビア・炭酸水ができる
松の葉っぱには天然酵母がついているので、炭酸水を作ることができます。作り方は簡単。瓶にたっぷりの松の葉と砂糖、水を入れて数日置くだけです。ただし葉っぱの根元についた松やにはきれいにとっておきましょう。
実の特徴
実はいわゆるマツボックリ。茶色くてたくさんのひだがついたような形をしています。子供のころ、野山で拾った思い出を持つ方も多いのではないでしょうか。
松の栽培は剪定がポイント
松と聞くと剪定が難しいのて手入れに時間がかかる、というイメージを持つ方も多いようです。確かに、松の剪定はほかの樹木と比べると手入れの手間がかかります。植木職人さんのあいだでは松の切り方を覚えたら一人前、という言葉もあるのだそう。ですが松は、剪定のやり方や切り方のコツさえつかめば自分でもお手入れできます。松の剪定には春の時期におこなう芽摘みと秋の時期におこなう枝の剪定があります。では、松の剪定のお手入れ方法について詳しく見ていきたいと思います。
松の基本データ
科名属名
マツ科マツ属
学名
Pinaceae
和名
松
別名
なし
英名
Pine tree
原産国
北半球の国々
松の育て方
土作り
水はけのよい土壌を好みます。地植えのほか、盆栽などの鉢植えでも栽培できますが、いずれの場合も水はけのよい土を準備しましょう。小粒もしくは中粒の赤玉土や腐葉土、川砂をブレンドすると最適です。地植えの場合は、植え付けたい場所の土を少し掘り起こしてこれらの土を混ぜ込むとよいでしょう。
肥料
肥料をそれほど必要とせず、少しやせたような土壌でも育ちます。冬に寒肥として穏効性の固形肥料を少し施す程度でよいでしょう。油粕や鶏糞などでも大丈夫です。
水やり
植え付けてから2年くらいでやっと根が安定する樹木です。2年までの幼苗には、こまめに水やりをおこないます。植え付けから2年を過ぎてしっかり根付いてきたら、水やりはさほど必要ありません。地植えの場合は、自然に降る雨だけでよいでしょう。鉢植えの場合は、植えている土の表面が乾いたら水を少しあげましょう。
場所
日当たりのよい風通しのよいところで育てましょう。とくに日当たりは重要です。じめじめとした環境や日陰では生育がよくありませんし、何より松を枯らしてしまう病気や害虫が発生しやすくなります。
植え付け
植え付けに適した時期は、2~4月の休眠時期です。移植を嫌う植物なので、はじめに植え付けるときにあとで動かす必要のないところを選びましょう。根が繊細ですので根を傷つけないように、できるだけスピーディに植え付けます。根っこについている土はなるべく落とさない崩さないようにそのまますぽんと植え付けてください。植え付けたあとは根付くまで2年のあいだ、こまめにたっぷりと水やりを続けましょう。
松の剪定1・目的は?
松の剪定の目的は、樹形を整えるほか、松の風通しをよくしてすべての幹や枝にできるだけお日様の光が届くようにすることです。よく松枯れという言葉を聞きますが、松枯れは、病気や害虫により松が枯れること。松が枯れる病気や害虫は、風通しの悪いじめじめとした環境に発生することが多いのです。定期的に剪定することで松が枯れるのを防げます。
松が枯れる要因1・松葉枯れ病
松の葉っぱが赤茶色に変色してきたら、松葉枯れ病を疑いましょう。松葉枯れ病は、ペスタロチア菌を要因とする病気で、少しずつ葉っぱが枯れていきどんどん病斑部が広がります。早期発見が第一で、見つけたら病斑部をすみやかに取り除いてください。そのままにしておくと株全体に病気が広がり枯れてしまいます。
松が枯れる要因2・松葉ふるい病
松葉ふるい病にかかると、まず小さな斑点が葉っぱにあらわれ、どんどん広がっていきます。細菌感染が理由で、一度かかると根治できず枯れる一途です。残念ながら松葉ふるい病におかされた株は処分してください。
松が枯れる要因3・マツノザイセンチュウ
いわゆる松くいと呼ばれるマツノザイセンチュウが松に寄生することで松が枯れます。マツノマダラカミキリという虫にセンチュウが寄生していて、カミキリが松に近づいたときに松に寄生します。ですからマツノマダラカミキリを防除すれば、マツノザイセンチュウを予防できます。カミキリの防除には専用の薬剤を春に松の木のまわりにまくのが有効です。なお、マツノザイセンチュウが一度寄生すると、取り除くのは不可能。松の水を吸う管を侵し、松を枯らしてしまいます。
松の剪定2・素人がおこなうときの気になる点は?
いざ、松を自分で剪定してみようと前に立ったものの、切り方が分からないと呆然と立ち尽くしてしまうかもしれません。
小枝がたくさん出ている
松というのは、よく見てみると思いのほか小枝がほうぼうに出ています。どの枝をどう残してよいのやら分からなくなります。枝を切りすぎて失敗したくないあまり、躊躇してしまう方もいらっしゃるでしょう。
葉っぱや芽がたくさん出ている
松には、芽や葉っぱがたくさん出ていて時間がかかりそうでおっくうになってしまうことも。さらに葉っぱはチクチクとしていてやる気を阻害されてしまいます。
問題点を解決するには正しいやり方をマスターする
こうした剪定の問題点を解決するためには、チクチクとした葉っぱや松ヤニから身を守る服装と適切な道具の準備、そして剪定のやり方をきちんと理解することが大切です。では、そろえるべき道具や、正しい剪定のやり方を解説いたします。松は、生命力の象徴とも言われる丈夫な木。よほど切り方を間違えなければ多少切りすぎても枯れることはありませんので、気軽にトライしてみましょう。
松の剪定3・準備する服装と道具
服装
松の剪定をする前に、まず専用の道具を準備しましょう。松を剪定するとヤニが出てきます。服などにつくとあとで洗濯してもなかなか落ちないので、汚れても構わない松専用の作業着を準備すると安心です。はしごを上り下りするため、履きなれた安定のよい靴を準備してください。さらに、松の剪定は細かい作業となりますので、手先を自在に動かせるあまりごつくない手袋を着用しましょう。
道具
剪定する松の高さにもよりますが、通常はしごを使って剪定することになります。安定性のよいタイプを選びましょう。また切れ味のよい剪定ばさみは必須です。
松の剪定4・順番
松には大きく、春の時期の新芽の芽摘みと、秋の時期の本剪定の2つのお手入れがあります。どちらの剪定も、上から下への順番でおこなうとスムーズです。なぜなら、芽摘みをしてむしった新芽や剪定した葉や枝は下に落ちるので、下からはじめてしまうと、せっかくお手入れし終えたところにまたゴミがかぶさり汚くなってしまうからです。同様の理由から、剪定は松の奥の方から手前にかけておこないましょう。
松の剪定5・春の芽摘み
芽摘みとは、春の時期におこなう松の剪定のやり方で、だいたい4~5月の時期におこないます。芽摘みは黄緑色の新芽を摘み取るため、緑摘みと呼ばれることもあります。松の細い葉っぱの真ん中を見ると黄緑色の新芽がたくさん出ているのがわかります。新芽をそのままにしておくと四方八方に伸びていき、秋の剪定がより大変になるので、春の小さな新芽のうちに摘んでしまうのが芽摘みです。枝を伸ばしたくないところの新芽は完全に摘み取って芽摘みし、伸ばしたいところの新芽は軽く折り少し残しておきます。
松の剪定6・秋の剪定
秋の剪定の時期はだいたい11~12月ごろ。あまり寒くなりすぎない時期までにおこないます。秋の剪定では、枝をすっきり剪定する「すかし」と不要な葉っぱを手でもぎ取る「もみあげ」があります。
すかしのやり方
すかしの目的は、松を風通しよくして幹に日光がよく当たるようにすることと、樹形を整えることです。まず、松を少し離れたところからよく観察します。枝が重なっているところをチェック・これから育てたい樹形をイメージしましょう。とくにイメージは大切です。やみくもに切っていくとあとで失敗に気づきます。失敗してももうどうしようもありませんので、はじめにきちんと考えておきましょう。
枝の切り方1
一般的に、松というのは直線の枝が残っていると不格好になります。好みもあるかと思いますが、できればまっすぐの枝は切り落としてしまいましょう。
枝の切り方2
まっすぐな枝を切り落として、さらに小枝が多いなと感じたら、もう少し枝を切り落としていきましょう。ただし切りすぎると樹形が悪くなって失敗しますので、ゆっくり考えながら慎重におこないましょう。
もみあげのやり方
もみあげは、手で葉っぱを取り除いていくため少し面倒ですが、はさみでスパっと切り取ったのとは違いやわらかな印象になります。松を観察しながら、古い葉っぱを手でむしります。次に、枝がYの字になるように意識しながら不要な枝や葉、芽を取り除いてください。さらに、枝の先についている芽の回りの葉っぱはだいたい3分の1くらいの量に間引くようにして、それより下の葉っぱはすべてむしり取りましょう。
松の剪定7・樹形の確認方法
松の剪定は、途中途中でチェックしながらおこなうと失敗しなくてすみます。少し面倒ではありますが、途中で少し離れたところから観察します。その際は、普通に立ったまま見るだけではなく、しゃがんで下から見たり、はしごを使って上から見たりと、さまざまな方向から確認すると失敗がありません。上から下からチェックして、重なりが多いところはさらに剪定をおこないます。最後に遠くから眺めてイメージした樹形になっていれば完了です。
松の剪定をマスターしよう
生命の象徴・お祝いの木とされている松。お庭に植えたら、枯らすことなく美しい樹姿を保ちたいものです。そのためには毎年の剪定が必須。松は次々と枝葉を伸ばすので剪定は少し大変ですが、一度やり方を覚えれば自分でおこなうことができます。秋の終わり、お正月前にきれいに剪定すれば、心がすっきりして新年を迎えられそうです。
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