はじめに:魅力的な枝ぶりが人気の松の盆栽
初心者でもできる松の盆栽の手入れ
松は日本をはじめとした北半球の各地で自生している環境適応力が強い樹木です。特に潮風による塩害のための防風林として海沿いに植樹されているのを見かけるという方も多いのではないでしょうか。
ゴツゴツとしたどちらかというと男性的な魅力がある松の木。盆栽になってもそのような荒々しい姿を再現することに、強い魅力を感じる方も少なくはありません。
松の盆栽の剪定方法や手入れ方法を解説
障害物があまりないような自然樹形ではなかなかお目にかかれないようなぐにゃりと曲がった松の盆栽らしい樹姿、針金かけをして自分で作ることも可能です。
少し難しそうと思われるかも知れませんが、松の盆栽はゆっくりと成長させ剪定をしていくため考える時間が多くとっさの判断を要求されることがないため初心者でも簡単にはじめることができる栽培方法です。今回はこの松の盆栽の育て方やおすすめの種類を解説していきます。
育て方の前に知りたい松の基本情報
松の盆栽の育て方の前にまずは松の木の基本的なことを知っておくことをおすすめします。何の植物を育てる場合でもそうですが、どんな有名な植物の仲間なのか・特長や見た目、ものによっては開花時期など園芸には知っておきたい前知識として重要になるシーンも多々ありるからです。
松の基本情報
科・属 | マツ科マツ属 |
原産地 | 北半球の各地 |
英語名/学名 | Pine/Pinus |
育て方難易度 | 難しい |
盆栽にする松の特長
松には日本国内だけでもいくつか種類があります。中には〇〇松と名前がついていても実際はスギ科の植物であり松ではないものもあるので、盆栽に仕立てるには本当の松を使うことが大切です。
一般的に松の盆栽として使われる植物の種類としては二葉松系がメインで、中には五葉松系の松も使われることもあります。どちらかというと葉が短い五葉松の方が手入れに関しては簡単で初心者向けといえるでしょう。
松は庭木も盆栽も同じ種類
赤松や黒松などの松は庭木としても植えられている方も多く見られる、丈夫で公害や潮風にも強い植物です。これらの大きな松もコンパクトな盆栽に仕立てる松もどれも同じ種類であり、盆栽用の矮性の品種というものは特にはありません。
強いていうのであれば小さな株のうちからお手入れをする必要があるので、種類よりも苗の大きさが重要になってくるでしょう。
初心者が揃えたい松盆栽に必要な道具類
小さな松の木をお手入れするにはそれに適した道具や土があります。これがあれば基本的なお世話は工夫次第でほとんどできてしまうという、土と道具類からまずはご紹介します。用意するものの、チェックリストとしてもご利用ください。
松の盆栽用培養土
盆栽用の土はいろいろと配合しなければいけないので、初心者の方はまずその合わせる土を全部購入してさらに何割など割合を気にして混ぜる作業は敷居が高いでしょう。はじめから盆栽用として売られている培養土なら無駄なストックも出ずすぐに盆栽をはじめることができるためおすすめです。
盆栽用には化粧砂も必要
化粧砂は読んで名のごとく化粧させてあげる砂のこと。見た目が一番の盆栽にはただの培養土が鉢の一番上に見えているよりも化粧砂をひいて見た目を整えてあげることが重要です。
また培養土の上から水やりをするよりも化粧砂を上に敷くことで培養土の中の軽い素材が浮いてくることを防いでくれる働きもあります。
松の盆栽用剪定バサミ
通常の剪定バサミとは違い先が細くて細かいところまで刃先が入るようなものを選ぶのがコツです。この他にも枝切り用の剪定バサミも必要です。これはカーブによって丸刃とストレートな刃の違いがありますがこれは扱ってみて好みでかまいません。一般的にはストレートな又枝切ハサミがお世話がしやすく初心者向けといわれています。
松の盆栽には針金も必要
針金はさまざまな長さ太さ・材質のものが使われますのでどれがよいとは一概には言いにくいのですが、形を作り出す松の盆栽栽培には必須な道具です。またこの針金を切るために針金切りとしてニッパーなどもご用意ください。
松の盆栽用のピンセット
小さな盆栽はとても繊細な作業を必要としますので、ピンセットがひとつあると便利です。剪定で落ちた枝葉を取り除いたり、虫を捕まえるのにも使います。
鉢や鉢底網など一般的な園芸用道具
松の盆栽のイメージに合わせた美しい小さな盆栽鉢やそれに使う鉢底網が購入した松苗に付いていない場合は別途ご用意ください。このほかにも通常の園芸用に用いるジョウロ・スコップ(土入れ)・手袋や道具類をポケットに収納して持ち歩く園芸用エプロンなどもあると便利でしょう。
魅力的な松の盆栽の育て方やお手入れ時期
松の基本情報や特長・盆栽の育て方に必要な道具類を見てきたところで、早速盆栽のお手入れ方法や時期について解説していきましょう。自然ではなかなか再現が難しいような形の盆栽に仕上げるには、盆栽特有な管理とそれをおこなう時期が重要となってきます。
松盆栽の手入れ方法1.置き場所
松は葉が密集して生えますのでできるだけ風通しがよい場所が適しています。また日あたりも重要なので連続しての室内管理には不向きです。家の中に置く場合は3-5日ほどを限度とし屋外に置くようにしてください。
盆栽用の棚を作るのであればエアコンなどの不自然な風が直接当たるような場所や、日あたりでも西日しか当たらないようなところは避けてください。
松盆栽の手入れ方法2.日常管理
盆栽の水やり
やや乾燥させぎみに育てるのが水やりのコツです。春と秋は日に1度、冬は3日に1度程度・真夏でも1日2回程度にとどめておきます。あげる量は鉢から水が出てくる程度。
鉢の土に直接あたえる腰水をおこなってから葉の上からあげる葉水という順という方法になります。やってはいけない水やりは、一箇所に集中して強い水圧を掛けてしまうこと。これは土と幹両方に対していえることです。幹には水やりをする必要はありません。
盆栽の肥料
松の盆栽の肥料は3-11月まで定期的にゆるやかな効果を持続してくれる緩効性肥料を与え続けます。肥料にもよりますがおおよそ1ヶ月くらいで効果がなくなってきますので、月に1度前の肥料が表面に残っていたらそれを取り除き新しいものと取り替えてください。真夏も肥料は与えます。
松盆栽の手入れ方法3.植え替え
株の樹齢により植え替えの期間は変わってきます。若い松であれば3年を目安に植え替えをおこないましょう。植え替え時期は2月末-4月中旬ころが適期。根も半分に切って短くして盆栽用の培養土で植え付けてください。
松盆栽の手入れ方法4.剪定
アカマツとクロマツにおこなう芽切り
アカマツ・クロマツは葉が長く伸びるので6-7月には芽切りと呼ばれる剪定をして長さを整えます。見た目だけでなく葉が密になりがちな松の盆栽の風通しをよくして病害虫を防ぐ意味もあるためこの時期には必ずおこなう剪定です。
芽切り剪定のやり方とポイント
芽切りは今年出てきた新芽の一番芽を剪定してしまう作業のことをいいます。新芽の見分け方のコツは葉の若さもありますが、生えてきている根元の部分が緑色をしていること。この緑色の葉の根元を剪定バサミで丁寧に切り取ってしまってください。
こうすることで夏すぎに2番芽が出てきて、この新芽は9月までと成長期間が短いため葉はそれほど長くならない傾向にあり、全体の葉を短くセーブすることが可能となっています。
芽切りをしてはいけない株の特長
1番芽を剪定することで木は力を使って2番芽をだそうとします。若くて未熟な株や元気がなく葉も黄色っぽい株では、わざわざ剪定するほど新芽も出てこない場合も多いです。
そんなときはその年は芽切りは控えて余分な力を松の株に使わせないように注意しながら、肥料を定期的にあげながら大きくすることに注力してください。
ゴヨウマツの剪定方法は
ゴヨウマツはアカマツやクロマツのように葉が伸びすぎないため小さな樹高の盆栽に仕立ててもバランスが悪くなりません。そのためあまり目立った剪定の必要はないのが特長です。
剪定時期は5-6月ころ。飛び出てきて目立つような長さの葉を揃える程度の剪定のやり方なので、はじめてという方にもわかりやすいでしょう。
葉すかしはアカ・クロマツとゴヨウマツ両方
このほか晩秋くらいの時期におこなう剪定方法に葉すかしがあります。これはハサミで切るのではなくピンセットで古い葉を取り除くという方法でおこないます。
この時期には自然と葉も落ちてくることが多いので、取れているもの・取れかけたものを取り除く手入れと考えるとよいでしょう。しかしこれも葉のバランスが少ないと感じたら無理に引き抜く手入れは行わず、ハサミで葉の長さを整える程度でこちらも済ませておきます。
積極的に剪定したい忌み枝の種類
株をよく見てまずは正面を決める
松の盆栽はどの角度から見てもよいものではなく、立体でありながら平面的な絵のように木を仕立てていく方法です。まずは木をよく見て格好がよくなりそうな角度を決め、必ずその視点から見たものに対する忌み枝を剪定していきましょう。
忌み枝1.突き枝
正面を決めたら太い幹からこちら側に向かって生えてくる枝が忌み枝の中の突き枝となります。まずはわかりやすいこの忌み枝から、太い幹の根元で分岐している際から枝切りハサミで切り取ってしまいましょう。
忌み枝2.車枝(くるまえだ)
車枝は車輪のようにぐるりと太い幹を囲むように枝が出てきてしまっている形です。すべて落としてしまう必要はありませんが一般的には2-3本以内にとどめて残りを枝落とししていきます。
これも前述の突き枝のように手前に向かっているものをまずは処分。奥に向かう枝も不用なので切り取り、他は全体的なバランスを調整するように数を合わせていくとよいです。
忌み枝3.わき枝
主軸となる幹から伸びた太い枝。そこの根元からまたわき芽が出てきているものをわき枝といいこれも忌み枝として考えられています。ほかの枝同様に生え際ぎりぎりの位置から枝切りハサミで切り取ってしまいましょう。
松盆栽の手入れ方法5.針金かけ
針金の太さは幹の太さで決める
盆栽の針金かけはまだ幹(や枝)が若く柔らかいうちにおこなわないと折れてしまうこともあるので注意しましょう。使用するのは曲げたい枝や幹の太さの1/3程度が目安。曲げやすい園芸用のアルミニウム針金を使用するとともに、ワイヤーカッターやニッパーなど針金を切る道具もご用意ください。
針金かけの時期とやり方
針金かけは晩秋11-12月ころから翌年春くらいの休眠期におこないます。一度かけたら0.5-1年程度はそのままにしておきますので、長期間持つように丁寧におこなうのがポイント。
先程申し上げた太さを目安に園芸用ワイヤーを巻く長さの1.5-2倍用意しますが、巻いているうちに足りなくなると継ぎが面倒ですのではじめての方はそれよりも長めにカットしてはじめることをおすすめします。
きれいに上手に針金かけするコツ
針金かけは太い幹から細い幹へ、さらに下から上へという順番でおこないます。最初はワイヤーの先を株の根元に差し込み下からななめ45度程度に等間隔を意識しつつぐるぐると巻きつけていきます。
主軸から横方向へ伸びていく枝についてはワイヤーの太さを変えて太い幹に2回ほど巻きつけてから分岐している枝方向へとやはり45度間隔になるよう巻きます。そうすることで枝がグラグラせずきちんと形をつくることが可能です。
松盆栽の手入れ方法6.病気と害虫
松葉枯れ病と松葉ふるい病
どちらも細菌性の松の病気です。最初は葉のいち部分のみが赤っぽく枯れるのが特長。松葉ふるい病は葉に斑点も見られます。病気の葉からまわりの葉へ伝染する病気なので見つけ次第取り除きすぐに焼却処分してしまいましょう。予防のために春から秋に薬剤散布をすることをおすすめします。
松もアブラムシに注意
株が小さいため捕殺が難しいためアブラムシ駆除も少々難しく感じるでしょう。捕殺に慣れている方はもちろん薬剤に頼らずお手入れすることも可能ですが、こちらもあらかじめ予防のための薬剤を春になったら株元に散布しておくことで防ぐことができるのでおすすめです。
初心者におすすめな種類も!盆栽向け松の種類
最後になりますが一般的に盆栽として仕立てられることが多い人気の松の種類を3つご紹介しましょう。特にゴヨウマツは手が掛からず初心者の盆栽入門用の苗としてもおすすめできます。
盆栽におすすめな松1.アカマツ
ミニ盆栽 〜アカマツ〜
幹や新芽が赤く色づくのが特徴的な松の種類であるアカマツ。お手入れのクロマツとの違いはほとんどなく、カラーの好みで選んでも問題ないでしょう。こちらも葉が長い種類であるため、適した時期に剪定を行う必要が出てきます。
盆栽におすすめな松2.クロマツ
盆栽 黒松
長く硬い葉を持つ松の種類で、野趣溢れており男性的と形容されることも多い松の種類がこのクロマツです。もちろん盆栽にも使われることが多く、ゴヨウマツと人気を2分するといっても過言ではないでしょう。
ただし葉が長いため盆栽にするには定期的にハサミで剪定をしてあげる必要があり、そのようなお世話を楽しいと感じる方に特におすすめします。
盆栽におすすめな松3.ゴヨウマツ
盆栽 ゴヨウマツ(五葉松)
ゴヨウマツは葉が短いためあまり剪定の必要がなく手がかからない松の盆栽用の種類として人気があります。針金をかけていろいろな樹形を作り楽しむことが容易であるため、初心者の頃だけでなくずっとゴヨウマツの盆栽を作り続けているという根強いファンを持つ盆栽向け松の種類です。
まとめ:松の盆栽を自宅で簡単に育てよう
松の盆栽の魅力的樹形を引き出す剪定方法
今回は松の基本情報や特長・盆栽としての育て方のポイントやコツと初心者の方にもおすすめな盆栽として人気が高い松の品種まで多岐に渡って解説をしてきました。松は丈夫な樹木ですので園芸的に失敗することが少なくそもそも初心者向けの木といえます。
あとは自分がかっこいいと思うような枝の形に整えてあげたり、剪定の時期にはハサミを入れてあげることで美しい姿を保つことが重要です。コンパクトでかっこいいグリーンインテリアを自分で作りたいという方は是非試してみてはいかがでしょうか。
松の盆栽が気になる方はこちらもチェック
今回は松の盆栽の育て方やおすすめの種類などをご紹介してきましたが、このほかにも暮らしーのでは初心者の方にもおすすめなミニ盆栽や簡単な作り方についても記事をご用意していますので、こちらも是非見てくださいね。
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出典:https://photo-ac.com/